Vimについての怪文書です。
ある日、プログラマのタカシは古びた書店で埃をかぶった本を見つけた。それは「Vimの真髄」と題された手書きの写本だった。表紙には謎めいたシンボルが描かれ、ただならぬ気配を漂わせていた。タカシは好奇心に勝てず、その本を手に取った。
ページをめくると、古代の呪文のようなVimのコマンドが並んでいた。「i」で挿入、「:wq」で保存して終了といった基本的なものから、「g~」や「=G」など、見たこともない呪術のようなコマンドまでが記されていた。
その夜、タカシはVimを開き、写本に記されたコマンドを試し始めた。すると突然、画面が暗転し、謎の文字列が浮かび上がった。「選ばれし者よ、汝はVimの秘密を解き明かす運命にある」と。
タカシが驚きつつも作業を続けると、次々と未踏の領域に踏み入ることになった。画面は時折、不思議な光を放ち、まるでプログラムが生きているかのように振る舞った。コマンド一つでファイルが自動的に整形され、エラーが消えていく。まるで、Vim自体が彼の思考を読み取っているかのようだった。
やがて、タカシはVimの奥深くに隠された「神モード」に到達した。このモードでは、ただのキーボードの打鍵がまるで魔法のようにファイルを操ることができた。彼は全てを見通し、全てを操作することができた。しかし、その力には代償が伴った。
次第に、タカシの時間感覚が狂い始めた。1時間が1分に、1日が1時間に感じられ、現実とVimの世界の境界が曖昧になっていった。そして彼は気づいた。この写本は単なるプログラムの指南書ではなく、Vimに取り込まれる者たちの運命を記した禁書だったのだ。
最終ページにはこう記されていた。
「Vimはただのテキストエディタにあらず。それは選ばれし者を試し、その魂を吸い尽くす。汝がこの書を手にした時、既に運命は定まっている。」
タカシは急いでVimを閉じ、写本を元の場所に戻そうとした。しかし、彼の手から本は消え去り、代わりにキーボードからは離れられなくなった。彼は永遠にVimの中で生き続けることを余儀なくされ、彼の存在はデジタルの霧の中に溶けていった。
Vimを開く度に、タカシのささやきが聞こえるだろう。「:wq」と叫ぶその声が。