この記事は悠里・大宇宙界隈 Advent Calendar 2017の20日目の記事です。
SF創作世界観 大宇宙 で作られている クレデリア共和国 についての説明です。
クレデリアは少し変わった国で、 虚体空間 という空間の中にあります。 この空間の中では、独自の物理法則の体系があります。
虚体空間以外の普通の空間は 通常空間 と呼ばれていて、私達が普段暮らしてる地球とだいたい同じです。 (国家や歴史などは違ったり、SF的な技術があったりとかしますが、同じ物理法則が基盤にあるということです。)
虚体空間の最大の特徴であり原則は、 通常空間の模倣 であるということです。
大宇宙の世界観はSFですが、虚体空間の中での用語にはファンタジー的なものが多くあります。そこでこの記事では、ファンタジー的な用語を使う場合は、《 》で囲み、SF的な用語と併記します。
虚体空間にある物は 虚体 といいます。 目に見えるものだけではなく、気体とかエネルギーとかも全部虚体です。
虚体は、 虚子 という粒子があつまってできています。 虚子にはいくつかの種類があって、それが様々な配列に並ぶことで色々な虚体を作るようですが、詳しいことはまだ研究結果が出ていません。
虚子は他の虚子を 従属 させることがあります。
通常空間の物理法則では、対等な関係で相互に影響を与え合うことが多いです。それに対して従属というのは、ある虚子が一方的に他の虚子に対して支配権を持つようになることです。
ひとまとまりになった虚体は、中心となる虚子を核に、それに従属する虚子、さらにそれに従属する虚子…という風に、ツリー状に構成されます。
核となる虚子が欠けた場合は、全体の形や性質を維持するため、自動的に別の虚子が核となって構造が再構成されます。
虚体は、虚子の密度によって大きく性質が変わります。
一番密度の小さいものは《魔力》、もっと密度が上がると《物質》、さらに密度の高いものが《魂》となります。
《魔力》 は目で見たり触ったりすることができない、エネルギーのようなものです。
《魔力》は《物質》に宿って、その《物質》の性質を決めたり、《物質》に干渉したりします。《物質》に宿るというのは、つまりその《魔力》が《物質》を従属させるということです。
《物質》 は、通常空間にある物質と同じようなものです。虚子が集まったものですが、通常空間にある物質(素粒子などの集まり)と同じように振舞います。
《魂》 もまた目で見たり触ったりすることができません。とても虚子の密度が高く、意志と感情を持ちます。
《魂》は《物質》の肉体に宿って、つまり肉体を《魂》に従属させて、生命を駆動します。虚体空間の全ての生命には《魂》が宿っています。
《魂》には記憶がありません。生命の記憶は、《物質》である肉体の方にたくわえられます。
普通の《物質》よりも虚子の密度が低い《物質》は、 《仮物質》 と言います。 《仮物質》は《物質》とよく似ていますが、非常にもろく、すぐに崩壊してしまいます。
虚体空間の物理法則は、上層生命体 《神》 が司っています。 《神》自身が物理法則そのものであると言ってもいいです。
《神》による物理法則は、原則として 通常空間を模倣 しています。 虚子で構成された、通常空間と全く違う虚体空間で、通常空間と同じように生活ができるのは、この原則のおかげです。
《神》は、一応意志や感情を持ちますが、その意志や感情はとても希薄です。なので、虚体空間で物理法則が突然変わることは普通ありません。
おおざっぱに見ると模倣できていても、細部が違っている物理法則もたくさんあります。そのうちいくつかを挙げます。
- 万有引力がない
- 質量による万有引力はありません。しかし、天体には特権的に引力が与えられています。
- 自転、公転がない
- 天体は動きません。地上に居ると、太陽や月、星空などが動いているように見えますが、それはプラネタリウムのようなもので、見えているだけで実体はありません。
- 原子核がない
- 原子核がないので核分裂とか核融合とかはきちんと再現されません。やろうとすると一応エミュレートされて、通常空間の半分ぐらいの出力は出ます。
- 反物質がない
- 大宇宙の他の国で、反物質エンジンなどを使っている国がありますが、虚体空間に反物質エンジンを持ってくると全く動かなくなります。
虚体空間の内部は、さらに複数の空間に分かれています。
《天郷》 は一面青空のような空間で、 ゼラム という天体があります。 二つの太陽が回っていて、夕焼けや夜はありません。
ゼラムは青空に浮かぶ大小様々な神殿のような形をしています。引力は一つの方向に向かって発生しているので、落ちると帰れません。
《地郷》 は通常空間の宇宙によく似た空間です。 ティクト という天体があります。 一つの太陽と一つの満ち欠けする月が回っていて、時間によって青空、夕焼け、星空などの景色が移り変わっていきます。
ティクトは球形で、地球とよく似た環境です。クレデリア共和国もティクト内にあり、虚体空間でのメインの舞台はここになります。
居住する土地が足りなくなったので、シンテーア暦1735年に《神》とティクト人が協力して、《地郷》の中に二つめの天体 プルトレア を作りました。大きさや環境などは大体ティクトと同じです。
《魔郷》 は全体的に薄暗い空間で、ホルセ という天体があります。 赤い太陽と青い太陽の二つが回っています。どちらの太陽も《地郷》や《天郷》のものよりも暗いです。どちらかというと青い太陽の方が明るいので、青い太陽が昇っている間は昼ということになります。
《天郷》《地郷》《魔郷》の三つをまとめて《三郷》と呼ぶことがあります。
《始まりの地》 は、《三郷》に比べるととても小さい空間ですが、虚体空間全体に強い影響を与えている空間でもあります。天体はありませんが、草原が広がっています。
《始まりの地》には、虚体空間全体の日付時刻を管理する《基準時計》や、虚体空間全体の虚子の循環を管理する《全ての帰る壷》などの装置があります。
《始まりの地》は他の空間とは異なり、通常空間と虚体空間の重ね合わせとなっています。
亜空間 は、上に挙げた以外の空間です。一つの連続した空間というわけではなく、不安定な空間の総称です。
虚体空間の中で安定した空間は上に挙げた安定帯だけで、それ以外の部分は全て不安定な空間です。不安定の空間は常に生まれては消えていき、何が起こるかよく分かりません。
亜空間に迷い込んでしまうと、多分帰れません。
上に挙げた安定帯や亜空間は、それぞれ三次元の空間ですが、虚体空間の全体は、四次元以上であると言われています。(時間軸を加えて四次元とする考えもあったりしますが、ここでは時間軸は含めず、純粋に空間としての軸だけを扱います。)
つまり普通の、三次元的な移動では、《郷》の間を移動することはできません。第四以上の軸を移動することで、別の《郷》に移動できるということです。
三次元空間というのは、四次元空間から見ると膜のように見えます。上に挙げた四つの安定帯の膜が、四次元以上の空間に浮かんでいて、その膜の間のすきまは全て亜空間だと考えられます。 具体的に何次元なのかは、まだよく分かっていません。
空間が安定しているかどうかは、 安定値 という値で計測されます。ひとつの空間の中でも、場所によって少しずつ安定値は違っています。《地郷》全体の平均安定値を1.0として、相対的に計測します。
安定値が0.7より小さくなると、空間にさまざまな歪みが起きて、0.5ぐらいまでになると、安定した空間は崩壊し、亜空間になってしまうようです。
下層虚体《物質》同士はぶつかると衝突し、上層虚体(《魔力》と《魂》)同士もぶつかると衝突します。どちらも同じ場所に重なって存在することはできません。
それに対し、上層虚体は下層虚体に宿ります。つまり同じ場所に上層虚体と下層虚体が重なっているということです。このことから、上層虚体と下層虚体は、別々の空間にあるという説があります。
上層虚体のある空間は 上層 、下層虚体のある空間は 下層 といいます。この二種類の空間は、《三郷》や亜空間などを含めた、虚体空間全体に、重なり合って広がっていると考えられています。
上層虚体と下層虚体が衝突しないとはいえ、上層虚体は下層虚体に宿って性質を決めたり操作したり、さまざまな影響を与えます。上層と下層は別々の空間でありながら、相互に密接な関係を持っています。
これらの説に反対する説として、一つの空間にあるさまざまな虚体を、性質によって上層虚体と下層虚体に分類しているだけだとする説もあります。
実験による検証が難しく、どちらの説が正しいのか分かっていません。
この記事では、クレデリア共和国という国を知るために重要な、虚体空間の基礎を解説しました。
後編では、《神》や他の生命、虚体空間で使える《魔法》などについて、より個別的な解説をしていきたいと思います。