- では、発表を始めたいと思います。タイトルは"Next decade of Rails Girls and the community"です
- まずはじめに自己紹介をしたいと思います
- 私は大倉といいます。普段はフリーランスとしてRailsアプリを触っていて、トータルでいうと10年くらいRailsアプリケーションの開発をしています。課外活動としてKaigi on Railsというカンファレンスを主催したり、Grow.rbなどのコミュニティを主催したり、AlbaというオープンソースのJSONシリアライザを作ったりしています。あとはRubyコミュニティの各地に出没します。
- 今日この場でお話する理由の一つでもあると思うのですが、Rails Girlsとは積極的に関わっていまして、コーチを10回以上、Moreという勉強会(?)に参加したりこのイベントでも過去2回登壇していたりしています。個人的にも思い入れのあるコミュニティですね。
- さて、Rails Girlsの日本での活動が10年を迎えたということで、おめでとうございます。この10年、Decadeという単語が今日のキーワードの一つとなっています。
- 今日のお題ですが、
- コミュニティが重要なのだ!というのが結論になります。このコミュニティという単語、よく出てくる単語だと思いますので先人に補足していただくと、
- 【スライドを読む】
- これはるびまで髙橋さんが書いてらっしゃったことですね。今でも非常に重みのある言葉だと思います。
- それと、今年のRubyKaigiでMatzが言っていたのがこの"The community is the key"という言葉ですね。
- スライドはこちらですが、コミュニティという単語は重要性を増しているようにも思います。
- ここで一旦今日の発表の注意事項を申し上げておくと、「コミュニティ」という単語は割と多様な意味で使われていて、総体のことだったり個別のコミュニティのことだったりします。
- さて、今日のトークには3つのテーマと、
- 2つの時間軸があります。以下のようになります。
- まずは3つのテーマ、「新しい人々を迎え入れる」、「技術で交流する場をつくる」、「性別における多様性を拡張する」というテーマがあります。これは私のやりたいことと課題意識を持っていることが交わるところにあるテーマです。さらに過去10年と未来10年という時間軸があります。この10年には色々なことがあって、例えばプログラマという職業の認知度が急激に上がったりもしたのですが、そういう起こったことがこのテーマに反映されています。現実で起きた出来事を全て盛りこむことはできないのですが、例えばプログラミングスクールの発展などは直接触れています。そしてこれから先、未来の10年ですが、このパートは私のやりたいことに重点を置いた話になります。
- ということで早速過去10年の話から始めたいと思います。
- まずは過去10年、私達がどのように新しい人々を迎え入れてきたのかについてです。実はこの言い方には語弊があって、私自身は10年前は迎え入れられる側だったりもしたのですが、まあそれはそれとして。
- Rails Girlsのイベントですので、まずはRails Girlsの話から始めましょう。実際、その後の流れを考えるとRails Girlsの先駆者的意義は大きいと思います。
- Rails Girlsには良いところがたくさんあるのですが、それらは今でもユニークさを保っていると思います。参加のハードルを低くするための要素が多くありますし、コーチの層についてもなかなかこの人たちを集めるのは大変だぞというような方々です。特に重要だと個人的に思っているのが、大都市以外でも開催されている点です。
- 一方、実際に地方にコーチに行ってみて課題も感じます。やはり主催者がその土地にいないと開催できない関係上、小さな都市での開催頻度は下がってしまいますし、女性コーチが不在のこともあったりします。このへんは未来パートでも触れますが、もうちょっと改善できたらいいなと思います。
- 次にプログラミングスクールについても触れておきます。
- 基本的にはプログラミングスクールの存在は良いことであると思っていて、やはり現実にプログラマになる道筋を示したのは非常に大きかったと思います。この結果、多様な職種の人がプログラマに転職しています。社会の空気としても、プログラマになることの特殊さが少し下がったのかなという気がします。
- ところで、実はプログラミングスクールって、仲間がいて交流があって、という意味では最初のコミュニティなんじゃないかと思うんですよね。少なくとも理想的には。しかし、現実には期間の短さなども相まってなかなかそうはならない。コミュニティがあるスクールが存在することは知っていますが、そうした場合も閉じたコミュニティの場合が多くRubyのコミュニティやカンファレンスに接続するような形にはなっていません。その結果として、彼ら彼女らがプログラマに転職したあと、なかなかカンファレンスなどで見つからないということになります。ここの接続感覚をもうちょっと得たいなと思っていまして、Kaigi on Railsがその入り口になればいいなと考えて設計しています。この話題は次の話題につながっています。
- というわけで、技術で交流する話に移ります。
- この技術で交流するという話題になるとRubyは強くて、なんといっても地域rbという独特の存在があるんですね。私は20以上の地域rbに参加したことがあって、多分日本最多のうちの1人だと思うんですが、他のプログラミング言語で調べてもそんなにたくさんは見つからないんですよね。しかも東京以外にも、ほぼ全ての地域にある。北海道から沖縄まである。コロナ禍でもオンラインで継続しているところがとても多い。
- そしてコミュニティの延長線上にあるのがカンファレンスです。Rubyの世界で有名なのはRubyKaigiです。トークのレベルがとても高いですが、それと同時にRubyコミュニティの同窓会として機能する側面があると思っています。ここで各地のRubyコミュニティの人々が一堂に会するんですね。
- 一方、RubyKaigiにはRailsの話題は基本的に取り上げられなかったりするのですが、そこを補完する存在としてKaigi on Railsがあります。来年からはオフライン開催というかハイブリッド開催をする予定です。先ほど触れた、プログラミングスクールを卒業して仕事を始めたくらいの経験値の人たちが参加して役に立つようなカンファレンスにしたいと思ってやっています。
- 地域rbと大型カンファレンスの中間には地域Ruby会議があります。一時期はかなりの頻度で開催されていたのですが、コロナ禍の打撃を受けて最近はほとんど開催されていません。交流の場としてのカンファレンスという意味では地域Ruby会議はとても重要だと思うので、2023年以降はまた復活するといいなと思っています。
- ここまで今あるコミュニティの話をしてきましたが、私が気になっているのは、この3年ほど、コロナ禍で参入してきた人々があまり定着しているように見えないところです。もちろんオンラインでのハードルの高さはあるのですが、ここは今後の課題かなと感じています。普段のコミュニティでの交流がないので、カンファレンスで知らない人を見かけても交流しづらかったようにも思いますし、やはり普段の交流は大事だなと思います。
- 次に性別における多様性という話題です。
- ここもRails Girlsをはずすことはできないでしょう。数においてはそれほど多くはなくて、それは開催形態的にしょうがないのですが、特筆すべきはRails Girlsからプログラマになった人たちの多くがコミュニティに残っているということです。ある種の「エコシステム」が存在しているというのはとても希有なことだと思います。
- また、ここ数年、女性限定のコミュニティやカンファレンスも出現しています。カンファレンスは男性も視聴できることがあって、私も先日視聴してみました。テーマの選び方などに特徴が見られますが、オーソドックスなカンファレンスだったと感じました。こういったものはある種の「避難所」として機能しているのかなと考えています。Rails Girlsと同じで恒久的なものではないのかもしれません。
- さて、女性のプログラマってこの10年で増えたのか?という話ですが、増えたような気はしています。データがあるわけではないのですが。一方、公共の空間、例えばOSSとかカンファレンスでは、ほとんどが男性で占められているように思います。
- 今この話を聞いている人は女性が多めかなと思うのですが、「普通の」Rubyコミュニティに行くとなぜか女性が少ないです。これは2015年に初めてShibuya.rbに参加したときから変わっていないようです。興味深いことに、3年ほど前にTokyoGirls.rbというイベントに参加したら女性は大勢いて、それはまあそういう趣旨のイベントなので当然ではあるのですが、要は普通のコミュニティは女性にとって参加のハードルがあるわけです。これは非常によろしくない。
- ここでちょっと復習も兼ねて、私はこの10年に何をしてきたのかを振り返ってみましょう。
- Rails Girlsのコーチをたくさんしました。うち半分くらいは地方です。Kaigi on Railsは言い出しっぺとして最初から企画をしていて、ハードルを下げるという意図でやってきてある程度達成できたと思っています。Rubyコミュニティは自己紹介でも話したGrow.rbとか、Entaku.rbとかRubygems Code Reading部とか、色々やっています。技術をネタに交流できたらいいなと思って試行錯誤しています。Grow.rbなんかは最近かなり初学者向けに振ってみています。
- さて、ここまで過去の話をしてきましたが、そろそろ未来の話もしましょう。なお、ここから先のスライドで黄色の文字はみんなでやりたい話、オレンジの文字は私個人がやっていきたい話です。
- さて、未来の10年で新しい人たちをどうやって迎え入れたらよいのでしょうか。
- Rails Girlsの意義はこの点でも大きいと思っています。
- プログラミングへの入り口として「楽しさ」が重要な点はご存じかと思うのですが、Rails Girlsはこの点でとても優れています。また、「生きた」プログラマに出会う機会としても非常に貴重です。
- この話に関して、私は自分でRails Girlsのオーガナイザーにはなれないので、ぜひこの中にいらっしゃる方にオーガナイザーをやってほしいなと思います。特に地方開催の際はコーチをしに行きたいと思っています、ぜひ一緒にやりましょう!
- コミュニティとしてのプログラミングスクール、という話題に関しても少し触れておきます。
- このトークを聞いている方の中にもプログラミングスクール出身の方がいらっしゃると思うのですが、そういう方はぜひ、プログラマとして仕事をすることがどういうことでコミュニティとはどういうものなのか、ぜひ受講生の方に共有してほしいです。実際に仕事を始める前にはなかなかリアリティを感じにくい部分かなとも思います。あとはメンターになる、アドバイザー的に関わるということもできるでしょう。ほしいのは連続性とか一体感とか、そういったものです。
- そのコミュニティについてですが、コミュニティがもっと「開かれている」といいなと考えています。
- 色々な人に話を聞いていると、新しい人たちが既存コミュニティは「怖い」というようなことをよく聞きます。それはとてもよろしくない。そしてどうすれば怖がられないかというと、例えば同じような人々が一緒にコミュニティを形成するということもあるかと思います。ただ、新しい人々はやがて新しくなくなっていくので、これだと同じことの繰り返しにはなります。それでもいいのかもしれませんが、やはり既存のコミュニティの「怖さ」がなくなるのがもっといいようにも思います。ただ、仲良くなるためには仲良くないといけない、という問題があります。そこで。
- コミュニティの「外側」で仲良くなるという方法があります。カンファレンスなどがそのよい例になるかと思います。あるいは、コミュニティで実際にどんなことが起きているか、発信してみるのもよいかもしれません。私個人としては、時代に合ったコミュニティがなければ作ろう、という気持ちでGrow.rbを作ってそれを足がかりに他のコミュニティにも参加してほしいなと思っていたりもします。
- ところで、Kaigi on Railsのメンバー募集ツイートに以外なほど大きな反響があって、来年からメンバーが数人増えるんですけど、彼らの大半は「これからコミュニティに参加したい人たち」だったんですよね。なんとなく、コミュニティへの参加に必要なのはきっかけだけなのではないか、という気がします。
- 交流の場という話題では、過去から引き継いだものは引き継ぎつつ、新しいものを作っていくことになるのかなと思います。
- 先ほどの話とも重複しますが、コミュニティの話をしますと、
- まずは自分が参加する、というのが大事ですね。知り合いがいるコミュニティには参加しやすいので、誰かがいくと他の誰かが行く、ということがよくあります。地域rbはあちこちにありまして、私はあちこちにいるので、知り合いになっておくといいのかもしれません。
- コミュニティを自分で作ることもできます。ただ、自分で作る前に何回か既存のコミュニティに参加してみるのがやはりよいのではないでしょうか。そこにはいろんな人がいて、そこから学べることも多いと思います。私も気が向いたら何かまた作ってみようかなとは思っていますが、今はネタがないので無理に作ろうとは思っていません。
- 次に本邦初公開のネタなんですが、「拡張された」Kaigi on Railsということで、
- その前にハッキリさせておくと、いわゆるKaigi on Railsはこれからもやっていきます。お祭りだし、いろんな人の出会いの場でもあるし、何より楽しくてやっているので、当面はやめるつもりはありません。ここでついでに宣伝しておくと、登壇するという貢献は非常に重要なので、何かネタがある人はぜひプロポーザルを送ってみてください。これはKaigi on Railsに限った話ではないですが。
- で、拡張されたKaigi on Railsなんですが、これはカンファレンスは年一回だと開催期間以外は寂しいよなというところから思いついたもので、実装はなくて概念だけがあります。なにかしらの外部連携みたいなものができたらいいのかな、くらいの段階ですね。これは今回の話で一番未来の話というか、多分5年後とかじゃないかな。
- 未来の話の最後は性別の多様性ですが、これは一言でいうと、
- 「普通に女性がいる」状態になるといいですね、ということです。
- ここで「普通」というのは別に人数が同じになるとかそういう話ではなくて、意識のことです。今だとコミュニティに女性が少人数でいるとどうしても目立ってしまう、それがよくないということですね。で、意識という話をすると女性の存在感がもっとあるといいなと思っていまして、そのためにはやっぱりアウトプットが重要でしょう。ブログとかLTとかカンファレンスとか、なんでもいいんですが、できる範囲でアウトプットをしていきましょう。先ほどお話したロールモデルということでいうと、鳥井さんとかしおいさんとかima1zumiさんとかmakicamelさんとかnekoさんとか、他にも何人もいらっしゃるので、そういう方のやっていることに興味を持ってみてもいいかもしれません。
- あと、実務的な話でいうと、実はKaigi on Railsにプロポーザルを出してくれた人のうちの何人かは私が直接声をかけているんですが、そこから女性の登壇者が生まれていたりもするんです。その意味でも、コミュニティに参加しているということには意味があって、その人にアクセスしやすくなるので色々と情報を得たりもしやすくなるんですよね。これがコミュニティにいなくて例えばTwitterでつながっているだけとかだと、なかなか登壇の声かけとかもしづらい。ですのでやっぱりコミュニティの中にいるということが重要です。
- この話についてはやっぱり壁を作りたくないし、その意味でもRails Girlsはいいなと思いますね。
- ということでまとめです。
- コミュニティが重要だよね、という話をしました。
- そして一緒にやっていきたいことですが、Rails Girlsのオーガナイズはもちろん難しい人も多いとは思うのですが、コミュニティでワイワイしたり、カンファレンスにプロポーザルを出したり、アウトプットをしたり、といったことは皆さんできるのではないかなと思います。
- ということで、みんなで一緒に次の10年をより良くしていきましょう、というお話でした、ありがとうございました。
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-
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Rails Girls Gathering Japan 2022
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