(ruby-core:18872の翻訳)
Title: [RIP] Guy Decoux.
こんにちわ。
2008年7月のはじめにGuy Decouxが亡くなりました。 彼の死をみなさんに伝えるのは悲しいことです。53歳でした。 ルーヴシエンヌ(パリ近郊)にある彼のアパートで夜間に火災が発生し、その煙による中毒で彼は亡くなりました。
Guy Decouxは、Moulonの農場(パリの南西にあるMoulonの高台[1])にあるINRA(農業の研究所で、彼は1982から勤務)の植物遺伝子研究部のネットワークとシステム管理者でした。
彼はインターネットの草分け的存在でもありました。 たとえば、彼はOraplexを開発しました。これはOracleからウェブのゲートウェイとしては最も初期のもののひとつです。 彼がデプロイした初めてのウェブサイトはACeDB[2]にアクセスするシステムで、これは1993年の終わりにおこなわれました。 また、例えばProticDB、植物のプロテオミクス[3]データベースのような、バイオインフォマティクスのフリーソフトウェアの開発にも彼は携わっていました。
彼は、90年代にPerlからRubyに乗り換えた開発者たち世代のうちの一人でした。 彼のPerlの習得はすでに素晴らしいものであった一方で、Rubyに関する知識も相当に深く、とても印象的なもので、同じものを使える多くのRubyistは(彼の深い知識の恩恵を受けられるので)幸せものだったと言えます。 GuyはDave Thomasの本、『プログラミングRuby』に貢献しています[4]。 もちろん、彼はcomp.lang.rubyとfr.comp.lang.rubyのニュースグループ作成に対して賛成の投票をした一人でもあります[5]。 彼はいくつかのライブラリをメンテナンスしていました。 PostgreSQLのプロシージャ言語であるPL/Ruby、BerkeleyDBのバインディングであるbdb/bdb1、libbzip2のバインディングであるbz2、Memory-mappedファイルを扱うためのクラスMMapがその例です。
私の知る限りでは、彼はMRIのコミット権をもつ唯一のフランス人でした。 彼がRubyコアチームのオフィシャルなメンバーであったかどうかはわかりません(どこにRubyコアチームのリストがあるかわからないので)。
'ts'(彼のネット上の名義である'ts'は何を意味しているのだろう?)がRubyConfや他のRubyのカンファレンスにいったことがあるかはよくわかりません。 また彼に会ったことがあるフランスのRubyistがいるかどうかも知りません。 彼はミステリアスもしくはシークレットな存在だったのでしょうか? いいえ、たぶん彼はただ控えめな性格だったのでしょう。 彼の同僚は、Guyのことを、控えめで、優しく、頼りになり、プロフェッショナルでとても高い技術力をもっていたと説明してくれました。 ruby-coreやruby-talk上の彼の(ときには少しのユーモアも含んだ)メッセージは、これらのことすべてを表しています。
これはRubyコミニュティにとっての喪失です。
フランスの団体、RubyFranceの名において、私はGuy Decouxの家族と、彼の友人たち、彼の同僚たちに哀悼の意を表します。
-- Jean-FraníÐis.
- [1] : これが彼のシェルプロンプト(インターネット上のGuyのメッセージに見られる)の'moulon'というサーバ名の理由。
- [2] : ACeDBはゲノムのOOとリレーショナルデータベースシステム。
- [3] : 訳注: プロテオーム - Wikipedia
- [4] : 訳注: ProgrammingRubyには「Guy Decoux and Clemens Hintze patiently answered our questions about writing Ruby extensions」とある
- [5] : 訳注: ニュースグループを作るかどうかの投票呼びかける文化が昔はあったみたいで、それに投票した一人でもあったようですね(参考: ruby-list-21713)
訳者補足
彼の世の中に残したライブラリが現在どうなっているのか調べてみた。
- PL/Ruby、bdb、bdb1はknuさんが現在メンテされているようだ。postgresql-plruby、ruby-bdb、ruby-bdb1
- bz2はbrianmarioによってメンテされている。bzip-ruby。
- mmapはknuさんによってメンテされているようだが(ruby-mmap)、rubygemsにはオリジナルのものがaaronとbpot25によって上げられているようだ(mmap - rubygems)。ちなみにこれは訳者がrdic経由で毎日お世話になってるライブラリでもある。
個人的にGuyDecouxとメールのやりとりなどをしたことはまったくないのだが、ruby-talkの彼の返信など読み返していくと、さっとコードを示して回答していく様がとてもカッコイイ…。ほんとうに惜しい人をなくしたのだなと思う。RIP。