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Created December 10, 2017 02:18
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2030年展望と改革タスクフォース(第1回)

(開催要領)

  • 1.日時:平成28ĺš´10月3日(月) 14:00~16:00
  • 2.場所:合同庁舎4号館11階第1特別会議室
  • 3.出席委員等
    • 共同座長 伊藤 元重 学習院大学国際社会科学部教授
    • 共同座長 高橋 進 日本総合研究所理事長
    • 新井 紀子 国立情報学研究所社会共有知研究センター長・教授
    • 河合 江理子 京都大学大学院総合生存学館(思修館)教授
    • 駒村 庡嚳 慶應義塾大学経済学部教授
    • 齊藤 元章 株式会社PEZY Computing 代表取締役社長
    • 柴田 明夫 株式会社資源・食糧問題研究所代表
    • 森川 博之 東京大学先端科学技術研究センター教授
    • 越智 隆雄 内閣府副大臣(経済財政政策)

(議事次第)

  • (1)開会
  • (2)タスクフォースの運営等について
  • (3)タスクフォースの検討課題について
  • (4)第四次産業革命・Society5.0を展望した諸課題について

【配付資料】

  • 資料1-1 2030年展望と改革タスクフォースの開催について
  • 資料1-2 2030年展望と改革タスクフォース委員名簿
  • 資料2 2030年展望と改革タスクフォース運営要領(案)
  • 資料3 今後のスケジュール(案)
  • 資料4 事務局資料
  • 資料5 齊藤元章委員提出資料
  • 資料6 森川博之東京大学先端科学技術研究センター教授提出資料
  • 参考資料1 2030年の経済構造を展望した改革について 嚳成28年9月30日、第15回経済財政諮問会議、有識者議員提出資料)
  • 参考資料2 新内閣の発足に当たっての重点課題(抜粋) 嚳成28年8月8日、第14回経済財政諮問会議、有識者議員提出資料)
  • 参考資料3 安倍内閣総理大臣発言(抜粋) 嚳成28年8月8日、第14回経済財政諮問会議)

(概要)

○事務局 ただいまより第1回「2030年展望と改革タスクフォース」を開催させていただく。 越智副大臣から御挨拶をお願いする。

○越智副大臣 内閣府副大臣の越智隆雄です。石原伸晃大臣のもとで経済財政政策を担当している。よろしくお願い申し上げる。 委員の皆様においては、「2030年展望と改革タスクフォース」への御参加を御快諾いただき、厚く御礼を申し上げる。 現下の日本の経済社会を見ると、人口が減少に転じるなど社会構造に大きな変化が生じている。その一方で、IoTやAIといった先端技術の社会実装が進み、労働力の減少を補うことが期待されるなど、経済面での構造変化も進行しつつある。このような構造変化が起きている中、そして、財政的にも大変厳しい状況にある中で、将来にわたって活力ある経済社会を構築し、維持していくためには今、何に優先して取り組むべきか。団塊の世代が80歳を超えるなど大きな節目となる2030年の姿を展望し、そこからバックキャストとして今後取り組むべき政策課題の全体像とその対応方針を描くことが重要であると考えている。 安倍総理からも、経済財政諮問会議において、2020年、さらにその先を見据えながら日本の未来を切り拓いていく、このため、未来のあるべき経済構造を展望しつつ、今必要な改革に取り組むことが重要であるとの発言があった。委員の皆様の英知を結集していただき、2030年の未来を切り拓いていく御提言をいただければと思っている。 よろしくお願い申し上げる。

○事務局 本タスクフォースの委員を御紹介させていただく。 共同座長、伊藤元重学習院大学国際社会科学部教授 共同座長、高橋進日本総合研究所理事長 新井紀子国立情報学研究所社会共有知研究センター長・教授 河合江理子京都大学大学院総合生存学館教授 駒村康平慶應義塾大学経済学部教授 齊藤元章株式会社PEZY Computing代表取締役社長 柴田明夫株式会社資源・食糧問題研究所代表 本日は御欠席であるが、牧野光朗飯田市長と、柳川範之東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授にも委員として御参画をいただいている。

以上が構成員の皆様である。

会議の運営要領や今後のスケジュールについて、事務局から説明させる。

○事務局 資料1-1でタスクフォースの開催の趣旨、構成、庶務等について記載している。

資料1-2がタスクフォースの委員名簿である。

資料2がタスクフォースの運営要領(案)で、1に記載のとおり、タスクフォースの配付資料及び議事概要は原則として公表。ただし、座長が特に必要と認めるときには、全部または一部を公表しないものとすることができる。

資料3では、最初に第5回までの日程を置かせていただいている。第1回に、自由討議と各論として第四次産業革命・Society5.0から始まり、第2回以降、各論を議論させていただく。各回の検討項目は本日の先生方の御議論を踏まえ、再検討する必要があるが、仮置きとして置かせていただいている。

また、若年層から2030年の経済社会について意見を聴取する機会を設ける予定。11月下旬頃若い方々を招いて、意見交換するような機会を考えている。

○事務局 次の議題に移る。

タスクフォースの検討課題について、共同座長の高橋座長と伊藤座長から御発言をいただく。その後、事務局より各分野における現状と課題や将来予測について御説明させていただく。続いて、委員の皆様から2030年の展望と、今、取り組むべき課題等について、御自由に御意見をいただく。

それでは、高橋座長からお願いする。

○高橋座長 本タスクフォースを始めるに当たり、諮問会議議員としての問題意識を申し上げる。

まず、本タスクフォースのミッションとして、タスクフォースの趣旨紙にもあるとおり、2020年頃までに600兆円経済や財政健全化目標を実現するメルクマールがあるが、改革の実行に当たり、その先の2030年頃までを展望して、あるべき姿を描いた上で、それをバックキャストとして政府一体となって足元から取り組んでいくことが重要だと考える。ここで得られた知見を踏まえ、改革の全体像と対応方針として、政府の政策に反映できるよう、12月にも諮問会議に報告をさせていただく。

参考資料1をごらんいただきたい。表題に「2030年の経済構造を展望した改革について」とあるが、これは9月30日の経済財政諮問会議に民間議員として提出したものである。

2ページ目の左下のボックスの中であるが、この中の矢印は議論の際の視点を提案している。特に重要と考えられるのは一つ目の矢印である。今後生産年齢人口の減少が加速する中で、潜在成長率を引き上げていくためには、フローを生み出す源であるストックが重要であるという視点である。ここで言うストックとは、企業の設備やインフラだけではなく、人的資本、研究開発投資などの知的資本、経営資源、社会の信頼関係などを意味するソーシャルキャピタル、あるいは歴史、伝統、地域資源なども含まれていると考える。

日本は、フローは細っているが、一方で豊富なストックを有している。大企業の余剰人員や、空き家や耕作放棄地、未利用特許など、その活用が上手くいっていないという例は多い。これらのストックをいかに見出して、流動化ということも含めて互いに組み合わせ、リノベーション、価値向上をさせていくか。こういったストックの三段活用を進めたいと考えている。ぜひこのような観点からの御知見もお伺いしたい。

資料の3ページ目の上段。もう一つ重要なのが、アベノミクスの第2の矢である財政政策、予算や税制と、第3の矢である構造改革、構造政策を上手く組み合わせることで課題解決を強力に推し進めることができるのではないかという点である。こうした取り組みを進めるべき優先分野、その際の具体的政策について御議論いただきたい。

2030年を展望して、世界に先駆けてそれに合った仕組みに変えていけるよう準備をしていきたい。第四次産業革命に備える上での必要な制度改革、将来を見据えた税制や予算のあり方。この中には温暖化対応、地方の人口減、空き家増加等の中での税制、建設国債のあり方など、さまざまな論点がある。さらに、国と地方のあり方、この中には広域化ということも観点としてある。また、社会保障制度のあり方、この中には一般で言う社会保障制度だけでなく、これから議論すべきものとして、兼業、副業、あるいは高齢者の地方移住、こういったものをどう支えていくかという論点もある。こうした様々な点について課題を抽出するとともに、いろいろなアイデアをいただきたい。

非常に短期間で多くのテーマをこなしていく必要がある。タスクフォース会合以外にも委員の皆さんの御議論も踏まえて、事務局が有識者等にヒアリングを行い、その結果を報告していただくことも必要である。よろしくお願い申し上げる。

○伊藤座長 諮問会議との関係では高橋議員の先ほどのご発言に加えるものはなく、個人的な感想からまず述べたい。2年ぐらい前だが、世界銀行に頼まれて中国の会議に出席した。中国政府、世界銀行の共同開催で2030年、あるいは2035年の中国のあるべき姿について、外の我々のような人間に入ってもらって議論してほしいと。

この2030年あるいは2035年というのが実はポイントである。例えば中国のような国は足元で見るといろいろな難しい問題や複雑な問題が絡み合っているが、あえて2030年や2035年という時期を設定することによって、正しいかどうかは議論の余地があるが、3つテーマが出てきた。一つは人民元を完全に自由化する。人民元を自由化するということは金融の完全自由化である。2つ目は、中国の社会問題の原因と言われている戸籍制度、特に都市戸籍と田舎戸籍を完全に撤廃する。3つ目は、まさに中国を苦しめる環境問題について抜本的な環境目標を立てる。中国でこれから達成できるかどうかいろいろな議論がある。しかし、2030年あるいは2035年の目標として出されたことによって、ある意味で非常に頭が整理されて、先ほどバックキャストという言葉が出てきたが、それをベースに、今何をやるべきなのか、優先順位の一つの見方が出てくると考える。

日本も確かに非常に複雑な問題をいろいろ抱えていて、足元の問題から考えていくとソリューションがなくなってくるような複雑さだが、あえて2030年という視点で、大きなトレンド、要するにチャレンジとオポチュニティーをしっかり見極めたい。もちろん2030年のビジョンということも大事だが、同時に足元でどういうところに力点を置いていくべきかご知見をいただきたいと思っている。

○事務局 事務局から資料4の説明をさせていただく。

○事務局 資料4の各ページを簡単に御紹介する。

2ページ、「1.経済成長」。左側に潜在成長率の推移があり、低下してきている。右側に各要素の寄与。TFP、労働投入、資本投入の寄与がだんだん弱くなっている。

3ページ、左側が2030年ぐらいにかけての民間機関の長期予測だが、縦軸を見ると、約1%弱の成長が予測されている。右側が生産年齢人口の伸び率である。2030年から2040年にかけてマイナスの寄与がどんどん大きくなっていく。

経済成長の促進要因と抑制要因というものをイメージ図的に置いたのが4ページ。右側の成長抑制要因として、人口構造、イノベーション低迷、人的資本・知的資本の伸び悩みなどを並べている。これらを矢印で左側に持っていくと、例えばオープンイノベーションやベンチャー創出、人的資本・知的資本の活用などの形で成長促進要因に持っていくことができる。この矢印を構造改革で後押ししていくと考える。

それぞれ現状と課題、将来予測や政府の目標を次のページ以降にまとめている。

5ページ、「3-1」では、第四次産業革命やSociety5.0に関する市場の予測を記載している。

「3-2」では、共同研究の金額が小さいという話。

7ページでは、スパコンで中国の伸長が著しいことや、日本は世界のイノベーションランキングで若干後退が見られ、今、日本は8位にランキングされているということである。

8ページ、中小企業、ベンチャーということで、ベンチャーキャピタルの比率が低いことや、ベンチャーを志す人の数、人材の厚みが乏しいといった話。その背景にある家計の金融資産が変わらず安全志向であるというグラフを記載している。

10ページ「3-4」、人的資本等の充実ということで、一人当たり人的資本やスキルの状況については日本の評価は高いが、スキルの使用頻度については仕事であまり活用されていないという問題提起である。

11ページには、24歳から44歳の就職氷河期世代の前後の方々で日本は長期失業が多いという論点を掲げている。左下のグラフは、長期失業だけではなくて無業者、働いてもおらず通学、家事もしていない方々も含めて、失業者、不本意非正規の方がそれなりの人数いるということ。こういったところに焦点を当ててはどうかと考えている。

12ページ、人的資本、人材投資が企業の中で細っているという話と、労働費用の公的支出が弱いという話を掲載している。

13ページ、教育。留学生が少ないことと、大学の講座がなかなか効果的に実施されていないことについての話。

14ページ「3-5」、少子化関係と人口構造。少子化に関する家族関係支出が相対的に低い。

16ページ目は日本の総人口の推移、将来予測を記載している。2030年にかけて人口が1,000万人減り、75歳以上人口が2,000万人を超える。平均年齢が4歳、中位年齢が6歳上がる。

17ページは、2年ほど前に「選択する未来」委員会を開催しており、そこで2030年に合計特殊出生率が人口置換水準の2.07まで回復すると、50年後に人口1億人が維持されるといった議論の紹介である。

18ページ「3-6」の健康長寿、QOL。公的医療に加えて私的な社会保障サービスの需要の見込みが大きい。19ページ目では、若年層を中心としたアンケート調査。中央の図の2つが示すように将来への希望が諸外国比で日本は低い。

20ページは、働き方の将来。22ページは、副業の話や、就業形態の多様化ということで、フリーランサーが増えているという話。

23ページ、AIやロボットによって人間の仕事がいろいろと代替される可能性がある。産構審の中間整理に基づき、代替される職業はどういったものが予想されるのかを示している。

24ページは、地域経済。特に25ページのバブルの図であるが、地方の中核都市、仙台市や福岡市等に人口が集中する一方で、それらの地方の中核都市から東京圏へ人口の流出が続いていることを示している。

26ページ「3-9」、インフラの老朽化。老朽化する社会資本が20年後には2倍、3倍に増えていく。それに対して、インフラのスマート化によって、例えば水道であれば10%、20%近くの維持管理費用の削減が見込まれる例を記載している。

27ページ、遊休資産。耕作放棄地や空き家の例を掲げている。

28ページ「3-10」、世界の人口が増加し、都市人口が拡大して、中間層が増える話。

29ページは、インフラ輸出やインバウンドの取り込みといった話。

30ページは、各国の日本からの財の輸入シェアを計算。これが低下しているという問題提起。

31ページは、日本の現在の低成長が続いた場合に、日本経済の世界経済に占めるシェアが低下していくといった話。

32ページ以降は、エネルギー、食糧、水といった資源制約について。35ページで、パリ協定にあるような温室効果ガスの排出量の削減目標について記載している。これらを前提にどう考えていくか。

36ページ、マクロバランス。部門ごとのISバランスを掲載。2030年にかけていろいろな変化が予想される中で、将来のマクロバランスがどうなるのかといった議論の材料とさせていただきたい。

○事務局 皆様から御意見をお願いする。

○齊藤委員 今回は特に2030年頃からバックキャストとして現在の状況を分析し、これからどういうことをやっていくのかということを話していくものであると考えている。

世の中的には特異点、シンギュラリティといった話もある。加えて、人工知能に関してはまだまだ過小評価されているのではないか。我々が今考えていることをはるかに上回ってくる甚大なインパクトを持つ、ということが明らかになりつつある。

諸外国との相対的な位置関係も大事である。特に隣国が正しい認識のもとに最短距離で集中的な投資を行い、取り組みを行っていることも踏まえていかなくてはいけない。

一方、日本の深刻で大きな問題を逆手にとって将来の日本の未来に生かしていく手法も幾つかある。そのような観点から、後ほど御説明をさせていただく。

○新井委員 事務局の資料により、2030年に日本が労働人口だけでなく、空き家比率の上昇などいろいろと非常に厳しい状況に直面することについて認識を新たにした。こういうときにバックキャスト型で政策を提言する話になると、この条件から何とか逆転するにはどうしたらいいかという話になり、つじつま合わせになる、というのが陥りがちな議論のひとつのパターンなので、その点十分留意する必要がある。一発逆転ホームランのような日本に都合の良い筋書きを書いて、上手くいった試しは先の大戦も含めて一度もない、今回はある意味、暗い2030年というのを冷徹かつクールに受けとめるべき。事務局の説明のように、例えば空き家率が増える、人口が減る、赤字に転落する自治体が増える、その都合の悪い事実を、自治体や、国民に危機感をもって共有していただく。ただし、日本には豊かなストックがある。特に人的資源は優れている。それを活用してソフトランディングするために知恵を出そうという呼びかけをしたい。ただし、修正を決断する時間はそれほど残されていないことも事実。そのことを、産業界、自治体、国民の皆さまに理解していただく。そのような提言ができるとすばらしい。

2030年というのは2020年のオリンピックを超えた先、つまり、さまざまな建設投資等が終わった後ということ。そこに新しい世界を出していくためには何が必要かということ。

オープンイノベーションに関して、一昨年、官邸で開かれたロボット革命実現会議の次世代AI・ロボット技術の取りまとめをさせていただいた。そのときのキーワードが、AI・ロボット・バリアフリーという言葉である。今、世間では盛んに汎用的AIやシンギュラリティが取りざたされているが、現状のビッグデータと機械学習、次世代スパコンということからは、理論上、汎用AIは生まれない。そこには、非常に大きな論理的なギャップがある。AIやロボットは、データと統計に依存している限り不可避的に不完全であり続ける。具体的には、自動運転車がいかなる場所においても安全かつ無人で走行しうる、ということの達成は極めて困難だろう。言い換えれば、自動車会社だけでは自動運転のモータリゼーション革命は起こせないのであって、不完全である自動運転車というロボットを安全かつ効率的に動かすための道路等のインフラ整備や法整備が不可欠になる。つまり、KYなAIやロボットが上手く動くためのバリアを取り除くということが必要。スマートシティもしかり。そこにこそ、人間の知恵を出すべき領域があるし、人口が減っている日本だからこそ出せるはずの知恵があるだろう。

産学連携というような古いタイプのオープンイノベーションではなく、今までは個別にプロダクトをつくっていた、例えば建設業界と自動車業界がオープンイノベーションすることによって新しいモータリゼーションを生み出すことや、そういったタイプのオープンイノベーションを、いかに規制緩和を的確に進めて、そこに企業の意識を変えていくかということだと考える。

実際に企業はそういった認識にはなっているが、きっかけがつかめないことや、規制があるということで異業種が入れない話がある。そこをいかにしていくかが重要と考える。

○河合委員 私の自己紹介をさせていただく。私は、日本の高校を卒業後、すぐにハーバード大学に入学し卒業。帰国後、女性で、しかも海外の大学を卒業したということで中途採用の枠での採用となってしまった。いい就職口が見つからず、フランスの大学院のINSEADでMBAを取得。その後、フランス、スイス、ポーランド、イギリスなどで、年金基金運用者として国際機関で働いたり、ロンドンのシティでファンドマネジャー、ポーランドでは民営化に関わったりした。今回、私がタスクフォースで何かできるかを考えたとき、世界の多様な組織で働いた経験を生かし人的資本等の充実、労働生産性の向上、個々の力の発揮というテーマで政策提案をしたい。現在様々な規制がある。私の例をとれば、2012年より京都大学で仕事をしているが、他の大学で教えるという兼業は可能だが、ビジネス関係の兼業は難しい場合がある。大学とビジネスは互いから学ぶものがあるので、人的交流も含めて、そういう壁を取っていかなければいけない。

資料にもあるように、学校の教育のレベルをPISAなどの指標を見る限りでは、日本は十分にいい成果をだしている。しかし、人間の能力を考えた場合、大学卒業以降の教育も非常に大切だと考える。社会は非常な勢いで変化しており、人工知能、ロボット、スパコンなどの話を理解できる成人のサイエンスリテラシーなどもしっかりつけていかなければ、正しい判断も出来ないし、新しい技術を上手く取り入れることはできないと考える。日本は残念ながら、成人のサイエンスリテラシー力では先進国の中では高くはない。さらなる成人教育、企業の人材への投資が必要と考えている。

人材育成や人的資源について、3回目になると思うが、その時にお話しさせていただく。

○駒村委員 専門は社会保障、経済学である。

人口と財政と経済という3つに切ってお話しする。人口の問題は非常に深刻である。1975年の人口問題研究所の推計では、出生率2.06の前提で組んでおり、今頃日本の人口は1億5,000万人ぐらいになっているはずあり、毎年200万人生まれていたわけであるが、この40年間の出生率の低下により、現在毎年100万人生まれている状態が、2040年から2050年には毎年50万人という極めて深刻な状態になってくる。

長寿、寿命の伸びは非常に楽観的だった。2,500万人程度と想定されていた65歳以上人口が実際には4,000万人に接近する。寿命の伸びは人口推計の改定のたびに上に伸ばしている。新しい人口推計が年明けには出ると思うが、どの程度年齢が伸びるのか。女性の場合、90歳という数も見えてきている。場合によっては95歳という数字も国際的には一部出ている。これだけ長い人生になるわけであるから、我々の人生の時間の使い方を本格的に考えなければいけない。

2025年(女性は2030年)には年金の支給開始年齢引上げは65歳でストップする。果たしてあと30年近く生きる人生のモデルが成立するかどうか。40年働いて、30年老後を迎える社会モデルが成立するのか。60歳代の人にいかに活躍してもらうかが大事。現在そこには活かされていない高齢者が膨大にいると考える。

年齢構成の変化は量的な問題だけでなく、質的な問題も影響をもたらすのではないかと考える。老年学の本によると、人間の認知能力は、いわゆる結晶性能力と流動性能力と言われている。抽象的で瞬間に判断する能力と言われている部分は、やはり若い人の方が強い。スポーツにしろ、数学的なものにしろ、理論的な研究にしろ、若い人が強い。一方では、社会経験の中でリーダーシップや、調整や、経験に裏打ちされた能力というのは年齢とともにある程度まで上がる。この2つを組み合わせて我々はパフォーマンスを維持しているわけだが、結晶性能力をある程度持っている人が増えて、一方、流動性能力を持っている人の数が減っていくという、人間の認知能力の日本全体のバランスが変わっていくことにどう対応するのか、技術がどう対応できるのかということも考えなければいけない。

ただし、75歳あるいは80歳から先は認知能力が低下して認知症と言われる状態になる確率が5歳置きに倍ぐらい上がっていく。研究班によっては認知症が800万人とか1,000万人という数も2030年、2040年になってくると出てくる。

この認知能力の社会全体の変化は、経済学的にいろいろな問題を引き起こすのではないかと考える。そうなると、社会保障の支出もかなりのものになる。さらに2025年以降、高齢化のピークはもう少し先にある。4,000万人、高齢化率40%になる、75歳以上でも30%に接近するというのは2050年ぐらいに来る。2030年はそういう意味ではすごく重要な時期で、2025年の山を登ったら、実はもう一個、もっと高い山が残っているという状態である。このときの社会のデザインを早急に出して、2030年、2035年以降の社会保障も含めたモデルを見せないと、若い世代は非常に縮小してしまうのではないか。これは表裏一体で財政の問題ということも当然出てくる。

経済成長については、国連の包括的富指数でも評価されているように、日本は定義を広げれば非常に豊かな国になっている。成熟化社会の中で成長というのを今後どうやって測っていくのかというのは、幸福度調査などいろいろあるが、そこは従来型の成長の測定方法がそもそもいいかどうか。これは学問的にも考えなければいけないが、議論したいところは、やはり技術が労働に与える影響をきちんと議論していきたい。あるいは子供たちの基礎教育について議論したい。子供の生活環境の差が、脳の構造にも非常に深刻な問題を与えてしまう。少なくなってくる子供たちの可能性をいかに広げるかということ。そして、彼らがこの先、技術をちゃんとコントロールできるかどうか。技術はすごく進んだけれども、それをコントロールする能力がないような人間にならないように、そういう部分も含めて基礎教育の部分も議論したい。

○柴田委員 私は商社で30年、1980年から資源問題を考えてきた。主に産業鉱物、エネルギー、食糧といった資源のマーケットを見てきた。70年代の2回のオイルショックの分析も行ってきた。最近では2003年から2013年、コモディティー・スーパーサイクルといわれ原油が150ドルに迫ったり、銅などもトン1万ドルに達したり、穀物価格も高騰したりした。足元は逆に大きく下がり、リーマンショック以降、過剰問題を抱えている。こういったマーケットの大きな変化を見て、改めて資源とは何なのか、我々が特に直面している問題とは何なのか、考えさせられる。

事務局資料の冒頭の経済成長について。潜在成長率がぐっと下がってきている。成長率、生産関数に今までは労働と資本とTFP、残差の部分が加えられているが、ここがやはり大きく変わってきている。アダム・スミスや、リカードの時代にはたしか生産関数の中身に労働と資本と土地が入っていた。土地には、まさにあらゆる資源の問題、土地の有限性から始まって、水の問題とか、資源の有限性という問題が入っていた。高い成長を続ける中で、実はこのTFPの部分、ここでは技術進歩、イノベーションがあるが、資源については抜け落ちていた。無尽蔵の資源が低コストで得られるという前提で成長がなされていたが、2000年代に入ってからのコモディティー・スーパーサイクルを経験すると、やはり資源は有限だとの思いが強まった。

使える資源は、その時点の価格と技術で利用可能なもの。問題は、それを開発、生産する限界コストが上昇傾向ということにある。したがって、最近の世界経済の長期停滞説などを見ても、この背景には資源の限界生産コストの上昇が企業の利益、収益を抑えているという側面があるのではないか。

もう一つ、成長促進要因と抑制要因のイメージ図のところで、成長抑制要因として資源の問題が掲げられている。資源の有限性、限界生産コストが上がってきているのがまず一つ問題であるし、資源に関しては、今後、成長抑制要因としては実はもう一つの問題がある。市場で取引される表の資源のマーケットの裏側には、廃棄物のマーケットがある。成長すればするほど、あるいは資源を開発すればするほど、裏側にはその数百倍のペースで廃棄物のマイナスの資源が蓄積していき、この負の資源問題がこれからの成長を抑えていく可能性が高い。

資源は無尽蔵にあるという前提で成長を行ってきた。ここの部分の資源の有効な利用や、あるいは廃棄物の処理の仕方とか、まだまだ何もやってきていなかった。例えば、資源を循環利用する、ここの部分で我が国の技術的な優位性は今後発揮できるのではないか。スーパーコンピュータ等と連動することによって、もっと有効に資源を生産し、活用する。あるいは活用することによって膨大な量が排出される廃棄物の問題も解決していくというところに今、活路を見出せるのではないか。

○事務局 自由に御意見いただきたい。

座長から、今の委員に対して御質問、御意見をお願いする。

○高橋座長 新井委員から、自動運転で新しいモータリゼーションの可能性という話があったが、一方で、温暖化ガスの問題や、人手不足のことを考慮すると、公共交通へのシフト、あるいは公共交通と私的交通の組み合わせ方、そういうところも多分、パラダイムシフトとして考えなくてはいけないと思うが、いかがか。

○新井委員 自動運転によるモータリゼーション革命は、あくまでの一つの例示でしかない。電気自動車のようなことも考えれば、いろいろなタイプの新しいモータリゼーションが、特に2030年を考えると射程圏内に入っている。新しいタイプの大量輸送系の公共交通を伸ばしていくというのは、インフラ整備と維持の関係から困難だろう。人口減少フェーズにおいては、今あるストックとしての公共交通の周辺をスマートシティ化して、そこに人口を集約させる。離れたところに関しては、個別でそこに住みたい方が自立して住むことができるようなタイプの非常に小さな自家発電等を考える。

耕作放棄地に関しては、農業の規制をさらに緩和し、ロボットが耕作しやすいように組み替えていくことは有効だろう。先ほども述べたようにロボットに現状の複雑な農作業を担わせていくのは困難であり、コストもかかる。むしろ、ロボットの側に農業を合わせるとか、農地全体であるとか、あるいはビニールハウス全体を工場だと考えて、生産性が上がるように農業のあり方の方、むしろ人の方が寄り添った方がコストはかからない。投資する期間も短く済む。農業関係のロボット、農業機械をつくっている会社が行う農業のようなことを考えると、問題解決の芽が出やすくなるかもしれない。

今あるストックと技術を活用して、いかにスマートに生産力を上げるかというのは、アイデアの出し方である。

○伊藤座長 今後の議論の中でお考えをお聞きしたいが、成長に関してお話させていただきたい。成長率2%でいけるのか、ゼロ%でいくのかで多分イメージが大きく変わる。例えば1,000兆円の債務があって、500兆円のGDPがあったときに、全く成長できないと1,000兆円を50年間、毎年10兆円ずつ減らしていかないと100%にならない。成長できれば分母のGDPが増えていく。

経済学者の中では、いま、大きな議論がある。「アメリカは1980年をもって黄金の100年が終わってしまった。つまり、TFPを大々的に引き上げるような技術革新がなく、TFPがずっと低迷した状態である。それまでの100年は電力、自動車などいろいろあったが、今はこれを解消しない限りはどんなに金融政策をやっても、財政政策をやってもだめ。しかし、どうも次の大きな技術革新が来ていて、これまで20年、30年、先進国を苦しめてきた停滞みたいなものが、またもう一つ次のステージに行くのではないか」というもの。

成長というのはやはり非常に重要な役割を持っていて、その中に技術とか、あるいはむしろこれまで20年、30年、非常にTFPが低かったことが結果的にいろいろな問題を表に出してきた面もある。多分、成長だけでは高齢化は何とかならないと思うが、それでも2%成長とゼロ%成長では随分違うだろう。資源や食糧の問題はどうなるのかという話も、ぜひまたお聞かせいただきたい。

○事務局 今の成長ということについての御自身の見方や、そういうことについても何か御意見があれば。

○齊藤委員 足元の成長を考えたときに、アメリカのベンチャーキャピタルや、ファンドの中には、既に投資対象を人工知能に限り、それ以外の投資は一切やめてしまったところが多々出てきている。今年前半の人工知能分野への投資額も去年から見て大変な額に上ってきている。アメリカでも機関投資家等は完全に人工知能の次の発展、そこから出てくる成長というところにかけている。

○駒村委員 TFPについてはどうしても残差という性格で、量の投入の成長モデルである。年金の財政とか社会保障の財政を議論する時にも、この量の投入だけ見ていると悲惨な絵が出てきて、どうしてもこのTFPに頑張ってもらわなければいけないことになる。年金の持続可能性もTFP依存と紙一重の状態になっている。

この部分がこんな状態になったら、社会保障制度は少なくとも絵は描けない。今までブラックボックスだった部分に関してどういう可能性があるのか、ここの部分を明らかにするのは本当に学問的な問題である。最近いろいろな研究も出ている。ここの部分は改めて勉強して、少し議論を深めたい。

○事務局 第四次産業革命・Society5.0を展望した諸課題について、御議論をいただく。

議論を行う上でのリードスピーチとして、齊藤委員と、東京大学先端科学技術研究センターの森川教授にゲストスピーカーでお越しいただいている。齊藤委員と森川教授から御説明後に、自由討議に入りたいと考えている。

○齊藤委員 改めて自己紹介させていただくと、私は、もとは東大病院で4年間、医師として勤務。そこから医療系の診断システム治療装置等の技術開発系に進み、アメリカのシリコンバレーで12年間ほど、法人を立ち上げてベンチャー企業の経営。2011年、震災を機に、日本に戻ってきて何か寄与できることがないかということで、今日に至る。

日本の人的なストックは特に非常に優秀な技術者、科学者、職人の方々等がいらっしゃる。そういう方々に何か役立つものということで、医療という意味でも、日本の非常に優秀な技術、科学あるいは産業に携わる方々に広く貢献させていただけることということでたどり着いた結論が、そういった優秀な方々にいい道具、ツールを提供することだろうということ。その最たるものとしてスーパーコンピュータの開発を民間でやらせていただいている。

今、関連するベンチャー企業体が5社。独自の省電力、メニーコアのプログラムを開発するPEZY Computing。冷却の特に液浸冷却という独自の技術を開発しましたExaScaler。来年、日本に4年ぶりにメモリーのDRAMのベンダーが復活する。それがUltra Memoryである。超広帯域の積層のTSVというものを用いない無線接続の技術を使ったメモリーの会社である。それから、人工知能エンジンの開発も着手しており、今、世の中にハードウエアでアベイラブルである人工知能エンジンというのはたくさんあるわけだが、1年半後に、その大体100倍、1,000倍の性能を実現する人工知能エンジンをつくる会社がもう一つ、Deep Insightsという。人工知能と次世代のスーパーコンピュータの組み合わせによって何ができるかというのを社会実装で世の中に実際に形としてあらわすためにInfinite Curationという会社も立ち上げたところである。

本日は、最強の科学技術基盤というものが間もなく出現する可能性があるという話や、その前提として、特異点や前特異点という話もさせていただく。

シンギュラリティというものの、これがフィージブルであるかという議論は多々あるかと思うが、私は完全に特異点というものはいずれかのタイミングでやってくるだろうと思っている。

一般的な定義としては、1台のコンピュータあるいは機械的な知性、1,000ドル程度という縛りが入る場合もあるが、これが全人類の知能の総和を超えてしまうというタイミングだが、より本質的な定義としては、これまでの全ての社会における前提条件が成立しなくなる、変更を迫られる、そのようなところだろう。

人間のあり方、人間自身を含めた全てが変わってしまうので、そこに関しての準備が必要。我が国においては、当然これは明治維新や太平洋戦争といったものに匹敵する。あるいはそれをも上回る巨大な変革であるという認識が必要と考える。

技術的特異点、シンギュラリティの前段階としては、社会的特異点、前特異点という呼び方もあるが、これが到来する。これをよい形で乗り越えるということが必要であると考える。

具体的には、指数関数のグラフに沿って人類の文明史を当てはめてみたところ、これまで農耕が1万年から1万5,000年前に起こり、文明が5,000年前程度に起こって、近代史が1,000年前程度から、科学が人類の生活に寄与したのは600年前くらいで、産業革命が250年から300年前、情報通信機器革命、コンピュータの発明は73年前からで、直近、私どもが経験しているインターネット革命が30年前。そして、シンギュラリティは2045年と言われているが、2030年という可能性もあるのではないか、まさにバックキャストをするところのポイントまで早まるという可能性も指摘されている。

肝心なのは、シンギュラリティに向けて紫色の点、これは過去の産業革命や農耕の開始といったものに匹敵する革命的な事象がこれだけ打たれる可能性がある。当初は非連続的に、やがて連続的になり、最後は同時多発的に起こってくる可能性があるということを踏まえておかないといけない。

次世代のスーパーコンピュータの必要性は、もう釈迦に説法であるかもしれないが、さまざまな手法による省エネルギー、そして新エネルギーであり、最終的にはエネルギーフリーに持っていく。小型熱核融合といったところには核変換の機能が付与されるため、資源問題が大きく改善、解決されていく可能性がある。

食糧問題というものも、植物工場のあり方次第で大きく変わってくるということや、衣食住がその次のフリーになるというようなところも議論としてあり、続いては安全保障、軍事の議論もここに含まれてくる。やがて保有するスーパーコンピュータの能力が国力という時代が非常に近づいてきているのではないかと思う。

新産業革命だが、旧産業革命においては人間あるいは家畜の肉体的な労働・生産作業を蒸気機関に置きかえた。今回、知的な労働・生産作業を人工知能が置きかえるということは当然事実であるが、産業革命において実はもっと大事であったことは、非常に大きな動力源を得たことによって、人間や家畜が行えなかった規模の作業、事業を行えたり、大型の生産設備をつくったりすることができるようになったこと。結果としては機関車や大型の船舶、航空機、果ては外燃機関が内燃機関に転じ、ジェットエンジンができて人類を月面まで運んだという、そちらのほうが現代におけるインパクトは大きいとすれば、今回も同じことが起こる。人工知能は現在我々が行っている職の半分、あるいは場合によっては9割を置きかえるという議論はこれも当然であるが、より本質的には人間が行えないレベルの、絶対に行えない知的な労働生産作業を人工知能が担っていく。こちらの方がはるかに本質的な議論が必要な部分ではないかと考える。

人工知能エンジンが今の100倍から1,000倍ぐらい性能が高まると、今行っているパターンの抽出、特徴点・特徴量の抽出に加えて、抽出されたいろいろなパターンをまた広げて見たときに、そこに規則性・法則性が見出される。メタパターンとも言うが、それはすなわち人間が行っている仮説の立案にほかならない。

注意が必要なのは、人間が行えているレベルの仮説の立案ではないということ。人間には恐らく理解が及ばないような複雑な、高次な仮説の立案すら行われても不思議ではない。そして、その数がとてつもなく膨大である。仮説は実験系において実証されないと理論にならないが、ここで立案されてくる仮説の数、複雑さ、高次さ、これは人間が実験系をつくるというのは不可能だろうと考える。これはもう次世代のスーパーコンピュータの中で、現実的な物理空間ではなく、バーチャルな区間の中で実証を行うしかない。しかも、これが人工知能と次世代のスーパーコンピュータであれば、自動的な連携を組むことができる。このループが回り出した途端に、そこには新しいノーベル賞が幾つも創設され得るだけの最強の科学技術基盤が出現する。

人工知能エンジンからは足元の新産業革命が起こせるとすれば、これは足元の経済成長に相当寄与できるのではないかと。次世代のスーパーコンピュータからは社会的特異点・前特異点が生み出されるが、このループが回り出すことによって汎用人工知能、マスターアルゴリズムの創出というところにもつながるとすれば、ここから特異点が生まれてくることになるのではなかろうかと考える。

シンギュラリティに向けた行程であるが、私どものベンチャー企業体の非常に小さいグループで具体的に取り組んでいる姿である。技術的には来年、100ペタフロップス、中国のスパコンを上回るようなスーパーコンピュータの開発が現実的に可能。そこから新人工知能エンジンを今から18カ月で作ろうと考えている。汎用人工知能のプロトタイプもそれを活用することで生み出していける。早ければ2018年中にも1エクサフロップスは技術的には到達可能である。これによって前特異点の創出、さらに汎用人工知能で特異点創出というところ、2030年頃にまさにここまで行き着く可能性もある。重要なことは、この工程表なのだが、必要な技術の全てが日本国内に存在している。あるいはここに必要な技術を海外で探そうとすると非常に難しいものばかりである。日本にまだまだ大きなチャンスがあるのではなかろうか。日本のストックを有効に活用させていただいて、その次につなげていくことが可能なのではないかと考える。

○事務局 「デジタルが社会・経済・産業・地方を変える」ということで、ゲストスピーカーとして東京大学先端科学技術研究センターの森川教授にお越しいただいている。プレゼンテーションをお願いする。

○森川教授 IoTがどのように社会を変えていくのかについてお話をさせていただく。

IoTとは何かというと、アナログのプロセスをデジタル化することだと、非常に簡単に考えている。我々の生活とか仕事の中でアナログのプロセスが膨大にある。それをデジタル化していく。それによって、今までのコスト削減のITとかICTから、新しい価値をつくっていく。IT、ICTにIoTという言葉が登場して、今まさに変わってきているのではないかと。デジタル化は、産業や事業立地など全てを変えていく。そういうお話をさせていただく。

いろいろな産業セグメントでデジタル化が進んでいる。スペインのバルセロナで実際に行われているお笑い劇場の事例だが、お笑いというアナログ量をデジタル化したというものになる。それぞれの椅子の背面に全てタブレットを設置する。タブレットに設置されたカメラで笑いの回数をリアルタイムで測定することができる。1回笑うごとに30セント課金をする。入場料は無料。おもしろくなかったら、ただでいい。最大が30ユーロ。こういうお笑いというアナログ量までデジタル化されていく。

私ならお客さんは笑いにきているのに、1回笑うごとに課金するとは何事だと考えてしまう。しかし、これをやったところ、お客さんの満足度も30%アップして、売り上げも30%アップしたという。

スポーツ業界は、欧米ではアメフト、バスケットボール、サッカー、そういったお金が流れている分野ではかなりのデジタル化が進んでいる。選手それぞれのウエアに全部タグをつけることで、位置がリアルタイムでわかり、映像に選手の名前をスーパーインポーズするとともに、選手と選手との間が何ヤード離れているかもリアルタイムで伝えられるということで、ユーザー、お客さんに対して新しい価値を提供するとともに、あるいは監督とかコーチも、今までアナログの世界で見てフィードバックをかけていたものを、デジタルデータを新しく使って、新しい価値を生み出していく。

アメフトとかバスケットボールは、これをやって、スタッツデータ、デジタルデータをネットにアップすることによって若年層の関心を強く引きつけることになった。それで広告収入は3倍にもなったと聞いている。こういったアナログの世界をデジタル化していくことによって何かしら新しい価値が生み出されていくといったものがIoTなのだと考えている。

結局のところ、生産性向上と価値創出である。

必ずしも最先端の技術が必要なわけではない。イーグルバスの事例だが、これは埼玉県川越市のバス会社で赤字だった。ざっくり言ってしまうと、GPSセンサーをつけて、乗降客数のセンサーを設置しただけ。それぞれのバス停で何人乗って、何人降りているのかというお客さんのデータを全てデジタル化して、見える化をした。それによってバス停の再配置と時刻表の再設定をしたことによって、赤字だった会社が黒字化していったというもの。

例えば、ごみ箱にセンサーをつけることでごみの量がわかるので、それによってごみの回収コストを3分の1まで減らしていく。必ずしも最先端技術が必要ないような分野、そこをデジタル化していくことが重要と考える。

私の期待は、こういったことを通して、とにかく生産性を上げていくこと。

IT、ICT分野の人たちの分布が偏っていることが、今まで生産性が上がらなかった理由と考えている。

こちらのグラフだと、左側がアメリカで、右側が日本だが、ピンクがIT、ICT企業にいるIT技術者の数、黄色がITを使う側のユーザー企業にいるIT技術者の数ということで、これからIoTでぐっと生産性を高めて価値をつくっていくに当たっては、上側の黄色のところにIT、ICTというものに今まで以上に親近感を持っていただき、いろいろな点に気づいていただくのが必要と考えている。

IoT時代に向けて3点ほどお話をさせていただく。

1点目は、IoTを抽象的に言うと、物理的資産,フィジカルアセットのデジタル化である。過去にはどういうフィジカルアセットのデジタル化があったのかというと、航空機座席予約システムみたいなもの。あれも座席というものがデジタル化したもの。アメリカン航空が1960年にSABERというシステムをつくった。今でも使われているが、2000年にアメリカン航空がSABERを分離した。なぜ分離したのかというと、SABERの時価総額がアメリカン航空を上回ってしまった。フィジカルアセットをデジタル化するだけでもそれなりの価値が生み出されていくという事例である。

最近のUBERとかAirbnbといったシェアリングエコノミーも、IoTである。車というフィジカルアセットをデジタル化したらUBERになる。空き部屋というフィジカルアセットをデジタル化したらAirbnbになる。これからいろいろなフィジカルアセットがデジタル化されていく。それがIoT、新しい時代なのだろうと考える。

IoTという言葉が昨年バズワードになって、これから汎用技術化されていくのだろうと。

上がピーター・ドラッカーの言葉であるが、IT、ICTもブロードバンドとかセンサー、クラウド、ワイヤレス、様々なテクノロジーがあるが、これからいろいろな産業を変えていき、いろいろな産業をつくっていくと期待している。

航空会社と航空機製造会社の関係を見ると、現在、多くの方々は飛行機に乗るときにはA社に乗りたいとか、B社に乗りたいとか、C社に乗りたいとか、そういった形で取捨選択している。車業界を見ると、いまだにこの下側だけで選択がなされている。例えばUBERみたいなものが広まっていくと、自動車業界もこの上側のレイヤーの事業が立ち上がっていくかもしれない。それも私たちから見ると一種のデジタル化の与える影響だろうと。産業構造自体が大きく変わっていく可能性があるというのが1点目である。

2つ目は、このようなIoTをやっていく上で、CTBのような組織でフットワーク軽くチャレンジしていかなければいけないのではないか。秋葉原のベンチャーで、この後出てくる3Dホログラムをつくっているベンチャーがある。こういう女の子のキャラクターが、御主人様が帰ってくると「お帰りなさい」と話しかけてくれて、「何チャンネルをつけようか」とか、起きるときには「7時だよ」とか声をかけてくれて、御主人様が好きなテレビ番組を自動的につけてくれる等いわゆるホームゲートウエー的なものをつくっている会社なのだが、彼らと話していて私が非常に感じ入ったのは、彼らの強い思いである。どういうことかというと、理想のお嫁さんをつくりたいということ。社員がまだ

10人もいない会社だが、結婚したら会社をやめないといけないという。これは人口減の日本に果たしていいのかどうかは別にして、こういう強い思いを持っている人たちがたくさんいるので、失敗する可能性も結構あると思うが、こういったものをどんどん応援していくことが重要かなと。

金融業界で言うとRTBとCTBという言い方がある。Run the BankとChange the Bank。ITシステムで言うと、巨大なITシステムを運用する部隊がRTBで、今で言うフィンテックみたいなものをやる部隊がCTBということで、RTBとCTBは明確に組織を分けなければいけないわけで、CTBのようなフットワーク軽くとにかくやっていく組織みたいなものを応援しなければいけないと考えている。

3点目は、リソース配分ということ。

まず、インベンションとイノベーションの違いについて。いろいろなテクノロジーはインベンション。インベンションが上手くいったとしても、イノベーション、社会に本当に展開されるかどうかというのはわからないわけで、そこのハードルはものすごく高い。

インベンションに偏ってリソース配分されている感じがする。その後のイノベーションにとにかく今まで以上に重点的にリソース配分をしていかなければいけないと考えている。

APIエコノミーという言い方もある。これはアメリカのビジネスプロセスマネジメントソフトウェアを作っているソフトウエア連携の図である。中央の富士山のようなアイコンが彼らの作成しているソフトウエアになる。それ以外のアイコンは、それ以外の事業者が作成しているソフトである。こういう形でエコシステムが実現されている。こういうエコシステムをしっかりと考えていくところから価値が生まれてくることが多くなってきている。こういうエコシステムをとにかく考え続ける。そういうところにリソース配分をしていかなければいけないのではないかと。

同じような見方をMITと東工大のデータで御紹介する。アンダーラインを記してあるところ。MITと東工大は、学部生と大学院生と教員数はほとんど一緒だということ。違いは教員以外のスタッフの数。MITは大体9,000人、それに対して東工大は700人と15倍違う。スタッフといっても必ずしも下働きだけをするスタッフではなく、お金集めをするスタッフや、あるいは教員をツールとして使ってまとめ上げていく、いわゆるマネジャーみたいな人たちも含まれている。教員をツールとして使って、それを上手く束ねて新しい価値に結びつけていく。そういったところにもっと意識的にリソースを配分しなければいけないと考えている。

産業界も恐らく同じ感覚であろう。今までのリソース配分が若干テクノロジーやインベンションに偏っていたといったところを少しずつ変えていかなければいけない。

IoTという言葉が生まれてきたことによって、IT、ICTがやっと本物になってきて、全ての産業セグメントにこれから入り始める。IT、ICTを隅々にまで浸透させなければいけない。そうすると地方銀行とか、あるいは高専とか、そういった地方の核となるようなところにリソースを投入し、IT、ICTでのスマート化を推進していくことも重要なのではないかと。さらには、CTBとかそういう新しいチャレンジをしている人への支援、最後にリソースの再配分も再定義していかなければいけないのではないかと考えている。

○事務局 それでは、今までのプレゼンテーションに対して、御質問、御意見がありましたら御自由に御発言いただきたい。

○新井委員 齊藤委員のプレゼンに関して、特に2015年のグリーン500において、今までダークホースであったPEZYのコンピュータが1位から3位まで入ったことは非常に画期的なこと。一つの日本のスパコン、特にグリーンのスパコンというような観点で、ぜひ今後も頑張っていただきたい。一方で、数理論理学者というか、計算量の理論の方の研究者として一言申し上げておきたい。計算が大変に速くなったり多くなったり、特に1,000倍、1万倍、100万倍ということになると、今まで計算できなかった全てのことが計算できると考えがちであるが、それはまったく見当違いである。例えば私は「ロボットは東大に入れるか」という大学入試を突破するというプロジェクトをしているが、そこで開発しているAIには(東大生が解けているのに)解けない数学の問題がいくつもある。それは今、御提案の次世代のスパコンが地球の滅びる日まで計算しても計算ができないことが理論上わかっているタイプのものばかりである。それをなぜ人間が解けるのか、AIという言葉が生まれてから50年以上研究が進められてきたか、その理由は全くわかっていない。

結局、コンピュータには意味がわからない、というのが決定的な弱点だといえるだろう。画像認識については、人間の脳の動きを模したといわれるニューラルネットワークという統計的手法によって、限定的なタスクに関しては人間を超えるような性能を発揮してはいる。しかし、言葉に関して、つまり言語に関してのシンボルグラウンディングは全く理論上も突破できる見込みがまだ立っていない。意味がわからないコンピュータがどんなに速く計算しても、できない。

シンギュラリティが来るかもしれない、というのは、現状では「土星に生命がいるかもしれない」とあまり変わらない。土星に生命がいない、と証明されたわけではないように、シンギュラリティが来ないことを今証明できるわけではない。一方で、土星に土星人がいるかもしれない、ということを前提に国家の政策について検討するのはいかがなものか。

IoTに関しては、ただデータをとれば何か良いことが起こるわけではない。仮説に基づき、適切なデータ取得の設計をするのは、やはり人間の仕事であろう。IoTについても先ほど森川教授からお話があったような飛行機の座席の予約の効率化、ホテルの予約の効率化等においては、例えば空港であるとか港湾に今日何人、中国のどこの町からお客様が到着したというようなパブリックなデータが、リアルタイムで産業界が活用できるようになることが必要。現状のように、データが霞が関に上がってくるのが1カ月後では、IoTにならない。パブリックな、重要なデータがIoTらしい状況になって、そこのところで大型計算機が一秒でも早く未来を予測するということで短期予測が可能になる。ここでも、もうひとつ但し書きをしておきたい。AIが意味を理解しない中でできるのは、あくまでも短期の予測に過ぎない。それは、まさにケインズとティンバーゲンがかつて論争した頃と本質は変わっていない。データをしっかりと取っていけば、短期予測は比較的よく当たるので、経済であるとか、インフルエンザの流行であるとか、集中豪雨であるとか、そういうものの予測を正確にしていくためにスパコン等が使われていくことに関しては、非常に期待をしている。

○柴田委員 3つ質問する。

IoTの場合、いろいろなものに組み込まれていった場合、例えば資源、特にレアメタルとか、こういうものの有限性はさらに強まってくるのか。

同じくキロワットアワーの電力消費量というのはかなり増えるのか、むしろ効率化されて減ってくるのかどうか。

スパコンのシンギュラリティというか、自然界でS字曲線があるが、垂直に立ち上がっていく曲線というのは、そのS字曲線も超えてしまうのか、あるいはどこかでS字曲線が現れるのか。中国の経済成長は78年の改革開放からスタートして、2,000億ドル台のGDPが2000年に1兆ドル、2010年に3兆ドル、今はさらにその倍まで来ている。その過程で、やはりGDPが指数関数的に増えてきて、そのときに皆、中国に投資している経営者の方などもよく心配したのは、このまま垂直に上がっていくはずがないという話で、結局S字曲線になって現在がある。そういう曲線があらわれるのか、逆にそこも克服していった場合にどういう世界なのかというのがいまひとつわからない。

○森川教授 1点目と2点目のことについて、私からお答えさせていただく。

1点目の資源とかレアメタルについてだが、IoTになると、小さなデバイスがいろいろなところにくっついていくということ。今のCPUとかそういったものは膨大になる。そこにレアメタルが使われるのかどうかがポイントと考えている。

現在、レアメタルはそれほど使われていないため、それほどは影響ない。将来的にレアメタルが必要になるようなハードウエアもあり得なくはないと考えているので、注意していかないといけない。

2点目の電力消費に関しては、センサーをいろいろとつけてデータを集めることによって、効率化の方が上回るという予測である。最終的には効率化がかなり進むと考える。

○齊藤委員 1点目のレアメタルの件。レアメタルの代替というようなところもスパコンが相当に今、活躍をしており、今後も期待できるところ。

消費電力に関しても、消費電力効率は今後も高まるが、スーパーコンピュータの性能の話の中で、1エクサフロップスのスーパーコンピュータはアメリカが2023年から2024年まで待たないといけないのは、昨年の大統領令により、消費電力のキャップで20メガワットというものをつけたため。20メガワット以内で1エクサフロップスだと2023年から2024年。中国は逆にキャップをつけてないので、必要があれば原発を何棟でも建てるというぐらいの意気込みだと聞いている。そういうところでの差が出てきている。消費電力に関しても、スパコン自身がいろいろと改善をしていく局面が今後出てくる。

シンギュラリティに関してのエクスポネンシャルなカーブ、これはレイモンド・カーツワイル先生の著書の中で詳しく語られているが、細かく分解していくと実はそれは幾つものシグモイドカーブが連なってできているエクスポネンシャルなカーブである。半導体業界のムーアの法則も今、終焉を迎えるというところで、まさにシグモイドカーブになりつつあるところ。これで終わりではなく、また3次元積層の技術が出てきたり、カーボンナノチューブといった新しい要素技術が出てきたりすることによって、総体としてはエクスポネンシャなカーブが保たれる。ミクロで見ると、これは全部シグモイドカーブがつながっている。

○柴田委員 S字曲線が重なり合っている。

○齊藤委員 そうである。幾つも、成長が滞ってくると、また新しいS字曲線がそこに出てくる。

○事務局 新井委員からのスパコンでも超えられない壁があるといったことについてお伺いしたい。

○齊藤委員 もちろんスパコンが万能と申し上げると、これは軽々しい発言になってしまう。できることとできないことが残っていくと思う。やがてそこは非ノイマン型のコンピューティングというところもあり、シンボルグラウンディングのお話も出ていたが、我々の頭の中にある脳というコネクトームによって構成されるコンピューティング可能な物理的な知性というのは、そこの問題を解決している。今のコンピューティングの延長線上では、新井委員御指摘の点のようなところはどこかで引っかかってくると思うが、それ以外の方法も今後活用可能になる。

新井委員は中国の視察等をされ、中国では既にディープラーニングは古く、その先の研究開発にもいそしんでいるという話も記事で拝見した。そういった中国のスタンスから、中国はあれだけスパコンの数を増やしてきて、本当にまだまだシェアを増やしてくるとすると、この取り組みに関して何か御意見、お考えというのはいかがなものか。

○新井委員 中国は主にスパコンが問題というよりは、国を挙げてデータを取り、それを中国企業に活用させているという事情がある。どちらかというとデータ量が要だろう。スパコンに関しては、国威発揚と軍事目的ではないだろうか。

非ノイマン型という言葉が、現在のコンピュータと差別化するためにしばしば使われるが、ややバズワード化している。たとえば、ディープラーニングは非ノイマン型を志向しているがノイマン型の計算に過ぎない。また、量子コンピューティング等も、それで何でも速く計算できるかといったら全然そうではない。基本的にNP完全であるような問題に関しては難しくあり続けるであろうから、次のモデルが全くないので、そういう意味では未だ非ノイマン型を前提に議論をできる段階にはない。

○齊藤委員 ありがとうございました。

○伊藤座長 齊藤委員にお聞きしたいのは、中国はベンチャーをたくさん放出している。あるいはスーパーコンピュータでも大変成果を出してきている。これをずっと続けていったときに、先のグローバル競争とかグローバル協調ということも含めて考えると、日本にとってどういうデメリットがあるのか。中国が頑張れば頑張るほど日本は損をするのか、あるいはそのメリットが受けられるのかということも含めて、どういうことが考えられるのかということをお聞きしたい。

森川教授へのご質問は、よくIoTというか、グーグルやアップルなど、何社かが山のようにデータをとって独占していて、結局日本はグーグルやアップルの奴隷になるしかないというような主張する人がいるが、そういうことがあるのかどうか。

お二方にお聞きしたいのだが、仮に日本が手をこまねいて何もしないでいて、世界がどんどん動いていったときに、それは結果的に日本の産業とか経済とか社会にどういう影響が及ぶのかということについて教えていただきたい。

○齊藤委員 まさに御指摘の点は私も非常に危惧、懸念をしている。これは同様にハイ・パフォーマンス・コンピューティング業界のアメリカ、ヨーロッパ、日本の多くの方々に話を聞いても、今回の中国の93ペタフロップスの独自技術による世界1位のスパコンや、ハードウエアのみならず、ソフトウエアの天才的な技術者も数百人単位で養成して、これを使いこなし、今年11月の学会でゴードン・ベル賞というのがあるが、そのファイナリストの過半がこのスパコンを使った論文になっているという状況を見て、非常に多くの方が頭を抱えている。

これに台数も増えてくるということになった場合に、社会課題解決というところで次世代のスーパーコンピュータが国力にもなり得るようなレベルまで進んでくるとすれば、それによる明らかなアドバンテージを彼らは当然行使してくるであろう。これがエネルギーなのか、食糧なのか、軍事であるのかはわからないが、こういった強大な、2位以下が全く追いつけないような力を持ったときに、やはり日本は対抗するのが非常に難しくなるとすれば、我々としては何か同等程度の対抗策を持っておかざるを得ないのではないかと個人的には考えている。

○森川教授 データがやはり重要だというのはご指摘のとおりである。グーグル、アマゾン、アップルとこれから戦うかといって、すでにかなりビハインドなので、難しい。

IoTがなぜチャンスなのかというと、グーグル、アップル、アマゾンでもまだ集めていないデータであるから。やはりインターネット上のバーチャルなデータではなくて、リアルなデータがこれからの競争の場になるので、そこはこれから同じ土俵で彼らと一緒にできる。国もデータを集めることに支援をする。例えば橋のデータとか、上下水道のデータとか、とにかくデータを集めていくと、そこから価値が生み出されていく

○高橋座長 例えばインフラ系のデータを、まさにハードから情報を集めてくる。それを使って運用だとか、メンテナンスだとか、場合によっては更新まで活用していくと。結果的にインフラのオーナーだけではなくてユーザー、あるいは納税者まで価値が生まれて、恩恵を受けるということ。よくインフラのスマート化とか言われるが、こういう分野は海外ではどのくらい進んできているのか。

○森川教授 別に海外が進んでいるということはなく、同じラインでやっている。逆に日本は、産業界の危機感は高い。なぜかというと、人口減で労働者数が減る。IT、ICTを使って何とかしないといけないという危機感は日本のほうが強い。

○高橋座長 危機感が強いとすると、それがもうちょっと実際にあらわれてきて、成長に貢献していかないといけないと思うのだが。

○森川教授 あらわれてはきている。今、危機感がやっと生まれて、これから一体全体どうしようかというフェーズで、これからだと考えている。

○新井委員 日本には、世界で特定分野においてシェアのトップあるいはトップに非常に近い位置にいる日本の企業は幾つもある。ただ、データドリブンな世界を考えるときには、その特定分野の機械がデータを集めたとしても、それだけでは十分な精度のある予測ができないことが多い。例えばある農機具のメーカーだとして、そこの部分でデータだけとっても、地図データがなければしようがない、ということがしばしばある。データは合わせ技なので、今まで同じグループ社ではないところのデータをどうやって活用するかということの規制緩和や、やり方が決まらないといけない。自分のところで取っても、自分のところのデータだけで統計にしましょうとなる。だから、計量経済学を考えたときに、一つのパラメーターだけは取れている、というのに似ている。これで経済を予測しましょうといっても無理。パラメーターが全然足りない。パブリックなセクターのデータや、他所のデータをどうやってオープンイノベーションなるもので共有するかが鍵になると考える。

データビジネスは、特許ビジネスとまったく違う。特許であれば、何年後かにフリーになるが、データは未来永劫囲い込むことができる。それによって未来永劫ビジネスになる。そこが恐ろしいというのが森川教授の御意見だと考える。

今、自治体は人口減をなんとか食い止めようと、他からの流入を増やそうと駅から遠いところに住宅地の造成などをしているが、人口というパイの全体が減っている時に、それはいかがなものか。むしろ、人口減少は不可避ととらえ、どこから先のインフラは諦めるかを決め、体力があるうちに主要な駅を中心にスマートシティ化するというような決断こそ必要ではないか。それは決して諦めの行政ではなく、理性による行政の姿ではないか。データをきちんと取って、しっかりとメンテナンスができる市にするという話になってくれば、ピンチをチャンスに変えて、インフラから、IoTというデータを中心にして幾つもの会社が連携して、となってくると考える。

○高橋座長 今のような問題意識を例えば各省庁が持っていれば、省庁横断的にそういうことをやっていかなくてはいけないという議論になると思う。まだそういう機運というか実際の動きがなかなか出てきていないように思うのだが、それは何がネックなのか。

○新井委員 実際にとっているデータについて。恐ろしいことに、政策を検討する上で必要なデータは霞が関に来るときには、マクロデータになってしまっている。生データは来ていない。IoTの世の中にあって、最も意味がないのはマクロデータだ。ミクロの生データと、コンピュータとAIがあれば定型的な分析などいくらでもできる。生データを自ら活用できないと、霞が関はこの後のPDCAは回せないと考える。

○森川教授 そうだ。

○新井委員 ということなので、霞が関にはぜひ自らIoTのトップランナーになっていただきたい。

○森川教授 いろいろな省庁を見させていただいて、やはりIT、ICT分野というのがメーンではないので、そこが問題かなと。そこがメーンになれば変わってくるのではないか。

○河合委員 経済成長ということで考えるのは、労働人口の減少を抑えるためには、また年金問題を考えても、定年の年代が引き伸ばされて70歳、もしかすると、死ぬまで働かなければならない時代が来てもおかしくはない。もちろんフルタイムで働くわけではないので、労働時間の柔軟化、ITを使った自宅勤務、ロボットやサイバーアームを使うなど、様々な方法でアシストをされながら高齢になっても働く可能性を考える必要があるかもしれない。一方では、将来的にAIにより、単純作業やホワイトカラーのかなりの部分の仕事が消失してしまう可能性もある。経済的には働かなくてもいい社会が訪れるとおっしゃっていたが、様々な社会問題をひき起こす可能性があるので、それについて一言お聞きしたい。

○齊藤委員 職が奪われるというよりは、生活のための労働から解放されると考えている。産業革命以降、農耕をする人たちの人口は数十%から2%まで減ってきている。これから効率化が高まったときには、必ずしも労働が義務ではなくなるとか、少なくとも労働時間が減っていく方向で、労働という作業は置きかえられていくという方向で着地点を見出せるのではないか。

○事務局 次回もイノベーションということで議題を用意させていただく。

最後に越智副大臣から一言。

○越智副大臣 皆様、2時間にわたる熱心な御議論に感謝する。

各分野の最先端で活躍されている先生方に委員になっていただき、御議論に参加していただいたこと、心から感謝を申し上げる。

また、森川教授にも参加をしていただき、感謝申し上げる。

2030年ということであるが、安倍政権とすると、2020年というのは目標感を持って今、進んでいるわけだが、その先を見据えての議論になる。2030年代に入ると人口が毎年100万人まではいかなくても90万人ぐらい減っていく。今は20数万人であるから、人口減がリアルになってくる時代である。そういう中で生産性を上げて、伊藤座長がおっしゃっていた、成長率をどう確保していくかというような話が大きなポイントだと思う。

重要なことは、労働生産性を既存社会構造の中で上げていき、新しい社会構造というのを想定してスピード感を持って取り組んでいかなければならない。本日の議論を聞いて、一つの事象について変化を意識しながら見ていくということが大切と感じた。

本日のテーマは第四次産業革命とSociety5.0だったわけだが、その中で齊藤委員のAIが万能であるかもしれないという話と、新井委員のそうではないかもしれないという話はとても深遠な議論であったが、AIはこれから2030年を考える上での大きなポイントだと思う。

また、AIとスパコン、IoTの話は一緒にして考えると複雑になってしまうので、改めて分けて考えると、データ取得競争というのをどう考えていくかが重要である。政府の中のデータも地方自治体を含めればまだまだあるので、そういうものをどう活用していくかということも大きな課題だということを考えさせていただいた。

今回を含めて5回シリーズで御議論いただき、一つの方向性に持って行かなければいけない。駒村委員からも人口構造の話があったが、人口の話や暮らし方の話も絡んで、かなり複雑な議論の中で一つの方向性を出していく作業になると思う。ぜひとも最後まで御熱心に御議論いただいて、立派な結論を導き出していただくようお願いし、御挨拶とさせていただく。

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/2030tf/summary_281003.pdf

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/2030tf/281003/agenda.html

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/2030tf/shiryou.html

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