楽曲の分析などの際に、個人的に使用しているコード進行の表記方法をまとめる。
コードに対して感じる無標性・有標性を、表記に反映することを目的としており、
個人的によくある・単純と感じるコードほど短い表記になることが特徴。
まずは、コードのルートとなる音を数字で指定する。
調における「ド」の音を基準として 1
と表記し、「レ」は 2
、「ミ」は 3
のようにする。
ローマ数字で表記するディグリーネームと似ているが、短調の場合でも「ラ」を基準にすることはなく、
常に「ド」を基準に数字を付ける。
1
ド2
レ3
ミ4
ファ5
ソ6
ラ7
シ
ルートが典型的な長調や短調(自然的短音階)の構成音ではない場合、数字の後に以下のいずれかを付けて表す。
#
元の表記に対して半音上の音b
元の表記に対して半音下の音@
元の表記に対して半音下の音 (一部の場合にのみ使用。詳細は後述)
3つの構成音で構成される和音の表記は基本的に、ルートの数字と変位記号の後に以下の記号を付ける。
構成音は、ルートの音を基準とした、相対的な音程によって指定する。
m
(minor) ルート、短3度、完全5度 を構成音とするM
(major) ルート、長3度、完全5度 を構成音とするdim
(diminished) ルート、短3度、減5度 を構成音とするaug
(augmented) ルート、長3度、増5度 を構成音とする
ただし以下の場合には3和音を指定する記号を省略し、ルートの数字単独、または数字と変位記号のみで表記する。
1M
→1
2m
→2
3m
→3
4M
→4
5M
→5
6m
→6
7dim
→7
3bM
→3@
6bM
→6@
7bM
→7@
1#dim
→1#
4#dim
→4#
5#dim
→5#
数字単独の表記は、調の構成音のみで作られるダイアトニックコードに由来する。
@
による省略表記は、長調に対する同主短調でのダイアトニックコードに由来する。
変位記号 @
は、この省略を行う時にのみ使用する。
#
による省略表記は、ダイアトニックコードのルートのみを半音上げたコードに由来する。
4つの構成音で構成される和音の表記は基本的に、ルートの数字と変位記号の後に以下の記号を付ける。
m7
(minor 7th)m
に加えて、短7度を構成音とするmM7
(minor major 7th)m
に加えて、長7度を構成音とするd7
(dominant 7th)M
に加えて、短7度を構成音とするM7
(major 7th)M
に加えて、長7度を構成音とするdim7
(diminished 7th)dim
に加えて、減7度を構成音とするhad7
(half-diminished 7th)dim
に加えて、短7度を構成音とするaug7
(augmented 7th)aug
に加えて、短7度を構成音とする
ただし以下の場合には4和音を指定する記号を省略し、ルートの数字と変位記号の後に 7
を付ける。
1M7
→17
2m7
→27
3m7
→37
4M7
→47
5d7
→57
6m7
→67
7had7
→77
3bM7
→3@7
6bM7
→6@7
7bd7
→7@7
1#had7
→1#7
4#had7
→4#7
5#dim7
→5#7
省略の由来は3和音の場合と同様。
上記3和音・4和音の基本的な表記方法で表現しきれない構成音の場合、
3和音または4和音の表記の後に、以下の記号を付け加えることができる。
m7
短7度の音を加えるM7
長7度の音を加える
-5
完全5度を減5度に変える5
完全5度を変化させないことを明示する+5
完全5度を増5度に変える
-2
短2度(短9度)の音を加える2
長2度(長9度)の音を加える+2
増2度(増9度)の音を加える
m3
短3度の音を加えるM3
長3度の音を加える
-4
減4度(減11度)の音を加える4
完全4度(完全11度)の音を加える+4
増4度(増11度)の音を加える
-5
減5度の音を加える ※5
完全5度の音を加える ※+5
増5度の音を加える ※
※5度を加える指定は、既に5度の音を明示するaug
系、dim
系、-5
、5
、+5
、のいずれかの表記がある状態で、
重複して5度についての指定を行うように-5
、5
、+5
を付け加えて表記する。
-6
短6度(短13度)の音を加える6
長6度(長13度)の音を加える+6
増6度(増13度)の音を加える
x1
ルートの音を構成音から削除するx3
3度の音を構成音から削除するx5
5度の音を構成音から削除する
修飾の表記順に厳密な決まりはないが、上記に記載した順番で表記することが推奨される。
-2
2
+2
-4
4
+4
のいずれかと同時に x3
を指定する場合、
>2
や >4
のように、2度や4度を表す記号の前に >
を付ける表記に省略することができる。 (suspended)
修飾の中で最後に x3
を表記する場合は、x3
の代わりに x
と省略することができる。 (パワーコード)
コードのルートと、ベース音(実際の和音の最低音や、低音楽器が主に演奏する音)が異なる場合、
コードの表記の後に以下の記号を付け加える。
'
コードの構成音に含まれる3度の音をベースとする"
コードの構成音に含まれる5度の音をベースとする*
コードの構成音に含まれる7度の音をベースとする/
+ 数字 + (変位記号) コードの構成音に深まれない音をベースとする。数字の表記方法はルートの指定と同じ
伴奏が無かったり、コードとして解釈する意味のない和音であったりなどの理由で、
コードが無いことを表す場合、x
単独で表記する。
異名同音の存在や、転回や修飾などの組み合わせによって、同じ構成音のコードを表現する方法が多数あるが、
文脈上、一番自然と思われる解釈で表記することとする。
コードの表記は調を基準にしているため、別途、調を表記する必要がある。
調における「ド」の音の絶対的な音高を、C音からの半音数で表記する。
長調と短調の区別はなく、例えばCキーとAmキーは同じ表記となる。
表記方法は以下のようになる。
$!+
+ 数字 C音に対して、指定の半音数上の音が「ド」となる$!0
C音が「ド」となる$!-
+ 数字 C音に対して、指定の半音数下の音が「ド」となる
曲中で調を変える場合は、それまでの調に対して相対的な位置関係で表記する。
それまでの調の「ド」の音と、新たな調の「ド」の音の差を数値で表す。
表記方法は以下のようになる。
$+
+ 数字 それまでの「ド」に対して、指定の半音数上の音が「ド」となる$-
+ 数字 それまでの「ド」に対して、指定の半音数下の音が「ド」となる$#
+ 数字 それまでの「ド」に対して、指定の数 × 7 の半音数上の音が「ド」となる$b
+ 数字 それまでの「ド」に対して、指定の数 × 7 の半音数下の音が「ド」となる
$#
$b
の表記は楽譜における調号の表記方法に由来し、調の構成音がいくつ変化するかを表す。
調の表記においてオクターブの差は無視するため、
$+
$-
による表記と、$#
$b
による表記はどちらでも同じ調を表現できるが、
「1半音上に転調」のように「ド」の音の差が特徴的な場合は $+
$-
で、
「属調に転調」のように調の構成音の差が特徴的な場合は $#
$b
で表記することが推奨される。
複数のコードが連続する、コード進行を表記する場合は、コードの表記または調の表記を区切り記号を挟んで並べる。
.
基本的な区切り記号。他に該当しない場合に使用|
4小節ごとの区切り記号- 改行 8小節ごとの区切り記号
- 空行 曲のセクションごとの区切り記号
曲の冒頭には、基本的に絶対的な調を表記することになる。
転調する場合は、基本的に相対的な調を表記することになる。
転調直前のコードについて、転調前の調を基準にした解釈だけではなく、
転調後の調を基準にした解釈も同時に可能で有用な場合がある。(ピボットコードなど)
その場合は、転調直前のコードを転調後の調を基準とした表記で、転調を表す記号の直後に ( )
で囲んで補足することができる。
$!+4
1.1'.4.5|1.1'.4.5
1.1'.4.5|1.5.4.5
1.4"|4m".1.4.5
1.4|5.1.5
6.3.5.2M|4.2M'.5
1.5.6.57.1.4#|4.3.67.6@.5>4-6.5
1.5.6.57.1|4.3.67.3@.46
1.1'.4.5|1.1'.4.5
1.1'.4.5|1.5.1
上記を一般的なディグリーネームで表記したもの
(Key=E)
[Intro]
I I/III | IV V | I I/III | IV V
I I/III | IV V | I V | IV V
[A]
I | I | IV/I | IV/I
IVm/I | IVm/I | I | IV V
I | I | IV | IV
V | V | I | V
[B]
VIm | IIIm | V | II
IV | II/♯IV | V | V
[サビ]
I | V | VIm | V7 I ♯IVdim
IV | IIIm IVm7 | ♭VI | Vsus4(-13) V
I | V | VIm | V7 I
IV | IIIm IVm7 | ♭III | IV6
[Outro]
I I/III | IV V | I I/III | IV V
I I/III | IV V | I V I