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決済システムのすべて_読書メモ

「決済」をめぐる基本知識

決済と決済システム

決済 とは、一般的には「資金などの受け渡しを行うことにより債権・債務関係を解消すること」。
より平易にいうと、「お金の受け渡しを行って、取引を終了させること」。

決済の多様な局面

  • 現金による決済
  • 預金による決済
    • 手形、小切手など
    • 預金口座を通じた振込、引き落としなど
    • 銀行口座がどこにあるかに応じて2つに分類される
      • 内部決済:支払人と受取人が同一の銀行に口座を持っている場合
      • 決済システムを通じた決済:支払人と受取人が別々の銀行に口座を持っている場合
  • リテール決済とホールセール決済
    • リテール決済:個人や企業が行う小口決済
    • ホールセール決済:銀行間で行われる大口決済
  • インターバンク決済と顧客決済
    • インターバンク決済:銀行間の決済
    • 顧客決済:銀行が顧客の依頼を受けて、顧客のために行う資金移動
  • 外為決済
    • 外国為替取引が関係する決済
  • 証券決済
    • 国債、社債、株式などの有価証券の取引

決済における主体とその役割

決済システムには、 民間決済システム中央銀行決済システム がある。

中央銀行

中央銀行は、本質的に「銀行の銀行」としての性格を有している。
多くの民間銀行が中央銀行に口座を持ち、当座預金を保有している。
中央銀行の口座における資金は、 中央銀行マネー と呼ばれ、口座間で資金が移動することによって即座に決済が完了する決済手段である。
(これを提供できるのは中央銀行のみ)。

また中央銀行は、短期金利を操作するための公開市場操作を行う際に、決済システムを使って市場への資金の供給や吸収を行っている。
すなわち、中央銀行は、決済システムを利用して金融政策を遂行している、と言える。

決済システムは、金融政策の拠って立つ基盤である

民間銀行

民間銀行では、短期金融市場、証券市場、外為市場などにおける自行の取引について決済を行うために、決済システムを利用している。
また、取引先である企業や個人などの顧客に対して、決済システムを利用した決済サービスを提供している。

個人・企業

個人や企業は、資金の支払や受取のために、顧客として民間銀行に決済を依頼する「決済システムの利用者」の立場にある。

決済システムとしての銀行

内部決済

銀行は、支払人と受取人の双方が自行に口座を有している場合には、自行内における口座間の振替により、 内部決済 を行うことができる。
こうした処理は「帳簿上の付け替え」とも言われる。

決済システムにおける階層構造

多くの決済システムでは、 直接参加者 のほかに 間接参加者 の制度を認めている。

直接参加者 とは、決済機関に口座を保有し、決済システムに対して支払指図を直接送り、ほかの参加者との間で直接決済を行う参加者である。
間接参加者 とは、決済機関には口座を保有しておらず、支払指図の送信や他行との決済を、直接参加者を通じて行う参加者である。

こうした構造は、決済システムにおける 階層構造 または 階層的なメンバーシップ と呼ばれる。

クリアリングバンクと準決済システム

間接参加者(銀行)の決済を代行するサービスを幅広く提供する直接参加者のことを「クリアリングバンク」という。
クリアリングバンクは、他行から多くの決済の委託を受け、多くの決済を自行の帳簿上で処理するようになる。
こうしたプロセスを 決済の内部化 という。
決済の内部化 が行われると、同一のクリアリングバンク内で、間接参加者の口座間の振替により多くの支払いが処理されるため、その分、決済システムに送られる支払指図が少なくなる。

決済の内部化 が進んでいくと、クリアリングバンクは、決済システムに近い、かなり公的な色彩を帯びることになる。
こうしたクリアリングバンクを 準決済システム と呼ぶ。

決済のプロセス

決済システムにおける決済プロセスは、以下の 3 つに分けることができる。

  • ペイメント:支払指図の送付
  • クリアリング:決済尻の算出
  • セトルメント:決済尻の受払

ペイメント

ペイメント とは、仕向(支払)銀行が受取人への資金振替を依頼する支払指図を被仕向(受取)銀行に送付し、 被仕向銀行が受け取るプロセスである。
これは、資金決済を起動するステップとなる。

送金には、(厳密には)以下の 2 種類がある。

  • 順送金:債務者が債権者に送金するもの。振込など
  • 逆送金:債権者が債務者から代金を取り立てるもの。手形など

クリアリング(清算)

クリアリング とは、決済のために取り交わされた多くの支払指図を集計して、最終的に受け取るべき、あるいは支払うべき差額( 決済尻 という)を算出することである。

クリアリング では、決済システムが受け取った全ての支払指図を集計して、参加者ごとに、受けと払いの差額である ネットポジション が算出される。
ネットポジション は、ある参加者がほかの参加者から受けた支払指図の合計金額から、その参加者が発出したほかの参加者への支払指図の合計金額を差し引いて算出される。

セトルメント(決済)

セトルメント とは、クリアリングで計算された決済尻の金額を実際に受払いし、 ファイナリティ (決済完了性)を持って支払を行うことである。
すなわち、支払銀行から受取銀行に、実際に資金が移動することである。

中央銀行の役割

中央銀行は以下の通り、決済システムにおいて多面的な役割を果たしている。

  • ファイナリティを有する決済手段の提供
  • 流動性の提供
  • 民間決済システムに対するオーバサイド

ファイナリティを有する決済手段の提供

ファイナリティ決済完了性 ともいわれ、「決済が無条件かつ取消不能となり、最終的に完了した状態」となることを指す。
つまり、当事者間における支払が最終的に完了することである。
この ファイナリティ が確認されないと、表面上は決済が完了したように見えていても、実は完了していないというリスクが残っており、商取引や金融取引は最終的には完結しない。

決済手段 とは、決済債務を履行するために用いられる資産のこと。
それが相手に引き渡されることによって決済が行われる資産のことを指す。
ファイナリティ を有する決済手段としては、以下の 2 つがある。

  • 中央銀行が発行する「銀行券」
  • 中央銀行マネー

中央銀行マネー とは、中央銀行における預金口座の資金のこと。
民間銀行は、準備預金の積立てや銀行間決済のために、中央銀行に口座を開設して当座預金を有するのが一般的。
この預金のことを 中央銀行預金 または 中央銀行マネー と呼ぶ。
中央銀行において、こうした中央銀行預金の口座間での資金移動が行われると、その資金振替は、資金が移動した時点でファイナリティを有する。

流動性の供与

流動性 とは、決済システムの参加者が有する「資金(量)」や「預金(残高)」のことを指す。

民間決済システムへのオーバサイト

各国の中央銀行は、自らが運営しない民間の決済システムに対して、オーバサイト(監督)を実施している。
オーバサイトは、金融システムの安定性の観点から行われる。

民間決済システムの決済処理の仕組みやリスク管理に何らかの欠陥が内包されていた場合には、ある参加者のデフォルトが、ほかの多くの参加者やさらには金融市場全体に深刻な影響を与える可能性がある。オーバサイトは、こうしたリスクの低減を目的として行われる。

決済システムの分類

運営主体による分類

決済システムは、運営主体によって、以下の 2 つに分類できる。

  • 中央銀行決済システム:中央銀行が所有
    • 一般的には、中央銀行にある当座預金口座とその資金振替システムのことを指す
  • 民間決済システム:民間機関が所有

決済手法による分類

決済システムは、クリアリングのやり方によって、以下の 2 つに分類できる。

  • ネット決済システム:支払と受取を差し引きしたネット金額で行う
  • グロス決済システム:支払指図 1 件ごとのグロス金額で行う

ネット決済システムとは、決済システムに参加する銀行間で、相互の債務・債権を差し引き計算し、ネットの金額のみを決済するシステムである。
決済時点におけるネットポジションは ネット決済尻 と呼ばれる。
受領金額の方が多ければ 勝ちポジション となり、決済時点でそのネット金額を受け取ることができる。
支払金額の方が多ければ 負けポジション となり、決済時点までにそのネット金額を支払う必要がある。

グロス決済システムでは、支払額と受取額を差し引くことなく、資金の決済が支払指図一件ごとに実行される。
(ネッティングは行われない)。

決済時点による分類

決済システムは、決済がいつ実施されるかによって、以下の 3 つに分類できる。

  • 時点決済システム:決済が特定の時間に実行される
    • ファイナルな決済が、特定された時点(一日に一回、または数回)において実行される
    • 性質的に、時点決済システム=ネット決済となる
  • 即時決済システム:決済が即時に実行される
    • ファイナルな決済は、支払指図一件ごとにリアルタイムで行われる
  • 連続的決済システム:決済が連続的に実行される
    • 決済のための条件を満たした支払指図から順番に行われる
    • 決済条件としては、以下のようなものが設定される
      • 支払先に対する仕向限度額を超えないこと
      • 支払指図の処理後にも受取サイドの残高が一定の上限を上回らないこと

決済金額による分類

決済システムは、決済金額によって、以下の 2 つに分類できる。

  • 大口決済システム:高額の決済を扱う
  • 小口決済システム:比較的少額、かつ大量の決済を扱う

銀行間の資金取引、国際売買のための資金の支払、外為取引など、主として金融市場における取引が大口決済システムの対象となる。
大口決済の特徴としては以下が挙げられる。

  • 一件あたりのロットが大きく、システミックな影響が大きい
  • 決済の緊急性が高く、決済時点が重要である

小口決済システムとは、主として企業や個人による比較的少額の決済を行う決済システムである。
BtoB、BtoC、CtoC などの取引が、このシステムを通じて決済される。
典型的な対象取引としては、以下のようなものがある。

  • 公共料金の支払
  • 給与振込
  • 通信販売やインターネットショッピングの支払

決済日による分類

決済システムは、最終的な決済が行われる日によって、以下の 2 つに分類できる。

  • 同日決済システム:支払指図が発出されたのと同じ日に最終的な決済が行われる
  • 翌月決済システム:支払指図が発出された翌日に最終的な決済が行われる

決済手段による分類

決済システムは、決済に用いられる手段によって、以下の 2 つに分類できる。

  • 中央銀行マネーによる決済システム
  • 商業銀行マネーによる決済システム

まとめ

各国の代表的な決済システムを分類するとこんな感じ。

システム名 運営主体 決済金額
日本 日銀ネット 中央銀行決済システム 大口決済システム
全銀システム 民間決済システム 小口決済システム
アメリカ Fedwire 中央銀行決済システム 大口決済システム
CHIPS 民間決済システム 大口決済システム
ACH 民間決済システム 小口決済システム
イギリス Bacs 民間決済システム 小口決済システム
ヨーロッパ TARGET2 中央銀行決済システム 大口決済システム
EURO1 民間決済システム 大口決済システム
STEP1 民間決済システム 小口決済システム
STEP2 民間決済システム 小口決済システム

決済リスク

決済リスク

決済リスク とは、「何らかの理由により金融機関間の決済が実行されないために損失を被るリスク」のこと。
要は、資金を受け取れるものと考えていたが、それが受け取れないことによって発生するリスクのこと。

決済リスクと決済前リスク

決済日の前に相手方が破綻した場合にも、予定していた資金や外資や証券を受け取れなくなるリスクがある。
これを 決済前リスク という。

決済リスクは、取引の全額が受け取れないというリスク(元本リスク)である。
決済前リスク は、特に外資や証券の決済の場合、改めて市場で調達する際に、割高なコストを支払う必要があるというリスクである。

決済リスクの源泉

決済は、以下の 2 種類に分類することができる。

  • 単純型決済:単純に資金が決済されるもの
  • 価値交換型決済:外為や証券のように、結びついた2つの金融商品が交換されるもの

単純型決済では、支払指図を発出したタイミングと最終的な決済が行われる時点の時差 決済ラグ が決済リスクの源泉となる。
この決済リスクを削減するためには、以下のような対策が考えられる。

  • 支払指図の発出から最終決済までのタイムラグを短縮すること
  • 決済ラグの間における未決済残高を削減すること(あるいは一定範囲内に収めること)

価値交換型決済では、片方の金融商品の支払が行われる時点ともう片方の金融商品の引き渡しのタイミングとの間にタイムラグがある場合には、一方を引き渡したものの、その対価を受け取れないというリスクがある。
こうしたリスクを削減する仕組みとしては、以下がある。

  • 証券決済の場合:証券と資金の同時決済が行われるようにする仕組み(DVP)を使う
  • 外為決済の場合:2 通貨の支払を同時に行う仕組み(PVP)を使う

外為決済リスク

外為決済リスク とは、外為取引において、銀行が売渡通貨を支払ったにも関わらず、買入通貨を受け取れないために損失を被るリスクのこと。

決済日になると、売渡通貨と買入通貨の受払は別々に行われ、 1 つの支払と 1 つの受け取りの決済になる。
しかも外為決済では、各通貨の支払は各通貨発行国の時間帯に行われるため、通常、ある通貨の支払とほかの通貨の受け取りにはタイムラグが生じる。
このため、売渡通貨の支払を行ったものの、買入通貨を受け取れない可能性が発生し、受取金額の全額がリスクの対象となる。

決済リスクの分類

決済リスクの原因

決済リスクの発生原因は、以下のように分類される。

  • 信用リスク
  • 流動性リスク
  • システミック・リスク
  • 法的リスク
  • オペレーショナル・リスク

信用リスク とは、決済システムの参加者が、相手行の破綻などの理由により、当該決済システムにおける支払を、現在および将来のいかなる時点においても履行できない(=取引金額を受け取れない)リスクである。
銀行の経営が悪化し、支払能力を喪失した場合がこれにあたる。

流動性リスク とは、決済システムの参加者が支払を行うべき時点で十分な資金を保有していないため、当該決済システムにおける支払を、予定通りには履行できない(=取引金額を受け取れない)リスクである。
銀行の経営自体は健全で支払能力はあるが、未決済、資金繰りのミス、事務ミスなどから、一時的に手元資金が不足した場合に生じるリスクである。

システミック・リスク とは、1 つの銀行が支払不能になることによって、ほかの銀行の支払が連鎖的に不能になり、これが決済システム全体の混乱に波及するリスクである。
参加者間の未決済残高が大きいほど、また未決済の期間が長いほど、当該決済システムのシステミック・リスクに対する脆弱性が高いことになる。

法的リスク とは、十分に整備されていない法制度や法的不確実性が、信用リスクや流動性リスクを引き起こし、または悪化させるリスクである。
支払不能の銀行が発生した場合の対応ルールが不確実である場合などに生じる。
決済制度に関する法律としては、例えば以下がある。

  • 担保法
  • 倒産法
  • 契約法

オペレーショナル・リスク とは、事務ミスやコンピュータシステムの障害などによって決済ができなくなるリスクを指す。
より広義には、不正事件の発生や評判の低下、災害、テロなどによって決済不能が生じるリスクを含める。

決済リスクの現われ方

金融機関にとってのリスクの現われ方に着目すると、以下のように分類できる

  • 元本リスク
  • 価格変動リスク
  • 流動性リスク

金融機関にとっての 元本リスク とは、取引額全体(元本額)について、最終的な回収不要な損害を被るリスクである。

金融機関にとっての 価格変動リスク とは、外資や証券を予定通りに受け取れないために、これを改めて市場で手当することが必要となった場合に、市場価格の変動により、当初の契約よりも高いコストの支払を余儀無くされるリスクである。
市場リスク とも呼ばれる。

金融機関にとっての 流動性リスク とは、一時的な決済リスクが具現化し、資金を予定した時刻に受け取れないなどの理由により、代替資金を調達する必要に迫られたものの、必要な資金の調達が困難となるリスクである。

決済リスクの顕在化例

  • ヘルシュタット銀行事件
  • BONY 事件
  • ニューヨーク大停電
  • BCCI 事件
  • ベアリングス事件
  • リーマン・ブラザーズの破綻
  • 東日本大震災

決済リスクのエクスポージャーの考え方

決済リスクの大きさを決める要因は「金額」と「期間」である。
決済リスクの エクスポージャー (リスクがある状態にある金額)は、金額と期間の積により計測することができる。

決済リスクのエクスポージャー = 決済金額 * 決済までの期間

決済リスクの対象となるのは、まだ決済が行われていない 未決済残高 である。

単純型決済の場合、決済リスクは基本的には受け取りのリスクである。
そのため、取引相手が支払指図を送付した時点(通常の場合は当日)から発生する。

価値交換型決済の場合、外為リスクも、基本的には受け取りのリスクである。
自行からの支払指図が取消不能となった時点から発生する。
リスクの存在期間は、支払通貨の支払指図が取消不能になった時点から、買入通貨の入金が確認できた時点までとなる。

決済リスクの削減策

決済金額の削減手法

ネッティング

ネッティング とは、取引相手または決済システムの参加者間で、ポジションまたは債権・債務を相殺し、差額分のみを決済する方法である。
ネッティングを行うことで、多数の個別ポジションや債務を、より少数のポジションや債務に削減することができる。
ネッティングは、当事者の数と法的性格により、以下のように分類することができる。

  • 当事者の数
    • バイラテラル・ネッティング:1 対 1 で行うネッティング
    • マルチラテラル・ネッティング:1 対多数で行うネッティング
  • 法的な性格
    • ペイメント・ネッティング
    • オブリゲーション・ネッティング
    • クローズアウト・ネッティング

取引枠の設定

与信・受信限度額に上限を設定することで、決済金額を一定限度内に削減することができる。
こうした制限は、個別の相手銀行ごとに 決済リミット (DSL)として設定されることもある。
取引相手に対する決済限度を設定し、この限度額との比較でエクスポージャーを監視することは、銀行における決済リスクの管理プロセスの基本となる。

決済ラグの短縮化

決済時点の繰り上げ

時点ネット決済(DTNS)システムの場合、決済時間を繰り上げることで決済ラグを短縮できる。
(決済時点の翌日から当日に変更する、ネット決済を 1 日 1 回から複数回に変更する、など)

決済システムを RTGS 化することでも決済ラグを短縮できる。
支払指図を発出する都度、決済を完了させることで、未決済残高が残る時間はゼロになり、決済リスクは消滅する。

同時決済への移行

価値交換型決済では、決済に伴うタイムラグを削減するために、決済における 2 つの価値の交換を同時に履行する方法が考えられる。

  • DVP(Delivery versus Payment):証券と資金の受け渡しを同時に行う
  • PVP(Payment versus Payment):異なる通貨の受け渡しを同時に行う

リコンサイルの早期化

決済を外部委託している場合、 リコンサイル (決済結果の照合作業)によって決済リスクは消滅する。
個別行においては、リコンサイルを早期化することが重要となる。

DTNS システムと RTGS システム

DTNS システムと RTGS システムとの比較の視点

決済リスク、流動性、事務負担の観点から比較すると以下の通り。

DTNS RTGS
決済リスク 最終決済時点まで決済リスクが残存 即時のファイナリティあり
流動性 少ない流動性で決済が可能 多くの流動性が必要
事務負担 最終決済のみの手配 流動性管理の負担大

決済リスク

DTNS システムにおける決済リスクの管理手法

DTNS システムにおける決済リスクの管理手法としては、以下の 2 つがある。

  • 上限の設定
  • ロスシェア・ルール

上限の設定

一般的な DTNS システムにおいては、決済リスクを一定限度に抑えるために以下のような制限を設けることがある。

  • ネット受取限度額
    • 相手銀行から受け取る支払指図の合計額から当該相手銀行に支払う支払指図の合計額を控除した差額の限度額
    • ネット受取額を相手ごとに設定することにより、他の参加行に対するエクスポージャーを一定限度内に抑制できる
  • 仕向調査限度額
    • 各参加行から決済システムに対する支払指図の合計額に制限を加えることによって、決済システム全体としてのリスクを一定限度内に抑える仕組み
    • ネット受取限度額に 3 〜 5 % 程度の基準率を乗じて算出されることが多い

ロスシェア・ルール(損失分担方法)

支払不能行が発生した場合、決済システムの参加者の間で損失を分担することにより、決済を完了させる仕組み。
ロスシェア・ルールは、誰が損失を分担するかによって、以下の 3 つに分類できる。

  • デフォルターズ・ペイ:支払不能になった破綻行自身が損失の全額を負担する
  • サバイバーズ・ペイ:破綻行以外の参加者が、破綻行の損失を負担する
  • サード・パーティーズ・ペイ:破綻行や生存行以外の第三者が寝室を負担する

RTGS システムにおける決済リスクの管理手法

決済システムを RTGS 化することは、決済システムのリスク削減に大きく寄与する。
日中にファイナルな決済が可能であるため、RTGS システムは、決済プロセスにおける参加者間の信用リスクを除去することができ、決済リスクがゼロになる。

流動性

流動性不足とすくみ

流動性の源泉と流動性不足

RTGS システムの参加者が決済に用いることができる流動性の源泉としては、以下の 4 つがある。

  • 中央銀行口座の預金残高
  • 他行からの入金
  • 中央銀行によって供給される日中流動性
  • 金融市場を通じた他行からの借入

中央銀行における口座残高が支払指図の金額を下回っている場合には、支払指図の一部、ないし全てが決済できなず、流動性不足の状態となる。
この場合、仕向銀行は、中央銀行またはマーケットから、流動性を調達することが必要となる。

すくみ

すくみ とは、流動性不足によって一部の支払指図が実行されないことにより、その他多数の参加行の決済指図の実行が妨げられるような、決済システム内の流動性不足のケースである。
(参加行がお互いに相手からの資金の受け取りを待つような状況)。
このような状況では、参加者間の未決済残高が累積的に積み上がってしまう状況が発生する。

キューの仕組み

キュー とは、支払銀行の流動性が不足していたり、仕向限度額の制約に抵触していたりする場合に、支払指図が保留される仕組みを指す。
RTGS システムにおいては、仕向銀行が中央銀行口座に決済を行うための十分な資金を有していない場合には、支払指図はキューに保留されることになる。

FIFO は、その単純さにより、中央型キューの主流となっている。
また、FIFO にキュー管理の機能を組み合わせることで決済の効率性を一段と高めることが可能となっている。

  • FIFO
  • バイパス FIFO
  • FAFO
  • 優先順位付け
  • 並べ替え
  • オプティマイゼーション

事務負担

支払指図の一本一本の送信やリアルタイムでの流動性管理などの面で、DTNS よりも RTGS の方が事務負担が大きくなる。
こうした事務負担の煩雑さに対応するため、大手行では 流動性管理システム を導入して、システム対応を行なっている例が多い。
流動性管理システムとしては、

  • 残高管理機能(中央銀行における口座残高や担保残高の管理など)
  • 支払指図のコントロール機能(支払指図のプライオリティ付け、キュー管理、自動発出など)
  • リスク管理機能(日中のキャッシュフロー予測、相手先別のエクスポージャー管理など)

などが実施されるケースが多い。

決済システムの高度化とトレンド

決済システムの高度化

決済システムの発展は、特に大口決済システムにおいて顕著に見られ、

  • DTNS システムから RTGS システムへの移行
  • DTNS システムからハイブリッド・システムへの移行
  • インテグレイテッド・システムの導入

といった形で段階的に進められてきた。

典型的な DTNS システムでは、最終的な決済は一日に一回しか行われない。
これに対して ハイブリッド・システム では、日中に「ネット決済を頻繁の実施する」という特徴がある。
ハイブリッド・システムのメリットをまとめると、以下の通り。

  • (DTNS と同様)少ない流動性で決済が進められる
  • (RTGS のような即時性はないが)早期に決済を確定させてファイナリティを得られる

インテグレイテッド・システム は、「RTGS モード」と「ハイブリッド・モード」の 2 つの決済機能を有する決済システムである。
参加者は状況に応じて、これら 2 つのモードを使い分けることができる。
(普段はネッティングで処理させておいて、緊急性ある取引の場合だけ RTGS モードを使う、など。)

決済システムのトレンド

多通貨決済システムの登場

外為決済時のリスクを削減するため、複数通貨の決済を行う決済システムがみられるようになってきた。
(ex. CLS 銀行など)

オフショア決済システムの登場

オフショア決済システム とは、通貨の発行国の外で決済が行える決済システムのこと。

  • CHATS(香港)
  • CDFCPS(中国)
  • euroSIC(スイス)
  • TDC(日本)

証券決済システムとのリンク

資金決済システムと証券決済システムをリンクさせることで、以下のメリットがある。

  • 証券の受渡しと資金の受払いを条件付けて行うことができる(DVP が実現できる)
  • 資金の受払いと担保の受渡しを連携して行うことができる

金融 EDI 対応

取引メッセージの電子的な交換プロセスのことを EDI (電子データ交換)という。
決済システムにおいて、決済データとともに、その支払の内容に関する明細データを取り扱うことを可能にする仕組みを 金融 EDI という。

決済システムの変貌を促す要因

BIS レポートよる啓蒙

国際決済銀行(BIS)では、決済システムのあり方や決済リスクの削減についてのいくつかの重要なレポートを公表してきている。
こうした BIS の啓蒙活動や、世界的な決済システム改革の進展に、少なからず影響を及ぼしてきた。

BIS の決済システムに関するレポートの作成・公表に中心的な役割を果たしてきたのが、 CPSS (決済システム委員会)である。
CPSS のレポートの対象は、大口決済、小口決済、外為決済など多岐にわたっている。
下記のレポートは、資金決済システムの改革に大きな影響を与え、重要なものと見なされている。

  • エンジェル・レポート
  • ランファルシー・レポート
  • ノエル・レポート
  • オールソップ・レポート
  • RTGS レポート
  • コア・プリンシプル・レポート
  • 金融市場インフラのための原則

決済システムの設計・評価基準

  • ランファルシー基準
  • コア・プリンシプル
  • 金融市場インフラのための原則
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