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『恐慌論』は資本主義経済がなぜ周期的に恐慌を引き起こすのかをオーストリア学派と宇野学派の視点から学ぶ為のボードゲームです。
ボードゲーム『恐慌論』は資本主義経済がなぜ周期的に恐慌を引き起こすのかを学ぶ為のボードゲームです。
日本のバブル景気からの恐慌、アメリカのドットコムバブル、住宅金融バブルからの恐慌…時と場所を超えてなぜバブルは始まり、破綻し、恐慌に至るのでしょうか?近代資本主義社会においてバブル経済と恐慌は必ず周期的に訪れるもの、ある意味日常的なことですが、はたしてそれはどうしてなのでしょうか?景気循環は自然現象なのでしょうか?
多くの経済学派が様々な景気循環理論を提唱しましたが、私は日本の宇野経済学派とオーストリア学派という左右両派の主張に興味をいだき、両学派の主張について考える為のボードゲームを作りました。
なぜこのような題材をボードゲームで表現したかというと、ボードゲーム内での現象は人間行為の相互作用のみから産まれたものであり、自然界の法則によって起こった「自然現象」ではないということが明白であるため、経済恐慌を人間が引き起こした経済現象と認識しつつ、その原因について考えることが出来るからです。
実際にあの「モノポリー」も初めは土地の独占を批判するために20世紀初頭の資本主義と経済恐慌が世界に波及した時代に作られたボードゲームなのです。
私も資本主義社会にとっての日常「経済恐慌」を100年間進化を続けてきながら誰でもプレイすることの出来る「ボードゲーム」というメディアでハックしてみたいと思います。
 
『ゲームの前に』
ゲームのルール説明の前にまずオーストリア学派と宇野弘蔵の景気循環理論をご紹介します。
オーストリア学派は限界効用価値説(物の価値はそれから得られる効用によって決まるとする説、マルクスやそれまでの古典経済学のように物の価値はどのくらいの労働時間で作ったかによって決まるとする労働価値説を否定した考え)を確立した経済学者カール・メンガーやノーベル経済学賞を受賞した経済学者フリードリヒ・フォン・ハイエクなどを有する自由主義の経済学派です。オーストリア学派の景気循環の原因については自由主義の歴史家トーマス・E・ウッズによる次の寓話が簡潔に説明しています。
「ある村にレンガが1000個有りました。その村に新しい銀行ができてレンガを預けるといつでもレンガに交換できる『レンガ引換券』を発行し始めました。村人はレンガの代わりに軽くて便利な引換券を売り買いするようになりました。やがて銀行は2000枚のレンガ引換券を発行しました。そして村人たちは2000個のレンガをつかって家を立てたり橋をかけたりする計画を立てました。しかし、だんだんと工事が進むにつれて村人は引換券一枚でレンガ一個が買えないことに気づきました!それどころかレンガが足りずレンガを2000個使うはずだった計画は無駄になってしまいました!村には半分だけの豪邸や途中までできた大きな橋がのこりました」
この寓話が教えるのは銀行の信用拡大は確かに経済を刺激するが、それは誤った投資を誘起し、投機対象の暴落が好況をいつか必ず終わらせるということです。
オーストリア学派内にも研究者によってはその根本原因を現行の銀行制度に求めるのか政府による金融への介入の結果として考えるのかなどの意見の違いは有りますが、基本的にオーストリア学派は銀行による信用拡大を景気循環の原因として重視します。
次にマルクス経済学者の宇野弘蔵の恐慌理論をご紹介します。
宇野はマルクスの資本論からその資本主義分析の「原理」だけを抽出して、イデオロギー抜きで資本主義を理解するための道具にするという方法論を取りました。
宇野によると恐慌は次の5つのプロセスから成ります。
1.生産方法の改善や省力化で利潤率が上がり2.それにより資金融通のために銀行を介した信用膨張が起こり、利子率が低下して3.それが物価、特に原料価格の投機的上昇を起こす4.しかし、「労働力」の不足が利潤率の低下をもたらし、その低下分を補うためさらなる資金需要が生まれ5.最後は利子率の高騰が投機対象の投げ売りを引き起こす。
こうして一方での失業者一方での資本の過剰という近代資本主義固有の現象、恐慌が発生する。
これは宇野学派で言うところの「労働力商品化の矛盾」つまり「労働力」のもつ特殊な性質、資本を持たない労働者個人にとっては市場を通して資本家に切り売りすることを強いられる一方で、資本家は一度買った労働力を再び売り飛ばせず、生産設備のように急激に増やすことも不可能なので好況期には労働力は必ず枯渇する。この労働力の売り買いに潜む矛盾に景気循環の根本的原因があるというのが宇野の主張です。
果たしてどちらの学派の説がより真実に近いのでしょうか?是非、『恐慌論』を皆さんでプレイして景気循環を体験されて、なぜ資本主義が恐慌を引き起こすのかについて考えてみて下さい。
参考資料
書籍    ケイティ・サレンほか( 2011・2013)『ルールズ・オブ・プレイ ゲームデザインの基礎(上・下)』
       宇野弘蔵(2010)『恐慌論』岩波書店
       尾近 裕幸 ほか(2003)『オーストリア学派の経済学 : 体系的序説』日本経済評論社
       F.A.ハイエク(2008)『貨幣理論と景気循環/価格と生産 ハイエク全集1-1【新版】』春秋社
       イスラエル・M・カーズナー(2013年)『ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス 生涯とその思想』春秋社
ボードゲーム ライナー・クニツィア 作(1993)『モダンアート modern art』HANS IM GLUECK
          Friedemann Friese 作(2001)『電力会社』2F-Spiele
コンピューターゲーム Ozark Softscape開発(1983)『M.U.L.E.』 Electronic Arts Inc  
                       
「恐慌論ルールブック」  ©2016 大坂景介 Creative Commons Attribution, BY 
 
下記グーグルドライブのURLからWord形式のゲームで使用するボードをご利用できます、こちらもクリエイティブコモンズAttribution, BYでご利用いただけます。
https://drive.google.com/file/d/0B45wg1AqFsmEbDJDVEZzRmhXVW8/view?usp=sharing
『ゲームの準備』
「恐慌論」は3〜4人用プレイ時間60分のボードゲームです。プレイヤーは企業の社長となり銀行から融資を受け、「労働者コマ」を買って(『労働者コマ』は設定上、労働力・土地などの生産要素を抽象化した表現です)商品を生産して売り、資本を購入して工場を拡張していきます。商品の相場やライバル企業の動向を気にしつつ、会社と商品のブランドや技術力を表す「付加価値点」も上げなければなりません。お金の借り過ぎやバブルにも気を付けてください!
勝利条件である「勝利点」を最も多く獲得したプレイヤーがこのゲームの勝者です!
開始前に筆記具、製品コマ2種類と労働者コマになる適当なものと一円玉などのゲームのお金になるものを用意して(お金は電卓などで代用できます)各印刷用ボードを印刷して会社名を書いて下さい。ジャンケンなどの方法でプレイヤーの中から銀行役を兼任する人を決め、プレイヤーに銀行役を番号1として時計回りにプレイヤー番号を決めて下さい。全プレイヤーに入札・手元ボードと労働者コマを一つ、お金を番号1,2のプレイヤーに3円、番号3のプレイヤーに4円、番号4の人には5円くばります。中央ボードを真ん中に置き(プレイヤーは常時お金も含め自分の手元ボードをすべて他プレイヤーに公開します)黒製品の民生品市場に黒製品を3つ置きます。このゲームは全部で1~7フェイズを7ターン繰り返します(1ターンを1年度と呼びます)ゲームの終了と勝利条件である勝利点についてはフェイズ8、ゲームの終了と勝利点の計算を参照して下さい。また初年度のみフェイズ5、製品と付加価値点の生産から年度を初めます。
1、 利子及び元本の返済と企業更生 
まず融資カードを持っているプレイヤーは全員同時に融資カードに書いてある金利の分だけお金を銀行に払い、融資カードがあるプレイヤーが融資カードを銀行に返却したい場合は、プレーヤー番号順に融資カードの額面と同じ金額を銀行に支払い融資カードを銀行に返却します。金利を払えなかったプレイヤーは「企業更生」を宣言して銀行から企業更生カードをもらい、手持ち金を丁度3円になるように銀行に払うかもらうかして調節します。企業更生カードを持っているプレイヤーは融資カードの利子をはらわなくて済みます。ただし、企業更生カードはゲーム終了まで手元に置かれ返却することはできず、もっているプレイヤーは一度すべての融資カードを返却して「企業更生完了」と宣言するまでは新たに融資カードをもらうことはできません。全プレイヤーが行動を終了したら次のフェイズに進みます。
2、 銀行から融資を受ける *融資カードは1年度につき1人1枚までしか取れず1人3枚までしか持てません。
まず融資を受けたい人が手を上げ、融資を受けたいプレイヤーがいない場合は次のフェイズに進みます。
融資を受けたいプレイヤーが2人以上いた場合は、次の《優先順ルール》に従って行動します。この《優先順ルール》は他のフェイズでも共通です。
《優先順ルール:行動の優先順位は、まず、第一に付加価値点の一番高いプレイヤー、第二に手持ちのお金が一番多いプレイヤー、第三にプレイヤー番号の小さい人の順にありあます
 例:プレイヤーA 付加価値点1 手持ち金3円 番号4 
   プレイヤーB 付加価値点1 手持ち金2円 番号3 
   プレイヤーC 付加価値点0 手持ち金1円 番号2 
   プレイヤーD 付加価値点0 手持ち金1円 番号1
 上記の場合はプレイヤーAとBが付加価値で同点であるため手持ち金の多いAから行動し、その次に手持ち金の多い Bが行動します、その後同点同額のCとDはプレイヤー番号順に1番のDが行動して最後にCが行動します》
順番がきたプレイヤーは額面の一番高い融資カードをもらい、融資カードを受け取ったプレイヤーはそのカードの額面を銀行からもらいます。また誰かがが先に融資カードをとったあとに、他の手を上げたプレイヤーは融資カードの獲得を辞退することができます。全プレイヤーが融資を終えるか辞退したら次のフェイズに進みます。
3、 雇用と民間消費
    *毎年度終了時に使わなかった労働者コマは労働市場に戻されるので注意してください。
労働者コマ1つ当たりの入札金を書いた(入札しない人は0を書き)入札ボードを他人から見えないようにもち、全員で掛け声とともに同時に公開します。まず最初に銀行役がその年度の全ての労働者コマの中から労働者コマを全プレイヤーに1個ずつくばります。次に入札額の高い人から順に残ったコマから任意の数のコマを自分のボードにとります。
もしも入札金が同額のプレイヤーが2人以上いた場合は、その同額のプレイヤーの中から《優先順ルール》にもとづき優先順位の高い人が先に雇用をしてそのあとに他の入札額の低いプレイヤーが雇用をします。
最後に各プレイヤーが手元にある労働者コマ1つ×入札金額の合計を銀行に払います。
入札したプレイヤーが全員雇用を終えるか、労働者コマが無くなるかすればそのターンの労働者の入札を終了して、
銀行役は全プレイヤーが労働者コマの入札に支払ったお金の合計を計算し、中央ボードに書かれている表に従い民生品市場から製品を取り去ります。 (例:合計16円なら民生品市場の安い方から黒製品3個、白製品1個を取り除く)
すべての処理が終了したら次のフェイズに進みます。
4、 「資本」の購入
*同じ種類のコマでも購入したものは「資本」生産したものは「製品」と呼称し、ルール上別のものとして扱い、市場を介さずに入れ替えることはできません。また、「資本」は工場カードを作ることにしか使えません。
まずプレイヤーは《優先順ルール》にそって黒資本を購入する順番を決めます。購入する順番のプレイヤーは中央ボードから任意の数の「黒資本」を値段の低い左側から取り、自分の手元ボードの「資本置き場」に置き、その「資本」が置かれていた場所に書かれていた金額の合計額を銀行にはらいます。(プレイヤーは購入をパスすることもできます)
次に白製品の購入も黒製品と同じ方法で行い、プレイヤーが全員購入を終えるかパスしたら次のフェイズに進みます。
5、 製品と付加価値点の生産
製品生産または工場の建設、もしくは付加価値点の獲得を行うプレイヤーは入札ボードに投入労働者コマ数を他人から見えないように書き込み、全員で一斉に公開します。その後、全員同時に手元ボードに書かれたコストを自分のボードから取り除き、製品もしくは工場を自分のボードの製品ゾーンと工場ゾーンに加えます。また、2枚以上の同じ種類の工場カードを使い製品を生産した場合はそれらの製品に加えて同じ種類の製品コマをもう1つ製品置場に加える事が出来ます。また、製品を生産した工場カードは90度横向きにしておいておきます。最後に手元ボードの計算表に基づき付加価値点を自分のボードに書き加えます。
(例:自分が付加価値点1点の時に付加価値点獲得に自分が労働者コマ1個、他人が2個投入したら自分は5点獲得して計6点とボードの付加価値点表に書きこむ)全プレイヤーが生産を終えたら次のフェイズに進みます。
6、 販売
プレイヤーはまず《優先順ルール》にそって黒製品を販売する順番を決めます、順番が決まったら順番にプレイヤーの製品ゾーンから入札ボードに書かれた数の製品を中央ボードの産業用市場と民生品市場の空いている場所に置いていき(値段の高い右側から埋めていきます)製品コマを置いたマスに書かれた金額の合計を銀行から受け取ります。
(プレイヤーは販売をパスすることもできます)次に白製品の販売も黒製品と同じ方法で行います。製品を販売するプレイヤーが全員購入を終えるかパスしたら次のフェイズに進みます。
7、 年度の終了 ※7年度目のみこのフェイズを飛ばして8、ゲームの終了と勝利点の計算に進みます
まず銀行役がその年度の終了を宣言して、全プレイヤーは使わなかった労働者コマを労働市場に戻し、横にした工場カードを縦に戻し、中央ボードの表に従って労働者コマを増減して次の年度をまた第1フェイズから始めます。
8、 ゲームの終了と勝利点の計算
   7年度目のフェイズ7、年度の終了になったらゲームを終了させ勝利点を計算して勝者を決めます。
 勝利点  ・最終年度に使用して横向きになっていた黒工場カード1つにつき勝利点3点
      ・最終年度に使用して横向きになっていた白工場カード1つにつき勝利点9点
       ・付加価値点1点につき勝利点1点 
        ・手持ち金1円につき勝利点1点
 マイナス点 ・借金1円につきマイナス1点
        ・製品・原料の手元にあるコマ1つにつき(種類にかかわらず)勝利点マイナス2点
          ・企業更生カード1枚につきマイナス点の合計を2倍にします。
 勝者と順位決定 ・勝利点-マイナス点=勝利点合計で計算して勝利点合計の多い順にゲームの順位が決まります。 
『ゲームのあとに』
いかがでしたでしょうか?何でも出来る労働者をいつでも年季雇用で雇え、何をいくらで売れるかもわかっている。
さらに今はない市場の規模までわかる。そんな理想的な経済にもかかわらずゲーム中に現実の経済と似た好景気と不景気の循環が出現しなかったでしょうか?是非、プレイヤー同士でなぜそのような結果になったのか(あるいはなぜそうならなかったのか)このゲームはどこまで現実の経済と同じといえるのか?また、オーストリア学派と宇野理論について、そしてなにより現実の経済は今後どうなっていくのか?といったことについて話し合ってみてください。もしも、このゲームが皆様にとって経済恐慌に興味を持つきっかけとなったならば製作者にとって最大の喜びです。また、このゲームはクリエイティブ・コモンズですので是非皆さんでルールや数値を変えて新しい遊び方を創造してみて下さい。
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