調査するのは
- 疫学(対象患者の層:マーケティング用語で分類 例:F2, M1層など)
- 症状
- 原因
- 治療法
- 症状から考えられるニーズ
- ファブリー病
- 多発性硬化症
- 先端巨大症
- クローン病
- 神経因性骨盤臓器症候群
- 骨髄増殖性腫瘍
- 鉄過剰症
- 線維性筋痛症
- レット症候群
- マルファン症候群
- 視神経脊髄炎
- 非典型溶血性尿毒症症候群 (aHUS)
- 低ホスファターゼ症 (HPP)
- 発作性夜間ヘモグロビン尿症 (PNH)
ファブリー病(英: Fabry disease)とは、細胞内リソソーム酵素の1つであるαガラクトシダーゼの活性が欠損・もしくは低下して生じる糖脂質代謝異常病である。 ファブリー病には2種類あり、その内の1つは1898年にドイツの皮膚科医であるヨハネス・ファブリーが最初に報告した古典的ファブリー病で古典的ファブリー病には全身の症状がある。 もう1つのファブリー病は最近明らかになったものであり、主に心臓が障害される。このファブリー病は古典的ファブリー病と区別して、心ファブリー病と呼ばれている。
αガラクトシダーゼは「GL-3(グロボトリアオシルセラミド、別名セラミドトリヘキソシド:CTH)」という糖脂質を分解する働きを持ちますが、活性が不十分だと分解されなかったGL-3が徐々に全身の細胞や組織、臓器に蓄積していきます。蓄積したGL-3がある一定量を超えると、疼痛を含む神経症状、被角血管腫(ひかくけっかんしゅ)、角膜混濁(かくまくこんだく)などのほか、心機能障害、腎機能障害など、さまざまな症状が出現します。
Fabry病は、稀な疾患と考えられている。本邦における頻度は不明であるが、欧米では40,000人~117,000人に1人と推測されている。
医薬品名:「ファブラザイム®点滴静注用 5mg」「ファブラザイム®点滴静注用 35mg」 企業名:ジェンザイム 用法用量: 通常、アガルシダーゼベータ(遺伝子組換え)として、1回体重1kgあたり1mgを隔週、点滴静注する。 薬価:
35mg -> 726768円 5mg -> 129964円
部位 | 症状 |
---|---|
皮膚症状 | 被角血管腫、下肢のリンパ浮腫 |
循環器症状 | 心筋肥大、弁膜症(特に僧房弁)、不整脈、虚血性心疾患、刺激伝導障害 |
眼症状 | 角膜の渦巻き状混濁、結膜の静脈怒張、網脈中心動脈閉塞症 |
耳症状 | 耳鳴り、めまい、難聴 |
消化器症状 | 腹痛、下痢、虚血性腸炎 |
腎症状 | 蛋白尿(初期症状)、腎不全 |
神経症状 | 四肢の痛み、低汗症、脳梗塞、頭痛 |
一般社団法人 全国ファブリー病患者と家族の会 Fabry NEXT ファブリー病に関する情報共有と交流 Fabry NEXT(ファブリーネクスト)は、ファブリー病に関係する方々の情報交換と交流を目的とした支援団体です
大日本住友製薬 ファブリー病広場 ライソゾーム病の症状や治療に関する情報サイト「LysoLife」‐ライソライフ‐
多発性硬化症は、脳や脊髄、視神経のあちらこちらに病巣ができ、様々な症状が現れる病気です。MSになると多くの場合、症状が出る「再発」と、症状が治まる「寛解」を繰り返します。 なお、多発性硬化症は英語で“Multiple(多発する)Sclerosis(硬化)”といい、その頭文字をとって“MS(エムエス)”と呼ばれています。MSは厚生労働省が指定する「特定疾患」の1つです。
MSの症状はどこに病変ができるかによって千差万別です。 視神経が障害されると視力が低下したり、視野が欠けたりします。 視神経のみが侵されるときは球後視神経炎といって、多くの患者さんは眼科にかかります。 その一部の人が後にMSとなります。
- 球後視神経炎のときは目を動かすと目の奥に痛みを感じることがあります。
- 脳幹部が障害されると目を動かす神経が麻痺してものが二重に見えたり(複視)、目が揺れたり(眼振)、顔の感覚や運動が麻痺したり、ものが飲み込みにくくなったり、しゃべりにくくなったりします。小脳が障害されるとまっすぐ歩けなくなり、ちょうどお酒に酔った様な歩き方になったり、手がふるえたりします。
- 大脳の病変では手足の感覚障害や運動障害の他、認知機能にも影響を与えることがあります.ただし,脊髄や視神経に比べると大きいので、病変があっても何も症状を呈さないこともあります。
- 脊髄が障害されると胸や腹の帯状のしびれ、ぴりぴりした痛み、手足のしびれや運動麻痺、尿失禁、排尿・排便障害などが起こります。
- 脊髄障害の回復期に手や足が急にジーンとして突っ張ることがあります。これは有痛性強直性痙攣といい、てんかんとは違います。
- 熱い風呂に入ったりして体温が上がると一過性にMSの症状が悪くなることがあります。これはウートフ徴候といいます。
視神経のみの症状の場合は視神経脊髄炎と呼ばれる
急性期:ステロイドパルス療法 使用薬剤 -> ソルメドロール
対症療法: 有痛性強直性痙攣 -> カルバマゼピン, 手足のつっぱり -> バクロフェン, 排尿障害 -> 抗コリン薬
再発予防: ベタフェロン、アボネックス、イムセラ、ジレニア、タイサブリ
多発性硬化症.jp メルクマニュアル家庭版:多発性硬化症(MS) 多発性硬化症治療ガイドライン2010
先端巨大症は、手足の先端や額、鼻、唇の肥大など、体の一部分が大きくなったり、あごが突出して噛み合わせが悪くなったりする病気です。
大腸及び小腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍をひきおこす原因不明の疾患の総称を炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)といいます。
クローン病も、この炎症性腸疾患のひとつで、1932年にニューヨークのマウントサイナイ病院の内科医クローン先生らによって限局性回腸炎としてはじめて報告された病気です。
クローン病は主として若年者にみられ、口腔にはじまり肛門にいたるまでの消化管のどの部位にも炎症や潰瘍(粘膜が欠損すること)が起こりえますが、小腸と大腸を中心として特に小腸末端部が好発部位です。非連続性の病変(病変と病変の間に正常部分が存在すること)を特徴とします。それらの病変により腹痛や下痢、血便、体重減少などが生じます。
わが国のクローン病の患者数は特定疾患医療受給者証交付件数でみると1976年には128人でしたが、平成25年度には39,799人となり増加がみられています。それでも、人口10万人あたり27人程度、米国が200人程度ですので、欧米の約10分の1です。
10歳代~20歳代の若年者に好発します。発症年齢は男性で20~24歳、女性で15~19歳が最も多くみられます。男性と女性の比は、約2:1と男性に多くみられます。
世界的にみると、先進国に多く北米やヨーロッパで高い発症率を示します。衛生環境や食生活が大きく影響し、動物性脂肪、タンパク質を多く摂取し、生活水準が高いほどクローン病にかかりやすいと考えられています。喫煙をする人は喫煙をしない人より発病しやすいと言われています。
クローン病の症状は患者さんによってさまざまで、侵される病変部位(小腸型、小腸・大腸型、大腸型)によっても異なります。その中でも特徴的な症状は腹痛と下痢で、半数以上の患者さんでみられます。さらに発熱、下血、腹部腫瘤、体重減少、全身倦怠感、貧血などの症状もしばしば現れます。またクローン病は瘻孔、狭窄、膿瘍などの腸管の合併症や関節炎、虹彩炎、結節性紅斑、肛門部病変などの腸管外の合併症も多く、これらの有無により様々な症状を呈します。
クローン病の治療としては、内科治療(栄養療法や薬物療法など)と外科治療があります。内科治療が主体となることが多いのですが、腸閉塞や穿孔、膿瘍などの合併症には外科治療が必要となります。
【栄養療法・食事療法】 栄養状態の改善だけでなく、腸管の安静と食事からの刺激を取り除くことで腹痛や下痢などの症状の改善と消化管病変の改善が認められます。
栄養療法には経腸栄養と完全中心静脈栄養があります。経腸栄養療法は、抗原性を示さないアミノ酸を主体として脂肪をほとんど含まない成分栄養剤と少量のタンパク質と脂肪含量がやや多い消化態栄養剤があります。完全中心静脈栄養は高度な狭窄がある場合、広範囲な小腸病変が存在する場合、経腸栄養療法を行えない場合などに用いられます。
病気の活動性や症状が落ち着いていれば、通常の食事が可能ですが、食事による病態の悪化を避けることが最も重要なことです。一般的には低脂肪・低残渣の食事が奨められていますが、個々の患者さんで病変部位や消化吸収機能が異なっているため、主治医や栄養士と相談しながら自分にあった食品を見つけていくことが大事です。
【内科治療】 症状のある活動期には、主に5-アミノサリチル酸製薬(ペンタサやサラゾピリン)、副腎皮質ステロイドや免疫調節薬(イムランなど)などの内服薬が用いられます。5-アミノサリチル酸製薬と免疫調節薬は、症状が改善しても、再燃予防のために継続して投与が行われます。また、これらの治療が無効であった場合には、抗TNFα受容体拮抗薬(レミケードやヒュミラ)が使用されます。薬物治療ではありませんが、血球成分除去療法が行われることもあります。
【外科治療】 高度の狭窄や穿孔、膿瘍などの合併症に対しては外科治療が行われます。その際には腸管をできるだけ温存するために、小範囲の切除や狭窄形成術などが行われます。
【内視鏡的治療】 クローン病の合併症のうち、狭窄に対しては、内視鏡的に狭窄部を拡張する治療が行われることもあります。
神経因性骨盤臓器症候群 (Neurogenic Intrapelvic Syndrome:以下NIS)とは
かねてより慢性的な肛門の痛みや骨盤の痛みを訴えて来院される患者様が多くみられ、仙骨や尾骨・靭帯・筋肉などの痛みと考えられていました。
あちらこちら病院を受診されても原因が分からず、治らないため長い間苦しんでおられる方も少なくありません。 しかし、よく観察すると、腰椎から出て肛門に至る仙骨神経に沿って圧痛ある硬結を認め、ここから痛みが発生していることが分かりました。また、この中には肛門の働きの異常(便・ガス漏れなど)、直腸の働きや感覚の異常(排便困難、残便感など)、腹部症状(腹痛、腹満感など)、腰痛などの症状を同時に訴えられる方も多くおられます。
神経因性骨盤臓器症候群(NIS)では、多くの場合、5つの症候のいくつかが組合わさって出現しています。症候が組合わさって出現するところは例えるなら感冒に似ています。 各症候単独の疾患との鑑別には、「仙骨神経に沿った圧痛ある硬結」を認めるものとしています。 1.肛門痛 肛門の鈍い痛みで、長く座るのがつらい 肛門疾患(痔瘻・痔核・裂肛等)の痛みとは異なる痛みがある 仙骨の左右で仙骨神経に沿って痛みを伴うしこりがあります。 指診でこの神経を圧迫すると普段感じている痛みと合致します。
2.括約不全(肛門の動きの異常) 便やガスがもれる/下着が汚れる 第2・3・4仙骨神経が合わさって会陰に至っています。この神経は肛門の部分では肛門を開閉する括約筋の運動と肛門の感覚を支配し、前方では外尿道等の運動と感覚を支配しています。この神経が障害されると、肛門の運動や感覚の障害、すなわち「しまりが悪くなり便やガスがもれたり、反対に拡がりが悪く便が出にくくなった等、肛門の運動や感覚の障害が現れます。」
3.排便障害 便が出にくい/便が残った感じがする 排便は直腸や肛門の運動や感覚の働きによって起こります。第2・3・4仙骨から出ている骨盤内臓神経は、直腸の感覚や運動を支配しています。この神経に異常が起こると、直腸の動きが妨げられ、排便が困難になります。また、排尿障害を起こします。
4.腹部症状(結腸機能障害) 腹痛/腹満感 上記の直腸・肛門の感覚と運動の障害のため直腸まで降りてきた便が出ないと、それより上方の結腸が便を出そうとして収縮します。これによってかえって便が出にくくなります。これには交感神経の関与も考えられます。 過敏性腸症候群(IBS)に似た腹痛や腹満といった症状が現れます。
5.腰痛(腰椎の異常からくる症状) 腰痛/下肢のしびれなど 腰椎の骨や軟骨その他の組織の変性により、腰痛のみでなく仙骨神経障害をも伴う場合があります。
薬物療法 痛みにはその種類の程度に応じて、鎮痛剤や他の種類の薬を組み合わせて使用します。排便については便の硬さや腸管の動きを調節します。必要に応じて心療内科に相談のうえ精神安定剤や抗うつ剤も投与します。
理学療法 1.運動療法 姿勢を保つ筋力(骨盤周囲の深層にある筋)を強化していきます。直腸肛門機能回復訓練と併用して行うことで、運動方法が理解しやすくなります。筋力の強化には2週間程度が必要です。そのあと運動方法を覚えて自宅で取り組んでいただきます。
- 物理療法 1)低周波 括約筋を支配する神経の働きが悪くなっている時に、低周波の電気刺激を与えて括約筋を活性化させたり、神経の痛みを和らげます。 2)近赤外線 体の深部にある神経にまで浸透する近赤外線を当てて神経などの炎症を取り除きます。
3.直腸肛門機能回復訓練 -BF(バイオフィードバック)訓練- 肛門内圧・筋電図などの波形を患者さん自身に確認していただきながら、有効な動作が得られるように訓練します。 これにより肛門の感覚を向上させ、肛門括約筋の筋力を強化し、直腸の感覚や動きを改善します。
心理療法 全身の緊張をとり、心身をリラックスさせる自律訓練法やカウンセリングによる支持的心理療法を必要に応じて実施します。
ハリ治療 血行の改善を促し、個々の症状に合ったツボや圧痛点を選んでハリ治療をし気の流れを良くします。神経機能を調整して愁訴を回復させます。 これにより自然治癒の増強を目的としています。
神経ブロック 腰痛や仙骨神経痛などの痛みの治療には神経ブロックを行います。
※上記以外に、括約不全の原因が括約筋にあれば手術を行なったり、骨盤内臓器が下垂している場合などには各臓器や腹膜底を吊り上げて固定する手術を行います。手術後に理学療法を加えます。
慢性骨髄性白血病(CML:Chronic Myelogenous Leukemia)は、比較的ゆっくり進行する血液のがんで、骨髄増殖性腫瘍の1つに分類されます。フィラデルフィア染色体(Ph:Philadelphia chromosome)という特異な染色体をもっており、この染色体の異常が病態の原因です。
血液中には赤血球、白血球、血小板などの血液細胞があり、それらは、骨の中にある骨髄(こつずい)で血液細胞のもととなる造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)から増殖しながら分化(未熟な細胞が成熟した細胞になること)してつくられます(図1)。造血幹細胞は、骨髄系幹細胞とリンパ系幹細胞に分かれ、前者から赤血球、血小板、各種の顆粒球(かりゅうきゅう)や単球が産生され、後者からBリンパ球、Tリンパ球、NK細胞などのリンパ球が産生されます。
白血病は、このような血液をつくる過程で異常が起こり、白血球ががん化した細胞(白血病細胞)となって無制限に増殖することで発症します。白血病細胞が骨髄に蓄積して正常な血液をつくる作用を妨げ、また血液の流れに乗って脾臓(ひぞう)や肝臓などに進入し、さまざまな症状を起こします。
血液細胞は、通常は一定の数に保たれていますが、骨髄の働きが病的に盛んになると、赤血球あるいは血小板が増加することがあり、これらの病気を総称して「骨髄増殖性腫瘍」と呼びます。
慢性骨髄性白血病も骨髄増殖性腫瘍の1つに分類され、その他の病型としては真性多血症、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症、慢性好中球性白血病、慢性好酸球性白血病・好酸球増多症候群などがあります。
慢性骨髄性白血病以外の骨髄増殖性腫瘍の経過は、比較的ゆっくりで特に目立った症状がなく、健康診断などの血液検査で発見されることがあります。治癒(ちゆ)は困難な場合もあるため、治療の目標は、検査値を正常に近づけて、通常の日常生活を送れるようにすることを目指します。治療前は、検査値の異常が著しい時期に合併症を起こす場合もありますが、治療を開始して赤血球、白血球、血小板などの検査値が安定してくると、症状がなくなり、通常の日常生活を送ることができます。
主な疾患として、真性多血症、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症があげられます。真性多血症では、多くの場合は自覚症状がありませんが、赤血球の増加によって赤ら顔になったり、白血球中に含まれるヒスタミンにより全身にかゆみが出る場合や脾臓が大きくなることがあります。本態性血小板血症では、増加した血小板の機能が高められる場合と抑えられる場合があり、血栓症や出血症状がみられます。その結果、痛みや冷感を伴い、紫斑(しはん)が生じます。原発性骨髄線維症では病気が進行すると貧血になり、脾臓の増大が進むと腹部が張る症状が出てきます。
真性多血症と本態性血小板血症では、血栓症や出血を予防することが治療目標となります。血栓症の合併が予後と関連するため、血栓症のリスク(危険度)を判定することが必要です。原発性骨髄線維症では、病期が急性期へ進行すると、予後に影響してくるため、さまざまな予後のリスク分類を用いて、治療方法を検討します。
図2に、真性多血症・本態性血小板血症・原発性骨髄線維症の治療方法を大まかに示しました。担当医と治療方針について話し合う参考にしてください。
(1)真性多血症 赤血球数の増加による血栓症に注意します。血を抜き取る瀉血(しゃけつ)を行い、ヘマトクリット値を低下させますが、瀉血を繰り返すと鉄欠乏状態になることがあります。鉄欠乏状態になってもヘマトクリット値が十分に低下しないときには、ヒドロキシウレア(抗がん剤)でコントロールします。 (2)本態性血小板血症 血を固める作用のある血小板が増加するため、血栓症に注意することが重要です。少量のアスピリンを内服し、血小板が集まって固まる作用を抑制します。緊急に血小板数を下げるために、成分採血により血小板除去を行うこともあります。真正多血症と同様に、瀉血や抗がん剤治療を行う場合もあります。 (3)原発性骨髄線維症 症状がまったくなく、検査値も基準値に近い場合は、特に治療をする必要はありません。貧血が進行するようになった場合は輸血で血液を補い、造血を促進するとされるタンパク同化ホルモン剤の投与や副腎皮質ステロイドホルモンを使用します。脾臓が非常に大きな場合は、手術で摘出することがあります。
鉄過剰症(てつかじょうしょう、英:Iron overload)は、体内に鉄が過剰に蓄積されることによって起こる症状。急性の鉄中毒(Iron poisoning)とは区別される。 骨髄異形成症候群・再生不良性貧血といった難治性貧血の治療で輸血を受け、鉄が過剰に体に取り込まれることによって発症する。また、遺伝子疾患によってヘモクロマトーシス(下記参照)が引き起こされる場合もある。 特有の自覚症状は無いが、進行すると肝障害や心不全などの臓器障害を引き起こす危険性がある。 細かくは、肝臓や脾臓に鉄が滞留する血鉄症(Hemosiderosis)と肝臓、膵臓、皮膚に貯蔵鉄が沈着するヘモクロマトーシス(Haemochromatosis)に分けられる。
瀉血療法:遺伝性ヘモクロマトーシスの場合は、定期的に瀉血を行う。 鉄キレート療法:体内から過剰な鉄を排出させることで、輸血による鉄過剰症の致死的な臓器障害リスクを低減し、生命予後の改善が期待される。 薬剤:デフェラシロクス(商品名:エクジェイド)、メシル酸デフェロキサミン
線維筋痛症 (FM)は関節、筋肉、腱など身体の広範な部位に慢性の「痛み」と「こわばり」を主症状とし、身体の明確な部位に圧痛を認める以外、診察所見ならびに一般的な臨床検査成績に異常がなく、治療抵抗性であり、強い疲労・倦怠感、眼や口の乾燥感、不眠や抑うつ気分など多彩な身体的訴えがみられ、中年以降の女性に好発する原因不明のリウマチ類似の病気です。 線維筋痛症は新興疾患ではなく、古くから同様の病気の存在は知られており、心因性リウマチ、非関節性リウマチ、軟部組織性リウマチ、結合組織炎、あるいは結合組織炎症候群などで呼ばれていましたが、1990年アメリカリウマチ学会による病気の概念と定義、分類(診断)基準が提案され、線維筋痛症あるいは線維筋痛症候群が一般的となりました。一方、我が国では数年前までは国民のみならず医療者間でもこの病気に対する認知が極めて低いことが問題でした。しかし、最近急速にこの病気に対する認知度が医療者間で高まってきましたが、診療を避ける医師が多いことが大きな問題となっています。
アメリカでは一般人口の約2%(女性3.4%、男性0.5%)に線維筋痛症がみられるとされており、他の欧米の報告でもこの数値に近い有病患者率を示していますが、我が国での有病患者数についてはこれまでまったく不明でした。そこで、厚生労働省の線維筋痛症に関する調査研究班による住民調査によって線維筋痛症患者数は一般人口当たり1.7%、すなわち約200万人と推計され、欧米の患者数とほぼ同じであることが示されました。これは関節リウマチが我が国ではおおよそ70万人であることに比して、明らかに頻度の高い病気です。2011年我が国でインターネット調査が行われ、我が国の線維筋痛症の有病率は先の住民調査と同様に人口当たり2.1%と推計されました。しかし、この病気の治療や管理に一定のスキルが必要とされることから医療機関やリウマチの専門医を受診している患者数はわずか年間4,000名前後であり、有病者数との間に大きな乖離があることも特徴です。
性差は圧倒的に女性が優位であり、わが国では男:女=1:5(欧米1:8~9)です。平均年齢は51.5±16.9(11~84)歳で、年齢とともに増加し、55~65歳代にピークを認めます。小児は全体の4.1%にみられ、12%が65歳の高齢者が占めるとされています。また、発病年齢の平均は43.8±16.3(11~77)歳です。
線維筋痛症の中心症状は全身の広範な慢性疼痛と身体の一定の部位の圧痛です。疼痛は身体の中心部に集中する傾向があり、全身性のこわばりをしばしば伴い、症状は朝に悪化するなど関節リウマチに類似します。また、慢性痛であっても、日差・日内変動があり、しかも激しい運動や逆に不活動、あるいは睡眠不足、情緒的ストレス、天候などの外的要因によって悪化することが多く、他の疾患に随伴する続発性の線維筋痛症では元の病気の悪化・再燃が線維筋痛症をも悪化させます。 一方、疼痛とこわばり以外に、多くの場合にさまざまな随伴症状を伴うことが知られています。すなわち、身体症状として種々の程度の疲労・倦怠感、微熱、口や眼の渇き、手指の腫れ、皮膚の循環障害(リベド症状、レイノー現象など)、寝汗、過敏性腸症候群様症状(腹痛、下痢、便秘)、動悸、呼吸苦、嚥下障害、膀胱炎様症状、体重の増減、気温への順応困難、顎関節症症状、各種アレルギー症状、心雑音(僧帽弁逸脱)、低血圧症状など、神経症状には頭痛・頭重感、四肢の感覚障害、手指ふるえ、めまい、浮遊感、耳鳴り、難聴、筋力低下、まぶしさ、みにくさなどがあり、精神症状には不眠(睡眠時無呼吸症候群を含む)、抑うつ気分、不安感、焦燥感、集中力低下、意識障害、失神発作などがあります。臨床症状のうち日本人では欧米症例に比して、口や眼の乾燥、疲労・倦怠感、抑うつ気分、頭痛、不安感の出現頻度が高く、手の腫れは低くなっています。 一方、線維筋痛症は先行する他の疾患に合併して発症することがあり、続発性(二次性)線維筋痛症といわれ、他の疾患を併発しない場合は原発性(一次性)といわれ、我が国では3:1と原発性が優位であり、続発性の基礎疾患として、リウマチ性疾患が比較的多く、関節リウマチ、変形性関節症、腰臀部痛症候群、頚肩部痛症候群などの頻度が高く、その他に全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、強直性脊椎炎、甲状腺機能低下症などがあります。
線維筋痛症は原因不明のため、現状では残念ながら根治療法はありませんが、これまで数多くの薬物療法や非薬物療法が試みられてきました。治療原則は不必要な治療をできるだけ排除し、患者・家族に病気を理解し、受容し、睡眠の調整、適正な有酸素運動を行い、医療側・家族や周囲が患者を支援することです。 薬物療法は抗うつ薬と抗けいれん(てんかん)薬がしばしば使用される主要薬剤です。抗うつ薬は三環系抗うつ薬よりは副作用の少ないセロトニン選択的再取込阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)やノルアドレナリン作動性選択的セロトニン作動薬(NaSSA)などがもっぱら使用されます。我が国でもいくつかの抗うつ薬の治験が行われており、近い将来保険診療で用いることができます。抗うつ薬は疼痛の下行抑制系を賦活化(ブレーキ作用の強化)して痛みの緩和が期待されます。この薬剤は少量就寝時から始め、必要に応じて増量されますが、うつ病治療とは異なって、大量投与は行われません。一方、抗けいれん(てんかん)薬は従来薬ではなく、ガバペンチン(商品名ガバペン)、プレガバリン(商品名リリカ)などの新規型の抗けいれん(てんかん)薬の効果が注目されており、我が国でも2011年6月から保険適応となり薬物療法としての第一選択薬とされています。リリカ®少量も少量から漸増法で投与されます。発症早期症例の効果はかなり期待できますが、長期難治性で経過した症例では効果は限定的です。主な副作用はふらつき、めまい、眠気、だるさ、体重増加や浮腫などです。その他の抗けいれん(てんかん)薬も保険適応外ですがリリカ®が使用できない症例では処方されますが、そのなかでムズムズ脚症候群の治療薬でありガバペンチン エナカルビル(商品名レグナイト)の効果が注目されています。 一方、急性の痛みなどにしばしば使われる消炎鎮痛薬(非ステロイド抗炎症薬; NSAIDs)や副腎皮質ステロイドは無効であり、オピオイド系薬物(麻薬性、非麻薬性)も効果が限定的ですが、そのなかでトラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン(商品名トラムセット)は慢性疼痛として線維筋痛症でもしばしば使用されます。その他にわが国では線維痛症の基礎薬物療法としてワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(商品名イロトロピン)が使用されますが、単独では効果が弱く、点滴、トリガー治療として、あるいは他剤との併用が行われます。しかし、承認保険容量では不十分です。本剤も疼痛の下行抑制系の賦活作用により疼痛緩和に働くとされています。さらに、生薬である附子単独、あるいは附子を含む各種方製剤も使用されますが、前述の薬剤ほど効果に関して明確ではありません。。 一方、非薬物療法として鍼灸療法、マッサージ、リラクゼーション、ヨガ、気功などを含めた各種代替・補完医療も行われています。このなかで、科学的に有効性の確認されているのは認知行動療法と有酸素運動療法ですが、効果は薬物療法に比して弱く、また我が国では積極的に行える医療体制ではありません。 線維筋痛症の治療目標は痛みの完全な消失でなく、痛みやその他の自覚症状の緩和をはかり、病気発症で失った生活機能の改善を目指すことです。したがって、病気の理解と受容が重要であり、治療により日常生活機能(ADL)、生活の質(QOL)の改善、向上を目指すことが目標です。 このような観点から日本線維筋痛症学会では医療者を対象として「線維筋痛症診療ガイドライン」を作成し、我が国の線維筋痛症を取り巻く医療環境の変化を速やかにガイドラインに取り入れるために、2009,2011, 2013年と2年ごとに改定しています。
レット症候群は、1966年Andreas Rett(ウィーンの小児神経科医)により初めて報告された疾患である。本症は神経系を主体とした特異な発達障害である。初発症状は乳児期早期に外界への 反応の欠如、筋緊張低下であるが、それらの症状が軽微なため異常に気付かないことが多い。乳児期後半以後、手の常同運動を主体とする特徴的な症状が年齢依 存性に出現する。治療法は現時点では対症療法のみである。原因遺伝子はMethyl-CpG-binding protein2 遺伝子 (MECP2)である。MECP2の基礎的研究が進められているが、レット症候群の病態解明までには至っていない。
患者数(推定値)1030人、有病率(推定値)0.008%(20歳以下女性)(平成21年度「レット症候群の診断と予防・治療法確立のための臨床および生物科学の集学的研究」(H21-難治-一般-110))の全国調査)。
本症の発症は乳児期早期にあり、睡眠、筋緊張の異常、姿勢運動の異常、ジストニア、側彎、情動異常、知的障害、てんかんなどの症状が年齢依存性に出現することを特徴とする。 ”おとなしく、よく眠る、手のかからない子”と表現される如く日中の睡眠時間が長く、外界からの刺激に対する反応に欠けることが特徴である。これらの症状 は通常見逃され、”当初乳児期早期は正常”とされることが多い。 乳児期には抗重力筋の緊張低下があり、そのため運動発達は寝返りから遅れることが多い。特に四つ這い移動の遅れ、または出来ないことが多い。四つ這いの姿 勢は屈曲肢位で交互性に欠ける。独歩も遅れることが多く、生涯不能の例もある。 乳児期後半にそれまで獲得した手の機能の消失と前後して、特異的な手の常同運動が出現する。 乳児期には姿勢ジストニアが出現してくる。小児期以後から出現する側彎はジストニアによると考えられている。 発症早期の情動異常は自閉症との類似性があり、乳児期後半から知的障害が前面に出、多くの場合、最重度の知的障害を呈する。また。頭囲の拡大は乳児期後半より停滞し、幼児期には小頭を呈することが多い。 てんかん発作、特異な呼吸を呈してくることもある。本例は特異な発達障害であり、中高年・老人の症例もみられる。 小児期から思春期にかけて、突然死の発生も知られている。
現在のところ根本的治療法はない。従って治療は対象療法である。例えば てんかんがある場合は抗てんかん薬の投与などである。本症の重要な病態であるロコモーション障害やジストニアに対する理学療法、また、手の常同運動に対し て病態を考えた上での適切な上肢機能の指導なども必要である。情緒面の問題、知的障害に対す種々の工夫、療育等も重要である。 常同運動、異常呼吸に対して薬剤療法も試みられてきているが、有効なものは無い。 側彎が進行した場合、側彎矯正の手術が行われることがある。