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特に教室は,パート練習での希美の教室での様子を映し出すことによって,対比的にみぞれの孤独をより強く表現している.
-しかし,そこに侵入者が現れる.新入生の剣崎梨々花だ.前半からコミュニケーションを取ろうとする彼女は,みぞれが一人でいる教室に入り込む.彼女の内側に入ってこようとする人間があらわれるのだ.梨々花は幾度となくみぞれのいる教室に足を運ぶ.オーディション前,オーディション後,プール後,練習.回数を重ねる毎にみぞれから梨々花への距離が近くなっていることを感じることができるはずだ.チャラメルの演奏中などは,梨々花の方が先に教室にいる.
+しかし,そこに侵入者が現れる.新入生の剣崎梨々花だ.前半からコミュニケーションを取ろうとする彼女は,みぞれが一人でいる教室に入り込む.彼女の内側に入ってこようとする人間があらわれるのだ.梨々花は幾度となくみぞれのいる教室に足を運ぶ.オーディション前,オーディション後,プール後,練習.回数を重ねる毎にみぞれから梨々花への距離が近くなっていることを感じることができるはずだ.
チャラメルを練習している梨々花のいる部屋に,みぞれがあらわれるシーンは,教室という空間を彼女の内側と考えると,確かにみぞれの世界が広がっていることがわかる重要なシーンだ.
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#### 理科室
-一方で理科室は,みぞれの未来を表現する部屋だと考えることができるのはないだろうか.白紙の進路調査票を持って演奏に躓いた彼女はあそこに必ず行くことなどが理由だ.
+一方で理科室は,みぞれの未来を表現する部屋だと考えることができるのはないだろうか.白紙の進路調査票を持って演奏に躓いた彼女はあそこに必ず行く.
そこにあらわれるのは新山先生だ.彼女はみぞれに音大のパンフレットを渡し,彼女に道を示す.彼女の才能が見出されていることが,このあたりからわかってくる.先生もまた,彼女のテリトリーに侵入する.
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梨々花も,希美のテリトリーではなく,廊下で希美と会話をしている.これは彼女の領域に踏み込んでいる会話ではないが,後のみぞれと梨々花のコミュニケーションを考えると,ここも対比的に取ることができるだろう.
-#### 梨々花の意図を組めない希美
-
-少し話はずれるが,梨々花が希美に対して声をかける際,希美は一度目の声がけでは察してあげることができていない.察することが現実的に可能かどうかはともかく,このあたりは彼女の性格が忠実に描かれているように思える.
-
#### 「言ってないよ.なんで?」
話は少し先に進むが,彼女が自分のテリトリーにだれも踏み込んでいないと気づいていることがわかるシーンが二つある.
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#### 「だって,」
-ここで一度イントロの話に戻ると,省略されたセリフの意味を私達は推測できる.みぞれの「希美は,この曲好き?」に対する「めっちゃ好き,だって」というセリフである.結局このあとに希美がその理由を言わないのだけど,ここはおそらく「オーボエの音が聞けて,私も一緒に吹けるから」だろう.「練習が好き」と言ったのも,「みぞれのオーボエが聞ける」からで,「本番,めっちゃ楽しみ」なのも,「みぞれと本番合わせて演奏がしたいから」だ,と考えることが妥当であろう.
+ここで一度イントロの話に戻ると,省略されたセリフの意味を私達は推測できる.みぞれの「希美は,この曲好き?」に対する「めっちゃ好き,だって」というセリフである.結局このあとに希美がその理由を言わないのだけど,ここはおそらく「オーボエの音が聞けるから」だろう.「練習が好き」と言ったのも,「みぞれのオーボエが聞ける」からで,「本番,めっちゃ楽しみ」なのも,「みぞれの本番での音が聞きたいから」だ,と考えることが妥当であろう.
多少こじつけてきではあるが,これらの答えの理由の多くを「みぞれのオーボエ」が占めていたことは想像に固くない.彼女はみぞれの音が好きだったわけだし,そうしてその音を出せるみぞれに並ぶぐらい,自分のフルートの音が素敵であることを願っていたわけである.
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ここが何より一番つらいのは,みぞれは希美に何も与えることができていないという事実である.
-「なぜみぞれの感情が恋愛だと判断できるのか」という問いかけには,「みぞれは希美に何か与えることができるなど考えてもいなかった」ということからわかると思う.みぞれの口から飛び出す「いつも勝手」という言葉からも,与えあう関係になることを考えられてはいない.彼女の感情が友情のそれにもっと近かったら,みぞれは希美が求めるものをわかってあげることができたのかもしれないと考えることもできる.
-
-### 結局希美は何を考えていたのか
-
-これに関してはかなり妄想を多く占めるので私の考えは省略させてもらう.皆様には自分で探し出してほしい((何様……)).
+「なぜみぞれの感情が恋愛だと判断できるのか」という問いかけには,「みぞれは希美に何か与えることができるなど考えてもいなかった」ということからわかると思う.みぞれの口から飛び出す「いつも勝手」という言葉からも,与えあう関係になることを考えられてはいない.彼女の感情が友情のそれにもっと近かったら,みぞれは希美が求めるものをわかってあげることができたのだろうかと思うと,あまりにも悲しくなってしまう.
### 作品中盤までのみぞれと希美の関係
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### 踏み込めない希美・みぞれ
-そうしてこの二人を見てから希美・みぞれの関係を見ると,あまりにも足りなかったものがわかってしまって厳しい.彼女たちは互いの領域に踏み込むことをしなかった.もっと言えば,そういったことを考えすらしなかった.なかよし川が気づいた信頼関係と,希美とみぞれが築けなかったものの差異が,ところどころ現れてくる.
+そうしてこの二人を見てから希美・みぞれの関係を見ると,あまりにも足りなかったものがわかってしまって厳しい.彼女たちは互いの領域に踏み込むことをしなかった.もっと言えば,そういったことを考えすらしなかった.なかよし川が気づいた信頼関係と,希美とみぞれが気づけなかったもの.
## 音楽の残酷さ
希美とみぞれが,互いがリズと青い鳥だと気づいたあとの演奏の場面.これが,本当に残酷だ.
-オーボエのソロが始まると,奏者の多くが息を飲む.あまりにも力強く感情の乗ったそのメロディに,誰しもが圧倒されていく.そこで,もっとも強く圧倒されているのは希美だ.彼女は,あまりにも大きな才能の差を味わされるわけだ.他でもない希美,彼女のための演奏で.
+オーボエのソロが始まると,奏者の多くが息を飲む.あまりにも力強く感情の乗ったそのメロディに,誰しもが圧倒されていく.そこで,もっとも強く圧倒されているのは希美だ.彼女は,あまりにも大きな才能の差を味わされるわけだ.彼女ための演奏で.
その前に嫉妬をしていたと考えると,その衝撃は恐ろしいものがある.なぜ選ばれないのか,といった疑問の答えが,ここで明かされるわけなのだから.
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ここの場面が本当に残酷なのは,「希美がなんの価値も見いだせていない自分という人間のために,みぞれは音楽を続け,自分のはるか上を行く」ということを思い知らされるからである.みぞれの「希美にとって何でもなくても,私にとっては特別」という言葉も響くことはない.みぞれはずっと伝えてこなかったから.
-響け!ユーフォニアムシリーズはずっと丁寧に才能・技能というテーマに向き合っていたけれど,それが本当にわからされる場面であった.みぞれの持つ才能が希美にとってなんでもないことによって見つかり,しかも彼女はそれによって将来の道や支えてくれる人を得ていく.そうして自身がどうにかしてほしかった才能ですら,みぞれは「どうだっていい」と宣うのだ((極めて個人的な感情の話をすると,ここは本当に見ていて辛かった.三回目であっても,みぞれが「のぞみ,聞いて」と言うたびに直視できなくなってしまう.)).また,希美の感情がうまくつかめると,ここの悲しさが増す.
+響け!ユーフォニアムシリーズはずっと丁寧に才能・技能というテーマに向き合っていたけれど,それが本当にわからされる場面であった.みぞれの持つ才能が希美にとってなんでもないことによって見つかり,しかも彼女はそれによって将来の道や支えてくれる人を得ていく.そうして自身がどうにかしてほしかった才能ですら,みぞれは「どうだっていい」と宣うのだ((極めて個人的な感情の話をすると,ここは本当に見ていて辛かった.三回目であっても,みぞれが「のぞみ,聞いて」と言うたびに直視できなくなってしまう.)).
そうして極めつけが,あの抱擁のシーンである((話は少しずれるが,ここでみぞれが上げていくものとイントロ部分がリンクしているのでその辺りを意識してみると良い)).もう望んでいるものは与えられないはずなのに,希美はみぞれの背中に手を回す.ここも期待が現れていると思っていいだろう.「希美のフルート」が「大好き」と言ってもらえるかもしれないと.しかし,期待は裏切られた.
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<blockquote class="twitter-tweet" data-lang="ja"><p lang="ja" dir="ltr">○○○○シーンの希美の○○○○○は○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○という意味です.<br>東山奈央<br>川崎舞台挨拶にて <a href="https://t.co/6ZC3zaqyww">https://t.co/6ZC3zaqyww</a></p>&mdash; 響け!ユーフォニアム名言bot (@Euphonium_JP) <a href="https://twitter.com/Euphonium_JP/status/987922698645913600?ref_src=twsrc%5Etfw">2018年4月22日</a></blockquote>
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-上の流れをふまえてみると,納得すると思う.流れがわかっていなければ,あまりにも自分勝手な希美の発言に怒りが湧くところだが,上のような流れを踏まえると,当然の流れになる.
+上の流れをふまえてみると,納得すると思う.流れがわかっていなければ,あまりにも自分勝手な希美の発言に怒りが湧くところだが,上のような流れを踏まえると,まあ当然なのだろうかという気持ちにもなる.厳しい…….
そうして理科室から希美は出ていく.**みぞれのテリトリーのメタファーである教室から出ていく姿が描かれるのは彼女だけ**なのだ.これはみぞれの内側にいることはできなかったという意味なのだと捉えることができるだろう.彼女たちの決定的なすれ違いは希美の回想で幕を閉じるのだ.
-初めて求めようとした希美と,初めて与えようとしたみぞれ.しかしそのやり取りは見事なまでに失敗に終わるわけで,ここが互いのコミュニケーションの薄さが見せた限界だったのかと考えることができるだろう.一度のコミュニケーションでは,伝えきることはできなかったし,そもそも希美は,本当にほしいものを最後まで口に出すことはなかった.口に出したからといって与えられるわけではないのだから,当然といえば当然なのだが.
+初めて求めようとした希美と,初めて与えようとしたみぞれ.しかしそのやり取りは見事なまでに失敗に終わるわけで,ここが互いのコミュニケーションの薄さが見せた限界だったのかと考えることができるだろう.一度のコミュニケーションでは,伝えきることはできない…….
## 「ハッピーエンドじゃん?」

0. はじめに

この記事は,映画「リズと青い鳥」の感想についての記事です.

このブログを読む前に,自分が当てはまるものの注意書きを読んでいただけると助かります.

まだ『リズと青い鳥』を見ていない人へ

この記事にはネタバレがあります.まず『リズと青い鳥』を見てください.できればこの記事を読まずに.そうしてあのイントロの衝撃と,薄い膜の貼られたような世界観と,音楽とを味わってきてください.お願いします.

『リズと青い鳥』を一度見た人へ

このブログが少しでも皆様の『リズと青い鳥』への感情を大きくすることができたら嬉しいです.できれば二回目を見てから見てほしい.『リズと青い鳥』の二回目は,きっとあなたに今までよりずっとずっと大きな衝撃を与えます.その後で,このブログを読んでくれたら嬉しい.もちろんこのブログを読んでから見てくれても嬉しい.

[:contents]

1.『リズと青い鳥』感想

イントロの衝撃

ご覧になった方はわかるだろうが,リズと青い鳥はまずイントロの作りが圧倒的に丁寧である.「みぞれが学校につき,希美と合流し,そうして音楽室に入り,練習を初めてタイトルロゴが出る場所」までの五分間前後((正確な時間は計測していないのでわからない.毎回図ろうと思うのだけど見入っている……))をイントロとして見ると,その中で丁寧に丁寧にみぞれの感情描写が行われている.個人的に一番おもしろいのが音楽の作りだ.多分見ていた人は気づいたと思うけど,最初のシーンは希美がやってきた瞬間にメロディラインに楽器が加わる((まだサウンドトラックが来ていないのでどの楽器かがわからなくて悲しい)).また,希美の足音が観客に聴こえる少し前に,みぞれの足が動くなど,非常に細やかな動きによってみぞれの感情が表されている.

多分ここでノックアウトされた人は多いのではないだろうか.筆者もその一人で,始めてみたときはこのペースでみぞれの感情が見せ続けられたら作品が終わる頃には廃人になってると確信していた.少しペースが落ちたので一命をとりとめたが.

あの甘美な空間が素晴らしい,という話をずっと続けてもよいのだけど,ここで少しみぞれの感情だけではなく希美についても対比して見ていこうと思う.

希美とみぞれの違いを意識してみるとイントロは結構面白い((というかここぐらいしか苦しまずに希美の感情を考えることができる場所がない)).みぞれが希美の行動一つ一つに対して目線を向けるのに対して,希美はそうではなく,希美がパーソナルスペースを気軽に詰めるのに対して,みぞれは彼女からの侵入を心地良く思うわけであるなど,互いの関係がここで見えてくる.

言ってしまえば,ここはみぞれの恋愛的な感情と希美の友情を対比させる場面なのである.パート練習に入り,部屋が別れたあとも,多くの後輩と楽しげに談笑する希美と,一人で教室の奥に座るみぞれ,という対比がされているのだろうと考えられる.

「教室・理科室」と「廊下」,テリトリーへの侵入

さて,イントロの話をしたとおり,希美とみぞれの教室での違いがうまく表せられる.高校という箱庭的な環境が舞台になってくると,教室というのはその中でもコミュニティや内側を表していると考えることができるだろう.この教室,そして廊下という場所に注目して見ると,二人の対比がなされていることがわかると思う.

みぞれのテリトリーである「理科室」と「教室」

劇中でみぞれが一人でいることのある部屋は「理科室」と「教室」だ.教室で一人で練習する姿と,理科室で一人ふぐを眺めるシーンなどを思い返すことができるだろう.誰も寄せつけることのない彼女の内側が,あの空間にあらわれていくわけである.

教室

特に教室は,パート練習での希美の教室での様子を映し出すことによって,対比的にみぞれの孤独をより強く表現している.

しかし,そこに侵入者が現れる.新入生の剣崎梨々花だ.前半からコミュニケーションを取ろうとする彼女は,みぞれが一人でいる教室に入り込む.彼女の内側に入ってこようとする人間があらわれるのだ.梨々花は幾度となくみぞれのいる教室に足を運ぶ.オーディション前,オーディション後,プール後,練習.回数を重ねる毎にみぞれから梨々花への距離が近くなっていることを感じることができるはずだ.チャラメルの演奏中などは,梨々花の方が先に教室にいる.

チャラメルを練習している梨々花のいる部屋に,みぞれがあらわれるシーンは,教室という空間を彼女の内側と考えると,確かにみぞれの世界が広がっていることがわかる重要なシーンだ.

彼女の教室にあらわれる人物は他にもいる.部長の吉川優子だ.シリーズをかけてみぞれに気にかけていることがわかる彼女の姿が,ここでも描かれている((ところで優子とみぞれについての最高の短編が入っているので,リズと青い鳥原作2冊を読んだ人は短編集である「響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のホントの話」を是非読んでください.というか原作の2(一番暑い夏)での答えがあの短編にあるのだと気づいたら泣けてきた……)).

理科室

一方で理科室は,みぞれの未来を表現する部屋だと考えることができるのはないだろうか.白紙の進路調査票を持って演奏に躓いた彼女はあそこに必ず行くことなどが理由だ.

そこにあらわれるのは新山先生だ.彼女はみぞれに音大のパンフレットを渡し,彼女に道を示す.彼女の才能が見出されていることが,このあたりからわかってくる.先生もまた,彼女のテリトリーに侵入する.

教室の外で喋る高坂麗奈

一人その中で例外なのは,高坂麗奈だ.彼女は教室には入らない.教室の外の廊下に立っている.これが面白いなぁと思っていて,麗奈はみぞれの内部ではなくみぞれの演奏によって彼女を理解していることがわかるのだ.上手い演出である.そもそも,「そんな顔させたかったわけじゃないんです」と言えるのは麗奈しかいない.

新山先生と希美の会話の廊下

さて,次は希美の方を見ていこう.みぞれが音大を勧められたということを知った彼女は,自分も音大に進むと言う.この理由は最後に明かされるので言及しないが,ここでみぞれと対象的になるのが新山先生との話だ.

新山先生に希美が音大を受けることを報告するときに,新山先生は踏み込んでは来ない.この話の内容も重要なのだが,今回は喋っている場所に注目したい.廊下なのだ.教室ではない.彼女のテリトリーではない.ここがみぞれと対比的に描かれていると考えることができるだろう.そうしてこの場面から,少しずつ希美はみぞれとの差を自覚していくことになるわけなのだ.

梨々花も,希美のテリトリーではなく,廊下で希美と会話をしている.これは彼女の領域に踏み込んでいる会話ではないが,後のみぞれと梨々花のコミュニケーションを考えると,ここも対比的に取ることができるだろう.

梨々花の意図を組めない希美

少し話はずれるが,梨々花が希美に対して声をかける際,希美は一度目の声がけでは察してあげることができていない.察することが現実的に可能かどうかはともかく,このあたりは彼女の性格が忠実に描かれているように思える.

「言ってないよ.なんで?」

話は少し先に進むが,彼女が自分のテリトリーにだれも踏み込んでいないと気づいていることがわかるシーンが二つある.

1つめは,新山先生からレッスンをうけるみぞれが手を振るのを,無視するシーンだ.これはあからさまではないものの,希美が表層すら取り繕えなくなってしまった最初のシーンである.

2つめは,章タイトルにもした音大をやめることを中川夏紀・優子の二人に喋るシーンだ.優子に「音大を受けないことをみぞれに伝えたのか」と問われる希美は,「言ってないよ。なんで?」と答える.

この言葉の意味を考えてみよう.この時点で希美はみぞれとの才能の差をそこまで感じていないはずなのだ.「あとでソロの所,もう一度練習しよう」と声をかけることや,理科室での「わたし馬鹿だねー」の下りでも理解できる.ここで希美の心情として考えられるのは次のようなものだ.

みぞれは選ばれているのに,私は見つけてもらってない

つまり,希美はみぞれに対してある種の嫉妬をするわけである.なぜ私が声をかけられないのか.なぜみぞれにだけ新山先生は声をかけたのか.こう考えると,新山先生からレッスンを受けるみぞれを見たときの心情や,そのあとに無視をすることの理由がわかる.

唯一テリトリーに踏み込んでいた夏紀

ここで思い出してほしいのは,希美のテリトリーに踏み込んでいた人間が一人だけいたということだ((ここではフルートパートのことは除いている.あれは集団的な心理であって,あのパート練習空間が彼女の内側を表してたとは考えづらい.もちろん,彼女の内側は常に開けていたと考えることもできるが)).それが夏紀である.

夏紀は希美のテリトリーに招待されている人間である.二人で参考書をめくるシーンを思い出すことができるだろう.このシーンが残酷なのは,夏紀の才能ではみぞれと希美の才能の差に気づくことができなかったということがわかるからである.

夏紀は希美のテリトリーに入ることはできても,希美とみぞれの差,そして希美が望むものに気づくことができなかった.演奏の技術の差は,例えば麗奈や新山先生には見抜かれていたわけで,もし夏紀がそれをわかっていたとしたら,希美の求める言葉をかけることができたのかもしれないと考えると,才能というテーマが希美とみぞれとは別の形で現れているシーンだと思う.夏紀は結果的に,自身の能力が足りていなかったという理由で,憧れていた希美を救うことができなかったわけなので((これはもちろん非常に残酷な解釈ではあるけど)).

理科室に見る希美とみぞれの関係

理科室は,彼女の将来の内側だという話をした.この解釈を持って,窓越しのシーンを思い出すと,あのシーンの意味がわかると思う.みぞれが窓越しに希美の姿を見つめることと,そこがみぞれの未来のメタファーであることを考えると……((本当につらい)).

また,みぞれが希美に「ふぐの餌を一緒にあげたい」と理科室に招待することを考えると……((本当に辛い)).

廊下でしか喋らない二人

希美とみぞれの会話は,基本的に廊下がメインとなる.これも互いのテリトリーに踏み込んでいないことを表している.希美がみぞれの教室を訪れるのは最後の場面だけだ.

二人は何を求めて,どういう関係だったのか

次は希美とみぞれが互いに何を求めていたのかを考えていこうと思う.これは最後のシーンを理解する上で非常に重要なポイントになる.

みぞれが希美に求めていたもの

みぞれが希美に求めていたことは,冒頭で語られる通り,「ずっと自分の隣にいること」だ.みぞれにとって希美は世界のすべてである.これは比喩ではない.彼女は自分の手で手にしたものすら,すべて希美から与えられたと思っている.これが正しいかどうかは,ここで議論しても仕方がない.((説教するおっさんになりたいなら勝手にどうぞという感じである.話はそれるが,原作二巻であすか先輩が「みぞれちゃんは優子を保険にした」と解釈するシーンがあって,この解釈があすか先輩の限界を表していたのかと考えることもできる)).

みぞれの目線に注目してみていくと,みぞれは希美そのものを追い続けている.例えば理科室から練習教室に移動するときも,希美のことを目で探していたり,希美があらわれるときにあからさまに反応するなど.

ここで,一つ議論になることがあるとすれば,「みぞれの希美への感情は恋愛のそれなのか?」ということである.この辺は百合だ友情だなんだという面倒な話になりがちだが,恋愛のそれだということはあとから逆算的にわかる.

希美はみぞれの何を見ていたのか

一方で,希美はみぞれ自身にそこまでの感情は抱いていない.正確にいうと,みぞれの抱えるような恋愛感情は抱いていない.しかし,希美が必ず反応するものがある.みぞれのオーボエの音だ.これは劇中を見てもらえればわかるのだけど,みぞれが別教室でオーボエを吹くたびに,希美は必ず気づく.

「だって,」

ここで一度イントロの話に戻ると,省略されたセリフの意味を私達は推測できる.みぞれの「希美は,この曲好き?」に対する「めっちゃ好き,だって」というセリフである.結局このあとに希美がその理由を言わないのだけど,ここはおそらく「オーボエの音が聞けて,私も一緒に吹けるから」だろう.「練習が好き」と言ったのも,「みぞれのオーボエが聞ける」からで,「本番,めっちゃ楽しみ」なのも,「みぞれと本番合わせて演奏がしたいから」だ,と考えることが妥当であろう.

多少こじつけてきではあるが,これらの答えの理由の多くを「みぞれのオーボエ」が占めていたことは想像に固くない.彼女はみぞれの音が好きだったわけだし,そうしてその音を出せるみぞれに並ぶぐらい,自分のフルートの音が素敵であることを願っていたわけである.

希美が求めていたもの

希美が劇中で本当に嬉しそうな顔をしているシーンはいくつかしかないんだけど,そのうちの一つが「ソロはやっぱり,希美先輩だよね!」なわけだ.こういったところから,彼女が求めていたものが何かわかる.が,彼女は最後の最後まで求めようとはしない.なぜ求めようとしないのか.これは彼女の自意識が理由であると考えていいだろう.

希美の自意識について

希美の自意識が高いということは,少し原作を読まないとわからないかもしれない.彼女の自意識は高い

希美は自分から求めることはしない.それは彼女の自意識の高さが理由であると考えていいだろう.また,希美は「自分がどれだけみぞれにとって特別か」ということをほとんど理解していない.これは,彼女のプライドが「そこにいるだけで特別」といったことに納得できないからだろう.

みぞれは何も与えていない

ここが何より一番つらいのは,みぞれは希美に何も与えることができていないという事実である.

「なぜみぞれの感情が恋愛だと判断できるのか」という問いかけには,「みぞれは希美に何か与えることができるなど考えてもいなかった」ということからわかると思う.みぞれの口から飛び出す「いつも勝手」という言葉からも,与えあう関係になることを考えられてはいない.彼女の感情が友情のそれにもっと近かったら,みぞれは希美が求めるものをわかってあげることができたのかもしれないと考えることもできる.

結局希美は何を考えていたのか

これに関してはかなり妄想を多く占めるので私の考えは省略させてもらう.皆様には自分で探し出してほしい((何様……)).

作品中盤までのみぞれと希美の関係

図にまとめてみるとこうなる((図にまとめながらつらすぎて吐きそうだった)).

[f🆔sh4869:20180427181533p:plain]

夏紀・優子と希美・みぞれの対比

希美とみぞれの関係を考えるときに,外せないのが夏紀・優子の関係だ((ここから先は二人の組み合わせをなかよし川と呼びます.カップリングのオタクなので……)).この二人の関係と希美・みぞれの関係の対比は,とても重要な要素になる.

コミュニケーションの積み重ねが信頼を作るなかよし川

正直響け!ユーフォニアムシリーズの中で一番理想的な関係を作っているのはこの二人だ.雑な言葉を使ってしまって申し訳ないが,この二人はあまりにも強すぎる.ベースに互いへの期待がない状態で,互いのコミュニケーションを元に信頼関係が気づかれていく.ここで重要なのが,この互いへの信頼がコミュニケーションによって気づかれているところである.強い.強すぎる.要は互いのテリトリーにズカズカと踏み込むことを繰り返すことで,互いを理解することができるわけである.強すぎない?

踏み込めない希美・みぞれ

そうしてこの二人を見てから希美・みぞれの関係を見ると,あまりにも足りなかったものがわかってしまって厳しい.彼女たちは互いの領域に踏み込むことをしなかった.もっと言えば,そういったことを考えすらしなかった.なかよし川が気づいた信頼関係と,希美とみぞれが築けなかったものの差異が,ところどころ現れてくる.

音楽の残酷さ

希美とみぞれが,互いがリズと青い鳥だと気づいたあとの演奏の場面.これが,本当に残酷だ.

オーボエのソロが始まると,奏者の多くが息を飲む.あまりにも力強く感情の乗ったそのメロディに,誰しもが圧倒されていく.そこで,もっとも強く圧倒されているのは希美だ.彼女は,あまりにも大きな才能の差を味わされるわけだ.他でもない希美,彼女のための演奏で.

その前に嫉妬をしていたと考えると,その衝撃は恐ろしいものがある.なぜ選ばれないのか,といった疑問の答えが,ここで明かされるわけなのだから.

そして演奏は続く

合奏という仕組みの本当につらいところだなと思うのは,曲が終わるまでは,演奏は終わらないということだ.フルートを膝におき,涙を流す希美を置いて,演奏は続く.これは,なによりも本当に残酷だった.あまり残酷といった強い力を持つ言葉を使いたくはないのだが,これ以外にわたしはあの場面を表す言葉を知らない.

ラストシーン(理科室でのハグ)

あのシーンは,二人の決定的なすれ違いとして描かれていることは多くの人が気づいていると思う.精一杯の告白をするみぞれと,そうしてそれに「みぞれのオーボエが好き」とだけ答え理科室を出ていく希美.

しかし,希美が追っていたものとみぞれが追っていたものとがわかると,あの場面は非常に希美にとって厳しい場面だと考えることができる.

前でテリトリーの話をしたが,希美がみぞれのテリトリーのメタファーである理科室に入り込むのがラストシーンが初めてだ.みぞれが希美を誘っても,希美は足を踏み入れることはなかった((もっとも,あれは音大のパンフレットを見つける流れがあるからだが.)).その彼女が初めてみぞれのテリトリーに足を踏み入れる.この理由はいろいろ考えられるが,私は「何もかもを見せつけられた希美が最後にみぞれにすがった」のだと思っている.

自覚的か無自覚なのかはわからないが,希美がみぞれのテリトリーに入り込んだのはみぞれに求めるためだ((ここを確信している理由は公式から提供されているツイートが理由.この下で紹介します.)).ここで初めて,希美はみぞれに((もっといえば誰かに))求めることをする.

そうして希美の元にみぞれがやってくる.そうして「泣いてるの?」と聞く.ここが非常に重要で,みぞれは希美が演奏中に泣いていることに気づいていないのである.ここでも希美とみぞれのコミュニケーションは出来ていない.

その言葉を聞いた希美は,ずっと抱えていた嫉妬という感情を爆発させる.言葉の選び方や「初めから上手かったもん」といったセリフで彼女の感情が一体いつから積もっていたのかがわかる.みぞれからの問いかけも無視してまくしたて続ける.これは希美がみぞれに見せる始めての感情的な行動だ.求めることをしてこなかった希美には,声をかけてもらう方法などわからない.ただ小さい子どものように駄々をこねる.

次にキーになるのが,みぞれからの「希美,聞いて」の言葉のときの希美の表情だ.この言葉を聞いたとき,彼女は普段の笑顔ではなく,皮肉を言うときの笑顔でもなく,期待するような表情になる((何故これが期待するような表情だとわかるかというと,みぞれの期待するような表情と同じ雰囲気で描かれているため.丁寧な作品はこういうところが本当にいい.ありがとう京都アニメーション……)).ここで彼女が何を期待したのかについて考えると,みぞれに「あなたのフルートの音は素敵だ」と褒められること以外ではないだろう.しかしみぞれがかけた言葉は違った.希美に恋をしていたみぞれは,希美が望む言葉について考えることはできない.あくまで希美から与えられたものを伝えることしかできないのだ.そうして期待した自分と与えられなかったことに落胆する「私」は「みぞれが思ってるような人間じゃない」と下卑する.

ここの場面が本当に残酷なのは,「希美がなんの価値も見いだせていない自分という人間のために,みぞれは音楽を続け,自分のはるか上を行く」ということを思い知らされるからである.みぞれの「希美にとって何でもなくても,私にとっては特別」という言葉も響くことはない.みぞれはずっと伝えてこなかったから.

響け!ユーフォニアムシリーズはずっと丁寧に才能・技能というテーマに向き合っていたけれど,それが本当にわからされる場面であった.みぞれの持つ才能が希美にとってなんでもないことによって見つかり,しかも彼女はそれによって将来の道や支えてくれる人を得ていく.そうして自身がどうにかしてほしかった才能ですら,みぞれは「どうだっていい」と宣うのだ((極めて個人的な感情の話をすると,ここは本当に見ていて辛かった.三回目であっても,みぞれが「のぞみ,聞いて」と言うたびに直視できなくなってしまう.)).また,希美の感情がうまくつかめると,ここの悲しさが増す.

そうして極めつけが,あの抱擁のシーンである((話は少しずれるが,ここでみぞれが上げていくものとイントロ部分がリンクしているのでその辺りを意識してみると良い)).もう望んでいるものは与えられないはずなのに,希美はみぞれの背中に手を回す.ここも期待が現れていると思っていいだろう.「希美のフルート」が「大好き」と言ってもらえるかもしれないと.しかし,期待は裏切られた.

多くのみぞれの「好き」に対し,希美が返すのは「オーボエが好き」という言葉である.ここは,友人として接してきたみぞれに何もかも奪われた((とここでは表現する))希美が,それでも嫌いになれなかったもの,と見ることもできるし,希美が本当に好きと言えるもの,と考えることも出来る.ただ確かなのは,ここでみぞれの恋は叶わなかったということ,そして希美も望む言葉をかけてもらうことはできなかった.

そして希美の「ありがとう」という言葉が笑い声とともにあらわれる.ありがとうの意味は声優の東山奈央さんが試写会で発言していたものがある.

○○○○シーンの希美の○○○○○は○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○という意味です.
東山奈央
川崎舞台挨拶にて https://t.co/6ZC3zaqyww

— 響け!ユーフォニアム名言bot (@Euphonium_JP) 2018年4月22日
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上の流れをふまえてみると,納得すると思う.流れがわかっていなければ,あまりにも自分勝手な希美の発言に怒りが湧くところだが,上のような流れを踏まえると,当然の流れになる.

そうして理科室から希美は出ていく.みぞれのテリトリーのメタファーである教室から出ていく姿が描かれるのは彼女だけなのだ.これはみぞれの内側にいることはできなかったという意味なのだと捉えることができるだろう.彼女たちの決定的なすれ違いは希美の回想で幕を閉じるのだ.

初めて求めようとした希美と,初めて与えようとしたみぞれ.しかしそのやり取りは見事なまでに失敗に終わるわけで,ここが互いのコミュニケーションの薄さが見せた限界だったのかと考えることができるだろう.一度のコミュニケーションでは,伝えきることはできなかったし,そもそも希美は,本当にほしいものを最後まで口に出すことはなかった.口に出したからといって与えられるわけではないのだから,当然といえば当然なのだが.

「ハッピーエンドじゃん?」

こう考えていくと,本当に救いのない話みたいになってしまうが,希望が全く無いわけではない.

一つは希美の「ハッピーエンドじゃん?」というセリフ.リズが――つまり希美が,青い鳥――つまりみぞれの帰ってこれるような場所を作ることができるのであれば,みぞれは希美の元へ返ってこれるわけである.

そうしてもう一つは,終盤に流れた二羽の青い鳥.彼女たちの未来を写していることを信じてやまない.

まとめ

リズと青い鳥は,とても丁寧に心情を描きながら,才能や感情,コミュニケーションといったテーマに取り組んだ作品だったと思う.高校三年生という最後の青春を吹奏楽にすべてぶつけて,そうして選ばれるものと選ばれないものの差や,伝わらない言葉といったテーマをよく描いている.作品の細部や場所といったところを見ても,すべてが丁寧に作られていて,本当に素晴らしい作品だと思った.こういう作品が見られる時代になったのだなという感動と,切り裂くように画面から伝わる感情の数々を大切にして生きていきたい.


正直パンフレットを読めばわかるような話をつらつらと書いてしまった気持ちはあるのだけど,あまりにも心の内側を占めすぎて精神的に辛かったのでこうして文章にさせてもらった.楽しんでいただけたら幸いである.

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