この記事は[群馬大学電子計算機研究会 IGGG Advent Calender 2017] 5日目の記事です。
ちなみにAdvent Calender もGistも使うのははじめて。よろしくよろしく。
はじめに
随分前からやるやる言っていた真空管アンプ用のトランスの巻線機がわりと形になってきたので簡単に報告しようと思う。 トランスは数千回とか1万回巻とかもあるので手巻きはだるいし作ってみたいよねっていうふわっとした感じで作り始めた。
イメージ動画
こんな感じにしたいねっていうイメージ動画はこちら↓↓↓
これらを私と機械科のもう一人でメカ・エレキ・ソフトを分担しながら作っていった。
構成
基本的な構成は、
①主軸:ボビンを回転させてエナメル線を巻きつける
②副軸:エナメル線がボビンにキレイに巻き付くようにガイドする
の2つの部分に別れている。
主軸を回転させ、それに協調させて副軸をエナメル線の太さに合わせて動かすことが巻線機に必要なことになる。 また、エナメル線の太さ次第ではあるのだが、精度が必要な工作機械になるので駆動モータにはステッピングモータを用いることにした。
ステッピングモータは一般的にラジコンカー等で用いられるブラシDCと違い、矩形波信号を送るとその送った分だけ指定角度動くというモータで、トルクは出にくいが、エンコーダなしで精密な位置制御ができるという利点がある。 ステッピングモータとリニアガイドを用いることで今回の巻線機のエナメル線の最小太さが10μm(0.01mm)の精度を実現した。
大まかな機能としては、エナメル線を巻く際の回転速度、始動加速度、停止減速度が指定できるようになっており、目標巻数を設定するとその巻数になるまで自動で回転する。 もちろん、エナメル線の太さやボビンの長さ(巻く長さ)も調節できるようになっており、これらのパラメータは手元のコントローラのLCDに表示され、プッシュスイッチやボリュームで調節できるようになっている。
作成した巻線機で巻いている様子
実際に作成した巻線機で巻いている動画がこちら↓↓↓
(今手元にボビンがなかったのでとりあえずシャフトに巻きつけている)
動画よりも細いエナメル線でも問題なく巻くことができている
装置全体が見れる動画はこれ↓↓↓
(今手元にボビンがなかったのでとりあえずドライバーに巻きつけている)
雑なプログラムの解説
開発環境
言語:C
マイコン:arduino mega
主軸用ステッピングモータ制御
amazonで中華製のモータ・ドライバセットで5000円くらいのを買って使っている。このトルクとドライバのセットと考えると激安。しかし値段のせいか、他のマイコンに伝搬して誤動作させるくらいノイズが酷かったので電源を別にしてマイコン側とは絶縁する必要があった。
駆動のためのパルスはだいたい3kHzから300kHzくらいの周波数の矩形波が必要だった(と思う)ので、arduino megaのatmega2560のタイマー機能(CTCモード)を使って矩形波を生成した。矩形波の周波数によりモータの回るスピードがかわるので、可変抵抗とツマミをつけてボリュームを回すと矩形波の周波数が変わって速度が変化するようにした。
プログラムはシンプルに、スタート→加速→定速→(目標値に近くなったら)減速→(現在値=目標値になったら)停止 というかんじ。
もちろん回転数はロータリーエンコーダで取っている。
副軸用ステッピングモータ制御
このモータは確かゴミから拾ってきたものだった気がする。副軸の制御は10μmのオーダーで制御しなければならないのでストロベリーリナックスのL6470 ステッピングモータ・ドライバキット を使った。
これを使うとSPI通信からステッピングモータの速度制御、位置制御、1/nステップ等いろいろ簡単に設定できる。ただし少し値が張るが。副軸用ステッピングモータはフルステップで1ステップ0.9°回転し、ドライバで1/8ステップで駆動している。
主軸用の中華ドライバを使うと誤動作するのはこのドライバだった。それでなくてもSPI通信はたまに受信に失敗してよくわからない数値を投げてくるので3回取って多数決とかしないと危ない。
あとは、エンコーダの値と、エナメル線の太さに合わせて何μm移動するかを決めてそこから何ステップ回すかを決める。 このドライバは確か1/128ステップまでできるので、10μmよりもっと精度を出そうと思えば出せる気がする。そうなるとリニアガイドの精度次第になるのかな。
主軸用と副軸用のプログラムはmainと割り込みでキッチリ切り分けてあるので、プログラムで自動で巻いても、最後の仕上げ用に手巻きでも対応できるようにしてある。そこらへんは使う人からのフィードバックを聞きながら要求分析を行っていった。
あとはパラメータと使いやすいを考えてプッシュスイッチなどのインターフェースをつけていくだけ。 保守性を考えて電気的な接続部分はハウジングコネクタやELコネクタを使う。
最後に
現在はプロトタイプだが、もうそろそろ完成しそうなのでそうしたらまた報告ができたらなーと思う。 あとは部品が届き次第最終版に詰めていく。