「ここは新しくできたばかりなので、みなさんのお名前から一文字ずついただいて町の名前を決めましょう。そうすれば、より愛着がわくはずですよ。」
と、市役所の担当者が言う。私はその場に立ち尽くし、他の三人と顔を見合わせた。あたりはまだ工事現場のようで、道路の舗装すら終わっていない。新しい町らしく何もかもが真っ白なキャンバスだ。
私はどんな文字を出せばいいんだろう、と少し緊張する。私が出す一文字によって、この町の運命がほんの少し変わるかもしれないのだから。
ところが、担当者は私たちを促すようにさっさと用紙を出してきた。
「はい、では順番にどうぞ。一文字をここに書いてください。」
その瞬間、私の横から他の三人がほぼ同時に手を伸ばす。まるで待ちきれなかったかのように、迷いなく文字を書き込んだ。私はその筆運びを横目でちらりと確認する。「あれ?」と思った。三人とも、まさかの同じ一文字を書いている。
「これは偶然なのか、それとも必然なのか……」
そう呟きながら、私は三人の表情をうかがったが、どこか妙な自信さえうかがえるようにも見えて、少し違和感を覚えた。
ちょっと肩透かしをくらったように、私は最後の欄にそっと同じ文字を追加する。結局、四つの空欄には全く同じ文字が並んだ。
担当者は意外そうな顔を見せたものの、その表情はすぐににこやかな笑みに変わった。
「なんだか妙に覚えやすくていいですね。」
そう言う担当者を見て、私は「なぜ彼はこんなにあっさり受け入れたんだろう」とまた不思議な気持ちになる。三人のうちの誰かが何か言い出すかと思えば、やはり同じように曖昧な笑みを浮かべたままだ。
こうして生まれた町の名前は、その四つの同じ文字が並んだ、少し不思議なものになったのだった。
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