たのしく明るい職場だが、採用されるにはハードルが高い。これは業務の性質上、俗世間からは「死んだもの」として扱われてなければならないためである。
まず採用を希望する者は、実業務について全て理解・承知の上で、自身の持つ全ての財産(自身の肉体を含む)をマザーへ差し出すことを要求される。 全ての財産を差し出すことを要求する理由は、財産そのものよりは「死んだもの」として扱われることに対する保証の面と、もう一つ別の理由がある(後述)。
その要求を満たしたら、今度はマザー側の審査として肉体適正検査と身辺調査が行われる。 肉体適正検査については、マザーにより復活させることが出来るかどうかの検査を相手の遺伝子情報や体液を元に検査され、通常、問題なく通る。 大変なのは身辺調査のほうで、消えても問題ない状態になっているかどうかの裏付け、また、本人の意思によるものか、家族からの扱いなどが徹底的に調査される。 これは過去に業務についてまったく承知していない奴隷が応募にきたことや、採用してみたら家出した某国の王女様で後でモメることになった、などの問題が起きたためである。
この2つの審査が無事に通ってはじめてマザーに応募者がいたことが告知され、マザーによる採用面接が行われ、大抵その場で採用になり、そのまま儀式に移ることになる。 なお審査が通ったあとにマザーに告知するのは、通る前にマザーに知られてしまうと採用にされてしまうためである。 過去の大変なことの処理をすることになり大変な目にあった実働部隊がこういう応募者の身辺調査とかを日々頑張っているのである。
採用の儀式とは、マザーにより丸呑みをされ、マザーの内に身体情報を記録させ、マザーの体内に専用の子宮を作成することである。 この専用の子宮は、応募時に差し出された「全ての財産」を元に作られる。 具体的には、自身の肉体、そして自身が最後まで大切にしていた、お金に変えられなかったモノである。 そこにマザーの体細胞などが混ぜられ、子宮として完成する。 従業員たちは「死ぬ」たびに、自らの全てで作られたそこに還り、安息と、休息と、復活を得るのである。
こんな経緯を経て従業員になっているので、基本最初からスキモノであったわけであり、ノーストレスのたのしい職場である。