この記事は Fediverse (4) Advent Calendar 2023 の3日目の記事です。
Twitterが大凍結時代に突入し、大混乱を極めていた2023年1月21日土曜日の午後。
ワクチン接種後でしばらく安静にと言われて暇だった私は、フォロワーさんの「このジャンルのマストドンがあったらいいな」というつぶやきを見かけました。
ちょうど「マストドンってなんだろ?実際に自分でサーバを建ててみたら少し分かるかな?」と思っていた私は、暇つぶしにジャンル専用サーバを建ててみることにしました。
Mastodonってなに…?から調べつつ、ドメイン取得してVPS借りて、5時間ほどでサーバがたちあがりました。
ちなみに自分自身はつい最近までいわゆる腐女子というわけでもなかったのですが、2022年春に観た作品で気付いたらそういった世界に触れ、転げ落ち、そして1年後にはそのジャンルでMastodon専用サーバを建てるに至りました。
つまり腐女子としても生まれたて0歳9ヵ月の人間が同人とかなんとかの知識も浅いまま、よう分からんMastodonとやらの鯖缶になってしまったわけですね。
結果としてこの1年、本当に楽しく過ごしています。生きていると幾つになっても楽しいことが待っていて、いいものですね。
「女性向け二次創作ジャンルの特定カップリングを愛する人々」に限定したサーバを運営しています。
なのでいわゆる「逆カプ」を大変に厳しく制限することになってしまうのですが、ひとつの大きな排他性を持たせるかわりに、内部ではどのように包括的な文化を作っていけるかが常に悩みでもあり…
結局のところはユーザの皆さんのバランス感覚によって、適度にまったり楽しんでもらえる場が日に日に醸成されていったように思います。
いわゆるテーマ性を持ったサーバではありますが、最も重要なのは「同志が集い、うっかり悪意や逆カプに触れてしまうことがない」という点だったので、日常的な投稿やジャンルに無関係の投稿も、とくに制限することなくLTLでも楽しんで頂くよう促していました。
月日 | できごと |
---|---|
2023-01-21 | サーバ運営開始 🔰 |
2023-01-23 | 開始2日後、承認制に切替 |
2023-01-25 | 開始4日後、ユーザ数が1,000を超える |
2023-02-11 | 開始3週間後、新規受付停止、セキュアモードに切替 |
2023-12-01 | 開始そろそろ1年、アクティブユーザ数は700台で推移 |
個人がひとりで運営するサーバとしては、ちょうどいい規模に落ち着いています。
テーマ性をもつサーバですが、いわゆるジャンル移動などがある場合も、アカウントのお引越しができるのがいいですね。
なんならTwitterのように他サーバで複数アカウントを使い分けできて、”場所” にとらわれずSNSをできるのもいい。
「女性向け二次創作」という特性上、サーバを建てた当初から気を付けていたことがありました。
サーバを超えてゆるく繋がれることがFediverseの最大の特徴のひとつですが、TwitterのようなSNSでいろいろな思いをして少なからず傷ついた経験をもつ人々が集う場所となるため、当初からわりとばしばしドメインブロックをすることがありました(すまぬ…)
結果として今はセキュアモードでサーバを管理しており、連合先サーバさんはホワイトリストで絞っています。
国内でユーザ数が多い汎用サーバさん数か所と架橋し、Fediverseの良さはある程度享受しつつも、集う人が安心して過ごせるよう試行錯誤しています。
実は当初は多くても100人程の規模かなと思っていたのですが、建てて5日でユーザ数が1,000を超えました。
ちょうどTwitter動乱期にあり、私も「Mastodonのお試しや凍結時の避難先としてどぞ」と案内したからかなと思います。
そこで、鯖缶として自分ひとりが頑張るのはサーバの持続的発展にはむしろマイナスかもと思い、鯖缶たる自分は「最低限これだけは!」という規約を作り、ユーザさんたちに自治を委ねてみることにしました。丸投げともいう。
もともと集まっていた人たちがしっかり「善き人」として振舞うよう努めてくれていたため、今も皆さんに甘えてしまって自治をまかせっきりにしてしまっています。
場を楽しんで使ってくれて本当にありがとう。
「特定カップリングに限定した専用サーバ」という、排他性を持たせたコミュニティを運営するにあたって私が危惧したことのひとつに、「安心しすぎて他ジャンルへの攻撃性が増してしまうのではないか」というのがありました。
実際に少し心配になる瞬間はわずかにあったものの、そこもユーザさんたちがうまく方向性を定めてくれたような気がします。
おろおろ鯖缶でごめんよ。いつもありがとう。
排他性と閉鎖性をもつコミュニティがその一滴の水の中で濁らず枯れずに過ごし続けられるというのは、これは案外難しいことです。本当にすごいことです。皆さん本当にありがとう。
「特定カップリングを愛する人」専用サーバの運営において、「逆カプ」「リバ」といった異なる楽しみ方を制限する必要があったため、ルールとしては以下のように書きました:
この場所では一緒に楽しめなくてごめんね。別のサーバーさんもあるので、ぜひご自身の心地のよいと思える場所を選んでください!
あなたが好きなことをを好きと言える場所、心地よい振る舞いを我慢しなくてもいい場所、そういった場所をぜひ選んでください。
当該ジャンルにおいて一部「私のサーバ = そのジャンルの人が移行すべき唯一のMastodonサーバ」といった誤解が生じているようでしたが、上記文言とともにFedibird.comさんを始めとする国内汎用サーバさんも紹介したりしています。
当初から他の汎用サーバを使っていた同ジャンルの方たちもいたおかげで、窮屈さを感じずにそれぞれご自身の棲みよいサーバで過ごしていただけてるんじゃないかなと勝手に思っています。
鯖缶となった2023年1月時点、腐女子としても生まれてまだ1年足らずだった私ですが、皆さんがSNSで楽しむには非常に多くの制限を自らに課し・課されていることが分かりました。
しかし、Mastodonはそんな私たちを優しく包んでくれた…たとえば:
- Twitterだと別サービスを使う必要があったこれらも、Mastodonでは標準機能で隠してくれる
- ワンタップで見られる。あゝ、よきかな。
- おセンシティブな投稿をしたいとき、R18専用アカウントを別途作らずに「未収載」「フォロワー限定」などで絞れる
- その思想上、もともと検索性が意図的に低く、ゆえに「バズる」なども構造上起こらないことから、作品名やキャラクター名の検索避けを気にする必要が低くなる
- 好きな作品やその登場人物の名を素直に呼べる、それだけのことですが、長時間履き続けたヒールを脱いだときのような解放感がありました
- 誌面や最新情報などが公開前にSNSにリークしてしまうことがあるらしく、それらを回避するために一時的にMastodonサーバに避難することも
- Twitterがおすすめフィードを採用してからは切実な問題になりました
- 女性向け二次創作ジャンルでは「棲み分け」によりお互いの安全を確保する
- うちのサーバのようにジャンル専用サーバを建ててセキュアモードで連合先を絞れば、いわゆる棲み分けを個々の努力とは別に仕組みとしても提供できる
鯖缶として書くからほんとは技術的な話とかをすべきなのかな、とも思いましたが、コミュニティや自治といった話に終始しちゃいました。
なんだか私にとってはFediverseで鯖缶として過ごしたこの1年は、そういったことを考えて動く1年だったので。この魅力は一度知っちゃうとやめられないよねぇ。たのしい。