これは, Open PaaS Advent Calendar 2015 の5日目の記事です。
実は最近たまたま,去年の今頃書いた "What is PaaS?" に関する個人的な考え という記事を読む機会があり,それがきっかけこの文章を書こうと思い立ちました。
1年前の記事の中で,私はこんなことを書いていました:
ここで改めて本節の定義の前半に注目します。「 アプリケーション(のソースコード) を投げ込むと」の部分です。「 アプリケーション(のソースコード) 」を投げ込めばいいのであれば,それは何も自分が作ったアプリケーション(のソースコード)でなくてもいいはずです。今,世の中にはたくさんオープンソースのアプリケーションが転がっています。そうしたアプリケーションを持ってきて,自分のPaaS環境に投げ込めば,後はよしなに起動して動かし続けてくれる。自分のスマートフォンにいろいろなアプリを入れて使うように,自分のPaaS環境にさまざまなオープンソースのアプリケーションをデプロイして使う。そういう使い方がされうるのであれば,PaaSの対象利用者はもっと広がる可能性もありそうです。
ということで,今年の6月4日から約4か月半にわたって,1日1件,計100件のオープンソース・アプリケーションを,オープンソースの PaaS である Cloud Foundry 上にデプロイする「Cloud Foundry 百日行」という営みを行いました。
http://blog.cloudfoundry.gr.jp/search/label/%E7%99%BE%E6%97%A5%E8%A1%8C
もちろんこんなことを私一人ではできないので,他の執筆者8名の方の協力を得て,11月16日になんとか完走することができました。他の執筆者含めご協力いただいた方々にはとても感謝しています。私は百日行を始めるにあたって,どんなにギリギリになっても原稿は落とさないようにしたい,というのを個人的な目標にしていましたが,これを達成できたのも皆さんのご協力の賜物だと思っています (実際のところ,投稿が遅くなったのはだいたい私の記事で,他の皆さんはとても計画的に投稿されていました)。また,おかげさまでこれについての発表をベルリンで行われた Cloud Foundry Summit Europe 2015 で 発表 することもできました (発表資料)。
百日行についてはいずれ PaaS 勉強会 かどこかで話をする機会をもらえればと思っているのですが,今日は1年前の記事に書いたことに関連して,百日行実施中に感じたことを少しだけ書きます。
【再引用】
自分のスマートフォンにいろいろなアプリを入れて使うように,自分のPaaS環境にさまざまなオープンソースのアプリケーションをデプロイして使う。そういう使い方がされうるのであれば,PaaSの対象利用者はもっと広がる可能性もありそうです。
自分自身が百日行で扱ったアプリを考えると,今のスマートフォン利用者の大半を占めるような人たちが PaaS にアプリをデプロイして使う,というのはまだ先のことかもしれません。まあこれは,私が「既存アプリを PaaS に移行するノウハウ」を得るために「比較的規模が大きく PaaS への移行が難しそうなアプリ」を意図的に選んでいたことにも起因していると思いますが,特に何も修正することなく Cloud Foundry 上で動かすことができたアプリというのはそれほど多くありませんでした。
しかし,百日行全体を見渡すと,そうしたアプリは (多数派ではないものの) 決して少なくない数存在しました。その代表が, staticfile-buildpack を使ってデプロイされる single page application (SPA) です。百日行では staticfile-buildpack ベースのアプリは16件ありましたが,そのほとんどが「ソースコードを持ってきて,PaaS に投げ込む」だけで動きました。実は,このようなアプリはもっと多く見つかっていたのですが,ノウハウを提供する記事としては安直すぎると感じて,特に後半はこの種のアプリを記事にするのは避けようという心理が働いていました。なので,実際に世にあるアプリ (特にゲーム) の中で,「ソースコードを持ってきて,PaaS に投げ込む」だけで動くものの割合はもっと高いのではないかと考えます。
Heroku Button の発表が2014年8月7日で,それから約1年4か月ほどたっているわけですが,その間に PaaS に対する世の中の状況はだいぶ変わってきているように思えます。あと数年経てば,
【再々引用】
自分のPaaS環境にさまざまなオープンソースのアプリケーションをデプロイして使う。
ようなことを始めるような人たちも増えてくるのかもしれません。
という期待も込めつつ,この記事を終わりたいと思います。