どうも、@omasanoriです。今回は30年くらい前の日本語入力システムの話をします。
なお、以下では日本語入力システムのかな漢字変換エンジンを指してIMEと呼びます。
1990年代、秋葉原……に限らず、この頃はまだAnthyもMozcも存在しませんでした。しかし、当時も当時で様々なIMEが存在しました。
ATOKのように当時から現在に至るまで健在のIMEもあれば、macOS向けに現在販売されているかわせみの前身といえるEGBRIDGEのように形を変えて残ったもの、VJEやWXGのように姿を消したものもあります。
そんな中で、当時使われていたIMEのいくつかは自由でオープンソースなライセンスの下でソースコードが公開されています。NECのCanna、オムロンのWnn(1990年代に使われていたバージョンのフォークであるFreeWnnと、後にAndroidに移植されてAOSPに寄贈されたOpenWnnの2系統が存在)、そしてSonyのSJ3です。
SJ3はSonyが販売していたNEWSというワークステーションに搭載されていたIMEで、オープンソース化した背景にはX Window Systemに付属するアプリケーションとして配布されるという話もあったそうです。その話自体は頓挫したようですが、MITライセンスを採用している点や、X Window Systemでかつて使われていたimakeビルドシステムを採用している点にその名残を感じます。
日本企業で開発されオープンソースとなったCannaやFreeWnn、SJ3の開発は2000年代には停滞してしまいました。その理由をAnthyの開発者はLinuxのかな漢字変換の興亡にて「かな漢字のコア部分のような複雑なコードは本業としての深いコミット無しに改善できるような楽な物ではないのが理由であると考えてます」と述べています。
時は流れて2023年。そんな経緯を知らなかった私はCanna以外にも同時代のIMEのソースコードが公開されていることをSNSで知りました。それをきっかけに当時のウェブページを探して情報を集めている内に、今のOSで動かしてみたくなりました。
SonyのFTPサーバーにアップロードされていた最後のバージョンと思われる2.0.1.20のtar.gzファイルをなんとか探し出し、移植作業を始めました。
それから2週間ほど経ち、一度はソースコードのコンパイルとリンクに成功したものの、かな漢字変換サーバーが途中でクラッシュする原因を探しているのが現状です。
https://github.com/FUJIMI-IM/sj3 に私が作業しているリポジトリがあります。
このリポジトリをホストしているFUJIMIというグループは今回の件をきっかけに私が立ち上げようとしている日本語入力システムを作る人と使う人の会です。FUJIMIについてはいずれ別の機会に紹介文を書こうと思っています。
日本語入力システムの仕組みに興味がある方、普段日本語入力システムを使っていて不便に感じることがある方、お気軽にご連絡ください。