「カード決済業務のすべて」という本がクレジットカードを取り巻く業務について分かりやすく解説されていたので、学んだことを整理した。 そして、今回は以下の二つの観点でまとめた。
- クレジットカードにまつわるカード決済業務
- 国際ブランドにおけるカード決済ネットワーク
カード取引とは、クレジットカード、デビットカードなどの決済カードをショッピング、または現金引き出しに利用する場合の取引を指す。
カード取引は互いに契約関係にあるカード会社(金融機関)、カード会員、加盟店の3社によって構成される。加盟店自らがカード事業を行う場合、加盟店兼カード会社とカード会員の二者間取引となる。 イシュイング業務とアクワイアリング業務を行うカード会社が異なる場合、四者間取引となる。国際ブランドによるカード取引はこの四者間取引を前提とする。
カード会員・カード会社間
カード会社はカードの利用希望者を会員規約に基づきカード会員として登録し、会員が会員規約を遵守することを約束することを条件に会員にカードを貸与する。
カード会社・加盟店間
カード会社は加盟店とカード利用(受入れ)に関する加盟店契約を締結し、加盟店はカード会員に対して信用販売を行う。加盟店にとってカードによる信用販売は掛売りとなり、加盟店はカード会社から代金の立替払いを受ける。 ただし実際は、加盟店契約に基づき取引に関する債権をカード会社に譲渡した上、債権の譲渡代金から加盟店手数料を減じた額の支払いを受ける債権譲渡の法律構成を取る会社もある。
加盟店・カード会員間
加盟店でカード会員が物品・サービスの代金をカードで支払う際に、加盟店とカード会員との間で売買契約が成立する。
カード会社間
カード会社と会員契約を結んだカード会社と、加盟店と加盟店契約を締結したカード会社が異なる場合がある(四者間取引契約)。 このケースでは国際ブランドが介在することによって、カード会社Aの自社加盟店において、カード会社Bが発行した決済カードの利用が可能になる。A/B間ではカード会員の取引代金の精算などが発生する。
決済カード業務は、カード発行や与信、会員管理などを中心とした会員向けの業務と、カード決済代金の立て替え加盟店契約など、加盟店向けの業務に大きく二分される。 前者を一般にイシュイング、後者をアクワイアリングと呼び、それぞれの業務を行う事業者または事業体はイシュアー、アクワイアラーと呼ばれている。
イシュイング業務は決済カードの会員募集・会員管理、カードの発行・発券、代金回収・債権管理などの業務によって構成されている。
入会手続
入会希望者からの入会申込書の内容をチェックし、預金口座振替依頼書の金融機関への送付、申込者の信用情報の調査、申込者の勤務先等に対する電話での在籍照会などを行い、信用供与によりカード発行が承認されると、発券プロセスに移行する。
初期与信(スクリーニング)
クレジットカード発行の申込みを受けた際には、イシュアーは申込者の信用状況などをチェックし、利用に差し支えがないと判断した場合に信用を供与(与信)し、カードを発行する。 新規申込みの場合は、申込者の年収・住居・勤務先などの情報をベースに社内の信用情報データベース及び個人信用情報機関に照会する。 各社独自の基準により信用供与を行い、利用限度額を決定する。この入会審査のプロセスを初期与信(スクリーニング)と呼ぶ。
発行業務
発行・更新が承認された申込者については、自動的に会員情報データベースに登録される。その際にカード発行に必要な以下のデータが生成される。
-
磁気カード 国際ブランドから割り当てられたBINの範囲からカード番号(PAN)を割り当て、それに付随するCVC, CVVなどのセキュリティコード、有効期限などが生成される。 これらのデータは一般に磁気データ、カード発行データなどと呼ばれる。
-
ICカード(EMV仕様) 磁気データに加え、EMV仕様で規定される各種ICパラメーターの設定が必要になる。 イシュアーが予め設定したパラメーター値に基づき、カードベンダー(印刷会社)はICチップを作成してカード発券作業を行う。
イシュアーはカードの発行後も常にカード会員の属性、利用・返済状況の変化をモニタリングし、利用限度額変更などの販売促進や延滞発生の未然防止を行っている。 クレジットカード業務における途上与信(モニタリング)は、会員がカードを円滑・快適に利用することを軸に、戦略的なリスクコントロールを行うことで、利益極大化とリスク最小化を実現する。
- 静的途上与信
- 限度額管理
- 適用金利管理
- 会員販促
- カード更新管理、再発行管理
- カード利用管理
- 動的途上与信
- 利用限度額の特別対応
- カード利用制限
- カード利用モニタリング
以下のような不正使用へ対策をする。
- 第三者不正
- 盗難・紛失
- カード偽造・変造、番号偽造
- カード番号盗用(なりすまし)
- カード未着不正
- 本人不正
- 虚偽申込み
- 偽装紛失
- 本人買回り
- クレジット枠現金化
- 加盟店結託
- 架空売上
- 金融取引
アクワイアリング業務は、決済カード加盟店の開拓、加盟店への売上代金の支払い、加盟店管理などの業務によって構成される.
イシュアー | アクワイアラー | 加盟店 | 会員 | イシュアー | ||||
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← | 売上取扱データ | ← | 売上取扱データ | ← | カード利用 | ← | 利用代金請求 | ← |
→ | 売上代金支払い | → | 売上代金支払い | → | 商品・サービスの提供 | → | 支払い(自動振り込み) | → |
加盟店契約とは、加盟店になろうとする法人・個人及び団体がアクワイアラーの定める規約を承認してアクワイアラーに加盟の申し込みを行いカード加盟店としての地位を得る契約を指す。 加盟店は決済カードを所有する会員が、加盟店規約に定められたカードを提示して物品などの販売、サービスの提供を求めた場合は、加盟店規約に従って会員の利用限度額の範囲内で信用販売を行う。 また、加盟店はアクワイアラーにカード売上額の一定割合を加盟店手数料として支払う。
加盟店については、カード会員が加盟店で安全に、かつ安心してカードを利用できるように、割賦販売法、特定商取引法などの法的規制に加えて、アクワイアラーが加盟店規約や自主ルールなど一定のルールを設けており、それに基づき加盟店の適格性を総合的に判断している。
国際ブランドは、不正取引やチャージバックが多いなどの理由により加盟店に相応しくないと認定した場合、該当加盟店と加盟店契約を締結したアクワイアラーに制裁を科すルールを策定・運用している。 これは、アクワイアラーがペナルティを避けるために加盟店管理を徹底することを期待しているからである。 一方、加盟店管理には、決済カードの利用が円滑に行われる環境を確保するという目的もある。このため、アクワイアラーは加盟店に対するカード処理事務の指導、加盟店ステッカー、各種帳票類、決済端末の整備も、加盟店管理の一環として行っている。
加盟店業務で管理する債権には、アクワイアラーが譲り受けた(に譲渡された)加盟店による信用販売の売上債権(債権譲渡スキームの場合)のほか、加盟店規約違反による買戻しの特約により生じた返金の債券、加盟店に対する物品販売の請求、損害賠償請求などがある。
売上債権
加盟店は、カード会員に対する信用販売により売上債権を取得し、それをアクワイアラーに債券譲渡する。 債券譲渡の方法は、加盟店が売上表を支払い区分・種別ごとに取りまとめ、一定期間内に売上集計表を、または決済処理端末から売上データをアクワイアラーもしくはアクワイアラーが指定する先に送付・伝送することで行う。 アクワイアラーは売上債権の買取代金から加盟店手数料を差し引いた額を加盟店に支払う。債券譲渡と債券買取代金の支払い(加盟店から見れば、売上票の送付と売掛金の入金)は一定のサイクルで行われている。
買戻し特約などによる債権
加盟店規約に違反があった場合や、売上票が不正な場合、アクワイアラーは売上債権の買取りを取り消すことができる。 その場合、アクワイアラーは債権買取代金の支払いを拒絶できる。すでに加盟店が該当債券の代金を受領していた場合は、加盟店は直ちにアクワイアラーに返金しなければならない。加盟店が遅滞なく返金しない場合、次回以降の加盟店に対する支払いと相殺される。
国際ブランドとは、世界規模で展開する決済サービススキームを主催、所有或いは管理する団体を象徴的にいい、クレジットカードの代表的なブランドのビザ、マスターカードなどがその例である。 国際ブランドの中には、決済ネットワークの管理運営、ブランド規約の策定などいわゆる国際ブランド業務に専念し、自らクレジットカードの発行や加盟店獲得など(カード業務)は行わないものと、国際ブランド業務に加えカード業務も行う二種類がある。
- 国際ブランド会社(Visa方式)
- 例
- ビザ・インク、ビザ・ヨーロッパ
- マスターカード・ワールドワイド
- 中国銀聯
- 主な業務
- 国際決済ネットワークの管理運営
- 国際ブランドロゴの管理
- ブランドルールの策定と管理
- エリア
- 世界各地
- その他
- 世界で利用できるカード番号帯の利用権をISOから取得している
- 例
- 国際ブランド会社(AMEX・JCB方式)
- 例
- ジェーシービー
- アメリカン・エクスプレス・インターナショナル
- ダイナースクラブ(シティーカードジャパン)
- 主な業務
- 国際決済ネットワークの管理運営
- 国際ブランドロゴの管理
- ブランドルールの策定と管理
- カード発行業務
- 加盟店業務
- ローン等
- エリア
- 世界各地
- その他
- 世界で利用できるカード番号帯の利用権をISOから取得している
- 国際ブランド業務に加え、カード会社としての業務を実行し、独自に加盟店開拓やカード発行も手がける
- 例
ブランド資産:決済ネットワーク
決済ネットワークは、主に国や地域を跨ぐ取引(カード発行国と利用された国が異なる場合の取引)で用いられるもので、オーソリゼーションやクリアリングやセツルメントなどのための電文を、取引発生国からカード発行国に送り届ける役割を担う。
地域制とメンバー制による合議プロセス
国際ブランドの組織は地域制をとっており、本部が国際ブランドを取りまとめ、それが地域そして国を従える体験である。
国際ブランドメンバー
ビザやマスターカードと直接メンバー契約を締結した企業を(国際ブランド)「メンバー」と呼ぶ。 国際ブランドメンバーは、メンバー契約に基づき国際ブランドに対して所定の会費やカード決済の取引量に基づくフィーを支払う他、後で述べるインターチェンジシステムに従いメンバー相手間で日々のカード決済代行を相殺決済(セツルメント)している。 また、国際ブランドメンバーは、ビザやマスターカードのブランドロゴを用いてカード発行業務(イシュイング)、加盟店業務(アクワイアリング)をすべて、或いは選択的に実施することができる。 しかしその業務は国際ブランドが定める厳格なルール(国際ブランドルール)に従うことが求められる。
インターチェンジとは、国際ブランドの決済ネットワークを経由する、イシュアーとアクワイアラーの間におけるカード取引のデータ交換をいう。これを「売上交換」と呼ぶこともある。 国際ブランドはその運営に当たって、国際ブランド自身とイシュアー、アクワイアラーを分離するスキームを構築した。 このスキームには、特定企業にインフラ設備の責任や利益が集中することなく、メンバー企業が協力して分散投資し、利用環境設備を共同で行うため、投資リスクが分散されるメリットがあるからである。
このインターチェンジにおけるカード処理はオーソリゼーション、クリアリング、セツルメントの処理に大きく分けられる。
- オーソリゼーション
- 加盟店でのカード利用をイシュアーが承認(或いは否認)する処理(①, ②)
- 加盟店は該当取引について(不正や瑕疵がなければ)アクワイアラーから支払いを受けることができる
- イシュアーはオーソリゼーションにより不正なカード利用を未然に防ぐことができる
- クリアリング
- 加盟店でのカード利用内容(利用金額、日時、商品分類など)をイシュアーに報告し、代金を請求する処理
- 加盟店・アクワイアラー間の売上精算(③)とアクワイアラーとイシュアー間の売上精算(④)に分かれ、国際ブランドは後者を仲介する
- セツルメント
- 利用代金の支払い(イシュアー→アクワイアラー、及びアクワイアラー→加盟店)処理
- アクワイアラー・イシュアー間の精算(⑤)と、アクワイアラー・加盟店間の精算(⑥)に分かれ、国際ブランドは前者を仲介する
加盟店 | アクワイアラー | 国際ブランド | イシュアー | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
オーソリゼーション | ← ②応答・承認/否認 | -------- | -------- | -------- | ①取引の承認要請 → | ||
クリアリング | ③売上清算 → | -------- | -------- | ④売上精算 → | |||
セツルメント | ← ⑥清算(支払い) | ← ⑤清算(相殺) | -------- | ⑤清算(相殺)→ |
オーソリゼーションとは、加盟店での顧客(カード保有者)のカード取引について、その販売承認を取引ごとにイシュアーが承認、判定する処理を言う。
オーソリゼーションはクレジットカードの利用価値に応じて、ショッピングでのカード決済をチェックするショッピングオーソリと、CD・ATMによる現金取引をチェックするキャッシングオーソリの二つに大きく分類できる。
常時、イシュアーは会員の返済状況やカード利用状況などをモニタリング、データベースで管理している。 会員のカード利用時に加盟店からオーソリ電文を受け取ったイシュアーは、会員情報をもとにカード有効期限のチェック、セキュリティコード(CVC, CVV)チェック、盗難・偽造カードチェック、与信限度枠チェックなどを行う。 イシュアーはオーソリによるチェックをクリアしたカード取引に対して、取引を承認した旨を応答する。 一方、アクワイアラーは加盟店との契約に関わる情報を管理しており、指定された支払方法が契約内容と異なっていないか、不正な加盟店ではないかなどをオーソリ時にチェックしている。
イシュアーがオーソリにより売上を承認した後、アクワイアラーが加盟店から受け取った売上データをもとに売上データの電文をイシュアーに伝送する取引フローが一般的である。 このようなオーソリゼーションと売上決済の電文が分かれる方式をデュアルメッセージと呼んでいる。
オーソリ電文の種類
オーソリ電文は売上承認の電文だけでなく、取引の実情に即した電文が設定されている。
- ショッピング
- 事前承認(与信)
- 事前に利用金額が確定しないサービスに対して発生し、仮の利用金額でその後のカード決済を保証する電文
- 売上
- 確定した利用金額でのオーソリゼーション、売上承認
- 取消・返品
- 対象となる取引を検索し、取消または返品の可否を判定する
- 障害取消
- 元取引の引当を行い、元取引が存在する場合は残高の戻し処理を行う
- 事前承認(与信)
- キャッシング
- 残高紹介
- 現時点で貸付可能な金額を算出する
- 貸付
- 確定した利用金額でのオーソリゼーション
- 障害取消
- ショッピングの障害取消に同じ
- 残高紹介
予め想定される決済金額の最大値で取得する事前承認のオーソリもあり、デポジット型オーソリと呼ばれることもある。 このようなオーソリは、主にホテルやレンタカーなど提供する役務の金額が大きい反面、金額が役務提供後に確定する加盟店に見られる。 ホテルの場合であれば、到着日のうちに宿初日数中に考えられる一般的な費用について、与信を確認すると同時に与信枠を確保しておくためにオーソリを行う。 このようなケースでは、チェックアウト時に改めて加盟店が売上を確定させた金額でオーソリを取得するため、オーソリが二重に存在することになる。
オーソリ電文の伝送経路
イシュアーとアクワイアラーが異なる場合は、オーソリ電文が加盟店からアクワイアラーを経由してイシュアーへと送信される。 アクワイアラーは自社の情報をもとに加盟店を対象とした支払い条件チェックや不正加盟店チェックを行う一方、カードのBINからイシュアーを特定してカード会員に対するオーソリを委ねる。
フロアリミット
加盟店は、会員が一回に月一定の金額以上のカード利用を行う場合、不正利用を防止するためのオーソリを行うことが義務付けられている。この金額をフロアリミットという。 国際ブランドは地域・業種ごとにリスクを勘案、フロアリミットのルールを定めており、アクワイアラーは国際ブランドのルールに基づき加盟店と契約を交わしている。 ただし、現在では決済端末の普及によりオンラインオーソリ環境が整備されてきたこともあり、利用金額に関係なく全ての取引に対してオーソリを行うゼロフロアリミット(いわゆる全件オーソリ)が主流となりつつある。
クリアリングとは、加盟店におけるカード利用代金の支払い(清算)を受けるための処理で、利用代金(カード売上)を精査、集計し、その明細を報告することから売上精算とも呼ばれる。 加盟店におけるカード利用は、オーソリゼーションで承認を受けた段階では利用を認められただけである。 加盟店がアクワイアラーから支払いを受けるためには、クリアリングによってカード利用の金額など取引結果を詳細に報告しなければならない。 具体的には加盟店がアクワイアラーに売上データ電文を伝送、或いはカード売上票を郵送するなどにより取引金額を確定し、それを受けたアクワイアラーが国際ブランドの決済ネットワークで売上処理を行うまでの処理を指す。
セツルメントとは、アクワイアラー、或いは加盟店に対するカード利用代金の清算処理(支払い)をいう。 売上精算処理を受理したアクワイアラーは、国際ブランドの決済ネットワークを通じて売上処理を行う。 国際ブランドはほぼ毎日アクワイアラーとイシュアーの清算処理を行なっており、メンバー間で支払・受取のポジションを建て、定期的に相殺することで清算を行なっている。 具体的には国際ブランドがアクワイアラーとイシュアーの間に立ち、アクワイアラーの銀行口座に売上データ(決済金額)を振り込み、イシュアーの銀行口座から決済金額に手数料を加えた金額を引き落とす、という基本的な処理の繰り返しになっている。
国際ブランドの清算処理により、アクワイアラーは売上処理の直後(翌日など)に立替払い代金をイシュアーから得るが、加盟店への支払が日次ではない場合は支払期日まで一定の猶予が生じる。 一方イシュアーはほぼ毎日アクワイアラーへの支払いが発生するため、会員から利用代金が支払い割れる期日までの一定期間、資金を立て替える必要がある。
決済カードビジネスにおいては、オーソリ、売上処理、会員・加盟店管理、決済など多量かつ高速の情報・データ処理を伴う事務処理が不可欠である。 このようなデータ処理が求められる業務はプロセッシング業務と呼ばれている。 データ処理は規模の経済が働くため、カード会社のプロセッシング業務を受託し、大量のデータ処理をローコストで行うサードパーティ・プロセッサーと呼ばれるプロセッシング専門業者が存在する。
インターチェンジにかかる手数料
国際ブランドのネットワークを介した決済カードの取引(インターチェンジ)においては、イシュアー、アクワイアラー、国際ブランドがそれぞれ手数料をシェアすることで、三者が収益を確保する仕組みになっている。
大まかな値 | 支払元 | 支払先 | |
---|---|---|---|
加盟店手数料 | 取扱高の1~5%程度 | 加盟店 | アクワイアラー |
インターチェンジフィー | 取扱高の0.6~2.5%程度 | アクワイアラー | イシュアー |
ボリュームフィー(ブランドフィー) | 取扱高の0.0数~0.5%程度 | イシュアー/アクワイアラー | 国際ブランド |
スイッチングフィー(ブランドフィー) | 取扱件数1件につき0.1米ドル程度 | イシュアー/アクワイアラー | 国際ブランド |
インターチェンジフィー
クレジットカードにおけるイシュアーの収益は、①会費、②インターチェンジから得られる手数料(売上交換手数料)、③リボ払いの手数料が三本柱となっている。
その一つであるインターチェンジフィー(売上交換手数料)は、加盟店においてカード取引が行われた際、アクワイアラーが獲得する加盟店手数料からイシュアーに一定の割合で支払われる手数料を指し、イシュアーフィーとも呼ばれる。 加盟店手数料のイシュアーへの分配率は国際ブランドが規定しており、この料率をビザではIRF(InterChange Reimbursement Fee)、マスターカードではICR(InterChange Rate)と呼んでいる。
ブランドフィー
ブランドフィーは、国際ブランドがメンバーである金融機関やカード会社から徴収するブランドの利用料で、原則として国際ブランドを利用した取引のすべてに対し課金される。 このブランドフィーは以下の二つに分けられる。
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インターチェンジにかかる手数料 取引件数に対するものと取扱高に対する課金で構成され、ともに従量課金
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それ以外の手数料 会員数やゴールドカードの発行枚数に対する課金や国際ブランドから貸与されているBINが使用されないままの状態に対する課金など
加盟店手数料
加盟店手数料は、カード会員が加盟店で決済カードを利用した際、加盟店はその売上代金から一定の料率を乗じた額をアクワイアラーに支払う手数料である。 加盟店手数料は、ビザ、マスターカードではMDR(Merchant Discount Rate)、日本のJCBでは加盟店割引料と呼ばれている。
イシュアーがアクワイアラーに対して、不正または瑕疵が疑われる取引についてその理由を明示し、該当取引の売り上げ提示分の支払拒否、或いは支払い済の立替払金相当額の返還を請求することをチャージバックという。 主な理由事項は、金額相違、非対面利用覚えなし、会員番号なし、オーソリ不承認取引、チップアライアビリティシフト、該当会員なし、対面取引での悪用などで、ビザ、マスターカードではそれぞれ30~40種類程度が割り振られている。
チャージバック処理は国際ブランドが定める期間内に速やかに行わなければならない。 期限は理由コードごとに定められており、短いもので45日、最長で120日程度である。 なお、アクワイアラーがチャージバックの請求を承諾しない場合は、所定の期間内にイシュアーに対して理由を示して抗弁しなければならない。
c.f. https://en.wikipedia.org/wiki/Payment_card_number
クレジットカード番号は、PAN(Primary Account Number)とも呼ばれ、国際規格であるISO/IEC 7812に従って従って割り当てられている。 カード番号の最初の6~8桁はBIN(Bank Identification Number、銀行識別番号)またはIIN(Issuer Identification Number、発行者識別番号)と呼ばれカードのイシュアーを特定する。 番号の残りの部分はイシュアーによって割り当てられ、最後の1桁はCheck Digitと呼ばれ、エラー検知などで利用される。
IINの最初の1桁は、主要産業識別子(MII: Major Industry Identifier)と呼ばれ、カードを利用する業界を示す。 国際ブランドが利用するMIIはビザが4, マスターカードが2または5、JCBならびにアメリカン・エキスプレスが3となっている。
c.f. https://en.wikipedia.org/wiki/Card_security_code
セキュリティコードとは、クレジットカードで不正利用を防止するための数字である。ビザではCVV(Card Verification Value)、マスターカードではCVC(Card Verification Code)と呼ぶ。
CVV1, CVC1
3桁の数字で、磁気テープに記録され、署名をしてカードを提示する取引で利用される。このコードの目的は、実際に加盟店でクレジットカードが利用されたことを証明することがある。
CVV2, CVC2
オンラインショッピングなどのカードを提示しない取引で利用される。その場合は、なりすましを防ぐためにイシュアーが加盟店にコードを入力させるように要求する。
ICカードとは、トランジスタなどの素子を集めた集積回路(Integrated Circuit)のチップが組み込まれたカードの総称である。
- 接触型
- プラスチックカードの表面にICチップが露出したICカード
- 非接触型
- 無線のアンテナを介してチップを動作させる
EMVはユーロペイ(Europay)、マスターカード(MasterCard)、ビザ(Visa)の3国際ブランドの頭文字を取った決済用ICカードの仕様名のこと。ビザやマスターカードは世界各地で深刻化してきた磁気カードによる不正手口を分析し、ICカード化によって不正被害を防ぐために導入された。
磁気カードのオーソリはイシュアーが承認するだけだが、EMVのオーソリではイシュアーからの応答電文をICカードが認証するという通信になる。 また、オフライン決済でもEMVではICチップの情報をもとに一定金額や取引の状況に応じて承認することができる。他にも偽造・変造されたカードを検証できるセキュリティ機能などがある。