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@kuniyoshi
Last active April 6, 2019 12:11
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"Being Geek ギークであり続けるためのキャリア戦略", pp144-149
# 信用
これは、同じ職場で働く人どうしの距離感の問題といってもいいかもしれない。共に仕事をしていく際、どのくらいの距離感で接するのがいいのかということだ。あまり距離が遠いのも良くないが、やはり一定の距離は必要だろう。
距離感の問題は、一般の社員よりも、マネージャにとって、より重要かもしれない。マネージャはチームの代表であり、皆をまとめる役割を担っている。会社の意思を皆に伝える役割も果たさねばならない。解雇や昇進、昇給といったことにも深く関わり、社員の運命を左右する。そういう立場なので、一定の距離を取るよう意識しているか否かにかかわらず、一般の社員にとってはどうしても異質な存在になりがちだ。
だが、ここで一つ問題がある。信用という問題だ。だれでもやはり、人から信用される存在になりたいのではないだろうか。何か助けが必要になった時に頼られる存在であるというのは喜ばしいことだ。それはマネージャに限らない。そして、信用されるためには、それにふさわしい行動というのがあるだろう。
共に同じ職場で働く人の間に、一定の距離が必要なのは確かだ。マネージャと部下の間にも距離は必要だろう。だが、常に近くにいる人達との間に人為的に距離を作っていると、それが「障壁」のようになってしまう恐れもある。仕事を遂行する上で欠かすことのできない人たちとの間に障壁ができてしまうのだ。
見えない壁の向こうにいる人のために積極的に働こうと思う人は多くないだろう。ひょっとして読者自身がそういうマネージャになってはいないだろうか。
「信頼」は、私が人間としても、マネージャとしても大事にしていることだ。チームを作って仕事をする場合には、信頼と尊敬が基礎になくては、と思っている。信頼と尊敬が基礎にあれば、生産性も効率も大きく向上するのだ。マネージャが部下から遠い存在で、しかも部下たちは皆、9 時 5 時でしか働かない、そんなチームでは生産性など上がるわけがない。何も、マネージャが部下の友人になれと言っているわけではない。そんなことを目指す必要はない。だが、お互い信頼しあえる関係は目指すべきである。お互いの誠実さ、能力、強さを信じあえる関係、それが理想だ。
そういう関係が築ければ本当に素晴らしい。
それには、実は、あるカードゲームが役に立つ。次にそれについて触れよう。
# BAB
(中略)
スコアに関する細かいルールなど、詳しいことについては巻末の付録を参照して欲しい。私は、このゲームを毎週のランチミーティングに使っている。次に、その理由を話すことにしよう。
## 雑談
私はこれまでに 3 つの開発チームで BAB を試した。どのチームでも、ゲームに慣れてくると、皆が雑談を始める。驚くほど話しが弾むのだ。これは、私自身がおしゃべりだからというのもあるだろうが、ゲームの効果は大きいだろう。それぞれに頭のいい人たちがフェアに競い合うというのは楽しいことだから、自然に口も滑らかになるに違いない。また、会話が弾むというのは、そのチームの人間関係が良くなっている証拠でもある。
雑談というのは、その場の思いつきで話すわけだから、かなりの思考力を要する。今、目の前にあるものや、目の前で起きた出来事を基に、とっさに面白いことを言う、と言うのは簡単なことではない。やはり、プレーヤーの中に、面白いことを言える人と、それを受け止められる人がいると嬉しい。
また雑談といっても、まったく無意味というわけではなく、その中から、何か真実の一端が明らかになることもある。そうなるよう慎重に会話を進めるのだ。うまくいけば、徐々に皆がなかなか語らない本音を語り出す。もちろん、気分のいい話ばかりではないだろう。居心地の悪くなるような話もある。行き過ぎれば誰かが怒り出し、険悪な雰囲気になる恐れがあるが、慎重に、ある一線を超えないようにする。行き過ぎなければ、本音が出ることで会話はさらに面白くなるだろう。
この少々危険な、本音を交えた会話がお互いの信頼関係を築き上げていく。チーム内のメンバーについて日頃、思っていることを本音で話し合えば、皆、自分が見られていることを実感するだろう。それはあまりに問題が多いのでは、と思う人もいるかもしれない。だが、これはあくまでゲーム中の雑談である。ゲームの方に注意が向いているので、深刻な事態にはなりにくい。
BAB を始めてから、雑談ができるようになるまでには少し時間がかかるだろう。特に冒頭のレオとヴィンセントのような場合には、なかなか会話が弾むというところまではいかない。だが、2 人のように仲の悪い 2 人を同じチームにするのも一つの方法である。イヤでも協力し合わなければならない状況になる。そういう状況に追い込まれると、2 人の間にどういう溝があるのかが明らかになるかもしれない。それが仕事にも役立つ可能性がある。仕事を離れた時の人間像がわかれば、関係が改善されることもあり得る。冗談の一つも言い合えれば、それだけでかなり緊張が解けるはずだ。
## BAB で得られる情報
皆が何度かプレーをしてルールを覚え、ゲームにも慣れてくれば、雑談が弾み、それにより、思いがけない情報が思いがけないかたちでチーム内を行き交うことになる。
ゲーム中の会話はたとえば次のようになる。
プレーヤー 1 : 「ビッドは 3 にする。」
プレーヤー 2 : 「僕は 1 だ。」
プレーヤー 3 : 「パス。」
プレーヤー 4 : 「ケヴィンはもうすぐ会社を辞めると思う。間違いないね。」
プレーヤー 1 : 「ああ、そうだろうね。」
プレーヤー 2 : 「気の毒だね。」
こんなふうに、ゲームの途中で前触れもなく、同僚の噂が始まるのだ。そういうふうになれば、人間関係が健全に育ってきている証拠だろう。互いを信頼していないとできない話だからだ。安心感から、皆が、今、気になっていることをなんとなく口にする。この場なら、ある程度、何を話しても大丈夫だろうと思うのだ。そうなれば素晴らしいことだ。
## 仕事では見えない一面が見える
人間関係ができあがるには、どうしても時間がかかる。信頼感は、魔法のように急に生まれたりはしない。色々な経験を共有していくうちに徐々に築き上げられていく。そういう経験のほとんどは、もちろん、日常の仕事の中でのものだろう。仕事上の健全な人間関係というのは、仕事を通じて形成されていくのが本来だろうとは私も思う。しかし、私は、自分が率いるチームのメンバーがもっと親しくなってほしいと思うのだ。何も、やたらにハグしあったり、一緒に歌を唄ったりするようになって欲しいというわけではない。ただ、お互いのことを少し深く理解できればと思うだけだ。仕事だけで接しているのではわからない一面を少しでも見られる機会を設けたいのだ。
同僚のことをよく理解するほど、仕事も円滑に進むようになるはずである。担当業務や役職など、社内での立場や役割だけで人を判断することがなくなる。そういうものを全て取り除いた「一人の人間」として見られるようになるのである。ミーティングでは、いつも口が重く、多くを語らない人が、色々と話し始めるかもしれない。口数の少ない人にも、実は言いたいことがたくさんあったのだと気づくこともあるだろう。
ゲームを 2 ヶ月も続ければ、本来の人間性はかなりわかる。静かに見えても話したいことは多いのだとわかれば、ミーティングなどで早めに発言を促したりもできる。何度か促されるうちに、いずれは自主的に話し始めるようになるかもしれない。黙れせるのが大変になるほどしゃべるかもしれない。
# ゲームも一種のミーティング
こういう話をしているとやはり思い出すのは、Netscape で定期的に行われていたブリッジだ。何もランチタイムのゲームは BAB やブリッジである必要はない。他のゲームでも同じような効果が得られる可能性がある。私が BAB を選んだのは、チームでプレーするゲームであり、所要時間がランチタイムに合っているからだ。
レオやヴィンセントのように、いつも口論をしているような人は、同じチームにして何度かプレーをさせてみるといい。いずれ、突然お互いを理解する奇跡のような瞬間が訪れるに違いない。ミーティングでの口論はすぐには無くならないかもしれないが、言葉の攻撃性は薄れてくるはずだ。違いを攻撃するというよりは、からかって楽しんでいるという感じなる。張り合うのではなく、会話を楽しむようになるのだ。
ゲームの場合は、たとえ勝っても負けても、自分の業績に影響するわけではない。給料や昇進がそれで決まるわけはないから、安心して勝負に挑める。だからこそ、協力し合う相手を深く理解する余裕もあるのだ。勝って得るものは勝つ喜びだけである。だから、余計なことを考えずに喜び合える。
何より大事なことは、仕事だけでは育たない人間関係が育つことである。ゲームを何度も一緒にプレーしているうちに、表面だけを見ていてはわからない人間性がわかってくる。
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