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@takawo
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2008年春、領家町の校舎で挨拶を済ませ、友人たちと家財道具を存分に積み込みんだ2tトラックを東京へと走らせた。あれから7年が経ち、独り大垣へと戻ってきた。2014年冬、降り立った大垣駅前では風がスカートをはためかせる一方、吹き溜まりの通風口がビニール袋を引き裂こうと巻き上げていた。

この街は多くの現代人にとっては乗り換えダッシュの駅であり、通過する現実である。芭蕉が奥の細道紀行の道程で筆を置いた地であり、この漫画がすごい2015年版第1位『聲の形』の舞台であり、部活を辞めた桐島が通った高校(のイデア)が所在する土地である。町全体がミドル・オブ・ノーウェアとしての風格ともいうべき空気で覆われ、それを見下ろす雲はvoidとタグを残しては、降り注ぐ雨となって消えていく。帳が落ちると闇は深く、季節はRSSフィードのように流れて情け容赦ない。現代文明ですら為すがままで、しかしその無常の趣に、機械のような心が動かされる。

入学当時には残っていた北口駅前にあった紡績工場の跡地や廃墟のゴルフ練習場は、ショッピングモールへと様変わりしている。そこは一見何の変哲もない面持ちでありながら、鈍い輝きの遺物は失われ、2008年当時に目指された未来の幾つかへとさりげなく置換されていく最中である。

この春にふと思い立って、領家町の旧校舎へと赴いたときのことを思い出す。雨上がりでぬかるんだマルチメディア工房への道のりと、野晒しのように茂った芝生の雑草たち。送電鉄塔から校舎へと通奏高音として鳴り響いていたモスキート音は、30を過ぎた僕の耳に届くことはなかった。ただ、そういった事柄の一つ一つを、今いとおしく思う。

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