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@omasanori
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Teach Myself Lojban Advent Calendar 2013: Day 1

Teach Myself Lojban Advent Calendar 2013, Day 1

これはTeach Myself Lojban Advent Calendar 2013の1日目のコラムです。

Teach Myself Lojban Advent Calenadar 2013とは

最近、私はロジバン (Lojban) という人工言語に興味を持ったので、アドベントカレンダー1を口実にロジバンについて学び、理解したことを日々文章に書き出し、この年末を過ごそうという企画。初日から大遅刻。先が思いやられる……。

今日はロジバンはどのような言語なのか、という点について自身の理解した部分をまとめる。

ロジバンとは何か

ロジバンは人工言語

ロジバン (Lojban) は人工言語 (constructed language; conlang)2のひとつだ。私が普段から扱っているプログラミング言語やデータ記述言語のようなコンピュータ言語も広義の人工言語に当てはまるが、constructed languageと言う場合は人々のコミュニケーションに使われることを目的としたものを指すことが多いようだ。有名な人工言語としてエスペラント (Esperanto) がある。

ロジバンの文法は形式文法

私がロジバンに興味を持ったきっかけは、ロジバンの文法が文脈自由文法 (Context Free Grammer; CFG) として定義されている3ことだった。文脈自由文法は多くのコンピュータ言語の文法定義に利用されてきた形式文法だ。

ロジバンの解説書である"The Complete Lojban Language" (CLL) にはYACC用の文法ファイルが掲載されている。人々が会話するための言語でありながら形式文法として定義されていて、プログラミング言語処理系の構文解析器を作るために利用されるYACCで文を解析できることに私はとても驚いた。

ロジバンは曖昧/非曖昧

ロジバンは曖昧さのない文法を持つ4。つまり、ある文に対応する構文木はただ一つしかない。黒い大きな可愛い目の女の子5について考えたことがある人ならこのありがたさが理解できると思う。

しかし、ロジバンは曖昧さを含む意味論を持つ。つまり、ある構文木の解釈は複数存在しうる。そのため、何かを曖昧に表現することはできる。また、時には文脈に沿った文の解釈が必要になる。

文法から曖昧さを取り除く一方で、人の思考の曖昧でないサブセットのみを表現できるようにする道を選ばない設計者たちのバランス感覚にも私は興味を惹かれた。コンピュータ言語においては文法と意味論の両方が曖昧でないことが多くの場合において望ましいので、文法を非曖昧にして意味論に曖昧さを残すという発想がそれまでの私にはなかったからだ。

ロジバンと論理

ロジバンの文法は述語論理6を基盤としている。そのため、ロジバンの文法を学んでいると項や述語、命題といった論理学由来の用語が登場する。こう書くとロジバンの文法を学ぶのは非常に難しそうだが、ロジバンを学ぶ前提として論理学の高度な知識が必要になるということはないと私は思う。反面、述語論理を理解していれば理解の助けにはなるのかもしれない。

ロジバンの文法は述語論理を基盤としているとはいえ、論理学で言うところの命題でない文を作ることもできる。このおかげで、「こんにちは!」に対応する命題とその真偽とは何かということについて悩む必要はない。また、「嬉しい」といった心情も単体で文になる。

論理に関連して私が便利だと思ったロジバンの特徴は、論理素子でいうANDやOR、XORに対応する語彙をそれぞれ用意していることだ。

日本語で「AとB」と言ったときにはAかBのどちらか片方でもいい場合(「この店ではグローブとバットを買うことができる」、グローブ OR バット)とAとBの両方でないといけない場合(「参加者はグローブとバットを持参してください」、グローブ AND バット)が存在する。「AかB」にもAとBの両方でもいい場合(「20歳未満か市内在住なら半額で入場できる」、20歳未満 OR 市内在住)とAとBのどちらか片方でないといけない場合(「赤いポーチか青いポーチをプレゼントします」、赤いポーチ XOR 青いポーチ)が存在する。

日本語を使って生活する私たちは文脈からこれらを区別するが、お互いの持つ知識の差によって誤解を招くこともある。ロジバンではこれらを区別して表現するために別々の語彙を割り当てている。このような違いに私は普段使っているものとは異なる言語を学ぶことの面白さを感じる。

ロジバンの発音と綴り

ロジバンの表記法は、綴りと音が対応するように定められている。これがどういうことなのか説明するために、英語と日本語の表記法について考えてみる。たとえばhitのiとidleのiの音は区別される。また、「はまち」の「は」と「こんにちは」の「は」の音も区別される。このように、現在の英語や日本語の表記法には綴りと音が対応しないことがある。ロジバンではそのようなことはないということだ。

しかし、一方で(英語や日本語と同様に)ロジバンにはその言語の中では同じ音を表すとみなされるが、発音上は区別できる音(異音)が存在する。

日本語に存在する異音にはハ行の子音が挙げられるらしい。「は」と「ふ」では口の動きや形が異なる。それにより空気の摩擦音が生じる場所が変化して音に違いが生じるので、「は」と「ふ」の子音の発音は異なる。しかし、日本語ではどちらも「ハ行」に分類され、その子音は共通するとみなされる。これを異音と呼ぶ。

ロジバンではある音(=ある綴り)とみなされる発音にはある程度の幅が認められている、つまり異音が存在するということになる。

また、ロジバンでは品詞によって取りうる音(綴り)に制約がある。つまり、未知の語彙が現れても、その音(綴り)から品詞を類推することはできる。また、その制約に従っているかどうかによって外来語の簡易的な判別もできる。

おわりに

ロジバンには他にも数々の特徴があるようだが、私はまだそれらについて十分に理解できていないので今回は触れない。次回7から数回はコミュニティが導線を置いている文献を読み、自分の理解を表に出す形になる予定だ。


  1. 本来のそれではなく、一部のソフトウェア開発者の間で流行している「あるテーマに沿ったコラムを毎日1本ずつ公開する」アドベントカレンダーのこと。

  2. 計画言語 (planned language) とも呼ばれる。

  3. 現在は解析表現文法 (Parsing Expression Grammer; PEG) でロジバンの文法を定義する試みが成果を挙げているようだ。

  4. 形式文法である/文脈自由文法であるということ自体はその文法に曖昧さがないことを意味しない。

  5. 日本語話者の間で日本語文法の曖昧さと自然言語処理の困難さを説明するためによく使われるフレーズ。人によって語順が変わったり省略されたりする。

  6. 一階述語論理ではないとは思うが、確かな情報源を見つけていない。

  7. 本コラム公開日 (12/2) 分のこと。

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