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Created February 20, 2016 07:57
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ソルダーガールズ
初めての学園祭に向けて
花の落ちてしまった桜、まだ制服に着られている新入生―
桜木学園、そこでの毎年の、もう私にとっては5回目の光景。
私は、北陽翔子(ほくようしょうこ)。つい一ヶ月前に高校2年生になったばかり。
仄かにヤニの匂いのする部室ではぁ、とため息を一つ吐く。
もちろんタバコなんて吸わない。はんだに含まれているヤニの匂いだ。
なんと言っても私は物理部の副部長。
といっても部員は4人だけの小さな小さな部活なのだが。
この学校―中高一貫の所謂名門お嬢様学校などにはとても似合わない、私たち4人が中1の頃に作った部活。
そして、ほんの数週間前に部員は5人になった。
そう、5年目にして、ついに新しい部員が入部してくれたのだ。
しかし、それが今の私たちの悩みの種。
「やっぱり、今年の学園祭が一番のチャンスだよ」
部室に置かれた椅子に座り、そう呟くのは花里雫(はなざとしずく)、小学校の頃からの、私の大親友だ。
なぜ、部員が入ったことが私たちの悩みなのか。
それは、このままだとこの部活が無くなってしまうからだ。
この学校では、部員数が3人以下だと即廃部。もちろんこのままだと2年後に私たちは学校を卒業、そしてこの部活も廃部だ。
それに私たちもそれでもいいと考えていた。
私たちがこの学校にいた6年間だけの、学園の記録の片隅にだけ乗っている―そんな部活で。
でも、もう違う。
まだ数日一緒に居ただけだけど、それでも可愛い後輩。
彼女を1人残してこの部活を廃部にしていい訳なんて、あるはずが無い。
だから私たちは考えている。こんな物理部とは無縁な学校で、どうにかしてあと2人以上の部員を得る方法を。
私たちは今日、その事を話し合おうとしていたのだ。
私が雫と話し始めようとした時。
「翔子さん、痛いです熱いです、痛いですよ!!」
そう慌ただしく叫びだしたのは、その後輩、西宮春(にしみやはる)。
どうせ半田ごてで火傷をしたのだろう。
「さっさと外の水道で冷やしてきなさい、気をつけなさいと言ったでしょう。」
そう私が言うと、彼女は「痛い〜」と叫びながら走り去った。
それを見送ると、私は雫へと向き直る。
「そうね、やっぱり学園祭しかないわね。でも後2ヶ月、あまりすごい事はできないわ。」
学園祭。7月始め、夏休みの始まる前に行われるそれは、この学校最大のイベントだ。
私たちは物理部としては出し物をいままで出していなかったが、今年は出そうという話になっている。
「う〜ん、でも後2ヶ月で出来ることってなにがあるかな」
そう悩んでいると、
「だったら、イライラ棒はどうかな!私たち5人が協力すれば、なんとかなるはずだよ!」
そう言うのは、松島果穂(まつしまかほ)。いつも明るい元気な娘。
実は私たちは4月終わりに、とりあえず他の物理部の出し物を見ようと、とある男子校の学園祭を見に行ったのだ。
男とロクに話した事の無い私たちは次から次へと来るナンパに怯えながら、それでもなんとか物理部にたどり着いた。
彼女はそこにあったイライラ棒に心を奪われたのだろう。
「そうね果穂、確かにイライラ棒は名案かもしれないわね。でも本当に後2ヶ月で間に合うかしら。」
「いや!あれは結局は針金と棒だけだよ翔子ちゃん、十分間に合うよ!」
イライラ棒―それは、針金で作られた細いコースに、壁に触らないように棒を通していくゲーム。
「でも、コースを考えたり針金を曲げたりするの、試行錯誤してたら結構時間掛かっちゃうと思うなぁ」
ギィ、とドアをあける音。
「ごめんなさい、教室の掃除担当だったから遅れちゃいました」
そう言いながら入ってきたのは物理部部長、高峰詩織(たかみねしおり)。部員で技術力は最も高いし、優しい。私が密かに憧れている人だ。
「ところで、今までの話し合いの経緯を教えてくれると助かるのですけど…」
「今のところ学園祭でイライラ棒を作るか、悩んでるの。どう思う?」
私が説明すると、彼女は目を輝かせて
「イライラ棒!それはいいですね!是非是非やりましょう!」
それを聞いた私たちは、早速イライラ棒を作るための話し合いを始めた。
彼女の楽しそうな声には不思議な力が有る。
聞いていると、なんだか私たちも作りたく、そして作れるような気持ちになってしまうのだ。
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