高校時代はずっと殴られたり、恐喝されるなどのいじめを受けていた主人公。豊かではないががんばって生活している家族環境のなか、 高校卒業を控えた3年生に少しでも自分を変えようと一念発起して一年間ほど勉強し、なんとか中堅の飛鳥大学に入ることに成功する。
新たな生活で自分を変えようと思った矢先、高校時代のいじめっこと再会をする。早速いじめの暴力を受けたとき同じ新入生のトモイチが救ってくれる。 彼は飛鳥大学に長い伝統を持つ「正義の味方研究会」の部員だった。
ながいいじめを受けてきたことで培われた反射神経やダメージを軽減する防御テクニックを見込まれ、主人公も正義の味方研究会に参加することになる。
大学の平和的な自治を影で支えているその活動を続けていくなか、ネズミ講の疑いがあるというとあるサークルに潜入する。 そこで知り合った謎の先輩に感化されている主人公。一体何が正義で何が悪なのか、その答えを探し続ける主人公。
最初は不幸な境遇のなか、弱いように見えた主人公が、逆転的な立場になる勧善懲悪の成長ストーリーかと思いきや、 主人公はもともといじめられっ子であってもどこか芯の強いところがあり、不幸な境遇でも誰かに当たり続けるような心の弱さが少ない。
その辺がすこし違うなと思っていた矢先、こんどは悪となるサークル側も、世間の階層でいうところの下層に位置させられた人が生き残ろう、 のし上がろうとしたもがきのようなものであり、単純に悪と切り捨てていいものか主人公にも迷いが生じる。
その葛藤の先にまた、本来純粋な正義の味方研究会の問題点というか真の姿のようなものが見えてくる。 二転三転の物語が用意されていて、読んでいて飽きさせない。
完全なハッピーエンドというわけではないが、読後感は決して悪くはなく良作である。