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アイデアの作り方

目次

序――ウィリアム・バーンバック

日本の読者のみなさんに

まえがき

この考察をはじめたいきさつ

経験による公式

パレートの学説

心を訓練すること

既存の要素を組み合わせること

アイデアは新しい組み合わせである

心の消化過程

つねにそれを考えていること

最後の段階

ニ、三の追記

解説――竹内 均

訳者あとがき

序――ウィリアム・バーンバック

生化学者は、大した費用もかけずに人間の肉体を組み合わせることができる。
しかし、人体に生命の日をスパークさせることはできない。
この本に書かれているのは、創造のスパーク

知識は優れた創造的思考の基礎ではある。
しかしそれだけでは不十分。
知識は、よく消化されて、最終的に、新鮮な組み合わせト関連性をもった姿となって心に浮かび出てこなければ意味がない
アインシュタインはこれを直感と呼び、直感だけが新しい洞察に到達する唯一の道

アイデアの良し悪しは、遺伝子までも含めて自分のもつすべての資質と能力できまるもの
この本のアイデアづくりに取り組めば、自分の能力と素質のすべてを最大限に活かせることになる

この考察をはじめたいきさつ

アイデアを売る仕事がしたいが、アイデアをどうして手に入れたらいいかが分からない

経験による公式

意識下で進行するアイデア形成の、長い、目に見えない一連の心理過程の最終の結実にほかならないのではないか
心理過程は、意識してそれに従ったり、応用したりできるようにあとづけてみることができないだろうか

アイデアの作成は、フォード車の製造とおなじように一定の明確な過程である
アイデアの製造過程も一つの流れ作業である
その作成にあたって、自分たちの心理は、習得したり制御したりできる操作技術によってはたらくもの
この技術を修練することが、有効に使いこなす秘訣

公式は、説明すればごく簡単なので、これをきいたところで実際に信用する人はまず僅かしかない
説明は簡単至極だが、実際にこれを実行するとなると最も困難な種類の知能労働が必要
この公式を手に入れたとしても誰もがこれを使いこなすとは限らな

パレートの学説

かりに「アイデアを作成する技術」があると仮定する
誰もが使いこなすことができるだろうか、それとも先天的に持って生まれた才能があるだろうか

パレートの「心理と社会」に一つの解答が示唆されている
全人類は2つの主要タイプに大別できると考える

  • スペキュラトゥール(投資家、思索家)
  • ランチェ(金利生活者)

スペキュラトゥールは、「投機的なタイプ」のひと
新しい組み合わせの可能性につねに夢中になっている
夢中になっている(プリオキュパイド)という言葉

投機的なタイプは起業家、経営の計画に携わる人々ばかりではなく、あらゆる種類の発明政治・外交的再構成と名付けている活動に従事している人々も含めている
どうすればまだこれを変革しうるかと思索(スペキュレート)する」あらゆる分野の人々が含まれる

ランチェは、英語に訳すと株主(ストックホルダー)になる
著者は鴨にされる人(バッグホルダー)だと感じているみたい

型にはまった、着実に物事をやる、想像力に乏しい、保守的な人で投機的な人々によって操られる側の人を指すみたい

世界を組み立て直す側(スペキュラトゥール)の人は非常に大きなグループとして存在する

この才能を伸ばそうと懸命に努力し、よりよくこの才能を行使する技術をマスターしてしまえば想像力は一層高めることができる

心を訓練すること

アイデアを作り出す才能があるとして、それを伸ばすにはどんな方法があるだろうか

どんな技術を習得するにも、学ぶべき大切なことは第一に原理、第二に方法

特種な断片的知識というものは全く役に立たない
急速に古ぼけてゆく事実 - ロバート・ハチンス博士

原理と方法こそがすべてである

何もかも知っているからといって、アイデアマンとは限らない
原理と基本的な方法を理解して、アイデアマンとしての機能を発揮しないと意味がない

反対に知っていることがそれほどなくても、原理と方法に十分な見識さえ持っていれば、技術者の援助を得ることにより、効果をあげることもできる

アイデアの作成についてもこの通り
ある特定のアイデアをどこから探し出してくるかが重要ではない
すべてのアイデアが作り出される方法に心を訓練する仕方とすべてのアイデアの源泉にある原理を把握する方法のほうが大切

既存の要素を組み合わせること

アイデア作成の基礎となる一般的原理について大切なことが二つある

  1. アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない
  2. 既存の要素を新しい一つの組み合わせに導く才能は、物事の関連性をみつけ出す才能に依存するところが大きい

1に関しては、あとで方法について考えるときまでしばらく深入りしないことにする
そのときになったほうが、1の原理の適用を通じて、一層はっきりとこの事実の重要性を理解することができる

2に関しては、一つの事実が一連の知識の鎖の中の一つの環であるという人もいる
一つの事実は他の事実と関連性と類似性を持ち、一つの事実というよりは、事実の全シリーズに適用される総合的原理からの一つの引例と言ったほうがいい

事物の関連性を素早く見つけ出す人々の心には、情動的(エモーショナル)経験のシンボルとしての言葉の使用に関して億柄のアイデアが生まれてくる

言葉を修辞(レトリック)の一部として研究するよりも情動的シンボルとして 研究するほうが一層よい効果をもたらすだろう

この種の関連性が見つけられると、そこから一つの総合的原理を引き出すことができる
総合的原理はそれが把握されると、新しい適用、新しい組み合わせの鍵を暗示する
そして、その効果が一つのアイデアとなる
なので、事実と事実の間の関連性を探ろうとする心の習性がアイデア作成には最も大切なものとなる

事実と事実の間の関連性を探る修練
社会科学の勉強をする
「有閑階級の理論」 - ヴェブレン
「孤独な群衆」 - リースマン

アイデアは新しい組み合わせである

アイデアは一つの新しい組み合わせという原理
新しい組み合わせを作り出す才能は事物の関連性を見つけ出す才能によって高められる原理

アイデアを作る実際的な方法/手順
アイデアの作成は一連の製造方法に従うもの
この目的のために心を使うには一つの技術があるし、意識的/無意識的に用いられる
意識して修練することで、合うデアを作り出す能力を高める

この心の技術は5つの段階を経過してはたらく

  1. 資料集め ー 当面の課題のための資料一般的知識の貯蔵をたえず豊富にすることから生まれる資料
  2. 心の中でこれらの資料に手を加える
  3. 孵化段階 ー 意識の外で何かが自分で組み合わせの仕事をやるのにまかせる
  4. アイデアの実際上の誕生
  5. 現実の有用性に合致させるために最終的にアイデアを具体化し、展開させる段階

ただし、どの段階にもそれに先行する段階が完了するまでは入ってはいけない事実を把握する

第1段階 ー 資料集め

雑仕事で、生易しいものではないがいい加減なやり方になりがち

原料集め(マテリアル・ギャザリング)のために使うべき時間をぼんやりと(ウール・ギャザリング)過ごしたり、体系的に原料集めをやる代わりに霊感が訪れてくれるのを期待して座り込んでいたりする

集めてこなければならない資料には2種類ある

  1. 特殊資料
  2. 一般的資料

特殊資料

製品と、製品を売りたいと想定する人々についての資料
製品と消費者について身近な知識を持っても、製品と製品に関連のある人々についての心の知識に近づき難い

私たちはたいていこの知識を習得する過程であまりに早く中止してしまう
しかし遠くまで掘り下げていけばほとんどあらゆる場合、すべての製品とある種の消費者との間に、アイデアを生むかもしれない完成の特殊性が見つかる

一般的資料

継続的過程での資料集め
創造的広告マンに見られる顕著な特徴

  1. 人生のすべての面において魅力的なものとして興味を持つ
  2. あらゆる方面のどんな知識でも貪り食う

アイデアは、製品と消費者に関する特殊知識と、人生とこの世の種々様々な出来ごとについての一般的知識との新しい組み合わせから生まれてくる

一般的知識を多く取り入れることで特殊知識とのバリエーションが増やせる
一般的教養科目の実用的な価値に疑問をいだいている場合は、この辺のことを考え直してみる

この段階の一半は当面の仕事、一半は生涯にわたる長い仕事

第2段階に移る前に、ここでの資料集めの過程に関連する2つの提案

1つ目は、特殊な資料を集める際に、カード索引法を勉強する
3インチ×5インチの罫線が入ったカードを用意して、集めてきた特殊な知識を項目ごとにカードに記入するだけ
一つの事項を一つのカードに記入すると、しばらく経てばテーマのセクション別にこれらのカードを分類することができるようになる
最終的にはきちんと整理分類された、あらゆる項目を網羅した、一つのファイルボックスを持つことになる

カード索引法の利点

  1. 本人の仕事に秩序ができる
  2. 本人の知識の中の欠陥を発見できる
  3. 資料集めの仕事を怠けるのを常に防止し、資料を文章に表現することを本人に強制して、アイデア作成過程の完成を準備する

2つ目は、一般的資料を貯えるにもスクラップ・ブックとかファイルのような方法が有益である
スクラップ・ブックの中に自分が書き溜めた個々のハンバな資料を様々な角度から何度も索引分類して暇つぶしをするやり方

心の消化過程

資料集めをやり遂げたと仮定する

次は資料を咀嚼する段階
集めてきた個々の資料をそれぞれ手にとって心の触角とでもいうべきもので一つひとつ触ってみる
一つの事実をとりあげてみる
とりあげた事実をあっちに向けてみたり、こっちに向けてみたり、ちがった光のもとで眺めてみたりしてその意味を探し求める
2つの事実を一緒に並べてみてどうすればその2つが噛み合うかを調べる

アイデアを見つけるために探すのは関係

しかし、ここで奇妙な要素が入り込む
事実というものは、あまりまともに直視したり、字義通り解釈しないほうが一層早くその意味を啓示する
事実の意味を探すのではなく、意味の声に耳をかたむけることに近い

この段階で起こる2つのこと

まず、仮の状態/部分的なアイデアが訪れてくる
それらを紙に記入しておく
どんなにとっぴに、あるいは不完全なものに思えても一切気にとめないで書きとめておく
これはこれから生まれてくる本当のアイデアの前兆で、言葉に書き表しておくことによってアイデア作成過程が前進する
これも3インチ×5インチのカードが役立つ

この段階において問題を意識の外に移し、無意識の創造過程を刺激するのに役立つことで、自分たちにできることは1つだけ
アイデア作成の第3段階に達したら、問題を完全に放棄して何でもいいから自分の想像力や勘定を刺激するものに自分の心を移す
音楽を聞いたり、劇場や映画にでかけたり、詩や探偵小説を読んだりするなど

第1段階で、食料を集め、
第2段階で、それを十分咀嚼する
第3段階は、消化過程がはじまっているのでそのままにしておく

※解説からの抜粋
咀嚼段階でやること → お互いに関係のありそうなデータを一箇所に集め、それらのデータを一箇所に集めた理由を記した一枚のカードを作る
咀嚼の操作をデータのグルーピング、あるいは組み合わせとも呼んでいい
小→中→大の準でグルーピングすると、それ以上にグルーピングできない状態がくる
ここまで来たら、あとはインスピレーションが降ってくるのを待つだけ

つねにそれを考えていること

第3段階までやり遂げたら、第4段階を経験することはまず確実

どこからもアイデアは現れてこない
アイデアはその到来を最も期待していない時に訪れてくる

アイデアが訪れるときは、アイデアを探し求める心の緊張をといて、休息とくつろぎのひとときを過ごしてからのこと

常にその問題について考えて、それでもわからないときに他のことをやっていると、一瞬でアイデアが浮かんでくる現象

最後の段階

アイデア作成過程を完結するための段階
翌朝の冷えびえとした灰色の夜明けとも名付べき段階

練りだしたアイデアを現実の世界の中に適合させるには忍耐強く種々たくさんな手を加える必要がある
多くのよいアイデアが陽の目を見ずに失われてゆくのはここにおいてである
この段階を通過するのに必要な忍耐や実際性に欠けている場合が多々ある

この段階まで来て自分のアイデアを胸の底にしまい込んでしまうような誤は犯さないようにする
理解ある人々の批判を仰ぐ
良いアイデアは、いってみれば自分で成長する性質を持っている
良いアイデアは、それをみる人々を刺激するので、その人々がアイデアに手を貸してくれる

再度、アイデアが作られる全過程/方法

  1. 資料集め ー 当面の課題のための資料一般的知識の貯蔵をたえず豊富にすることから生まれる資料
  2. 心の中でこれらの資料に手を加える
  3. 孵化段階 ー 意識の外で何かが自分で組み合わせの仕事をやるのにまかせる
  4. アイデアの実際上の誕生
  5. 現実の有用性に合致させるために最終的にアイデアを具体化し、展開させる段階

二、三の追記

アイデア作成の貯蔵庫の中の一般的資料の貯えを多く持つこと

著者がニュー・メキシコに住んでた時、インディアンの生活/アメリカのスペイン人の歴史/民芸/原住民たちの民族的風習などを含む新しいテーマ全般に興味を覚えるようになった
そこから、その地方の物産の中のいくつかを通信販売することについて2、3のアイデアが生まれ、ちょっとしたビジネスにまでつながったらしい

一般的な知識から商売を始めるためのアイデアが生まれてきただけでなく、個々の広告のための特殊なアイデアの全てまでが同じソースから生まれてきた
インディアンの伝承やスペインとアメリカの交渉の歴史、スペイン語、手工芸哲学などなどの知識をそれ自身のために興味を持っていた

年齢を重ねることは、本人が活動的でいきいきとした感情生活を放棄しない限り、自分の貯蔵庫を豊富にするのにかなり役立つもの

代理体験は、なにか差し当たっての目的のために勉強するのではなくて、それ自身の目的のために追求する時に一番よく集めることができる

経験を直接的間接的にたえず広めていくことはアイデアを作成するどんな職業にも極めて大きな影響力を持っている

「アイデアが作られる全過程/方法」は資料が豊かに貯蔵されて素早く事物の関連性を発見し、アイデアを作り出しうる心を生み出す

言葉はそれ自身、アイデアである
言葉は人事不省に陥っているアイデアだといってもいい
言葉をマスターすると、アイデアはよく息を吹きかえしてくる

言語意味論(セマンティックス)
言葉を自分の語彙の中に持っていると、実際的価値の高いシンボルとしての言葉の使用について数々のアイデアを手に入れることになる
※セマンティックスについての説明は「思考と行動における言語」という本が参考になる

言葉はアイデアのシンボルなので、言葉を集める事によってアイデアを集めることもできる

アイデア作成過程について理解を深めるのに役立つ本

思考の技術 ー グラハム・ワラス

科学と方法 ー H・ポアンカレ

科学的研究の技術 ー W・I・B・ビーバリッぢ

訳者の解説

「方法序説」 ー デカルト

知的な仕事をする場合に守るべき規則

  1. 明証
  2. 分析
  3. 総合
  4. 枚挙

明証

注意して、即断と偏見をさけること

分析

自分の研究しようとする問題を、できる限り多く、最もよく解決するのに必要なだけの数の小さい部分に分ける

総合

自分の思想をある順序に従って導くのがよい
最も単純で最も容易なものからはじめて、次々と段階をのぼるようにして、複雑なものの認識へとすすむがよい
それ自体としてはお互いに何の順序もないものでも、ある考えにもとづいて順序正しく配列するが良い

枚挙

何の見落としもなかったと確信できるくらいに完全な枚挙と、全体にわたる再吟味をしなければならない

分析、総合、枚挙が「アイデアが作られる全過程/方法」の1、2、5に対応する

「科学と方法」 ー ポアンカレ

豊かなアイデアにたどり着くのに必要なのは「美的直感」
美的直感をさらに分析すると、「これまでは無関係と思われていたものの間に関係があることを発見すること」が美的直感
これは、「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせである」という考えを更に具体化したもの

中庸について
「方法序説」 ー デカルト

人々はそれぞれの人生の大目標をもっており、その実現に全力を注いでいる
しかし一方で、人々は日常的な生活を生きなければならない
この場合、日常的なことがらの一つひとつについて熟考するのは頭脳と時間の浪費でもある
どうでも良いことについては中庸の道を選ぶ事によって、じぶんたちの人生の大目標に全力を集中し得る
中庸は積極的な徳目である

日々アウトプットすることを自分との約束ごとにして毎日続けると他人が聞いて驚くような結果につながる可能性は大きい

訳者が考える自己実現の人生

  1. 好きなことをやり、
  2. それで食べることができ、
  3. その上それが他人のためにもいささかの役に立った人生

が自己実現の人生で、理想の人生である

方法論や道具はそのためのものであり、本末を転倒してはならない

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