やましろとは前職のときにはじめて会った。
よしおり、やの、めそあたりのjava-jaあつめましたみたいな対炎上ファイヤーマン部隊で、当時自分はぎりぎり新卒で、すぐに新卒二年目になったような気がする。あのプロジェクトではやましろとペアプロした時間が一番長かった気がする。設計の些細なことで俺が「やましろさんの書き方では抽象化が十分じゃない」とかわーわー議論して、「くずは小さいことですげー言ってくるから怖いわー」とか言われたりもした。
今の自分は多分当時のやましろと同じぐらいの年なのかな。今の自分が新卒のエンジニアとフラットな視線でガチで設計の議論ができるかって言うと、うーんどうだろう。やってみないと分からんな、でも簡単ではないと思う。思い返してみれば自分にとって本当にいい仕事環境だったと思う。
その後プロジェクトには一区切りがついてチームの規模が縮小されることになった結果、やましろとは別の部署に行くことになった。そのあと1年後ぐらいかな。いろいろ考えるところがあって自分は会社を辞めた。一緒にチームだった時は毎日、別の部署になった時も週1や週2ぐらいで飯食ったり飲んだりしたような気がする。それももう2年以上前のことだから、あんまり覚えてないんだけど。
そのあとやましろも転職してキラキラしてる会社に行って、なんやかんやあってだめな感じになった。みんなあんまり口にしないけど、最後の頃のやましろは本当にだめだった。もともとだめなやつではあったけど、それに輪をかけてだめだった。
それでもみんなやましろが大好きで、本当に大好きで。その気持ちは自分もよくわかる。それでも、自分からみてみんなやましろを甘やかしていると思っていた。だから自分はいつもやましろには厳しいことを言い続けた。それがやましろのためになると信じていたから。
ある日やましろは自分にお願いをしてきた。そのお願いを受けるのは簡単だった。でも、それは絶対にやましろのためにはならないんだ。だから自分はそれを一度断った。「今のお前の言っていることはおかしい。しっかりと考えて計画を立てて、結論が出たらもう一度自分のところに来い。」そう言ったけれど、やましろが自分のところに来ることはなかった。その後、人づてにその後の経緯を聞いて本当にがっかりした。そうして自分はやましろとの関係を断った。
自分はやましろにできる精一杯をやったと思った。だからあの日やましろがこの世からいなくなったと聞いた時も、仕方のないことだと思った。できるだけのことをした。だからやましろが死んだことは、やましろがだめなやつのまま死んだことは避けられないことだったんだと納得した。
でも、やましろ送別会に行って、いろんな人からやましろの話を聞いて。いろんな人のやましろの思い出を読んで。いまさら理解した。自分はあのとき、やましろはだめな方向に行くことを好んでやっていると思っていた。だから、おかしいぞと。そんなはずはないぞと言い続けた。でもそうじゃなかったんだと気づいた。
やましろは悩んでたんだ。同じ場所で働いていた仲間が、どんどん先に行ってしまうことに。自ら道を切り拓いて、歩いた後ろに道ができるような強いリーダーに憧れて、でも自分はそうはなれなくて。そんな状況に焦って、混乱して。それでも精一杯強がりを言って。
いや、これは完全に自分の想像なんだけど。でも、多分あたってるんじゃないかな。だとしたら、不器用すぎるよ、やましろ。おまえが本当に悩んでることに気づいてやれなかったじゃないか。だめなやつで、弱くて、それでも強がりで。そんなやつだって知っていたのに、気づいてやれなくて。
馬鹿なやつだよ。なにものかになんてならなくても、おまえはこんなにたくさんの人に愛されていたのに。たくさんの人に愛されるやましろでい続ければ、なにものかなんかじゃなく、誰にもまねできないかっこいいやましろになれたのに。
お前はすごいやつだよ。こんなにたくさんの人を幸せにして、愛されるやつは他に知らないよ。ただそう言ってやるだけで何かが変わったかもしれないのに。最後まで厳しい言葉を投げかけてやることしかできなかった。それが今でも心残りだ。