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What would you like to do?
あきつ湧き宙にとどまる地獄谷
いつきに夏ふと人間が宙にあり
かいつぶり硝子の沓を宙に見す
かはらけの宙とんでゆく二月かな
からくりの唐子宙飛ぶ飛騨の春
かるがるとおんぶばつたの宙をとぶ
かるた取り紫式部宙に舞ふ
くろぐろと富士は宙吊り冬霞
こたへなき雪山宙に労働歌
こと切れしごとく枯蔓宙吊りに
この少女宙の荒野より来りしか
さしのべし手と綿虫と宙にあり
すいと来て宙にとどまる赤とんぼ
そら耳に千鳥を宙にやり過ごす
そら耳に千鳥を宙にやり過す
それぞれにうかぶ宙ありチューリップ
だんご虫転けて宙掻く脚清ら
つらなりて雪嶽宙をゆめみしむ
とぶ鰡の宙にとどまる胴太し
とゞまりて牡丹の虻の宙にあり
どうしても悲しく吹けぬ瓢の宙
ぬきんでて宙の淋しき今年竹
はたはたの宙に脚垂れ遠ざかる
ひと焔宙にとどまる畦火かな
ふらここの宙を二つに割り遊ぶ
もつれては宙に遊べる雪の翳
よく晴れて寒禽宙にわかれけり
コスモスの浮遊が守る宙の色
ゴンドラの宙に踏み出す青山河
ゴンドラ行く雪降る宙は雪に満ち
サーカスの少年の汗宙に跳ぶ
ジパングの宙に絶筆書かれたり
ジヨツキ宙に合する音をーにせり
バンドネオンに翼枯木の宙を舞ふ
一つ火の宙に座れる寒さかな
一樹無く葭簀を張りし庭の宙
三椏の蕾々の宙にあり
二人して宙に淡雪産み散らす
交み椋鳥宙で分れて雪ぐもり
人恋ふる刻を鰈の宙にあり
仏壇の宙に生きもの春の塵
仔猫等に宙ひびかせて颱風来る
仰ぎ見る宙青かりき蝉の死に
低く来て宙に糞する秋の鳶
傀儡の宙を駆けゆく恋路かな
冬の蝿宙にとどまるとき見ゆる
冬日宙少女鼓隊に母となる日
冬日宙湧水八重にひらきけり
冬日宙見る見る孤児が煙草吸う
冷し馬鋼のごとく宙とばす
凍滝は巌にかかり宙に出づ
初蝶の宙にて風につきあたる
初蝶の宙へと昇る伽藍かな
剪定の宙に未来を描きつつ
勝鶏の宙をとびゆく土けむり
吊橋や百歩の宙の秋の風
向日葵のみひらく宙の渇きかな
吾亦紅宙に浮いたる思惟二三
吾子よ宙のつばめの胴を掴めるか
咲く常山木宙をすぎ去る風みゆる
囀りの森より宙へ観覧軍
囮鮎もろとも宙に光り跳ね
土用芽や宙にとどまる微塵光
地の深雪宙の二階の白根澄む
夏空といふ宙りすの尾のそよぎ
夏草や宙に我が顔淡く見ゆ
夏雲やいるか光りて宙に飛ぶ
夜釣糸宙を手探りしてさがす
大やんま宙にうかがふ陰開墓
大年の宙つたひ来る海の音
大綿の宙のたしかさ石の上
大花火水だけ宙にゆれるとき
大魔術宙に人浮き年の暮
学校に声満ち雪は宙に充ち
安土城址を宙に無言の毛見の衆
宙くらしぎしぎしばかり吹かれゐて
宙でまた会えばや虻の俯かむ
宙という美しきもの雪舞えり
宙にのみありて華麗なる雪片
宙に一瞬水の塊楸邨忌
宙に一線か垂れる錯覚一ぴきの雪虫にして
宙に在る老人とそのかたつむり
宙に垂れ没日と秋の蜂の脚
宙に日を十一月の楢櫟
宙に混む紅梅の炎や年の暮
宙に見えぬものつたひとぶ寒雀
宙に足上げて堰越ゆ茄子の馬
宙に逢ふ双の螢火のほか見えず
宙に鍬ひかる耕しの深からむ
宙に飛びとゞまりて蜂蜂を待つ
宙の木の鳥に名を告ぐ冬景色
宙の虻しづかに脚を擦りにけり
宙をふむ人や青田の水車
宙をゆく父の鉄鉢雪降れり
宙を舞ふ竹の落葉も旅愁かな
宙を飛ぶ倉を目で追ふ夜の長し
宙を飛ぶ枯葉よ麦は萌え出でて
宙を飛ぶ長靴を買ふクリスマス
宙吊りにわが手袋と鵠と
宙吊りのききと乾けり唐辛子
宙吊りの愛在り海へ降る黄砂
宙吊りの豚はももいろ十三夜
宙吊りの飾羽子板飾凧
宙跳んで白息揃ふ稚児の舞
宙飛んで晩夏かゞやく山すゞめ
富士雪解水車しぶきを宙にあげ
寒き夕映え被爆ドームを宙にして
寒き宙支へ阿修羅の肘直角
寒垢離の合掌を解き宙掴み
寒明けの宙妖精の降りてくる
寒月や牛市のこゑまだ宙に
寒木の宙かすむ日の紙芝居
寒桜淡きいのちを宙に揺る
寒満月山脈低み宙に浮く
寒猫の宙よりこゑを落しけり
寝部屋もろとも野分の宙に浮く
尺蠖ののぼりつめたる宙ばかり
屋根替の竹を大きく宙に振り
山梔子にいりあひの宙闢くなり
岬の濤のけぞる宙の凍てにけり
帰燕の宙へ農夫が梯子突き出せり
幻覚の寒き白き手宙に伸ぶ
幾度びも宙に乗り出し霧のバス
幾砂丘かぎろふ宙を越え行くや
広島忌蔓あるものは宙に伸ぶ
悴むや拳固宙までおろしけり
投縄のごとくに宙にぬかご蔓
抽んでて宙にとどまる蓮の花
指さして破る宙あり甘茶仏
揚ひばり海へ一瞬宙つかむ
揚羽蝶ひらかなのごと宙舞へり
撒く水の一瞬宙に麦の曇り
散る花の宙にしばしの行方かな
日あたりて綿虫の宙杉の宙
日は宙にしづかなものに茗荷の子
日は宙に春の天壇ねむるさま
日も月も宙にただよひ熊野灘
日月は宙を向きたる顔ばかり
春の夕光ただよう宙へ生まれし声
春の川宙にもにじみゐるごとし
春もやや光りのよどむ宙のさま
月光は凍りて宙に停れる
月明の宙に出で行き遊びけり
朝霧のひようと高巻き日は宙に
木枯や寝て聴く汽車は宙をゆき
朴ひらき宙におくつきあるごとし
枇杷すすりをはりし双手宙にせる
枇杷を剥く指から宙は始まりぬ
枝伸べて桜は水の宙に在り
枯れあけび宙にもつれて炎の形
枯野の中独楽宙とんで掌に戻る
栗駒の雪宙に浮き苗揃ふ
桃の宙とぎれとぎれに山浮かみ
桃咲くや姥捨て山は宙に浮き
梅固し日輪宙に白く錆び
梅雨の部屋蝿みな宙をとべりけり
梓弓弦月宙を寒うせり
棚経僧の青頭が宙にひかり過ぐ
椋鳥のしばらく宙に畦青む
水上に宙たつぷりとつばくらめ
水槽のえび宙を掻く虹生れむ
水鳥の夢宙にある月明り
洋の宙鳥を渡せば無に帰る
流氷のうちあふこだま宙に消え
海猫の空くらき夏日が宙吊りに
涛声に菊花壇の日宙をめぐる
渓谷に蹤き来て猿と宙
満月の宙やきらめく春の霜
滝ではない!と樹に宙吊りの魚叫ぶ
滝凍てて日輪宙にくるめける
滝風に言葉は宙へとびにけり
濤声に菊花壇の日宙をめぐる
灼くる宙に眼ひらき麒麟孤独なり
灼くる正午索道宙にいこひをり
炎天の山河を蔽ふ宙の濤
炭俵火となる焔宙に鳴る
点滴筒斑雪浅間の宙に吊り
熊蜂宙に飛びとどまれり海の壁
燕の子宙六尺を泳ぎつく
父の座に母がすわりて負真綿
牛の尾の宙を払へば雲の峰
牡丹焚く宙にちちははみんなゐて
牡丹焚く宙に青衣の女人の手
牡丹雪操車場宙にせり上ぐる
猫とんで宙にとどまる雪解風
獏の檻綿虫宙に遊びをり
獣屠り黙し去るまで宙とぶ蝉
玄き諸仏春禽宙に愛しあふ
田螺鳴くルオーの日いま宙にあり
甲斐駒にくれいろひくく宙の凍て
白木蓮の滾りて銀の宙にあり
白牡丹散る一瞬の熱き宙
白露の日神父の裳裾宙に泛き
百段の宙より芙美子日傘振る
目つむれば宙に浮く吾日向ぼこ
目を宙に標本擬ひの大蜥蜴
眼を凝らす宙のつめたさ昼半月
石工あり玄翁宙に風冴ゆる
石舞台に宙より流る円舞曲
祝婚歌花散る宙の明るさに
秋の風富士の全貌宙にあり
秋山に遊ぶや宙を運ばれて
秋燕や宙に枝あるガラス吹
秋蝶のはげしく宙に三つ巴
稲束を投げし宙より跳ぶ蝗
立つ僧の綿虫を宙釈名す
立冬の大葉一枚宙よりして
竿灯は大きく宙を一泳ぎ
節の豆宙に童の眼もをどる
糸とんぼ宙にして石進むなり
紅花や山の入日の宙吊りに
絵馬の馬宙にとどまる初詣
綿虫が飛ぶ石の宙竜安寺
綿虫の死しても宙にかがやくや
綿虫を宙にてとどむ祈りのこゑ
縦吊りの鉄骨の宙花曇り
縹渺と宙を支うるたなごころ
羽ばたきて一尺宙に羽抜鶏
老いぬれば股間も宙や秋の暮
臘梅や僧来て宙をかきまはす
自転車を漕ぐ寒星の宙の中
舞初の眼ざし宙を宙を追ふ
芒野の宙や今日のみ女富士
芦を焼くけむり日輪宙吊りに
花くわりん宙を伝ひて日のあゆむ
花宙に散るや生涯不覚なり
草宙にこゞめるひとの影法師
菊人形蹴鞠の麹が宙吊りに
菜殻火に轅は昏るゝ宙を指す
落葉の群れ宙に追ひぬく雨一粒
葉ざくらや宙に翅澄む虻いくつ
葉桜や一宙劃る仏の手
蓑虫や宙明るすぎ土暗すぎ
虻ついと宙の凹みに落ちにけり
虻の宙光背のごと翅のひびき
虻の眼の爛々として宙にあり
虻宙にとどまり牡丹句碑生まる
虻宙にとどまるときの羽音かな
虻翔けて静臥の宙を切りまくる
蚊を撲つに眼を宙に漂よはせ
蜂のとびゆく塩田の宙鹹し
蜂の王宙にとどまるかにみえて
蜘蛛の子のとどまる宙の明けてゐし
蜻蛉の宙にあるとき翅のなく
螢火の明滅宙にひとつきり
蟇楸邨宙に還りけり
蟹と居て宙に切れたる虹仰ぐ
行く雁の啼くとき宙の感ぜられ
裂けた木に僧侶と鮒が宙吊りに
誰も知らぬ老婆の駈け足枯木の宙
谺して宙真空の秋の井戸
象の鼻宙に秋陽を求めたり
赤とんぼキヤッチボールの宙を縫ふ
赤とんぼ宙にして石進むなり
足場は宙にのびて焚火の余燼冷ゆ
跳炭火の粉宙になほ跳ね愛つらぬけ
身を宙に放り出されし花火かな
轟然と山枯れ宙に日は漂ふ
返り花/宙に/帰り花/棺に
逃水の消えたる宙にルドンの目
連翹といふ一宇宙ありにけり
鈎呑んで宙に躍りし子持鯊
鉄線花垣上り切り宙に咲く
闘鶏のばつさばつさと宙鳴れり
闘鶏の血しぶきの宙くもれりき
雨蛙明恵坐禅の宙に鳴く
雨蛙黒き仏の宙に鳴く
雪すべてやみて宙より一二片
雪はげし生まるる言葉宙に消え
雪ばんば消ゆるさびしさ宙にせる
雪壁の崩れんばかり日は宙に
雪山を宙にひくめて年新た
雪崩止め宙にかかげて座禅草
雪解谷顔なき仏宙に湧き
雲のぼる六月宙の深山蝉
雲は飛び宙に皆跳ね袋掛
雷鳴や山川草木宙より来
霜ふみてしづまる心宙を見る
霧襖ゴンドラ宙へ突き出さる
露けしや撞木の縄の宙とんで
青梅雨の宙にただよふ朴の花
鞦韆の宙の空白薄着して
韋駄天に日輪はなほ雪の宙
顔見世の白狐吊られて宙にあり
風冴えて宙にまぎるる白梅花
餅花のなだれんとして宙にあり
魂を宙にとどめし昼寝かな
鰯雲や船より牛を宙吊りに
鰺刺の宙にある身を一擲す
鴉騒げば宙まじりくる石の国
鴨あはれ宙青ければ鳴き乱れ
鵙の贄四肢を広げて宙に居り
麦踏みは夕陽の宙をゆくごとし
黄落の宙に欅の力瘤
黒揚羽宙より降れる晋山式
鼻尖り杳かな宙を梅匂う
いつの日の山とも知れず夏大空
かたちなき大空を享け寒行者
きら星の除夜の大空ありにけり
げんげんに寝て大空の声を聞く
こんな好い月を一人で見て寝る
たんぽぽや日はいつまでも大空に
みな去れば冬大空のごときかな
もつれ上る蝶に大空どんよりと
下に立つ花の大空ある如く
亡き人の湯呑と春の大空と
入れ物はない両手でうける
初燕大空に見し月夜かな
北風や余燼の中の幾屍
卍なす大空なれば玉遊び
吹き晴れし大空のある蝶々かな
啖呵切るごとく大空霜晴れて
大地より大空広し霞網
大空と大地一つにして立夏
大空と大海の辺に冬籠る
大空にあらはれ来る柳絮かな
大空にうかめる如き玉椿
大空にうらゝが降ると仰ぎけり
大空にくらく雪降る別れかな
大空にしら梅をはりつけてゆく
大空にすがりたし木の芽さかんなる
大空にそむきて通草裂け初めぬ
大空につらなりわたる枯野かな
大空にものうき虻の舞ひ隠る
大空にわが生涯の初比叡
大空にルビふるごとくいかのぼり
大空に万燈の燭花辛夷
大空に伸び傾ける冬木かな
大空に傾く栃の落葉かな
大空に又わき出でし小鳥かな
大空に唸れる虻を探しけり
大空に塵とゞめざる初音かな
大空に天女花ひかりたれ
大空に富士澄む罌粟の真夏かな
大空に富士澄む罌粟の真夏かな
大空に彫られし丘のつばきかな
大空に微塵かがやき松手入
大空に散骨の灰瓜育つ
大空に日はうすうすと枯茨
大空に春の雲地に春の草
大空に月ぶら下り雲凍てぬ
大空に月を放ちて夜なべ村
大空に牡丹かざして祭すむ
大空に田がひらめけり甘茶仏
大空に突き上げゆがむ日蔽かな
大空に罅走らせて枯欅
大空に羽子の白妙とどまれり
大空に舞ひ別れたる鶴もあり
大空に草矢はなちて恋もなし
大空に草矢放ちて恋もなし
大空に落花の時空ありにけり
大空に見えて落ち来る木の実かな
大空に跳ねて降る葉や松手入
大空に蹴あげて高し鞠始
大空に長き能登ありお花畑
大空に雲を敷き詰め涅槃の日
大空に顔の出てゐて松手入
大空に風すこしあるうめもどき
大空に飛び据る虻の光りかな
大空に飛石の如冬の雲
大空のあくなく晴れし師走かな
大空のあけつぴろげの野菊かな
大空のあるばかりなり桑を摘む
大空のうつろ踏みゆく墓参かな
大空のきはみと合ひし花野かな
大空のしぐれ匂ふや百舌鳥の贄
大空のすこしを使ひ囀れり
大空のつめたく昏るゝ花野かな
大空のどこかが欠けし流れ星
大空のました帽子かぶらず
大空のまんなかを鳥渡りけり
大空のもとの祭典犬ふぐり
大空の一枚白く凍てにけり
大空の一角にして白き部屋よ
大空の下あるき来て花御堂
大空の凧に風ある茅花かな
大空の動く一劃渡り鳥
大空の吹かれてゐるや青あらし
大空の少し低きにある冬日
大空の春さりにけり椰子の花
大空の春は立てども陰りけり
大空の月の歩みのやや斜め
大空の波にのりけり鯉幟
大空の淋しき国へ凧
大空の深きに落葉舞ひ上る
大空の清艶にして流れ星
大空の片隅にある冬日かな
大空の穴がさくらの蘂のぞく
大空の端は使はず揚雲雀
大空の美しきとき鳥渡る
大空の羽子赤く又青くまた
大空の蒼さを羽摶ち鶴来たる
大空の藍ふりそそぐ二月富士
大空の見事に暮る暑哉
大空の鏡に老いて牡丹散る
大空の雲はちぎれて秋祭
大空の青艶にして流れ星
大空の静かさ移る蜻蛉かな
大空の風きゝすます火燵かな
大空の風をはらみて銀杏散る
大空の風を裂きゐる冬木あり
大空はまなこひらきぬさみどりを噴き上げてくるはるのやなぎに
大空は四隅もなくて時鳥
大空は廃ひたる眼や花吹雪
大空は微笑みてあり草矢放つ
大空は紺青に枇杷は鈴をなす
大空は虚しと眺む浮人形
大空は虹してすてし蜆殻
大空は雲のまんだら千草咲く
大空へうすれひろがる落花かな
大空へつづく島畑鳥帰る
大空へ呼ばれしやうに草の絮
大空へ山を吹きこすしぐれ哉
大空へ帽投げて果つ大試験
大空へ手話の宣誓草青む
大空へ海動く飛魚がとぶ
大空へ鳩らんまんと風車
大空も形見と見えず梅の花
大空も見えず若葉の奥深し
大空やさくらの梢に日が一つ
大空やどこから春の痩せてゆく
大空やひとり更け行く高灯籠
大空や去年骨折れた色もなし
大空や朝の月吹く青嵐
大空や渡り行く鳥布の如し
大空や相よらんとす凧二つ
大空や霞の中の鯨波の声
大空をあふちて桐の一葉かな
大空をたゞ見てをりぬ檻の鷲
大空を亀這ひゆきて師走なる
大空を使ひきらむと荒神輿
大空を動かしてゐる鰯雲
大空を急ぐ音あり犬ふぐり
大空を白いふうせん目借時
大空を稲妻にして夜を在りき
大空を見てゐて風邪を引きにけり
孑孑や大空を覗くかはる~
山山と大空と居て鳥屋師老中
山火事の北国の大空
幟はたはた大空ににほひやはある
懐手大空に解き大欠伸
打ちやめて大空ひろき砧かな
指箒大空おびただしき葉あり
揚雲雀大空に壁幻想す
敵機来し大空持てる八重桜
日傘行くや大空の光あつむべし
月いよいよ大空わたる焼野かな
月出づと大空の星ゐならびて
月君臨すわが誕生の大空に
朝の蚊のまことしやかに大空へ
朴咲くや大空青を全開す
板じきに夕餉の両膝をそろへる
枯蔓の大空よりぞさがりたる
桐の花富士と大空頒ちけり
梅に下りゐし大空夜の痕もなし
梅雨の蝶草むらを出て大空へ
横たはる枯草堤大空に
永き日の大空をうつ旗の音
火事煙凧の大空よごしけり
父の日の朝の大空匂ひけり
牛は生涯大空を見ず空つ風
癒ゆる日のために見ておく夏大空
白木蓮の蕾大空押し上げて
耕人に大空のあり鳶の輪
肉が瘠せて来る太い骨である
脱穀の大空にある高笑ひ
船の上に揺るる大空五月ならむ
芦と鷺とに干拓の大空間
若竹に青き大空ありにけり
草に東風大空に雲動かぬ日
菊畠や大空へ菊の気騰る
落葉松の朝の大空露けしや
蒲公英や日はいつまでも大空に
蓑虫の下から大空ひろがれり
蛙つぶやく輪塔大空放哉居士
蜘蛛消えて只大空の相模灘
連翹に大空の日の漲れり
野を焼いて大空の端汚したる
雁帰る大空濁り放しかな
雪雫きらめきてはちきるる大空
青い土筆いま大空は力抜く
青とうきびわが寝てみるは大空なり
飛騨のかた大空秋となり
鰯雲ずれ大空の誤植なす
鳥渡る大空や杖ふり歩く
鶴の来るために大空あけてまつ
晴れわたるおおぞら秋の忍び足
穹を出入りす白鳥の股関節
虚空を引きとゞめばや鳳巾
声でわかる鶲の機嫌空模様
花苔に吾を焚く日の空模様
空模様読みつつ発たせ戎駕
空模様あやふやにして皐月咲く
もちこたふべったら市の空模様
まひまひに霽れかゝりたる空模様
河豚鍋や落ち着いてきし空模様
夫婦して万歳の顔かなしけれ
子燕に蒼穹遥か活火山
山桜背に蒼穹を負ひにけり
極楽が見ゆと蝙蝠乱舞せり
蒼穹にまなこつかれて鋲打てる
蒼穹に心触れつつすだれ吊る
蒼穹に日はうちふるへ樹氷満つ
蒼穹に虹熟睡のダリの髭
蒼穹に雪崩れし谿のなほひゞく
蒼穹へ放つ一の箭熊祭
蒼穹を天井にして御柱祭
解く帯の足にまつはり花疲
起重機の旋回我も蒼穹もなく
起重機の豪音蒼穹をくづすべく
超過時間に入った天竺の蒼穹
雪崩あぐ蒼穹に雲ひるがへり
鳴子引く蒼穹を引き緊めむため
鴨引いてより蒼穹となりにけり
凍蝶や月天涯を照らしつつ
大根焚食べて五体の暖まる
天涯にマナスル淡き蕎麦を刈る
天涯に火色の雲や草の花
天涯に紛るゝことなく落花舞ふ
天涯に雲の扉ひらく朴の花
天涯に雲屯せり岩ひばり
天涯に青嶺むらがり牡丹園
天涯に風吹いてをりをみなへし
天涯のバッファローより霾れり
天涯の島畠に人花蜜柑
天涯の碧さ野菊と吾れに透く
天涯の船上昼の月を見つ
天涯の藤ひらきおり微妙音
天涯へ梅の蕊張る気息かな
天涯やゆうがおも咲く深き襞
天涯や夏を寒しと翔ぶ羽毛
天涯や女に陰の毛を与へ
太ズボンゆく天涯を鹿のこえ
引鶴として天涯の瑠璃に帰す
炎晝のゆけどとどかぬ天涯見ゆ
睡蓮の花喰めば天涯見ゆるべし
菜殻燃え水城天涯星くらし
薄着してゆく天涯の梅の花
鳳蝶天涯に来てただよへり
雪山に成層圏の蒼さ墜つ
大歳の日が没る成層圏飛行
あぢさゐの色をあつめて虚空とす
かまきりの虚空をにらむ残暑かな
この黴の書をふところに学びたる
さくら咲く峡は虚空といふ日向
さながらに柳絮吹雪の虚空かな
じんじんと耳蝉が鳴く虚空かな
たんだもの虚空もないがこくうある
つる草はほろびのはてにあかあかと虚空に一つ実を育てたり
とんぼうの薄羽ならしし虚空かな
ぬきんでて虚空さみしき今年竹
ひとひらは虚空へ散りぬ白牡丹
ふりむけば虚空がありておけら鳴く
めつむれば虚空を黒き馬をどる
もの探す形虚空の秋蚕あり
やまぼうし花もて領す一虚空
よるべなき声は虚空に響かへり
われとわが虚空に堕ちし朝寝かな
コスモスの花あそびをる虚空かな
マッチの火虚空に飛びし夜釣かな
ラグビーのぶつかつてゐる虚空かな
一個の岩に母来てすわる虚空かな
一月虚空少年団とその他隼
一枝の走りし寒の虚空かな
一葉してまのあたりなる虚空かな
二月果つ虚空に鳩の銀の渦
五月の蝶消えたる虚空修司の忌
亡き父が来る白梅の虚空蔵
仏掌の上の虚空や秋麗ら
元日の膝上膝下虚空なり
冬そうび虚空を統べて気韻さへ
冬山の終の日消えし虚空かな
冬浪の銀扇の飛ぶ虚空かな
冬眠のものの夢凝る虚空かな
冬蝶を鈴のみちびく虚空かな
凍つる夜を羽摶くものゝある虚空
凍みに凍む虚空蔵さんのどぜう髯
凍蝶のきりきりのぼる虚空かな
凩夜を荒れて虚空火を見る浅間山
切株に虚空さまよふ枯尾花
十夜粥押頂いて熱からず
吊られたる虚空の下は青嵐
吾をのせて菜殻火飛べる虚空かな
噴水の虚空をついてこぼれけり
噴烟の波動虚空に凍て透る
地虫なくさみだれ水の虚空にて
墓洗ふ虚空を洗ふごとくなり
夕鶴の虚空つかめる寒さかな
大仏殿蝿一匹の虚空かな
大綿の消えて消えざる虚空かな
大蜘蛛の虚空を渡る木の間かな
実南天眉間につけて虚空を忌む
客観写生の鷹となり来る虚空の点
寒紅の去りし鏡の虚空かな
寒聲は虚空の月にひゞきけり
寒雷の鳴り終りたる虚空かな
寒鮒を堕して鳶の笛虚空
尾をひいて芋の露飛ぶ虚空かな
山国の虚空日わたる冬至かな
嶺のあやめ折るや虚空に色流る
廃車積み虚空や秋の深かりし
思念老ゆ五月虚空の歩みまた
抱きこめば女体虚空の匂いのみ
振向けば花野の虚空背後にも
掘つてある梅に傾く虚空かな
放哉忌竹の病む葉を虚空より
早介が虚空をつかむ螢かな
春寒く虚空に燃やす化学の火
春来り虚空に向ふ合掌は
春眠の虚空に体置き忘れ
智恵詣鼻緒が痛くなりにけり
朝の蜘蛛海の虚空をつかみをり
木枯や深山秀虚空鷲一羽
木登りの虚空の足の春日影
林泉の鴨寒の虚空にしばし舞ふ
枯木の手虚空の春をわし掴み
枯芝にねむり虚空に出てゆきぬ
椎の花虚空よりふる観世音
橙をうけとめてをる虚空かな
武者絵凧虚空を睨みつつ揚がる
死なざらむ虚空生たり梅花人
水引の花の消え入る虚空かな
波の華上がり切りたる虚空かな
波は手を虚空にあげて十三夜
涼風や虚空に満ちて松の声
深雪晴わが影あをき虚空より
滝白く落ちて虚空の夜となる
滴りのきらめき消ゆる虚空かな
火事跡に虚空を掴む一樹あり
熊野の虚空とうとうたらりおみなえし
狛犬にそびらの虚空のぞかるる
玉虫と気づく一瞬虚空なり
玉虫に虚空ひびかずなりにけり
白梅や天没地没虚空没
白障子あくれば虚空へ通ふらし
皐月来て虚空あかるき一湖村
盆過ぎや竹ざうざうと虚空より
真っ白な花の二つが触れ虚空
短日や一管噎ぶ虚空の曲
石橋の虚空獅子飛ぶ牡丹かな
石鹸玉割れし虚空を蝶が過ぐ
磔像や虚空に朴の実の焦げて
神送る鳥居の上の虚空かな
禅寺の澄みし虚空や紅葉狩
秋の風むかしは虚空声ありき
穀象を虚空蔵とききゐたりけり
空也忌の木を伐る虚空抜けにけり
空也忌の虚空を落葉ただよひぬ
空蝉の開きし背に虚空あり
籠枕ころがつている虚空かな
細枝をみそさざい翔ち虚空かな
綿虫や虚空掴みしたなごころ
羽子はたゞ突かるゝまゝの虚空かな
老松相愛するを見つ虚空没
脱糞のこころざし有り虚空われ
花の香や虚空にひろし東山
花散りしあとに虚空や曼珠沙華
花白き虚空すかして月あらぬ
茱萸をふふめば楢の虚空をバツハの曲
草なびく月も虚空に吹かれ出て
落下する先も虚空や那智の滝
落葉すやこの頃灯す虚空蔵
落葉焚き虚空蔵山をまなかひに
薄氷の底はながれて虚空なり
藪風に蝶ただよへる虚空かな
虎に虎入りて虚空のしづけさよ
虚空を引きとゞめばや鳳巾
虚空あるばかり晩夏の都府楼址
虚空にてかすかに鳴りし鷹の腹
虚空にて凍死の者のむさし出身
虚空にて生くる目ひらき揚雲雀
虚空にて虚空のうごく芙蓉かな
虚空にて見えざる鞭が柘榴打つ
虚空にて雲雀の羽根は四つに見ゆ
虚空には日の流れをり黐の花
虚空の穴いつみえそめし白粉花
虚空めぐる土一塊や竹の秋
虚空より定家葛の花かをる
虚空より無が動きだし虹となる
虚空より落ちて虚空へひびく滝
虚空より虫下がり来し花菖蒲
虚空より遊糸到れり漆の木
虚空を引とゞめばや鳳巾
虚空ノ宴へ捧グル角ハ枯樹ノ如シ
虚空会の説法蝉のこゑ借りて
虚空蔵の塔を見飽かぬ端居かな
虚空蔵菩薩雪掻く音の中
虚空蔵足裏に春の潮満つ
虚空蹴る足の力や蝗串
虫籠をさげし虚空のかたむける
蛇交み終るまで虚空静か
蝶々に額いちまいの虚空かな
蟇のゐて蚊を吸寄する虚空かな
蠅むれて虚空に飛ぶや馬の市
贄裂いて百舌鳥は虚空に去りにけり
身のうちの虚空に懸かる旱星
通し鴨ときに虚空を見つづけぬ
野分雲透きし虚空をわが覗きぬ
野分雲透ける虚空を君よ見るな
金屏の金ンを放てる虚空かな
鈴鴨の虚空に消ゆる日和哉
鐘供養すみし御寺に追寄進
門内の虚空を煽る芭蕉かな
闇冴えて虚空に聴きし濤の音
降り鶴の脚さしたらす虚空かな
雪の譜とたましひの灯は虚空行く
雪折の枝の飛びゆく虚空かな
雪霏々と冥き虚空に曼陀羅見ゆ
霜柱虚空べしべし音の立つ
青が尾を曳きて草矢の虚空かな
青きを踏む虚空の水の惑星の
青嵐吹きすぼまりし虚空かな
風涼し架上絶叫せし虚空
風音の虚空を渡る冬田かな
餅膨れつつ美しき虚空かな
鶏鳴に露のあつまる虚空かな
鷹の目の虚空のものに向ひけり
鷹匠の虚空に据ゑし拳かな
鷹舞へば虚空渦巻く枯野かな
鷺草の花の彫める虚空かな
鹿おどし虚空の枯れを打ちにけり
アラスカの上空白き毛糸編む
上空が渦巻いており麦の秋
上空にもも透きとおる時間かな
上空の朝日溶けあふ野分前
上空の雲雀かすかに揺らぎもす
上空へ上空へ人食いにゆく
動物園上空の青寒気団
夜を働く上空に寒気団
大島上空にありとのみ夜長かな
野焼始まる阿蘇上空のほうき星
風の音上空にありむし暑し
黒海上空涼しく雲の漂へり
あきつ舞ふ伊勢の高空ありにけり
いく壁の翳りを刻む高空のかの山脈に日照るらむか
合掌村高空を截る秋燕
慈悲心鳥高空のみに星生れ
散る欅或は高空渡りつつ
木曾高空声掛け合つて大根引く
獅子頭双十節の高空に
葉をふるふ朴高空へ誘なはれ
高空となく押しすすめ鶴舞へり
高空にゐて毛虫焼く修道女
高空に八ヶ岳が雲脱ぐ梅雨の月
高空に水あるごとし青鷹
高空に照り合ふ岳や青林檎
高空に青き山あり吹流し
高空の無より生れて春の雲
高空の風の冬芽となりにけり
高空は疾き風らしも花林檎
高空を鞭打つ風や猟期来ぬ
高空を風の音過ぐ百日紅
とこしえに天心をゆく夜汽車かな
三山の天心にして春の雷
三更の月天心に柚子湯かな
天心では濃き昼の月野に遺賢
天心にして白鳥の大翼
天心にして脇見せり春の雁
天心にゆらぎのぼりの藤の花
天心に会ふ二ながれ鰯雲
天心に光りいきづくおぼろかな
天心に在れば満ちくる春ひかり
天心に太陽膝に毛糸玉
天心に幻日かゝげ寒桜
天心に手足あそばす春の暮
天心に抛りて羽子を休めたる
天心に日を迎へたる雲雀かな
天心に昼月澄めり達磨市
天心に最も近し梅雨入鯉
天心に跼むは蓬摘める母
天心に風船のゆく南風かな
天心に鶴折る時の響きあり
天心のフエノロサの来しこの枯野
天心の墓は土饅頭春の芝
天心の月の左右なる去年今年
天心の月の白毛稲を干す
天心の月ふるひたる雪崩かな
天心の浜薔薇に朋たてこもる
天心の田舎に蜂の還るかな
天心の羽子ゆるゆると落ち始む
天心の青迅からむ雁渡
天心の魚が唾垂れ立葵
天心や一聲もらす菫草
天心をそれぬ鷹あり奇景なり
天心をひた指す壺のひとすぢの息のふかさに立ち上がりたり
天心を月ゆく穂草穂草かな
小米花月天心に来て明し
山粧ふ日毎峰より袈裟がけに
常しえに天心をゆく夜汽車かな
月天心何をなすにも縄はなし
月天心家のなかまで真葛原
月天心栗打つ音をのこしけり
月天心獅子のうへなる知恵菩薩
月天心貧しき町を通りけり
月天心鬼門に水の溜り居る
次に見し時は天心冬の月
満月の天心にして胸さわぐ
潮騒やさみだれ晴るゝ天心居
燕来て天心ことに利鎌の羽
脱獄監視の電球霧色天心澄む
苔青き天心塚を撫でて辞す
萍の生ひて天心そのあたり
豆実る天心居なり浪の音
霙打つ天心の墓供華もなし
青き天心文化の日こそ掃除の日
虫涼し天象星を列ねたり
スカイ・ラウンジ廻さるる身もかすむべし
気象旗の時化を告げをり鰊群来
江湖会や気象はげしき一大姉
佳節の気象地に青き蕗の薹
秋の雲気象の青旗は昏れのこり
あけすけに団栗の木と冬青空
あけっぱなした窓が青空だ
あらしがすつかり青空にしてしまつた
いくばくの青空蝶を錐もみす
お涅槃の日の青空を鳶ながす
かたかごの花のさゞなみ青空へ
こがらしのあとの青空風鶴忌
さくら枯れし枝の青空餅を切る
すこし春少し青空日捲りぬ
つばめきて青空たかき軒端かな
てのひらをくぼめて待てば青空の見えぬ傷より花こぼれ来る
とんぼとぶ青空ながらくもりそめ
どこかに青空がありそうなたそがれの裸木
どの紅葉にも青空のある山路
なつめの実青空のまま忘れらる
ぬける青空冬の篠山刈りのぼる
ばらばらのままの青空大栄螺
ひとみ元消化器なりし冬青空
ほつかりと柚子青空に櫓の音す
まつくらな青空があり春の山
まつ毛瞭らかに冬青空はあり
まなかひに青空落つる茅花かな
みんな消えてしまふシャボン玉よ青空
めつぽうな青空となる札納め
やつこ凧も枯原の青空にゐる
わが死後の青空ならむ朴の花
わが胸に旗鳴るごとし冬青空
カナリヤの籠の目すべて冬青空
コスモスを剪り青空を連れて来し
サングラス青空失せてうろたへり
ペンキ塗る青空がまだ灼けぬうち
ラグビーボールぶるぶる青空をまはる
リラ嗅いで青空がすぐうしろかな
レモン齧れよ青空の落ちて来よ
世間体一つ外せば冬青空
久々に青空を見し秋刀魚かな
五月一日ジエットコースターは青空へ
伊吹嶺に青空触るる梅二月
便所より青空見えて啄木忌
傾く軒の旱の青空へ鶏を追ひだす
八月の巨雲青空抜けて信濃
公魚を釣る青空をへこませて
冬の鳥射たれ青空青く遺る
冬雲の穴の青空移りゆく
冬青空祖母が煙りに風になる
冬青空いつせいに置く銀の匙
冬青空このまゝ死なば安からむ
冬青空さえぎるもののなき別れ
冬青空ひとの歩みの映るかな
冬青空わが魂を吸ふごとし
冬青空わたしの羽音ありにけり
冬青空アミメキリンの首を容れ
冬青空マッチの軸が水に浮き
冬青空九億九光年の留守
冬青空双手ひろげて使徒の像
冬青空夜は万年筆の中
冬青空工夫の胃ぶくろよろこびあふ
冬青空明日をはるかとおもふとき
冬青空母より先に逝かんとは
冬青空涙とともにパンを食べ
冬青空灯台打ち上げて見たし
冬青空瑞枝さみしきときもあり
冬青空胸中の鈴鳴りはじむ
冬青空鈴懸の実の鳴りさうな
切通からの青空水仙花
刈草を抛ついつも青空で
初氷夜も青空の衰へず
初花や一日青空きはまりて
初薬師より青空を連れ帰る
初音いま青空ひらく逢ひてのち
剪定の青空拡む長梯子
劇場街青空ふかく松過ぎぬ
北風や青空ながら暮れはてて
十二月青空を見る小さき旅
午からの青空が見え寒ざらし
卒業証書を眼鏡にし青空覗きをり
厨芥車に青空は遠い凧飾る
句とは何か概念の小をんなの青空
喫茶店はオアシス青空よく映る
噴水は上り青空下りて来る
囀りは青空に満ちすぐに退き
四人の子がきく冬青空の鐘
四角な庭の青空へ机の塵はたいて座る
地に埋没してゆく階段手すりの青空
地の果てに海その果てに冬青空
地平まで青空ありて槻の冬
地震すぎたる青空の尖つた建もの
坂の上の青空が好き青木の実
塀の上冬の青空しか見えず
墓穴一つ規し青空青野原
夏柑の不器量青空市晴れて
夜も青空辛夷千手の拳開く
大根の花や青空色足らぬ
大根抜き青空縋るところなし
大青空水牛が雲喰べたから
女工が仰ぐ崖の桜の咲ききつて青空
妥協なき冬青空とうち仰ぎ
妻たちに冬の青空果てしなし
妻癒えよ稲妻が見す夜の青空
宿木の翔び立ちさうな冬青空
寂しくて青空を被る寒桜
寐ころべば靴青空へ卒業期
寒林にその青空を映す水
寒鮒の釣れて青空よみがへる
寝ころべば靴青空へ卒業期
小鳥来る窓に青空ゆきわたり
小鳥来る驚くほどの青空を
少し寝てあと青空の限りなし
屑買ひは青空仕事紺ジャケツ
山で見た青空が鳴る布団かな
山を離れて青空の落葉かな
山上は無垢の青空斧仕舞
山中は青空に明け冬苺
山家の法会の鉦の音が青空を刺して冬
山枯れてみな青空にしたがへり
山翡翠や初青空が淵にあり
山茶花や青空見ゆる奥座敷
崖の上の冬青空は壁なせり
嶺の残雪ぢりぢりと青空が押す
川越えて同じ青空秋まつり
師と歩む初冬青空眼に尽きず
帰雁見えなくなりまた青空また山並
年あらたなり青空を塗り替へて
底ぬけの大青空の油照り
恐竜のかじった青空
愛うすき日の青空を鳥渡る
戸樋伝ふ雪解雫の青空に
手がかりのなき青空や毛糸編む
手に足に青空沁むと日向ぼこ
手のとどく青空のあり草城忌
抜けがけのやうに青空夏つばめ
揚げても揚げても青空に紙鳶がとどかない
日暮まで椎葉青空花山葵
早春の青空こそばゆくそよいで芦の穂
春の青空瞳にひめし子を抱きとりぬ
昨日より今日の青空凍返る
暑き日の青空のぼる胡蝶かな
更衣青空に袖通すなり
曼珠沙華青空われに殺到す
月の青空寒林に昼透きとほり
朝霧を舟ぬけて青空となる
朱を入れて凧とびやすし冬青空
松山を透く青空に蝶のぼる
林中や枯青空のささやきて
枝つゞきて青空に入る枯木かな
枯峠青空に風無尽蔵
枯菊を刈るや青空凛と張り
柿*もぎて青空更に深くせり
柿むいて今の青空あるばかり
柿若葉して青空の生マ乾き
栗咲く香この青空に隙間欲し
栴檀の実に青空のあるばかり
桃の枝の青空指して長短
桐咲いてより青空の離れざる
梅もどき空は青空なるがよき
梨もいで青空ふやす顔の上
梨出荷大き麦藁帽に青空
梯子あり颱風の目の青空へ
歌会始の青空仰ぐ何んとなく
武蔵野に青空きまる初日記
武蔵野は青空がよし十二月
死後もこの青空あらむ紅芒
毛帽子の幼子の瞳に青空あり
水仙と矢の翔ぶやうな青空と
水打つ頃青空少しづつ消ゆる
水楢の芽吹く青空農具市
氷上の肩青空をもてあます
池涸れて尚ほ青空を映しをり
海を見て青空を見て更衣
海軍のような青空苺を染め
港よりの青空ここに返り花
満足の青空を見ず午后の船
滝落ちて冬青空をひきしぼる
澄みわたる土佐の青空鷹渡る
瀧の水青空へ蜂吹きはらひ
火山の青空夏雲雀の声昇天す
炎天ふかく濃き青空を見定めぬ
烈風の青空白足袋だけを干す
父の忌の青空ありぬ苜蓿
父よいま冬青空も深呼吸
画房出て青空のもと林檎選る
疲れたる瞳に青空の綾もゆる
白亜紀の青空を持ち乳房死ぬ
白鳥の青空目がけ翔つ十字
真直ぐに青空切れて落葉谿
真近なる山の青空十二月
石垣にすこし青空がある落葉
磨かれし青空揺れる榛の花
神の階青空に見え北風吹けり
神殿の列柱残る冬青空
秋の樹の万朶の小声青空へ
秋風は青空に雲を飛ばすかな
稲車押し青空についてゆく
空風は青空の日を支へたる
窓からの青空地球に独り
立冬のあとの青空松葉降る
素足拭く西青空の法師蝉
紫苑ゆらす風青空になかりけり
絶壁をけものの堕ちる冬青空
綿虫の青空よぎる時の白
縫目なき冬青空へ消えし鳥
翡翠や露の青空映りそむ
耐えるため青空に割る鏡かな
耳を病んで音のない青空続く
耳聾ひて雪原と青空にあり
臘八の大青空となりゐたり
芝平ら文字摺草に青空に
芥子の舌ひらひらひら青空ハネムーン
若布負ひ歩く青空幾尋ぞ
茶の花や青空すでに夕空に
落葉木をふりおとして青空をはく
葦刈つて水の青空のこしけり
蓑虫にこの青空の切なからむ
蓑虫の青空を引き入れてをり
蕗の薹青空雲の中にあり
薄幸に似て青空の干鰈
虫干や青空かけて梅小紋
蜥蜴の目死にて青空みてをりぬ
蜻蛉とぶや青空ながら曇りそめ
蝌蚪育つ鳥除けが青空の旗
蝦夷大葉子青空に花穂さし入れて
蟻地獄青空木々の上にあり
裏山の暗い青空紅葉散る
謡初へ青空うつる白障子
豊年の雀青空より降りぬ
贋作の青空冬の来るらし
起重機の巨躯青空を圧しめぐる
越の田個々卯月青空みな容れて
跳躍のあとの青空ともに渇く
身の内の青空埋め青山河
身近なる山の青空十二月
通夜が明けたる硝子戸の凍てついた青空
郭公の啼きやみし青空ばかり
野の上のまろき青空揚ひばり
野ばらの莟むしりむしりて青空欲る
金色の柚子を青空よりもらふ
鎌倉の切通ゆく冬青空
雀交る地上二尺の青空に
雉子を売る眼の青空にほかならぬ
雪とべる痕いくすぢも青空に
雪嶺の上の青空機始め
雪渓は船出の形青空へ
雪解の青空へ草蛙のはねあげて旅する
雪達磨青空ひろくなりきたる
雪雲に青空穴のごとくあく
電気毛布にも青空を見せむとす
霧ながら青空の影園にさす
青年に虚無の青空躰使う
青田も青空も停留所までは来る
青空から汚染受ける酒臭の胸
青空があつて照る柿
青空がある寒餅をきり並べ
青空がずり落ちて蝉転落死
青空がまるごと灼けて玉砕日
青空がめぐりくるなりほとゝぎす
青空が創りし朴の花白し
青空が昏れ三日月と野火が濃し
青空が見えて気抜けす春の雪
青空が見えて雨降る胡麻の花
青空とせめぎ合ふなり秋の雷
青空と戦後のあけびしづもれる
青空と荒野を愛し子を抱かず
青空にきゆる雲あり鯔の海
青空にさくらはひかり喰ひをり
青空にして玄冬の鷹ひとつ
青空にふれし枝先より黄葉
青空にーすじあつし蜘蛛の糸
青空に一筋の雲大根焚
青空に並んで冷たい墓となる石
青空に亀裂なかりし桜かな
青空に凌霄の蔓出羽の國
青空に切つ先ありぬ冬鴎
青空に吸はれたき蝶高く舞ふ
青空に堂扉を開けて節分会
青空に声あらはれて雪卸す
青空に声にじませて植樹祭
青空に天女花ひかりたれ
青空に天気が映る小学校
青空に太陽乾草の山に人
青空に寒気多感の雀ども
青空に寒風おのれはためけり
青空に小鳥飛ばされ初嵐
青空に山羊つれ来り麦を刈る
青空に帰りそびれし露の玉
青空に引く秋雲を旅として
青空に指で字をかく秋の蟇
青空に掴まつてをり枯蟷螂
青空に木の葉一枚吸はれゆく
青空に木守くわりん生らせおく
青空に木賊の節を継足せる
青空に松を書きたりけふの月
青空に枝さしかはしみな冬木
青空に消ゆる頭痛や墓参
青空に無数の傷や曼珠沙華
青空に無花果奇声上げて割れ
青空に白鳥帰る氷の如し
青空に絵具の色の石榴の実
青空に繋ぎとめたり父の凧
青空に羽毛の月出て苗木市
青空に色鳥しみる眠りかな
青空に花の満ちたる桃李
青空に裂けて通草のがらんどう
青空に触れし枝より梅ひらく
青空に辛夷ととんび大揺れに
青空に銀嶺走るだるま市
青空に闇が待ちゐる植田原
青空に障子を上げて洗ひけり
青空に雪の峻峰と鷲とかな
青空に雲がでてきて鰡の貌
青空に雲も日もなきお茶の花
青空に雷気の走る花杏
青空に音楽流れ朴の花
青空に顔ひきしまる花辛夷
青空に飛距離を伸す櫟の葉
青空に飽きて向日葵垂れにけり
青空のあたたかき風山にあり
青空のいつみえそめし梅見かな
青空のかけらはすでに石である
青空のきれい過たる夜寒哉
青空のこの色が好き冬支度
青空のそのまま夜へ籠に胡桃
青空のそのまま暮れて良夜かな
青空のたった今ごはんですよ
青空のちぢめられゆき雪もよひ
青空のちらちら雪や達磨市
青空のつめたき茅花流しかな
青空のどこ涯とせむ葛の花
青空のなやらひの日の滑り臺
青空のはりつめてゐるお正月
青空のまだ残りをる切子かな
青空のままの一日芋嵐
青空のまま昏れ柿の蔕月夜
青空のまるくなりたる袋掛
青空のやうな帷きたりけり
青空の一枚天井羽子板市
青空の一気に満ちて棗の実
青空の下に襤ある辛夷かな
青空の下りてくる麦二三寸
青空の下馬刀の穴覗きけり
青空の中に風ふく薄暑かな
青空の光つてゐたる秋の暮
青空の冷え込んでくる切山椒
青空の凧には凧の自由席
青空の向うへ茅の輪くぐりけり
青空の奥処は暗し魂祭
青空の奥蕩揺す霜みだれ
青空の奥處は暗し魂祭
青空の妖しかりける落葉掻
青空の常念岳や畳替
青空の年頭会ふは空也像
青空の押し移りゐる紅葉かな
青空の日を蜻蛉は来りけり
青空の映れる水に針魚みゆ
青空の暗きところが雲雀の血
青空の流れてゐたる氷柱かな
青空の深くて曲る雲の峰
青空の濡れてゐるらし鹿の声
青空の白くなりたる餅配
青空の白雲動き春の蟻
青空の目にしむラムネ飲みにけり
青空の端に出されし福寿草
青空の端に雲あり返り花
青空の端より凍てゝ滝かかる
青空の芯より垂れて烏瓜
青空の見ゆる霰の落ちてきし
青空の賽の河原へ枯蟷螂
青空の道ずんずん行き暮れてしまつた
青空の雨おほつぶに厄日来る
青空の雨をこぼせり葛の花
青空の雨をこぼせる紅葉かな
青空の雲を呼ぶことなくしぐれ
青空の静まりかへり茄子の苗
青空の風のいとまの唐辛子
青空はどこへも逃げぬ炭を焼く
青空は山国にのみ曼珠沙華
青空は無限蓮の実つぶさなり
青空は遠夏山の上にのみ
青空へふくれあがりて茶山なる
青空へもぐら顔出す二日かな
青空へ一二三と飛花発ちて
青空へ手あげてきるや秋桜
青空へ昼寝の犀が火をこぼす
青空へ水吹きかけて出初式
青空へ祭舞合は筵がけ
青空へ突き出す晩年の拳
青空へ花ぶつつけて辛夷咲く
青空へ飛び去る冬の蠅の音
青空もつかの間杉にまた雪来
青空もみずうみのいろ枯ホップ
青空やはるばる蝶のふたつづれ
青空や今日も確かな冬芽嵌む
青空や千の花火を昨夜呑みし
青空や手ざしもならず秋の水
青空や松の花粉のたちしあと
青空や板戸を立てて氷る宿
青空や海の方晴れ春の雨
青空や狼烟のやうな春の雲
青空や花は咲くことのみ思ひ
青空や落葉終りし大銀杏
青空や道に巻かれて山眠る
青空や鷹の羽せゝる峰の松
青空ゆ下り来し顔が梅干はめり
青空ゆ辛夷の傷みたる匂ひ
青空より枝おろされてユリ並木
青空より西瓜へ世界まつぷたつ
青空より跳ねて来たりし桜鯛
青空をしばしこぼれぬ春の雪
青空をどこへも逃げぬ炭を焼く
青空をみんな連れきて運動会
青空をもみじひと刷毛塗りにけり
青空を或るとき汚し万国旗
青空を押じ上げてゐし櫻かな
青空を氷らして咲くさくらかな
青空を海に拡げて十二月
青空を滝が落ちくるはるかにて
青空を燃えわたる日よ更衣
青空を白雲走る木の芽かな
青空を見極めやうと揚雲雀
青空を負いひとすじの傷舐める
青空を跨ぎて男剪定す
青空を輝きとべる柳絮かな
青空を配し斜面の桃描く
青空を鈎に引寄せ櫨ちぎり
青空を雁が流れぬ厚氷
青空を風の拭へり植樹祭
青空ニ心ノ死角揚雲雀
韃靼の方は青空梅雨の海
風おろしくる青空や一の酉
風知らず青空知らず水中花
風花の舞ふは青空消えしより
高熱の鶴青空に漂へり
髪刈って頭の頼りなき冬青空
鰰や青空は風ひびきけり
鳰にも青空のうれしくて
鵙のくる一劃青空見えてをり
鶏頭を剪り青空の流れだす
鶴去る日青空に消ゆこころざし
鷹去つて青空に疵一つ無き
麦藁帽のふちに青空動きをり
あを空の近寄つて来る犬ふぐり
あを空や手ざしもならず秋の水
あを空や楓そよげば花がある
あを空や身にふりかかる花あけび
あを空を時の過ぎゆく桐の花
帰る雁見ゆるあをあを空流れ
この旅の一天守一蟻地獄
たんぽゝや一天玉の如くなり
つちふるや一天くらく林鳴り
わが野火に一天昏きしばしかな
一天にはかにかきくもる赤ん坊
一天にをさまる古墳草の花
一天に一滴もなき梯子乗り
一天に太陽と冬ありにけり
一天に比ぶ日と月春隣
一天に深浅の青雁わたし
一天のあり風のあり花野行く
一天のかたむきて花吹雪かな
一天の告白のごと雪降れる
一天の安騎の大野の刈田かな
一天の寒星つれて出航す
一天の林檎おごれり旅装のまま
一天の深さ木の辛夷つぼみたり
一天の漆光りに星月夜
一天の玉虫光り羽子日和
一天の瑠璃を張りたり鵙の声
一天の翳りなきとき帰燕かな
一天の雲ゆきつくす峡の春
一天の青き下なる紫蘇の壺
一天へ申しあはせて犬ふぐり
一天を転げ出したる雪起し
一天を頂く旅にとる扇子
九十九里の一天曇り曼珠沙華
冬帝と太陽と一天にあり
冷まじき青一天に明けにけり
古稀自祝一天辛夷あかりかな
噴水の一天昃り亙りけり
四万六千日一天雲の無きならひ
城廃れ一天に置く五月富士
大夕焼一天をおしひろげたる
大野火に一天の掻き暗みたる
春泥蒼し一天萬乗の大君とか
朝あらし一天はれてのぼりかな
枯菊に一天の碧ゆるみなし
橡咲いて一天蒼さばかりなる
残照の紅葉一天裏石廊
牡丹咲く一天ゆたかなるひかり
牡丹満を持して一天雲あらず
茄子の苗一天の紺うばひ立つ
菊花節大東亜圏晴一天
蓮枯れて一天に瑕なかりけり
誰彼もあらず一天自尊の秋
雪ちら~一天に雲なかりけり
雲海や一天不壊の碧さあり
魔の逃げて一天曇る落花かな
鯊釣りに一天の藍しづかなり
鵙晴の一天手向けたる葬
鶴舞ふと一天露を含みけり
木の芽雨天気予報の通りに降る
春の雨天地無用の荷を濡らす
朝顔や雨天にしぼむ是非もなき
雨天なりとおい扉のくるくるあり
あおむけの蟹炎天を掻きむしり
あやふきを炎天の亀しかけたり
いきいきとして炎天の草の露
いさぎよし炎天重き担ぎ荷は
いはれなき懣り炎天の坂あるさヘ
うつむいて炎天の草を刈る風がうごかない
かつと炎天街路樹稚し横浜市
かの日炎天マーチがすぎし死のアーチ
からす来て炎天の巌落着きぬ
きらきらと炎天光るものこぼす
くさめして炎天老うる齢ならず
こひびともかもめも炎天のこんじき
こんじきの棺炎天の湖わたる
しのび鳴く虫炎天の野にひろく
しんかんと炎天ザイル垂るるのみ
すぐ他人なり炎天に別れしひと
つきまとう炎天の蠅われになにある
てむかひしゆゑ炎天に撲ちたふされ
とらわれの蟹炎天を掻きむしり
どくだみの花炎天の水に咲く
どこまでも炎天ひとに縋られず
なつかしき炎天に頭をあげてゆく
にんげんに祭り雀に真炎天
ねむり子を抱き炎天を追ひ行けり
はぐれ猿来て炎天の鏡立つ
はりつめし炎天先駆する柩車
ひそかにてすでに炎天となりゆくも
ひたすらに炎天を行き伊良湖岬
ふりむかばわれ炎天の魚とならむ
みすぼらしき尾や炎天に牛尿る
みちのくに春色おそし牧の草
むしろ旗より炎天のデモ縮む
わが行手より炎天の火の匂ひ
アイシャドウ濃く炎天の一帆追ふ・・・ジャワ
コウモリをさし炎天に殺意湧く
シャツ干せば炎天の富士も夫もあはれ
トラック遠く走り炎天しづまれる
バスに跳ねる炎天の尾や明治村
ピカソ館出て炎天を登りゆく
ワイシャツ干す炎天の他触れさせず
一塵もなき炎天でありにけり
一睡もせず炎天がはじまれり
九十九の渦を炎天に逆立たしむ
予後の身に炎天といふ試金石
仏壇を負う男炎天の山脈見えぬ
佛像に飽き炎天の石跨ぐ
作務衣の紐三つ目結うて炎天へ
円覚寺炎天へ鐘撞きにけり
切れ目なき炎天どこまでが戦後
刮目の新炎天を人は避く
午後二時の炎天くらし簾の外に
厚朴の葉のひまに炎天青くふかし
古き代は見えず炎天の大河のみ
古き帆を張り炎天の風恃む
同齢なりしと炎天に死をつぶやけり
君みうしなふ炎天のチーズ市
君ら征きしはまぼろし炎天のまぼろし
吸殻を炎天の影の手が拾ふ
哭かむまで炎天の澄みまさりけり
回転扉ひらりひらりと黒炎天
土煙炎天に立て羊追ふ
地下街を出て炎天に翅音あり
地獄劇息詰めて見る真炎天
埒もなし炎天に蔓ひきまはす
域の内暗し炎天の世をへだて
塩ふける梅干を炎天の簀に曝らし八月六日原爆記念日の昼
墓地炎天雑草浅草区をうずむ
夢殿の八角の影真炎天
夢殿を出て炎天に捉へらる
大道芸炎天に置く銭の箱
妻恋し炎天の岩石もて撃ち
妻遥かにて炎天を分ち合ふ
完璧な炎天となり吾を入れず
寸鉄のヘヤピンを挿し炎天へ
屋上の気球炎天の海遠望
屋根師らの尻の小さし真炎天
屋根貧しき涯炎天の接収港
山荘の炎天茅渟の海へ伸ぶ
山頂や三百六十度の炎天
己が首持てる石像炎天に
師の逝きて炎天の端に残さるる
師を送り来て炎天のよるべなし
帯売ると来て炎天をかなしめり
幸福肌にあり炎天の子供達
影さへも亡び炎天の幾礎石
往生の道炎天を貫けり
心もどる炎天の松見あげては
心太くふ炎天の人の餓
心棒に狂ひを生ず真炎天
心炎天の花掴み病みこけてゐる
扉さびし炎天・ほとけそして錠
手がかりとせむ炎天にふくらむ波
打って出るおもひ強かり炎天に
抱き合ふ榾の中より大炎
捨て台詞吐き炎天へ鴉翔つ
旅なればこの炎天も歩くなり
日もすがら焦土のけむる炎天下
日日いらだたし炎天の一角に喇叭鳴る
日蝕の別の炎天とはなりぬ
明日死ぬ妻が明日の炎天嘆くなり
書展出て炎天のうす墨の色
果実の言葉炎天をゆく少女らより
梅桜炎天ひくく光りけり
棘もつ木伐つて炎天くつがへす
棟木上ぐ鬨炎天の真洞かな
歩おとろふ父に炎天容赦なし
歯を抜いて炎天の真中が冥し
死して炎天悪妻にして悪母なり
死して鎧ふ巨き炎天の墓石なり
死ぬ日まで炎天の野を蝶舞へり
死のときのひとりのごとし炎天ゆく
殺意にも似し炎天の気貴さよ
水に流すには非ず炎天水を流す
水脈の果て炎天の墓碑を置きて去る
水鏡して炎天はいづこにも
氷挽く泡だちてゐる炎天に
求職の列炎天に蔭もたず
汗し働く基地の炎天生々し
泥染の泥の炎天はじまれり
活火山炎天にあり石を投ぐ
浮游する炎天の群に降るべきか
海に船見えず炎天身に痛し
涯しなき青田炎天白濁す
涸れつくし母炎天の礫めく
湯地獄の底轟きて真炎天
濯ぎ石炎天をのせはじめけり
瀕死の病婦に彼等あたえしもの炎天
火を焚いて故意に炎天濁しけり
炎天が婆の命を剥ぎとりぬ
炎天が曲げし農夫の背と思ふ
炎天が校庭広くしてをりぬ
炎天こそすなはち永遠の草田男忌
炎天といのちの間にもの置かず
炎天といふしづけさに在所あり
炎天となるおん墓のうらおもて
炎天となる一隅の雲たぎち
炎天となる赤縞の日除かな
炎天なれば蜘蛛の餌の食ひのこりもよ
炎天にあがりて消えぬ箕のほこり
炎天にあるきだしをり舌出して
炎天にあるき神つくうねり笠
炎天にいつまでも見え見送れる
炎天にいま逢ひそれも過去のごとし
炎天にうすかげろふは一縷の詩
炎天におとろへし火をまた焚ける
炎天にきりんの首の漂へり
炎天にそよぎをる彼の一樹かな
炎天にたはむれあせし牛の舌
炎天にちよと出てすぐに戻り来し
炎天につかへてメロン作りかな
炎天につよく生まれて甲斐わらべ
炎天になめらかなりき松の幹
炎天にはじけ出されし訃報かな
炎天にはたと打つたる根つ木かな
炎天にはたと打つたる根つ木かな
炎天にひるがえらむとす葉の勁さ
炎天にふるへてゐたる蝶の舌
炎天にぶつかつてゆくひろびたひ
炎天にもってゆかれし大飛球
炎天にわん~と鉦鳴らし行く
炎天にテントを組むは死にたるか
炎天にモスク剥落とめどなし
炎天に一樹の影の地を移る
炎天に上りて消えぬ箕の埃
炎天に乱打されをる太鼓かな
炎天に乾びきつたる怒りあり
炎天に何もなし人生きて群れ
炎天に何置く台の引出され
炎天に出づ名曲に潤ひて
炎天に出でてわが身のあたらしき
炎天に出んとて咳をこぼしけり
炎天に即して松のいさぎよし
炎天に吊らるる背骨ひとつらね
炎天に吾が生き墓石自若たり
炎天に哭けとこそあり捨て寝墓
炎天に嘆き一すぢ昇り消ゆ
炎天に四人目の孫名も面倒なり「東」とす
炎天に墓を晒して鬼舞へり
炎天に夢呆けの貌ありにけり
炎天に大軋りして埠頭貨車
炎天に尻うち据ゑて栄螺割る
炎天に山風の香や吉野口
炎天に待つ群衆の皆跼む
炎天に心おくれて憩ひける
炎天に怒りおさへてまた老うも
炎天に抱く卒塔婆の木の香かな
炎天に揺れゐて草のしづかかな
炎天に旅人憶良の山指さる
炎天に気の触る雀など居らず
炎天に水強くあり北信濃
炎天に池を置き去る鰻番
炎天に汽笛なりて沖ふと近し
炎天に消ゆる雲あり鳶高く
炎天に深谷ありぬ鞍馬寺
炎天に火を焚いて来し眼あり
炎天に火山を置けりきりぎりす
炎天に焔となりて燃え去りし
炎天に焚きたる火より猫走る
炎天に無聊のわれを投じたる
炎天に焦げ叫び伏したゞアラー
炎天に煌と城壁草田男忌
炎天に燕湧き翔ち伊良湖岬
炎天に父の聲母の聲まじる
炎天に犬身振ひの骨の音
炎天に獄衣干しけり監獄署
炎天に瑞の太枝を引きずりゆく
炎天に生木を焚きてゐたりけり
炎天に目のしたたかな油賣り
炎天に眠る峡谷無韻なり
炎天に眩むや髄細りたり
炎天に眼なほ在り捨て鰈
炎天に穴一の穴の日かげかな
炎天に窪む石あり塩くれ場
炎天に立つ師も弟子も遠くして
炎天に笠もかむらず毒蛇捕り
炎天に筵たたけば盆が来る
炎天に繋がれて金の牛となる
炎天に耳の動くはさみしけれ
炎天に耳鳴りのごと乗る木馬
炎天に聲を拡げて物売れり
炎天に肥煮る釜のたぎり哉
炎天に肩落し消ゆ誓子はも
炎天に莚たたけば盆が来る
炎天に菊を養ふあるじかな
炎天に蒼い氷河のある向日葵
炎天に蓮池青き焔むら立ち
炎天に蓼食ふ虫の機嫌かな
炎天に訣る洋傘の絹の艶
炎天に誰も見てゐぬ雀影
炎天に谺す深井汲みにけり
炎天に道を余して引き返す
炎天に鉄のたたずむ自噴井
炎天に鎮まりて赤煉瓦館
炎天に雁来紅の沸き上る
炎天に雄鶏の胸硬く死せり
炎天に電柱一本づつ退屈
炎天に鰈が生きて片眼かな
炎天に鰯いきいき売りすすむ
炎天に鹿沼麻緑蔭に鹿沼土
炎天に麦屑を焼く焔かな
炎天に黒き喪章の蝶とべり
炎天に鼻を歪めて来りけり
炎天のあらがふ蔓に肱張りて
炎天のいつか夕ばむ川面かな
炎天のいづこか昏き喪明けなる
炎天のいづこか笑ふ閻魔寺
炎天のうしろこゑなきひとりごと
炎天のうしろ思へり孔雀鳴く
炎天のうすきまなざし稲の穂や
炎天のうたごえおこる鐵骨の中
炎天のかすみをのぼる山の鳥
炎天のくるぶしに田がやはらかし
炎天のこぼしてゆきし日照雨かな
炎天のごと物足らぬ生死かな
炎天のしじまに光る塩湖あり
炎天のしづまり返り川流る
炎天のすでに秋めく己が影
炎天のその崖見るが一大事
炎天のたいせつにある木たくさん
炎天のつばくらばかりいきいきと
炎天のとかげのわれを知る呼吸
炎天のところどころに湿める家
炎天のどこかつまづき三時過ぐ
炎天のどこかほつれし祭あと
炎天のどこにも触れず戻り来ぬ
炎天のどの角度より逃がれんや
炎天のにわとり雌をおさへけり
炎天のはしばしを海打ちにけり
炎天のひとつの墓に心寄す
炎天のひとりに立ちし埃かな
炎天のほどをはだけて憩ひるも
炎天のむなしさ己が影を追ひ
炎天のわが影ぞ濃き喜雨亭忌
炎天のわづかなる風土管を抜け
炎天のをとこがをとこ翳らせて
炎天のイブは片目をつむるかな
炎天のガスタンク抱きたき勝利
炎天のキヤラメル工場迷彩のこす
炎天のパパイヤよりぞ睡魔かな
炎天のポストは橋のむかふ側
炎天のポストヘ無心状である
炎天のポプラ逆立つ鱒の水
炎天のレールの襞へ油たらす
炎天の一戸一戸の患者訪ふ
炎天の一揖に人を葬りしや
炎天の一枚に照り子を送る
炎天の一樹一影地にきざむ
炎天の一点として飛べるなり
炎天の一片の紙人間の上に
炎天の一片の紙人間の上に
炎天の一隅松となりて立つ
炎天の七里ケ浜のエロスたち
炎天の三輪山に入る鳥一つ
炎天の下さはやかに蛭泳ぐ
炎天の下に睡蓮花を閉づ
炎天の下りて上る墓地のみち
炎天の中こぎ行くや車引き
炎天の中の空より声かへる
炎天の中ほどを日のすすみゐる
炎天の中空を雲押し来り
炎天の乾飯食める雀かな
炎天の伊吹立ちくる板艾
炎天の光へ水をさげてゆく
炎天の八方砂丘なだれ合ふ
炎天の割れるものならわれしやんせ
炎天の卒ほがらかに號令す
炎天の原型として象あゆむ
炎天の号外細部読み難き
炎天の号外裏面なかりけり
炎天の嚢中の銭うらがなし
炎天の土の栖は影もたず
炎天の地に救ひなき死馬の体
炎天の地蔵の頭撫でて過ぐ
炎天の地軸に立てて杖はこぶ
炎天の坂に輓馬の頸力む
炎天の坂や怒を力とし
炎天の埃洗へば白髪ふゆ
炎天の墓しんしんと酒を吸ふ
炎天の墓を思い出にわが生身
炎天の墓を電車が迅く過ぐ
炎天の大仏へ妻と胎内の涼しさに
炎天の大器の縁の欠けてをり
炎天の大榕樹下の市をなす
炎天の奥へ奥へと歩むなる
炎天の女体アパートヘ一筋道
炎天の妻子遠しといまはいわず
炎天の孤松ぞやがて鳴りいづる
炎天の室戸怒濤の鬼薊
炎天の室津は道に塩噴ける
炎天の富士となりつつありしかな
炎天の屋根に影ひく煙りかな
炎天の屋根塗れり蟇とつくばひて
炎天の山が黙つてゐたりけり
炎天の山に対へば山幽らし
炎天の山河を蔽ふ宙の濤
炎天の山荘に老郵便夫
炎天の岩にまたがり待ちに待つ
炎天の峠こえくる一人かな
炎天の島このほかに港なし
炎天の島より放つ荼毘の船
炎天の巌の裸子やはらかし
炎天の巨石や落つる刻を待つ
炎天の市にとゞろと法鼓かな
炎天の師の墓に影預けけり
炎天の平たき町を通りけり
炎天の底の蟻等ばかりの世となり
炎天の底びかるまで斧を研ぐ
炎天の底濁るかにくもりけり
炎天の弧にも爆痕ある如し
炎天の影ことごとく殲滅す
炎天の影なき橋を渡りけり
炎天の影もちあるく港町
炎天の影を恃まず一樹立つ
炎天の影を離さず霊柩車
炎天の影先立ててわが蹤けり
炎天の心音たしかむ被爆の地
炎天の戸口に音すひとりづつ
炎天の振子に縋る悪の翳
炎天の撫牛なでて安らなり
炎天の散り葉に触りて覚めにけり
炎天の旅孔雀の尾持ち歩く
炎天の旗竿に旗なかりけり
炎天の日々あらたなり阿修羅像
炎天の日の入り込まぬ蝉の穴
炎天の日暮れてをりし躙口
炎天の暗さ負目の蝶かがよふ
炎天の未来の刻を地に経る
炎天の杜の中うつろありけり
炎天の来し方遠くけぶりをり
炎天の杭なり海を恋ひにけり
炎天の板ひらひらと家が建つ
炎天の梨棚がめりめりさがりくる
炎天の梯子昏きにかつぎ入る
炎天の樟を越えつつ兜虫
炎天の樹下りんりんと山蛙
炎天の欅生死を見下ろせり
炎天の水くぼませて簗を打つ
炎天の沙吸ひ入れて壺眠る
炎天の洗面器空子が寝入れば
炎天の浜に火焚けば蟹隠る
炎天の浜白泡を長く保つ
炎天の海、底岩の彩たゞよふ
炎天の海見たき日の白帽子
炎天の海高まりて島遠し
炎天の深ささみしむ胸反らし
炎天の湖ひとところ夜のごとし
炎天の湖遠し夫立てば立つ
炎天の澄みたるものに弥勒仏
炎天の濤に照られて月消ゆる
炎天の火の山こゆる道あはれ
炎天の火を消す水の荒びかな
炎天の火ロ金輪際を行く
炎天の焚火まつたく音をなさず
炎天の焚火埃りの荒々し
炎天の熊笹の道いゆくなり
炎天の熱気持ち込む市営バス
炎天の犬捕り低く唄ひだす
炎天の現実女靴みがき
炎天の甃そり返るロゴス見き
炎天の田の母を呼ぶ嬰児の目
炎天の田の隅に吊り盆燈籠
炎天の白皚々の塩湖かな
炎天の目となつて来る葵紋
炎天の真ン中に太陽のあり
炎天の真水掛け合ふ海女親子
炎天の石ころがれりこんにちは
炎天の石の剛直安土城
炎天の石の時間のゆっくりと
炎天の石仏にわが貌さがす
炎天の石光る我が眼一ぱいに
炎天の石動かせて挺子しなふ
炎天の石柱に手を触れんとす
炎天の石灰馬が掲示を嗅ぐ
炎天の砂利に小鳩は首なき影
炎天の空にきえたる蝶々かな
炎天の空へ伸び立つ藤の蔓
炎天の空へ吾妻の女体恋ふ
炎天の空美しや高野山
炎天の署名小鳥の籠さげて
炎天の群蝶を喰ふ大鴉
炎天の羽音や銀のごとかなし
炎天の老婆に無事を祝福され
炎天の老婆氷塊さげ傾ぐ
炎天の肩車より父を統ぶ
炎天の胸の扉あけて我を見る
炎天の能楽堂草擦る音か
炎天の自然発火やいくところ
炎天の船ゐぬ港通りけり
炎天の船笛何ぞ荒涼たる
炎天の艪音こきこき遠ざかる
炎天の色は冷めたし凌霄花
炎天の色やあく迄深緑
炎天の芋畑の母に兵隊の子が逢ひに来てゐる
炎天の芯の暗さやくすり噛む
炎天の花が散るなり百日紅
炎天の花火に故山応へけり
炎天の花火涼夜を約束す
炎天の草に沈める鉄の棒
炎天の草負うて人ころびたり
炎天の荷車にさす油かな
炎天の菊を縛して花見せず
炎天の葉知慧灼けり壕に佇つ
炎天の葛くぐりゆく水のこゑ
炎天の葬列につく手を垂れて
炎天の蓮裏返るまで吹かず
炎天の薄雲とほる肺の陰画
炎天の蝶黄塵に吹かれけり
炎天の蟻迅き地のあるばかり
炎天の街へ呼びかけ献血車
炎天の街角に犬立ちもどる
炎天の表紙の裏のピラミッド
炎天の袋かがやく林檎畠
炎天の裏側は風吹いてをり
炎天の裸木リヤ王の白さなり
炎天の認定被爆者席二百
炎天の貌を小さく戻りけり
炎天の身に方寸の飾りなし
炎天の軸とし立てり孤寥の白
炎天の農夫の頭石に負けず
炎天の道のはるかを修道女
炎天の道行く泉あれば飲み
炎天の道贖罪のごとく行く
炎天の遠き帆やわがこころの帆
炎天の遠揺れ犬の精悍に
炎天の遠目にしかと琴抱へ
炎天の邑にいく筋も道絡む
炎天の郷土にあたま晒しをり
炎天の酒徒が見送る磧越ゆ
炎天の酔顔頷く旧師の前
炎天の野に近くとぶ鴉かな
炎天の金輪際をゆく鳥か
炎天の鎖をひいて疾走す
炎天の隙間を風の来たりけり
炎天の雨樋修理に友死せり
炎天の雲のゆきたる岩照りぬ
炎天の顔見えてゐて顔見えぬ
炎天の風のきこゆる油田帯
炎天の香なり臭木の香にあらず
炎天の馬あれつのる峠かな
炎天の馬くさめせり瓦斯行きて
炎天の馬の背中は急流か
炎天の駅みえてゐる草の丈
炎天の高みの黝む緑樹帯
炎天の鬱たる嶺々は尖がくる
炎天の鴉散らばる恐山
炎天の鶏まつ毛なきまばたきを
炎天の鷹の声なり紛れなし
炎天の鹿に母なる眸あり
炎天の黄河ゆるゆる曲り来る
炎天の黒人霊歌けむらへり
炎天はときに富嶽を蔵すかに
炎天はまぶし目を伏せ旅疲れ
炎天は影よりほかになかりけり
炎天は打楽器ひびき合ふごとし
炎天は晴男の意地一周忌
炎天は蒼し廃墟に貌よごれ
炎天ふかく濃き青空を見定めぬ
炎天へ一歩の蟇の指ひらく
炎天へ出て恋ひはじむ伎芸天
炎天へ出る身構へのひと呼吸
炎天へ出揃いチェホフ忌の家族
炎天へ妻着て出づるジャワ更紗
炎天へ打つて出るべく茶漬飯
炎天へ朝から震う糞尿車
炎天へ炭車影ごと突つ放す
炎天へ無頼の青田もりあがる
炎天へ産まるるときはたれも泣く
炎天へ立ちてはならぬ葡萄蔓
炎天へ花かゝげそめやぶからし
炎天へ蜥蜴みづから色失ふ
炎天へ蝙蝠傘を挿入す
炎天へ遠き部屋にて水を煮る
炎天へ遠山をおく竹の幹
炎天へ鉄のベンチを引きずり来る
炎天も幾度か眼に余りけり
炎天も老いもがらんとしてをりぬ
炎天や「うごけば寒い」吾が墓石
炎天やいくたび人の死に逢ひし
炎天やいつまでのこる法隆寺
炎天やおもて起して甑岳
炎天やかばんの中の受信音
炎天やきらり~と水車
炎天やくらきところを家といふ
炎天やこの道のみは歩まねば
炎天やしかとふまへし火口丘
炎天やただ行くといふ意志あるのみ
炎天やつぼみとがらす月見草
炎天やなお抗わず税負う屋根
炎天やのめりて悪もなさぬなり
炎天やのめりて登る廃伽藍
炎天やひかりとぼしき車馬のかげ
炎天やひしと蔦這ふ石館
炎天やひそかに鹿に囲まれし
炎天やひとりとなつて風の声
炎天やむくろの蝉のうらがえり
炎天やゑた村の上に鳶の鳴く
炎天やをすめすの綱大まぐはひ
炎天やケセラ辻潤の背徳歌
炎天やピカソゲルニカ残しけり
炎天やマキンタラワのおらびごゑ
炎天や一念一歩山深し
炎天や一重瞼が恋しくて
炎天や世にへつらはず商へる
炎天や人がちいさくなつてゆく
炎天や人が小さくなつてゆく
炎天や内がわ曇る焼酎壜
炎天や切れても動く蜥蜴の尾
炎天や別れてすぐに人恋ふる
炎天や前世のやうに異国を過ぎ
炎天や動かしてみる己が影
炎天や十一歩中放屁七つ
炎天や厩の軒の古草鞋
炎天や口から釘を出しては打つ
炎天や口をつぐみし石地蔵
炎天や吹かれ通しの末枝の葉
炎天や命あるもの二三翔ぶ
炎天や地に分配の塩こぼれ
炎天や大樹になりたきイブの裔
炎天や天火取りたる陰陽師
炎天や子の手にぎりて何めざす
炎天や家に冷たき薬壺
炎天や小路を廻る薬売り
炎天や屋台の丈の屋台蔵
炎天や屋根なす浪の大室戸
炎天や山寨の鼓おどろおどろ
炎天や幌馬車一つ黒きのみ
炎天や恋ゆき死なばよかるらむ
炎天や我が毛穴より我が涙
炎天や投げつけし如き人の影
炎天や摩崖仏驚破崖を墜つ
炎天や昆虫としてただあゆむ
炎天や棒高跳びの棒倒る
炎天や森の青々樅梢
炎天や死にし血生き血よりも濃し
炎天や死ねば離るゝ影法師
炎天や水に磧に橋の影
炎天や水を打たざる那覇の町
炎天や海にこもれる海の音
炎天や渡頭の舟の枯れ~に
炎天や牧場ともなき大起伏
炎天や犬は背かず吾に蹤く
炎天や瓦をすべる兜蟲
炎天や生き物に眼が二つづつ
炎天や田の口細き水零れ
炎天や病臥の下をただ大地
炎天や相語りゐる雲と雲
炎天や秋蚕の為の桑の出来
炎天や空にも地にも花槐
炎天や笑ひしこゑのすぐになし
炎天や笠頼母しき鰻掻き
炎天や精を切らさず一飛燕
炎天や縄で氷を提げてきし
炎天や耳を削がれし気球たち
炎天や肩より匂ふナフタリン
炎天や胸に二トロのペンダント
炎天や葵咲かせて異人墓地
炎天や藤村顔の犬寝ておりぬ馬籠坂
炎天や藺の花ひらく水の上
炎天や蛙が鳴けば水思ふ
炎天や蛙鳴きゐる寺の中
炎天や蜥蜴のごとき息づかひ
炎天や行くもかへるも熔岩のみち
炎天や裏町通る薬売
炎天や誰か子はだしの放し飼
炎天や貝殻山を踏みしだき
炎天や道路工事の異国人
炎天や金策つきし鞄置く
炎天や釘打つ音の頭に刺さり
炎天や鉄線の弧は橋を釣る
炎天や鍋釜持たぬ野猿の顔
炎天や鎌を背にして海女あるく
炎天や長城嶺を直下せり
炎天や開かずの踏切てふに待つ
炎天や雫たらして岩兀と
炎天や青田の中に村ひそむ
炎天や額の筋の怒りつゝ
炎天や顔遠くして杉に立つ
炎天や鰻つかめば鳴くきこゆ
炎天や鳶交る声谺して
炎天や鴉があるく森の底
炎天や麹町なし水巴なし
炎天ゆく手提の中に鏡持ち
炎天ゆく水に齢を近づけて
炎天より僧ひとり乗り岐阜羽島
炎天より幼な燕の聲したたる
炎天より金魚の貌をして戻る
炎天をあるきて己れ光らしめ
炎天をいただいて乞ひ歩く
炎天をいよいよ青しきりぎりす
炎天をいよ~青しきりぎりす
炎天をぐわらんぐわらんと鐘樓かな
炎天をこのみて歩く布衣の肩
炎天をさ迷ひをれる微風あり
炎天をすぎゆく風のうすみどり
炎天をふわりと歩き転生す
炎天をゆきて戻りて掌がさみし
炎天をゆき目ン玉をおとしけり
炎天をゆくや彼の地に眼ひらきて
炎天をゆくわが息の聞かれけり
炎天をゆく明眸を失はず
炎天をゆく死者に会ふ姿して
炎天をゆく胎内の闇浮べ
炎天をゆく食はむため生きむため
炎天をマリオネットのごと歩し来
炎天を一人悲しく歩きけり
炎天を一枚の鴉落ち来る
炎天を一歩す心きまりけり
炎天を三半規管に従ひて
炎天を味方につけぬ勝投手
炎天を墓の波郷は立ちてをり
炎天を大きな腹でくる路地の妻女と目で挨拶
炎天を帰りみぢんに葱きざむ
炎天を愉しみゐるは雀のみ
炎天を憩ひの場とす服役し
炎天を断つ叡山の杉襖
炎天を来しよこがほで押し黙る
炎天を来し人に何もてなさん
炎天を来し人小さきドアに消ゆ
炎天を来てアポロンの喉ぼとけ
炎天を来てクーラーに冷やさるゝ
炎天を来てスーパーの深海魚
炎天を来てビルといふ影の箱
炎天を来て地獄絵に見入るなり
炎天を来て大阪に紛れ込む
炎天を来て押売の声つまづく
炎天を来て水音の如意輪寺
炎天を来て炎天を振りむく子
炎天を来て無類の妻の目の涼しさ
炎天を来て燦然と美人たり
炎天を来て砂浜を更にゆく
炎天を来て紛れなき金閣寺
炎天を来て苔臭き茶をすする
炎天を槍のごとくに涼気すぐ
炎天を歩きまはりて妻なき如
炎天を泣きぬれてゆく蟻のあり
炎天を真つ黒な傘さしてをり
炎天を真直に来てふり向かず
炎天を瞶むや刻のうしろより
炎天を耕し寡黙深めけり
炎天を蠍色にて立ちにけり
炎天を行くやうしろは死者ばかり
炎天を行くや身の内暗くなり
炎天を行く食はむため生きむため
炎天を負ひて二百五十歩かな
炎天を遠く遠く来て豚の前
炎天を避けきし蜂の逐ひ難し
炎天を鉄鉢と為す茄子の花
炎天を領せし加賀の國一揆
炎天を駆けて降園時間なり
炎天を駆ける天馬に鞍を置け
炎天を黒衣まとひて神の使徒
炎天ヘズボンの折り目踏み出せり
炎天墓地磨かれたるはかなしめり
炎天広場群衆はみな遠くあり
炎天来て肋截るべく告げられぬ
炎天無心どの墓もわれをふりむかず
炎天焦土人群れやすく散りやすく
炎天翔ぶ翼に無数の鋲かゞやき
炎天行かすかにきしむ鳩の羽
炎天行く真つ赤なものを身に纏ひ
炎天見る武人埴輪の面持ちに
炎天青く子の顔遠く旅にある
無人の境行くが如くに炎天行く
熱もつてゐる炎天を来し一書
父倒る炎天透けて音もたず
父母の墓炎天の真只中に
父母の墓遠く炎天に水こぼす
物言はぬ額炎天の笑ひ受く
犀星碑まで炎天の土不踏
犬撫でて炎天けもの臭くせり
猫、炎天の獲物へと近付けり
獨房の窓に炎天青く妻を追う
璃瑠蜥蜴棲む炎天の巌幽し
甘蔗丈けて炎天の道つづきけり
生きて渇く蟹よ炎天の蟹売よ
生くるべし炎天を航く車椅子
白い声発す喪のごとき炎天に
白炎天鉾の切尖深く許し
目をぎゅっとつむって開いて炎天へ
目鼻なき大炎天の正午なり
真炎天雀憶せず足許へ
眠る子を背に炎天の河馬の前
眼が裂けてをる炎天の鴎かな
碑まぶしく読み炎天を去りがたき
磐石に炎天の香ありにけり
祭絵馬より炎天の溢れ出づ
積砂利の中冷めきつて炎天に
空知川見えては光る炎天に
笑ひ声消ゆことはやし炎天に
米ぐらの倉庫は閉つていても雀炎天にあつまる
網走も炎天の下箒草
縛られ地蔵縛られつづく真炎天
罷り出ておろおろするな真炎天
老眼に炎天濁りあるごとし
耳より声出す炎天の曳かれ牛
胸なめゐし猫炎天に啼き上げし
胸の上炎天までを一樹なし
舟べりにゐて炎天の暗くあり
船半ば塗られ炎天の海動かぬ
草取はせず炎天を唯眺め
葉を巻いて炎天の虫栖みにけり
葛の蔓つるに絡みて炎天へ
蓮の風立ちて炎天醒めて来し
薄紅葉して炎天は昨日のこと
虫瘤の意気壮んなり真炎天
蛇が殺されて居る炎天をまたいで通る
蛙のむくろ腹見せて炎天の池の真つ青
蜂の巣を見つけ炎天子がわめく
蜜と乳賜ふカンナの白炎天
螺子ひとつ買ふのみに出づ真炎天
蟻一疋どちみても炎天の土
行乞の真上炎天うごかざり
解剖室の水流されて炎天へ
言葉たくみに炎天を遁れ来し
診察は束の間炎天また戻る
詩想・微風まとひつくのみ青炎天
豚炎天に哭き八方の釘ゆるむ
貧農が炎天干の胡麻むしろ
赤い旗振る炎天の貨車押せり
軽子職なし炎天仰ぐ遠花火
軽装がベスト炎天あるく旅
透視了へ炎天の鉄骨錆びたり
通院の炎天の道ゆく他なし
逢ふによしなく炎天の風に煽られて歩く
過ぎ去りし炎天かかえこむ産後
遠颱風炎天の奥軋み鳴り
邃く暗し炎天死後もかくあらむ
野ざらしに見ゆ炎天の蟹港
金策や炎天に顔突き出して
釘抜くや炎天に穴ひとつ増える
銭かぞふ男炎天濁しけり
銭落ちし音炎天のどこか破れ
長城を踏み炎天を忘れをり
隠岐からの船炎天に牛おろす
離農家族炎天に犬をのこし去る
雲過ぎる炎天さらに奥ありて
電柱の一列炎天はじまれり
電線の影あるのみの炎天を
青栗をゆする炎天のかぜ冷えぬ
頭にふるる炎天の風故郷なり
風のある炎天に出づ主義に生く
飴うりが飴うりに炎天に笛をふく
高原を馬馳け吾子馳け青炎天
高山もこの炎天の下に臥す
髪染めて偽りの身を炎天に
鬼に随き炎天の道あるばかり
鮒を蘭にさして通れり炎天に
鯛泳ぐとも炎天の彩褪せず
鳥なんぞになり炎天に消えなむか
鳥の眼で飲む炎天の水飲場
鳥棲まず風が果ゆく黒炎天
鳩に襲はる愉しさ炎天の一少女
鳴門炎天激怒しおこる貧乏渦
鳶鳴きし炎天の気の一とところ
黒眼鏡かけ炎天の墨絵かな
齢おもふたび炎天のあたらしき
遠天に雪の栗駒山仔馬撫づ
遠天に雪山ほのと秋の暮
遠天の蒼光り凍河流るる音
遠天へ遠山をおく竹の幹
遠天や童女着せかへられにけり
ころがして干天草の仕上がりぬ
仰ぎ見て旱天すがるなにもなし
旱天に星みえ疲労冴えてくる
旱天に蜆掻く音のみ遺る
旱天の冷えにのけぞる駒ケ嶽
旱天の夜雲の白き盆の唄
旱天の慈雨なる生絲相場かな
旱天の百姓何も持たず歩く
旱天の闌くる露もつ陸稲畠
旱天の雲がいちにち水のいろ
旱天の露さゝげたる木賊かな
旱天や軒端甜め飛ぶ蝶ひとつ
旱天を衝く葭切の声鋭ど
瓜蠅旱天の暾を愉しめる
叫天子九天九地に声充つる
九天の霞をもれてつるの聲
酒ノ瀑布冷麦の九天ヨリ落ルナラン
曉天を陸続と雁湧き出でし
曉天にひろごる茜田鶴わたる
芝ざくら好天あますところなし
好天にうるほへる洲の蘆を刈る
「荒天」の六林男にむかし歓喜あり
五形花田や荒天鴎流れ飛び
千鳥来てゐる荒天の桑畠
荒天に砂丘ただありきりぎりす
荒天の埠頭の雲に夏つばめ
荒天の海にたんぽぽ黄をつよむ
荒天を鎮めて上る冬の月
貌が眼が光り荒天かぎりなし
あっぱれの阿蘭陀万才秋天下
のこぎりの歯を秋天に剣岳
ふるさとを同うしたる秋天下
みちのくに入るや秋天高くあり
ゆくところどこも秋天に天守あり
サッカー少年午後の秋天喪失す
ヤコブが見し一つの梯子秋天へ
一荷つくりて秋天のもと入院す
一隅を領し大仏秋天下
人の像時を打つなり秋天下
人の死へ秋天限りなく蒼し
人の足に乞食合掌秋天下
何をなせとや秋天下かく臥して
光る湖秋天を引き上げてをり
出水退くや秋天日がな風鳴れり
北京秋天刺繍のくつにはきかえて
北京秋天纒足というもの消えし
北京秋天自転車水尾のごと流れ
厚朴の葉や秋天たかくむしばめる
口笛を吹く顔来たり秋天下
命蓮の法力使ふ秋天下
噴煙に秋天の風すさぶらし
園児等の声秋天に風となる
塔も碧き秋天を雲ゆき消ゆる
大玻璃戸拭き秋天を拭いてをり
天使魚も母も秋天知らず病む
家毀つ音秋天に谺して
寄せ打になる網舟や秋天下
富士秋天墓は小さく死は易し
寝しづむ数戸秋天塩川密漁期
山頂のなお秋天の底の吾れ
師の逝きて秋天の階あきらかに
弘法の産屋小さし秋天下
捨て錨秋天計り難きかな
故郷の秋天濃しや土手上崖の上
斧の音杉の貴船の秋天透き
方丈に鯉の一ト跳ね秋天下
曝涼の勅使に秋天晴れあがる
最上峡秋天を抜く土湯杉
望楼に登る秋天拡げつつ
朴の葉や秋天高くむしばめる
機影無し秋天の毬みな上下
沼に波あり秋天に何もなし
浮きをどる名古屋城かや秋天に
海女もぐる尻の丸さを秋天へ
点眼の一滴秋天より落とす
白浪とほく漕げり秋天鳥をもとむ
秋天が咳する煮干しか天皇か
秋天とわが山脈を基地が占む
秋天とわが身一つのほかはなし
秋天にうつろのまなこ笑みもする
秋天にこだまも青く枝おろし
秋天につかまつてをる蜘蛛のあり
秋天につながる坂をのぼりけり
秋天にまたたきはせず窓一つ
秋天にもたぐる芭蕉破葉かな
秋天にわれがぐんぐんぐんぐんと
秋天にクルスは白を色とせる
秋天に一蝶放ちモンブラン
秋天に傾きめぐる独楽があり
秋天に声なく伐折羅咆哮す
秋天に声をとばして心晴れ
秋天に微塵となりてゆく別れ
秋天に投げてハタ~放ちけり
秋天に日食終へし雲流れ
秋天に棹上げ答ふ渡し守
秋天に橋懸あり天女消ゆ
秋天に流れのおそき雲ばかり
秋天に煙突毀す男のあり
秋天に煩悩を絶つ鳶の笛
秋天に瑕といふものなかりけり
秋天に美校は古び置かれたり
秋天に翳はありけり瀧の壁
秋天に赤き筋ある如くなり
秋天に鉄うつひびき暮れゆけり
秋天に鐘打ち終へて十字切る
秋天に雲母ひろがるダビデの詩
秋天に音軽々と戦闘機
秋天に風の形のちぎれ雲
秋天に高く~と虫柱
秋天に鳶の翼の傷あらは
秋天のあをさ障子の外にあり
秋天のかく晴れわたること讃へ
秋天のひかり落つ五世歌右衛門
秋天の一翳もなき思ひなり
秋天の下に浪あり墳墓あり
秋天の天守閣より樋下る
秋天の岳のひとつに火山あり
秋天の巌より巌へロープかな
秋天の微塵となつてゆく離陸
秋天の昃り実生の松あかく
秋天の松より低き昼の月
秋天の果を浄土と疑はず
秋天の歓呼の中に君巨き
秋天の涯やたまらず一機澄む
秋天の球をどの子がうけるだらう
秋天の禽獲れといふ幼妻
秋天の紺きつぱりと子の嫁ぐ
秋天の藍抜けて飛ぶ鳥は師ぞ
秋天の藍火口湖にこぼれたり
秋天の裳裾を菊の彩れる
秋天の赤きしをりや幼き死
秋天の離々たり父の眉衰ふ
秋天の高さ淋しさ極りぬ
秋天は常のごとあり夫逝くに
秋天へ一と雲吐きぬ桜島
秋天へ千木もろともにわれきびし
秋天へ白き葉裏を竹煮草
秋天へ紺を投げたる山上湖
秋天へ飛ばしては売る紙の鳩
秋天やあまりに小さき子の拳
秋天やひとつの石に人集ふ
秋天やダム高々と瀞を捧げ
秋天や一ト日は籠り一ト日出づ
秋天や哭すれば青底ひなき
秋天や塔に根本如来在す
秋天や大堤防に寝ころびて
秋天や家に柩のはこばるる
秋天や峡をたのみて峡に生く
秋天や崩れ落ち来る砂丘壁
秋天や心のかげを如何にせん
秋天や最も高き樹が愁ふ
秋天や白根の湯釜夢のいろ
秋天や皆少年の墓の主
秋天や相かたむける椰子二本
秋天や石に塩置き放牧す
秋天や連理の並樹こゝに絶ゆ
秋天や長わづらひの人に飽かれ
秋天や飛べざる鳰は水に在り
秋天や高さ争ふ峯二つ
秋天や鴉の声は玉のごと
秋天をおろして牧柵をめぐらせり
秋天をかくさふ庭木栗も柿も
秋天をちさく占めしよ豚の捲尾
秋天をつくらんとして雲のとぶ
秋天をななめに頒つ男の手
秋天を仰ぎ打ち出す獅子太鼓
秋天を医やしつづけて火口の水
秋天を射たる砂丘の光り物
秋天を支ふものなき日本海
秋天を歩みて白湯を所望せり
秋天を溜め込んでいる壷の腹
秋天を癒しつづけて火口の水
秋天を祖とし我らに蒙古斑
秋天を絞り溜めたり山上湖
秋天を蜜柑暮れゆく早さかな
秋天を跳ぶ大道の曲芸師
秋天を開いて塔の建ちにけり
秋天ヘテニスサーブの胸反らす
秋天下ベルツの髯の一文字
秋天下ポケット押え探しもの
秋天下一杯に巻く竜頭かな
秋天下一歩あらたに老の杖
秋天下山落ちきつて太る水
秋天下微塵となりてゆく別れ
秋天下生きとし生けるもの蠢く
秋天下耶馬台国の一古墳
秋天下軽き罪持つ少年よ
秋天澄む真昼鍵かけもの書けば
秋天航く堅き空気につまづきつ
空母「みどり」秋天に泌みいる血友病
窓といふもの秋天を嵌めにけり
立枯れて秋天に立つ何の意ぞ
紺青の海坂まろし秋天下
絵画展出て秋天に階を下り
耕せり大秋天を鏡とし
製煉所秋天にトロの鳴り過ぐる
記憶の断層秋天の蝶墜ち来たる
誰がための秋天を置く水鏡
転けし子の考へてをり秋天下
野を馳くる仔馬の足の秋天に
鎌倉の谷戸秋天を高うせり
長城万里秋天はただ一枚に
阻む岩攀ぢ秋天の中に我
雑魚網を引き絞りゆく秋天下
雲のみか秋天遠きものばかり
青樫や秋天の雲にささやける
駱駝の背高し秋天また高し
鳥のみちすじ魚のみちすじ秋天下
鳥消えて秋天たよりなく広し
鴫立て秋天ひきゝながめ哉
鴫立て秋天ひきゝ眺め哉
黄河蛇行して秋天の打ち霧ひ
鼻綱を秋天に投げ牛合はす
龍舞のくねり始めぬ秋天下
龍馬像秋天冥むほど深し
わが頭上最も青し秋の天
上行と下くる雲や秋の天
僧達に大本山の秋の天
嗄煙は音なく秋の天に凝り
噴煙の雲となりゆく秋の天
囚獄のうす煙りして秋の天
天壇の瑠璃の歳月秋の天
石工に四角な秋の天ありぬ
秋の天むらがりて鯉傷つかず
秋の天小鳥ひとつのひろがりぬ
飛行雲二つに裂きし秋の天
鵄尾はねて支ふる如し秋の天
きみとみるこの夜の秋の天の川いのちのたけをさらにふかめゆく
一樹一石おろそかならず秋の天
上行くと下くる雲や秋の天
壺の馬抜け出しさうな秋の天
左右より雲来てかくす秋の天
秋の天微塵のいのち地に曝し
蜻蛉の微のまぎれずに秋の天
とびついてくる晴天のゐのこづち
むらさきの僧晴天の栗の花
カーンと晴天白鳥の来しと言ふ
ノアはまだ目ざめぬ朝を鴿がとぶ大洪水の前の晴天
ラムネで乾杯して涙ぐむ大晴天
一月末日大晴天を祀るなり
今日も晴天セーターにつよく首突込む
仏滅の晴天を呼ぶ*むつ五郎
土蔵ひらけば晴天のほととぎす
夏雲をきざす晴天海黝む
山梔子の火が晴天をまねきけり
帰り花この晴天の果ては雨
掛稲の夜の晴天を月わたる
晴天と一つ色也日傘
晴天と書きしばかりや初日記
晴天にあやかり点青犬ふぐり
晴天にいたいたしきは袋角
晴天にからからとひく鳴子かな
晴天にたゞよふ蔓の枯れにけり
晴天に広葉をあほつ芭蕉かな
晴天に暮てまもなし朧月
晴天に神話ぐらつく金屏風
晴天に苞押しひらく木の芽かな
晴天に身の軽くなり草の絮
晴天に雪散る日なり鷽替る
晴天に鳶の輪寒し梅の花
晴天の何か優れる凍深空
晴天の山ひとつ負ひ薺粥
晴天の昏るるべく燃ゆ葉鶏頭
晴天の樹の雫おつ青蜥蜴
晴天の水に突出し紅葉かな
晴天の水輸人ごゑ夏やなぎ
晴天の牛蒡の長さ抜き揃へ
晴天の真昼にひとり出る哉
晴天の真昼にひとり出る哉
晴天の筵機は藁噛みしまま
晴天の翳を擦りゆく蛇綺麗
晴天の芭蕉裂けたりはたゝ神
晴天の霧いつ閉ぢし蕗を刈る
晴天の鮟鱇といふわだかまり
晴天はいま風葬の山桜
晴天は鵙がもたらすものなりや
晴天へ虫とばしをり大夏木
晴天やコスモスの影撒きちらし
晴天や一遠に梅仰ぎゐて
晴天や恋をはりたる猫とゐる
晴天や白き五弁の梨の花
晴天より欅若葉の緑の聲
晴天を喪くすベトナム兵として
晴天三日節句を待たず桃ひらく
晴天枕に彼も宇宙飛行士のほほえみ
本日は晴天なり走行距離をのばす精子
柘榴裂け吾は晴天童子なり
毛虫出づ蕗を食べたき晴天を
滝を着込む熊あり倭国は晴天なり
病葉が晴天高きより落ち来
登山者のわが庭通る晴天也
百日紅晴天続きに干反る皮
菊咲くや晴天の風こまやかに
讃岐富士聳え晴天高うする
通草もぐふと晴天のでき心
青鵐鳴く晴天にして樹の雫
青鷺がここにもオホーツク晴天
駒鳥の告げし晴天夜につづき
鵙鳴けば晴天応へ居る如し
*はまなすに青天鵞絨の海昏るゝ
あけび蔓引く青天を手繰り寄せ
つぼすみれ濃し青天の落し胤
コスモスを越えて蟷螂青天ヘ
チューリップ青天へ温室の窓ひらく
一教師たかが青天白月ぞ
七夕の竹青天を乱し伐る
二度塗りのごとき青天寒土用
今白岳双峰赤天狗青天狗
冬青天意地はりとほす声したり
凧の糸青天濃くて見えわかぬ
出水退くや青天日がな風鳴れる
初舞台踏むかに春着背に青天
初髪に青天こぼす雪すこし
参道の青天細くほととぎす
囮鳴くや青天樹々の霜雫
墓掘りにある青天や曼珠沙華
夕の川風の母郷は青天に
夕べともなき青天の花火かな
山息吹く須叟青天の修羅落葉
文化祭紋章の蜂青天に
木の葉髪青天玉のごとくにて
木屑山より青天へかぶと虫
杉二十五幹同根冬青天
毛虫焼く火を青天にささげゆく
無風青天宝のごとし菜を漬くる
燃ゆる日や青天翔ける雪煙
牡丹は一茎一花、青天に對して開く
獅子舞の青天に毛を振りかぶり
白桃や青天へ皆のびし枝
石仏のねむき青天返り花
碧湖より青天かけて山紅葉
花過ぎの青天一日氷のごとし
辺福は青天と薔薇書買ふのみ
遥かなる青天を指しつくしんぼ
雪下し青天に腰のばしけり
雪卸し一隅の青天はためかす
青天が洩れゝ見え花の厚さかな
青天と一つ色也日傘
青天と辛夷とそして真紅な嘘
青天にくれなゐ少し落葉籠
青天にただよふ蔓の枯れにけり
青天に乳房柱しつ冬怯ゆ
青天に向つてひらく牡丹かな
青天に日はゆるぎなし山ざくら
青天に昼月雪しろ山女釣る
青天に月は大きな氷玉
青天に朝より凧を漂はす
青天に松散つて誘ふ音もなし
青天に沸騰しをる瀧がしら
青天に産声上ル雀かな
青天に白を増やして紙を干す
青天に米点打ちて公孫樹枯る
青天に縁濃ゆき月萩も白し
青天に葡萄の泳ぐ風迅しや
青天に開き切る桃ふくぶくし
青天に雪ちる戸々の飾りかな
青天に音を消したる雪崩かな
青天に飼はれて淋し木兎の耳
青天のざらつく花火買ひにけり
青天のとつぱづれ也汐干がた
青天のどこか破れて鶴鳴けり
青天の翳ると見えて雪崩れたり
青天の花に雨ばらばらと打ちかかる昼どき
青天の落花かがやき焼葬す
青天の藁にまみれし野梅かな
青天の蛇は縦に裂くべし車百合
青天の辛夷や墓のにほひする
青天の銀座で柿を食べにけり
青天の霹靂とはこれ蝉の尿
青天の霹靂癌来て吾れを犯すかな
青天は一枚の絹鶯に
青天は流るゝごとし冬木原
青天へ一瀑晒す木の芽かな
青天へ吹き上げらるゝ尾花かな
青天へ幹あり蝉の鳴きにけり
青天へ木兎がとび出し雪崩かな
青天へ梅の蕾がかけのぼる
青天へ風のぼりゆく竹の秋
青天やなほ舞ふ雪の雪の上
青天やアマリリスこそ島の芯
青天やレモンの如くひよこ撒き
青天や夜に入りつつも雪なだれ
青天や夜に入りつゝも雪なだれ
青天や植ゑし苗木を聳えしむ
青天や白き五弁の梨の花
青天や皇帝いつも蝶臭し
青天や落ちてみひらく花椿
青天や谿深きより花見唄
青天より落花ひとひら滝こだま
青天を一ト雲走る霰かな
青天を余し翠微を織る飛燕
青天を喪くすベトナム兵として
青天を悼みて地べた広がりぬ
青天を戴きたりし古巣かな
青天を流るゝ霧のありにけり
青天を鷹の逆落つ海あかり
青天地蛙葉と化しねむり溜む
須く太藺青天目指すべし
風船の早や青天に見放さる
鵙鳴けば青天応へ居る如し
鷹の声青天おつる草紅葉
鷹翔り青天雪を降らしける
鷹鳩に化して青天濁りけり
乗鞍岳烟り全天霰降る
寒星の爛たる眼全天に
長政のこゑぞ全天夕焼けて・・・タイ、インドネシア
除夜の鐘全天の星動き初む
雁過ぎしあと全天を見せゐたり
霜鏡全天瑠璃をなせりけり
一枚の蒼天傾ぎ枯野と逢ふ
兵の子の凧蒼天へ糸張れり
冬の橋うかぶ蒼天華麗にて
冬耕や蒼天の富士全かり
完泳の子等蒼天に立ちあがる
新築や蒼天上在二○○○年
枯木見て立つ蒼天に身をひたし
柘榴の実蒼天に爆ぜ武家屋敷
梯子乗蒼天ひびきはじめけり
毛虫焼き蒼天戻る枝の先
水鶏ゆくや蒼天ふかみ照りもせず
湖冴ゆる夜の蒼天へ風奔り
生まれくる蒼天昨夜へはせゆく霧
臘梅を剪る蒼天に梯子架け
花辛夷蒼天ゆふべ茜さし
茅枯れてみづがき山は蒼天に入る
莨一本蒼天の余寒来りけり
蒼天と碧海にのみ居る鯨
蒼天に冬芽満ちつつ山枯れたり
蒼天に山芋の枯れすすむなり
蒼天に枝つきぬけて桃の花
蒼天に桐の蕾のみな立てり
蒼天に氷れる滝の裸身めき
蒼天に浪くだけゐるとんどかな
蒼天に触れんと雪に来し山ぞ
蒼天に道あるごとし花吹雪
蒼天に金きらきらの秋の田の
蒼天に雲消ゆ雪嶺離りては
蒼天に髻とけし相撲かな
蒼天に鳶を放てる雪解かな
蒼天に鷹の帆翔斑雪村
蒼天のキンキンと鳴る釘をうつ
蒼天の一刷の雲冬嵐
蒼天の凍らんとして鷹翔る
蒼天の夜へつづけり愛と辛夷
蒼天の夢を淋漓と筆始め
蒼天の暮れてもあをし返り花
蒼天の槍若芝に落ちて立つ
蒼天は吹雪のひまに移りをり
蒼天へつづく尾根尾根植樹祭
蒼天へ積む採氷の稜ただし
蒼天や一夫あることのみ悲し
蒼天や父に尋ねる火のゆくえ
蒼天や舌出す凧の三番叟
蒼天や芙蓉はさらに身に近き
蒼天より八ッ手をたたくあられくる
蒼天をゆきつつ雲も氷る山
蒼天を切つて釣りあぐ鯊小さし
蒼天を来る~蜂の武者修業
蒼天を涵し氷湖の罅深し
蒼天下冬咲く花は佐久になし
蝉の尿無味無臭にして蒼天
雪晴れて蒼天落つるしづくかな
雪晴れの蒼天は智に鏡なす
雪解村蒼天もまた滴れり
鵙飛んで枝蒼天につきささる
中天の巨人懸垂もう止めよ
中天に太子現われ糸瓜かな
中天に日をとどめたる牡丹かな
中天に月いびつなる枯野かな
中天に月冴えんとしてかかる雲
中天に月懸り汐止るとき
中天に木枯の陽のありにけり
中天に舞はせて磴の落葉掃く
中天に蛙鳴き更け父みとる
中天に赤き月あり熱帯夜
中天に雁生きものの声を出す
中天のつきやおぼろに潦
中天の巨人懸垂もう止めよ
中天の日の光浸み枯尾花
中天の日を浸し湧く冬泉
中天の月の昏さよお山焼
中天の月橘の中よりす
中天の陽をあふち撲つ幟かな
中天を翔び来る鴨の跡ひかり
噴煙も珠冬麗の中天に
大根引磐梯の日の中天に
山の日は中天にあり蝶の舌
心電図を襲いて中天へゆく雷の群れ
日は玉のごと中天に合歓の花
月明の滝中天にかけのぼる
水芭蕉中天に日も蒼みたり
虫時雨寝て中天へ掲げらる
道白くはじまりすでに中天なり
遠つ汽車の音中天に冬はゆく
銀河中天老の力をそれに得つ
雨の中なほ雪痕を中天に
鳴神の一鼓百鼓や壺中天
あめゆきは天界の垢冷えゆくはいのちを産みし不灘なる腔
天水に映る天界涅槃寺
天界に仕事始めの縄なふや
天界に倦みて風船降りてくる
天界に塵の狂乱蘆を焼く
天界に待つひと増えて
天界に待つ人増えて
天界に散華きらきら蝉の昼
天界に月と火口湖相照らす
天界に湧く水蒼しお花畑
天界に火星燃えそふ門火かな
天界に焦すものなきお山焼
天界に雪渓として尾をわかつ
天界のものとし拾ふ沙羅落花
天界の供華大輪の揚花火
天界の入口めきて末黒山
天界の父母に火宅の茸飯
天界の花地に咲けり曼珠沙華
天界へ一抜け二抜け踊りの輪
天界へ向け大氷柱叩くなり
天界へ跳んで白隠雪嶽描く
天界やさらに幻らきが雪乳房
天界や横より雨のごときもの
天界を下りぬ暗きに夏蚕見て
帆をあげて天界めざす水芭蕉
御来迎天界の露降り尽す
朴咲きぬ天界おのづから青し
椋鳥さわぐ天界不況和音なし
泥つけしまま天界の凧となる
炭竃を見て天界を臨みもし
蛇の衣垂れ天界に点る声
野火を愛せよ天界にある戦さ人
行住の天外かゝる苅田径
冬星や天球廻す者ありて
天球にぶらさがりいる人間のつまさきほそいかなしみである
天球に冬のひかりの深きものいかつり星と呼べばかなしも
天球の一角おぼろなる砂漠
天球図持ちし煬帝二十歳のまま
蟹の穴より天球へ泡ひとつ
わが屋根にとどろく雨に暗闇にみひらき思う天空のいたみ
凍ゆるびたる天空の窪みかな
天空に大書し小学生昏れゆけり
天空に月ひとつわが受精卵
天空に潮のひびき朴咲けり
天空に白妙の富士磯遊び
天空に神の弓あり破魔矢うく
天空に鳥別るるや洗い髪
天空のうすむらさきを鶴舞へり
天空のかくもしづかに大旱
天空は生者に深し青鷹
天空へとぶ草のわた沓穿けり
天空へ喉のすりへるまで雲雀
天空へ自讃の朴の花を放ち
天空へ舞ひあらはれし鷹一つ
天空へ駆けのぼるごと冬の滝
天空も崖もまぼろし氷り瀧
天空も水もまぼろし残り鴨
天空下蝦蛄仰向けに干されける
日の夕ベ天空を去る一狐かな
春の夢天空駆けてゐる「わたし」
牡丹吹かれゐて天空に波おこる
秋霖や天空見える鳥の檻
耳聾す風天空を花こぶし
落蝉の天空を風吹き抜けり
ストーブにビール天国疑はず
二人子にぬり絵天国梅雨永し
偸安や雨粒光る実南天
大揚羽娑婆天国を翔けめぐる
天国の夕焼を見ずや地は枯れても
天国に近い薔薇です
天国に近き山家ぞ星月夜
天国の刻が遅れて鳴りそめし
天国の夕焼を見ずや地は枯れても
天国の大寒小寒治虫かな
天国の夫に白夜の旅だより
天国の時計鳴りゐるきんぽうげ
天国の母からの餅焦がしけり
天国の鍵わすれたる星月夜
天国へ行かず密集の雪のべか
天国へ行くまで母は地獄の草*毟り続け
天国ヘルイス茨木足袋はいて
天國に花の翳添へな
天國へ行くまで母は地獄の草毟り続け
掛取りのもどり天国のよな夕焼
暖炉燃え河童天国満たしをり
枯芝に寝て天国と対ひ合ふ
殉教者に天国さむき露のいろ
洟拭きしあと天国を希ひけり
漆黒の蛙天国医書を閉ぢ
秋日燦天国自由切符欲し
臀あたためつ天國の話すこししたり
虹の輪の中の天国見ゆるかと
蚕豆の花や天国知らぬ母
蛙天国かんかん帽がやつてくる
親なしの天国いかに露の夜
虫涼し天象星を列ねたり
あやまちて天上の麦刈りつくす
うなり凧天上にあり軒菖蒲
つきぬけて天上の紺曼珠沙華
なべて霧天上の月孤なりけり
まんまろき餅が天上を志す
やすらかな天上に屠蘇酌み給へ
わが墓は天上にあり乱れ萩
二級河川天上川に冬日差し
八朔の天上大風響き止む
出初式果つ天上の水びたし
初鴉一羽離れて鳩の天
受難節天上にあり朝寝せり
墓原に咲く曼珠沙華誰が「死後の恋」突き抜けて天上は紺
夜光虫燃え天上に銀河濃く
夢醒めよ天上大風凧あがる
天上にちかき淋しさケルン積む
天上にちちはは磯巾着ひらく
天上にひきあぐ螺旋鷹柱
天上によき国ありや星月夜
天上に上りし蛇の衣掛かる
天上に修羅ありぬべし散る銀杏
天上に倦む日や蝶の胴くびれ
天上に咲く華挿頭し寒烈し
天上に川あるごとく靴流る
天上に師の顔笑ふ初笑ひ
天上に御座ただよふ春の雁
天上に戻らでなんの曼珠沙華
天上に昇らむと蝶生れけむ
天上に星斗雛にかよひ路ありやなし
天上に映りて麦を刈り尽す
天上に杖倒れゐる麥は穂に
天上に梅咲くほかは怒濤かな
天上に殖ゆる血痕曼珠沙華
天上に母を還して蜷の道
天上に滝のひびきの朴散華
天上に火をつけにゆく蝸牛
天上に紅差し指をわすれきて
天上に羽衣の曲月今宵
天上に触れし花火の散るほかなし
天上に誰か笛吹く囮かな
天上に還らむとする風花あり
天上に銃口はあり寒雀
天上に風あるごとし竹の春
天上に颶風童女を載せ駱駝
天上に鳶の木赫と雁渡
天上のひたひたと昏れ牡丹焚く
天上のやうに耕しはじめたる
天上のゆたかなるころ雁渡る
天上の声の聞かるゝ秋うらら
天上の声溜めおらん白椿
天上の妻のつむぎし雪の華
天上の妻への手紙朴の花
天上の恋をうらやみ星祭
天上の我が母もまた落葉焚
天上の日を鎮めゐし狐罠
天上の椅子降りてくる雪の朝
天上の楽零れ来る落花かな
天上の湯浴みをここに柚子湯かな
天上の灯は二月堂春の闇
天上の熱帯魚賣場でござゐます
天上の父への献花川開き
天上の玩具鳴りゐる油照り
天上の真日の焔や梅の花
天上の花摘むごとし野の遊び
天上の茶会に召され冬の星
天上の言葉ついばみ小鳥来る
天上の誤謬の鶴を撃つ友よ
天上の隅を見てをり煤拂
天上の風の涼しき修験みち
天上の鱶が目覚める牡丹雪
天上は春風まかせまなぐ凧
天上は骨のにおいの日傘かな
天上は鰯雲地を乳母車
天上へ赤消え去りし曼珠沙華
天上もまた秋蝶の舌の光
天上もわが来し方も秋なりき
天上も天下もあらず白日忌
天上も淋しからんに燕子花
天上より椅子降りてくる雪の朝
天上をさして揃ひぬ帚草
天上を過ぎてゆくもの風の盆
天上を闇の底とし春の星
天上を鴨わたりゆく響きかな
天上大風地上に春の花きそふ
天上大風天狗牛若まなぐ凧
天上大風梯子乗りして遠見の形
天上大風田螺の道の今日短かし
天上大風秋蝶のきりきりと
天上大風麦酒の泡は消えやすく
天上氷河地上花野よ徒渉る
孑孑が天上するぞ三ケの月
彼へかれへ天上の蒼なだれおり
御来迎天上に音なかりけり
手品師は村過ぎて天上に犀がゐる!
散り紅葉夜は天上のきらら星
日は沈む狐影天上の雪に曳き
日天上うましき枇杷ぞ手にもがむ
明日は吹雪かんと天上蒼ざめたり
春月や摩耶山*とう利天上寺
春風や天上の人我を招く
暮れてなほ天上蒼し雪の原
木の葉舞ふ天上は風迅きかな
桜淡墨天上無風散りそむる
椋鳥や天上すでに北の音
死ぬために天上帰る雁ならめ
水飲んで天上くらき夏あした
涼味満点天上大風てふ地酒
片雲の散り尽くしたり鵙の天
白髪の天上母のほととぎす
秋澄むや天上希求埋葬図
立秋の雲天上は無風かな
糸尽きてなほ天上を恋ふる凧
絹雲や日は月山の天上に
芋畑天上大風吹き初めぬ
葡萄垂れ天上をゆく強き櫂
蝶に針天上ふいに足元に
雹止みて天上雷を残しけり
餅搗のあと天上の紺に溶け
鳴神の逢瀬天上往き来して
鵙なくや雲の切目の蒼き天
鶴舞うて天上の刻ゆるやかに
啓蟄やキトラ古墳の天体図
天体に身を差し入れし髭くぢら
天体のくらみをめでて夏帽子
天体は移りつつあり冬の城
天体や多産の綿のほとりゆく
天体や桜の瘤に咲くさくら
天体や黒い肌に冬の蝿
天体ニ氷ル脂訪ヲ狙撃セヨ
星の生誕現場を想う天体を模したる経穴を體に探りつつ
秋に入る天体の環あるごとく
胡桃割る夜や天体の遠ざかる
花火爆ぜ天体繭のごときもの
蜂窩垂れ天体昏きこと久し
遊里に天体を抱く上を下へののどけさ
天頂に出て逆落し渡り鷹
昇りゆく月に天頂ある如く
オリオン座天頂に年逝かんとす
天文の博士ほのめりく冬至かな
天文や大食の天の鷹を馴らし
天文や大食の天の鷹を馴らし
天文や明日よりの妻を薬すかな
からたちの冬天蒼く亀裂せり
まひる冬天の青かぶさり来て沈黙
カシオペアは冬天の椅子児は寝しや
コルト撃ち恋冬天にひるがえる
ザトペック冬天を馳す跫音す
ペン執りし身を冬天に爆ぜしめき
信濃路へ冬天の川ながれをり
冬天が星をこぼせり達磨市
冬天といふ一枚の碧さかな
冬天にゆゆしきほむら落城史
冬天に勁きくちばしありにけり
冬天に牡丹のやうなひとの舌
冬天に見えぬ星あり娶られて啼かず翔ばずのひと生の如き
冬天に透く金の葉や樺の梢
冬天に錐立つ嶺のテレビ塔
冬天のどこまで異邦紅茶澄む
冬天のまるくかかれり無住寺
冬天の動物園や歌舞伎町
冬天の無縫の青を遺さるる
冬天の碧さ言ふべきこともなし
冬天の青に湧き顕つグレコの街
冬天へ杉は槍なす平家村
冬天や北に棲むほど熱き肌
冬天や噴煙のほかに雲二三
冬天より父貌の鳥降り来たる
冬天を仰ぎぬ要らぬものばかり
冬天を降りきて鉄の椅子に在り
呼ばれたるごとく冬天打ち仰ぐ
失墜の鳥を捜せこの冬天の坂の彼方
屋根に猫鳴いて冬天遠きかな
岩裂けて冬天にひとを攀じらしむ
松ふぐりひとつは蒼き冬天に
核の冬天知る地知る海ぞ知る
欺かれ冬天あまり青く寡婦
汝冬天にありきわが乳房と
蹴球や冬天に見る時計塔
鉄階のつめたさ冬天の蒼さ
鳶の笛冬天汚れなかりけり
仏塔は凍天の独楽影引きて
凍天に星を鏤め月を彫り
凍天に逆さ吊られ咲くは音楽
凍天へ干すは磔刑男シャツ
凍天へ弾キュンキュンと喰ひ込めり
凍天や無灯の聖樹残しけり
掴みどころなし凍天の縄梯子
つきとめし香ぞ曇天の椎の花
ばら百花曇天の日のある限り
もう小鳥来ぬか曇天ひろがるか
タンポポの黄に曇天の沼覚めし
何で癒やす疲れ啄木忌の曇天
初花や曇天にして澄みわたり
坂くだる曇天あつと桃が咲き
少年の唾曇天の蔦若葉
底光る夏の曇天煙突ども
新たなる竹に曇天すぐ来たり
曇天と古草の間屍行く
曇天にまぎるる桐の咲きにけり
曇天にシユールになれる薔薇であり
曇天に三椏の花ふさぎ虫
曇天に時に湧きたつ鵜なりけり
曇天に江山ほのと氷かな
曇天に紛れて針を買ひわする
曇天に花は溢れて空家かな
曇天に雪嶺しづむ野梅かな
曇天に風募り来し落花かな
曇天のにはかに日差す桔梗の芽
曇天のひくき揚羽を怖れけり
曇天のわるい人らがくもり居り
曇天の土に梅剪りこぼしたる
曇天の山をだまきは睡き花
曇天の山深く入る花のころ
曇天の椿が落す椿かな
曇天の母屋に風邪の老婆かな
曇天の気晴らしとなる若布の香
曇天の水動かずよ芹の中
曇天の白き太陽蟻地獄
曇天の百舌横着に高杉に
曇天の罠よりぬくきもの外す
曇天の耐へに耐へをる大手まり
曇天の花重たしや義士祭
曇天の虹怺へをり消えつつも
曇天の釣舟草の皆揺るる
曇天の鵙の長啼き海ふくらむ
曇天の黄色い老婆を射殺せよ
曇天の黒点なれど声は雲雀
曇天へまづ白点や辛夷蕾む
曇天へ煙直ぐなる野焼かな
曇天やことに孔雀と乱れたり
曇天や塀に重たき花ミモザ
曇天や縮れて梅の走り花
曇天や菊よりしろき鶏のむれ
曇天や蝮生き居る壜の中
曇天をうけとめてゐる蓮の葉
曇天空砲方向喪失のレミコンへ
沖の曇天パン抱いて漂泊をこころざす
浅春の曇天うるむ細枝網
渦潮の曇天にして青奈落
白鳥翔け曇天の可視圏内
硝子器重し曇天に桜満ち
硝子障子は曇天のいろ笹子鳴く
義士祭の曇天の花重たしや
花合歓に曇天覆ひ被さりぬ
茄子茂る曇天を風吹きすさび
菫は野に鳶職屋根の曇天に
華麗とは曇天を得し葉鶏頭
蛭泳ぐ曇天遠く爆破音
遠い炎が児え曇天の花ざかり
金亀虫交む曇天白きとき
雄鶏と曇天の火を掻きおこす
雲雀の音曇天掻き分け掻き分けて
青む草木曇天をさへ格子へだて
いつまでも暮天のひかり冷し馬
凧揚げし手の傷つきて暮天かな
団扇さげて見やる暮天の鷺影かな
引鴨のふたてにわかる暮天かな
暮天の冬日掴み来たれよかじかむ子
月山の暮天うつくし雛燕
松は高し暮天を移る鴨の声
水現れて檜山の暮天曳き落つる
水鳥の聲のかたまり暮天冴ゆ
波の刃を暮天にのこす秋の汐
海鼠噛む遠き暮天の波を見て
稲扱機音し暮天にはばからず
立葵いよよ素知らぬ暮天かな
紙鳶あげし手の傷つきて暮天かな
虹ありし暮天の碧さはなやぐも
鉄風鈴鳴りぬ暮天にまぎれなく
友よと告ぐる死やひびきあう星満天
年ゆくと満天の星またたける
慈悲心鳥満天の楢萌えほぐれ
手繰り寄せ木槿を截るや梅雨満天
星満天まだ若き同志らのいたわり
星満天雁わたるべき道もなし
月出づと満天の星黙しけり
橇がゆき満天の星幌にする
涯まろき満天の星吾子生るる
満天に不幸きらめく降誕祭
満天に星降り来ると初便
満天のひととき近し田植後
満天の星が響くよラムネ玉
満天の星に会陽の垢離をとる
満天の星に引鴨たぢろがず
満天の星に旅ゆくマストあり
満天の星の一つを見て寒し
満天の星の中なる天の川
満天の星ひびき合ひわがための鎖となりて落ち来る怖れ
満天の星へかはづのこゑ畳む
満天の星を支へて枯木立
満天の星墜ちてくる寒夜かな
満天の星消ゆるまで空磨く労働の中身たれも穢して
満天の春星ねむるけもの達
満天の枯野の星のみなうごく
満天の波羅蜜の世の樟若葉
満天の雪に舟出す葦間かな
満天を怖るる鹿のをとこかな
独活買つて提げ満天に貼りつく星
藤の葉の満天にあり散りはじむ
赤富士に露の満天満地かな
また青き夜天にかへる火事の天
まぼろしか非ず夜天の雪の富士
凍鶴は夜天に堪へず啼くなめり
凩の夜天の端や輜重行
味噌釜を干す白鳥の来る夜天
夜天より大粒の雨花篝
夜天より梯子降りきて梅を干す
撒水形の花火や夜天青むかに
日記買ふ夜天を焦がす熔鉱炉
浦富士は夜天に見えて鳴く千鳥
省みるばかりのひと夜天の川
軍需工業夜天をこがし川涸れたり
長崎を夜天に描く麦の秋
青黍の夜天の澄ぞ押しうつり
この穴の青天井の八咫鳥
ふらここは青天井より垂れゐたり
日の暮の青天井に地虫なく
枝沿ひに桃咲き昇る青天井
枯柏青天井の何処か鳴る
柿ことごとく落ち裏山の青天井
梅林の青天井に飛行雲
水馬青天井をりん~と
花冷えの青天井に及びをり
草の絮青天井をめざしけり
青天井公共の場を掃初ぞ
鴨引くにはそら恐しき青天井
鵙を追ふ鵙や青天井に飽き
あらかやの砂舞い昇れ茜空
杉冷えてゆく広重の茜空
茜空凍みて東京横浜間
雪嶺の浮きて流れず茜空
しんしんと澄む秋空やゆき場なし
ポプラはや秋空透しはじめけり
一遍の秋空に遭ふ日暮れかな
喪われた秋空のもとインコ埋める
夏空が秋空となる刻に音
子供らよ秋空に放たうものなく
富士の弧の秋空ふかく円を蔵す
寶石売子の目に秋空の澄むつかれ
昨日より深き秋空庭師来る
時じくに秋空欠けて瀧落つる
曳かれる牛が辻でずつと見廻した秋空だ
枯竹を割るみやびごゑ秋空に
白壁は秋空のある窓に厚し
秋空がまだ濡れてゐる水彩画
秋空にさしあげし児の胸を蹴る
秋空につぶてのごとき一羽かな
秋空にとどまる打球ありにけり
秋空にとぶ竹竿のしなひやう
秋空にジラフ仕立てのトピアリー
秋空に何か微笑す川明り
秋空に大皿役げる婦人かな
秋空に富士の孤高の犯されず
秋空に尖塔のクルスやゝ歪む
秋空に斑鳩の路地すぐ終る
秋空に煤煙としてただよへり
秋空に音を投げ出しちんどん屋
秋空に鳶の打ったる感嘆符
秋空のつめたさ谷の日をおほふ
秋空の一族よびて陽が帰る
秋空の奥に星辰またたきぬ
秋空の晝は火山を低くしぬ
秋空の深みより蜂もどりつぐ
秋空はうらおもてなき扉かな
秋空へ大きな硝子窓一つ
秋空へ打ってこどもの闘鶏樂
秋空やこころおぼえの窓の人
秋空や天地を分つ山の王
秋空や子をかずつれし鳶の笛
秋空や嵐忘れし雲高く
秋空や日和くるはす柿のいろ
秋空や日落ちて高き山二つ
秋空や里穏かに寺の屋根
秋空や飽食の子の夢持てず
秋空や高きは深き水の色
秋空を二つに断てり椎大樹
秋空を金襴屋台押し移る
窓外の秋空のごと出湯澄めり
草に寝て秋空の紺眼に溶かす
記憶にも今日の秋空桐立たむ
雲に透く秋空見れば笛欲しや
二日早や朝空汚すけぶりかな
初山の朝空雪を散らしけり
地うるむ朝空ふかし鰯雲
廂間の濃き朝空や書より紙魚
朝空に鷺仰がるゝ田植かな
朝空の隈なく晴れて雪解かな
朝空の青きに消ゆる月ならず
朝空は鏡のごとし田鶴わたる
朝空も定まる色に春の土
朝空や一樹の朴葉散りつくし
朝空や背戸の芋掘佛の日
朝空を青一枚に朴の花
朝空焼けて*ほうぼうのみちをゆく
火の粉とぶ朝空零下父生きよ
花莟む朝空ふかく風秘めぬ
朝顔やわれを引き抜く天つ空
水泡にうつりて曲る天つ空
夕くれや花をはなるゝ天の原
天の原よし原不二の中行く時雨かな
天の原南十字の傾ける
天の原和田の原より初鴉
天の原夏富士藍を流しやまず
天の原月出づる大気ながれけり
天の原雪渓の襞そろひたる
天の原鶴去つて残暑すみにけり
富士はだけて雪解光りや天の原
秋風や鹿の嗅ぎ寄る天の原
膝たてゝおそき日みるや天の原
銀杏全く黄葉して散らず天の原
雉子の啼く鏡のおくや天の原
遠空にナイター明り亀乾く
遠空に出初の水の走りたる
遠空の火事のほむらもさめて来し
遠空の露の茜や宝塚
遠空へ雪嶺畳めり晝蛙
遠空をゆく電車音野は凍てて
遠空を染むる花火や盆芝居
十二月の曇空よ暮れてしまへ
しわしわと梅雨竹の子の曇空
人に家雁に寒空果てしなく
口きりや此寒空のかきつばた
寒空に乾ききつたる鳶の声
寒空に杵売るを見む買はねども
寒空に枝こまごまと伸びきりし
寒空に皮を剥るふぐと哉
寒空に都を逃し物ぐるひ
寒空に鳴るニコライの鐘うごけり
寒空のどこでとしよる旅乞食
寒空の昼の眉月田が終る
寒空は輝く雲にありにけり
寒空へ枝強く張る鬼くるみ
寒空やみなあきらかに松ふぐり
寒空や鶴しづ~と汚れつゝ
寒空を穴の開くほど見てをりし
朝寒空「けふははっきりしませんね」
火種にも似て寒空ヘピラカンサ
時雨空よりも暗かり佐渡の海
時雨空光りくる朝の松葉踏む
時雨空木の間ゆく身を思ひ見じ
竝ぶ訃やただ柿熟るゝ時雨空
薪割って割って憂さ飛ぶしぐれ空
蝉時雨空の真ん中穴あいて
蝋梅や枝疎なる時雨空
鶴は棹鴨は飛礫や時雨空
うすうすと紺のぼりたる師走空
師走空暮るると見つつ眠りたり
長梯子何処へ掛けても師走空
ラムネ飲むとき蒼空のほか見えず
凍蝶に蒼空うすれさがりけり
夏深き蒼空鳶がすべるのみ
月山の蒼空冥し夏スキー
燕の恋蒼空の毬と逐ぐ
瑠璃揚羽蒼空の蒼持ち去れり
知床の蒼空滝を振り落とす
蒼空に星かげの無き白夜かな
蒼空に罠はじけ居り冬の山
蒼空の切り傷となる幼児の頸
蒼空の松の雪解や光悦寺
蒼空や桑くゞりゆく秋の暮
蝌蚪の池蒼空すこしうつしをり
雹はれて又蒼空や梅かほる
馬の瞳に蒼空映る冬木風
そらまめの葉裏空色招提寺
また逢わんいぬのふぐりは空色に
ネクタイは鳩の空色七五三
久方の空色の毛糸編んでをり
寒烏傾くときは空色に
曙の空色衣かへにけり
朝顔のみな空色に日向灘
沼と空色を同じに蘆花日和
目薬は夜も空色猫の恋
稲雀日は空色に磨かれて
空色のゴム手袋や牡蠣を割る
空色の山は上総か霜日和
空色は男の色よ新学期
空色は褪めつつ母と洗う罎
長月の空色袷きたりけり
露草の空色の花の咲くあたり
麦藁を染めバラ色に空色に
*はまなすやきのふより濃き空の色
かなかなや夕ふと空の色うごき
つちふるも武蔵野ぶりの空の色
はまなすやきのふより濃き空の色
ふところに柚子一つある空の色
スケートに青きかなしき空の色
亜浪忌や空の深みに冬の色
初午や星出るころの空の色
十六夜や慥に暮るゝ空の色
噴水をひきたてゝゐる空の色
夕暮の氷柱は空の色をして
夕桜夕とは空の色のこと
子等去りてプールは空の色となる
春の田へ落つる時水空の色
春めきてものの果てなる空の色
春暁の移りつつある空の色
朝貌の今や咲くらん空の色
朝顔に空の色まだ定まらず
朝顔の凋ばぬ今日の空の色
渡り鳥見えずなりたる空の色
猫柳故郷にありし空の色
真日照るや樹氷に冥き空の色
秋なれや木の間木の間の空の色
秋海棠まだ降りたらぬ空の色
空に空の色よみがへり黄水仙
空の色うつして雪の青きこと
空の色うつりて霧の染まるかと
空の色やさしくなりぬ良寛忌
空の色大地にうつり冬館
空の色映し矢車草ひらく
空の色映りて晴るる氷柱かな
空の色松虫草の花にあり
空の色濡るると仰ぎ木の芽吹く
空の色透かしレースの傘開く
芦刈つて水に触れたる空の色
落鯊や風の出できし空の色
蓮の実のはじけ飛んだる空の色
蓮の花数へてよりの空の色
蕣や夜は明きりし空の色
見とれるやむかしの空の色を着て
遠火事や焦がしあまれる空の色
雑踏やラムネの泡と空の色
雲よりも花に従ふ空の色
枯芦の空の海あるさま
立秋と云はれて空の海のいろ
おほむらさき太虚も又年経たる
はねつるべ太虚に跳ねて五月の村
吹き抜ける落葉の太虚妻らの旅
太虚を孕み割れたるガラスびん
日の尾根の太虚に亙り寒き聯
秋の雲太虚の風に乗りにけり
芦枯るる風が研ぎ出す太虚の日
萩刈りて太虚といふを庭の上
谷渡る雉子に太虚の光りかな
雪嶺の無言に充てる太虚かな
鷹の巣や太虚に澄める日一つ
日が割る梅雨空洗罐婦に水云ひなりに
梅雨空となるオルガンの踏みごたへ
梅雨空と吾子の泣声かぶり病む
梅雨空に罅はしらせて雷一つ
梅雨空のずり落ちて来る馬の尻
梅雨空の突っかえ棒の外れ月
梅雨空へ三十六峰雲を吐く
梅雨空や水も昔の色ならず
梅雨空や独楽屋の独楽のみな横倒れ
梅雨空を押上げのぼる観覧車
痢にこやる妻に梅雨空けふも低し
送電線無限梅雨ぞら鷺倦めり
風邪永びく梅雨空垂れておびやかす
低空の夕日を掬ひ初つばめ
低空を古型機飛ぶ菊花展
低空を煙ながれて萵苣はがす
日本の笑顔海にびつしり低空飛行
梅雨茸や低空飛行実に低し
温室の内翳らせて低空機
知覧より低空飛行桜どき
わが屋根にとどろく雨に暗闇にみひらき思う天空のいたみ
凍ゆるびたる天空の窪みかな
天空に大書し小学生昏れゆけり
天空に月ひとつわが受精卵
天空に潮のひびき朴咲けり
天空に白妙の富士磯遊び
天空に神の弓あり破魔矢うく
天空に鳥別るるや洗い髪
天空のうすむらさきを鶴舞へり
天空のかくもしづかに大旱
天空は生者に深し青鷹
天空へとぶ草のわた沓穿けり
天空へ喉のすりへるまで雲雀
天空へ自讃の朴の花を放ち
天空へ舞ひあらはれし鷹一つ
天空へ駆けのぼるごと冬の滝
天空も崖もまぼろし氷り瀧
天空も水もまぼろし残り鴨
天空下蝦蛄仰向けに干されける
日の夕ベ天空を去る一狐かな
春の夢天空駆けてゐる「わたし」
牡丹吹かれゐて天空に波おこる
秋霖や天空見える鳥の檻
耳聾す風天空を花こぶし
落蝉の天空を風吹き抜けり
ふるさとの中空せましつばくらめ
オリオンのかたむきふけし中空に撓るがごとき風ふるふ夜
中空にとどまる凧も夕陽浴ぶ
中空にとまらんとする落花かな
中空にひらきし面て銀杏散る
中空によろけ竿灯立ち直る
中空にオリオン揚げて村凍てし
中空にバケツを伏せて死ぬ四月
中空に修羅を舞ひたる春の夢
中空に手を挙げカインの末裔とぞ
中空に月吹上げよ冬の風
中空に槻の落葉と鵙の声
中空に澄み切る秋の骸かな
中空に秋の燕となりにけり
中空に素の香を流す泰山木
中空に見えて芒種の月の暈
中空に見し雪片を身にまとふ
中空に起重機鳴れる深雪かな
中空に銀河放てり奥穂高
中空に降りきゆるかと夕あられ
中空のうごかぬ月をうらみけり
中空の茜さす薔薇に閉しける
中空の鴉見送る単衣かな
中空は川曲明りに秋の声
中空は白熱ゆらぎ桃の花
中空は蝶そぎ落す最上川
中空をつづる炎や萩を焚く
中空を割りし軽雷こぶしの芽
中空を十六夜の月の出かけかな
中空を歩きすぎたる花茗荷
中空を芭蕉葉飛べる野分中
中空を風鳴り渡り千鳥なく
中空を駈けて修羅なす修二会の火
冬終る封筒の中空色に
夏来たる砲台の中空つぽで
折れて伸ぶ木賊一群中空の思想といふを如何に束ねむ
松の花風は中空のみに吹く
梅白し中空を風猛りつつ
水仙や日は中空にかゝりたる
河鹿の音月あるときは中空に
涅槃したまふ中空を飛び交ふ蜂
渡り鳥伸び縮まりつ中空に
滝凍る中空に裾ふつ切れて
炎天の中空を雲押し来り
稲扱機踏むや西透き中空透き
雀より鵙が近しや熱の中
霾ぐもり大鉄橋は中空に
青柚もぐ中空に香をはしらせて
かの地層河より立ちて夏空に
さだかに夏空音さし交いに砂利を練る
シートベルトかちゃりと締めて夏空へ
パントマイム天使の輪っか夏空に
不動明王夏空かすめゆくものなし
仰のくや夏空落ちん瀧の直グ
吹きあがる蜂の嗔りが夏空へ
夏空があつまつてこの嬰児の瞳
夏空が救ひのやうにある日なり
夏空が秋空となる刻に音
夏空といふ宙りすの尾のそよぎ
夏空に地の量感あらがへり
夏空に妻子描かん雲もなし
夏空に聖き炎あぐる塔二つ
夏空に記憶の一樹家郷を去る
夏空のいよ~遠し鹿湯越
夏空の一滴蒼く氷河透く
夏空の下美しき故山あり
夏空の冷え透明ぞ岳鴉
夏空の真中思へり寝返りぬ
夏空の羅馬やいのち惜しみ来し
夏空へ雲の落書奔放に
夏空やポプラは遠くでもわかる
夏空や何かなしうてからすうり
夏空や廃れて高き煙出し
夏空や旗あげし処国府台
夏空や水中に建つモニュメント
夏空を航くに何にも鍵かけず
夏空読むか学の眼鏡に緑映え
夏空透くドーム雀のこゑつづり
夏空馳すアンパンマンは強かりき
太平洋側は夏空嘘のやう
子の瞳の中の吾も夏空も永久なれよ
山一つ山二つ三つ夏空
支ふべし夏空のまた砕けなば
樹齢五百年夏空を割りて立つ
積まれたる石の放熱夏空に
翼打つ音のばっさり夏空より
遠い日の零戦の影だと老人のいう
鳩の歩の夏空までは遠きかな
すぐ褪むる西空の紅冬の虫
烈風の西空燃えぬ酉の市
蝉鳴いて西空の明死者とあり
血重く立つ西空のみどりの樹
西空に茜雲寄る大根引き
西空の守る一日の秋桜
西空の朱もわづかや笹鳴す
西空の柿のわめきのほつと消ゆ
西空の犀ぶつ倒れ妻走る
西空の虹行き切符で逝きしひと
西空焼け人影冬木ともに黒し
西空透く夜は牡蠣雑炊ときめ
銀杏ちるちるちる西空の茜寒む
闇汁へ急ぐ西空美しく
颱風一過の西空理髪師外へ出て
齢きし鳶も馴染の西空ドラマ書く
ひとありて春空にかがやきつ神のごとく
壺を抱く春空のもの皆入れて
大屋根に春空青くそひ下る
日輪のしろささみしさ春空へ金管楽器水仙鳴れり
春空とふ大いなる枡の底にわれ
春空に虚子説法圖ゑがきけり
春空に身一つ容るるだけの塔
春空に雪まだとけずくに境
春空に露びつしりとあるごとし
春空に鞠とゞまるは落つるとき
春空の思はぬ方へ靴飛べり
春空へ割り込む山車を仰ぎけり
春空へ砂なげ上げてあそぶ子ら
春空やけむりとならむ大思い
浅き春空のみどりもやゝ薄く
縄跳に春空たわみやすきかな
とんと手をとんととび箱春の空
まん中が黒い蝶々や春の空
やがてかのなきがらも無し春の空
ゆけむりの上にゆけむり春の空
ゆびきりの指が落ちてる春の空
ガスタンク孵りさうなる春の空
シャガールの女たゆたふ春の空
ピアノは地ヴァイオリン春の空ながる
一つづつ春の空ゆく絵蝋燭
今日はしも匂ふがごとき春の空
仰ぐこと多くなり春の空となる
仰ぐこと多くなり春の空となる
伸ばせば手が眞っ青となる春の空
何番の花で尽くるや春の空
切れがちに榛の樹までの春の空
四五人の僧の仰げる春の空
妻の上にあくまで濃くて春の空
山脈の空みどりなす春の月
山鳩の鳴きいづるなり春の空
影曳きて春の空ゆく熱気球
待春の空に襞ある瀧の音
手を容れて冷たくしたり春の空
日輪をかくして春の空ひろし
春の夜をはかなまねども旅の空
春の空人仰ぎゐる我も見る
春の空円しと眺めまはし見る
春の空叩いて鴨のとべるなり
春の空帆船の綱交錯す
春の空日の輪いくつも色となり
春の空森のひとすみ濡れてをり
春の空濡れてゐる手ぞ美しき
春の空目を上ぐるたび濃かりけり
春の虹智恵子の空に懸かりけり
春の雪林の空の力抜け
月淡く出でてたゆたふ春の空
木々涵したる春の空ほろほろ鳥
松島の鶴になりたや春の空
梨の木に水のぼりゆく春の空
此処からも大仏見ゆる春の空
死は春の空の渚に游ぶべし
死んで花が咲くなら死にます春の空
水平線溶けどこまでも春の空
水煙の天女が舞へる春の空
点滴の終りに近し春の空
玻璃ごしに見てゐる限り春の空
盗みする鳶も舞けり春の空
草に臥て右や左の春の空
行く春の空に煙吐く湯殿哉
襖絵の虹のつづきに春の空
許すまじ春の空井戸覗かれて
開拓の昔のまゝの春の空
雨晴れておほどかなるや春の空
震度五の空が屈折春の虹
首長ききりんの上の春の空
騎馬像の駆け上がらんと春の空
高々と煙突立てり春の空
鳶のかげ笠にかかるや春の空
鴎の目鋭きかなや春の空
昼空に月あり桃の節句なり
桐咲いて真上の遠き昼の空
春昼の空より落ちて松葉かな
綿虫や夕ベのごとき昼の空
あぎと引き冬空はひきしまりけり
あをさぎの巣は冬空にかけておく
ひろすぎる冬空に貼る人の顔
クレーンの手冬空に鐵を掴み去る
ザラ紙のような冬空レンズ磨いても
タワー赤冬空の青引き上げて
ベル押せば冬空に足音おこり
マルメロの創冬空となりにけり
一人だけ死ぬ冬空の観覧車
一噴煙冬空涜しひろごりぬ
一塵もなき冬空に日を満たし
人ゐて冬空の青い枝きる
人送りて今日の冬空見たりけり
冬空と極楽鳥花玻璃一重
冬空にしてうすぎぬの烏帽子かな
冬空につき出でてゐるもの多し
冬空にとぎれ未完のハイウェイ
冬空に噛みつくものや礁と濤
冬空に宝塔暮るゝ金色に
冬空に探す逃がした詩の言葉
冬空に掴まれて富士立ち上る
冬空に撞木の揺れ残りをり
冬空に枯木のみ見えて雲も無し
冬空に聖痕もなし唯蒼し
冬空に触れし指より光りそむ
冬空に騒立つ樫を伐りにけり
冬空に鳩を見上げて松葉杖
冬空のビルジングの資本の攻勢を見ろ
冬空の一方へ竹伐り倒す
冬空の一片落ちてくる咳のあと
冬空の下一点のわが歩み
冬空の下身をかがめくぐり押す
冬空の大起重機に人居る窓
冬空の弾けば響きさうな青
冬空の汚れか玻璃の汚れかと
冬空の溢れて黒き河口かな
冬空の澄みつ暮れゆく鎮魂歌
冬空の疵とはならぬ鴉かな
冬空の禅寺丸柿形見とし
冬空の薄き瞼を裂く青さ
冬空の鋼色なす切通
冬空の鳶や没後の日を浴びて
冬空の鴉いよいよ大きくなる
冬空へくぐり戸の鈴鳴り終る
冬空へとどかぬ梯子婚約す
冬空へ出てはつきりと蚊のかたち
冬空へ打つ甘藷の鳥威し
冬空へ消えてゆくたましいよ涙
冬空へ深入りしたる風船よ
冬空へ煙さでたくや灘の船
冬空へ象嵌ひたひたと愛技
冬空やみちのおく道先づ千住
冬空や大樹くれんとする静寂
冬空や宝珠露盤は寺の屋根
冬空や山陰道の君が家
冬空や峡にくひ入る桑畑
冬空や巣鴨は江戸の北はづれ
冬空や津軽根見えて南部領
冬空や父いますごと大欅
冬空や猫塀づたひどこへもゆける
冬空や野をかけるトロの大軋り
冬空や風に吹かれて沈む月
冬空や魂は横移動する
冬空や麻布の坂の上りおり
冬空をいま青く塗る画家羨し
冬空をかくす大きなものを干す
冬空をふりかぶり鉄を打つ男
冬空遠く大工の音とアヴェマリア
凧一つ貌のごときが冬空に
凶作になんのかかわりもなく冬空に白く議事堂
唐辛子の色冬空が盗みたり
四角な冬空万葉集にはなき冬空
寒肥をひく冬空の泣くばかり
山峡の冬空よ生きせばむるか
幹高きその冬空へ耳を寄す
我もだし冬空もだしゐたりけり
戸あくれば冬空に帽とりて客
手術の日冬空少し汚れけり
故郷の冬空にもどつて来た
旅立たむ冬空はしらのあるごとく
日当つて大仏の顔冬空に
朝雲ちり冬空とほく光りあり
泉見て今日冬空を見しと思ふ
湯加減のごと冬空に手を入れて
煙草なく米なく出でて冬空美し
父を焼くいま冬空へうす煙
甘き冬空右手に母が箸持たす
田鳧啼き冬空をまた深くせり
白壁と冬空の壁人死せり
移民船冬空へ旗ちぎれ飛び
紺の香きつく着て冬空の下働く
結界に冬空が見ゆ縄梯子
絶対安静冬空に押へられ
螺旋階尽き冬空まで昇れず
街中の焼跡の墓地冬空持つ
裏庭に冬空の立ちはだかれる
針もつ母に東京の冬空となりくる
鉄を截る音冬空にありにけり
雲生れてきて冬空の相となる
高貴なる冬空を得て天女丸
一塊の碧空実梅太らする
囀りや卒塔婆と杉の碧空に
大根を抱き碧空を見てゆけり
岩ひばり日輪碧空の中に小さし
操縦士撃たれ碧空に身をもめる
日もすがら碧空を恋ひ石蕗の花
栴檀の実を碧空に冬休
真二つに碧空割れん菊の花
短日の碧空たたく揚花火
碧空に冬木しはぶくこともせず
碧空に命とりあふまたたきをせず
碧空に山するどくて雛祭
碧空に山充満す旱川
碧空に振れども鳴らず釣鐘草
碧空に支那の子父を撃たれたり
碧空に消ゆる雲あり夏蕨
碧空に濡れ訪ね来る荷物かな
碧空に鋭声つづりてゆく鳥よ
碧空の下にあり四方に落花降る
碧空へつづく山家の白障子
碧空やわれに束の間てんと虫
藪入の碧空の凧澄めるかな
裸木の碧空頼むけしきかな
鉄骨の碧空ふかく鋲をうつ
雑沓を出て碧空の寒さかな
露の父碧空に齢いぶかしむ
七月の碧落にほふ日の出前
墓守に碧落のあり日のさくら
富士が嶺や南無碧落の秋の雪
汲みさげし閼伽に碧落秋彼岸
漱石忌雲碧落に遊びをり
碧落に擲げて戻らぬ木の実かな
碧落に日の座しづまり猟期きぬ
碧落に神雪嶺を彫りにける
碧落に聖火台嵌めスケート場
碧落に見えて鶫の群なるべし
碧落に鷹一つ舞ふ淑気かな
碧落の主峰垂氷を砦とす
碧落の牡丹の中に山の音
碧落の蔵王に迫る結氷期
碧落の都心へ落葉別れとは
碧落は太初このかた雪の富士
碧落へ色うしなへる返り花
碧落や父子距たれば揚ひばり
碧落や鶴が邪魔する雲気かな
碧落を写す皐月の田の面かな
碧落を掃く竹の春の竹
碧落を支へきれずに朴葉落つ
積雪の碧落藪をそめにけり
絶壁のわんわんと鳴るとき碧落
葡萄園出て碧落に身を涵す
葦生より碧落淡む十三の方
誘ふ碧落墓への階も一人幅
いつか星空屈葬の他は許されず
お松明燃えて星空なかりけり
ささめごと星空に咲く露台
とんどの子去りし星空さがりくる
めつむりし中の星空白雄の忌
ものうい通夜の星空へ夜業の煙が黒々とのぼつている
らん~と星空生きぬ鬼やらひ
余寒凪星空染めて浪けぶる
北風凪ぎの星空ゆくは鴎かや
叱責の子を星空に連れてゆく
吾若し春星空に帆綱鳴る
地吹雪と別に星空ありにけり
声秘めて語る星空花柘榴
夏の夜の星空こがす炬火の列ひたひたと弥撒にゆく使徒の列
夏の星空の家路よ犬の寝そべり
夜の秋や恵那の星空手にこぼれ
大旱の星空に戸をあけて寝る
寒に入る夜や星空きらびやか
旱田に星空の闇広がりし
星空となりゆく雪を掻きにけり
星空となるまで森のさへづれり
星空となる約束の青木の実
星空となる菊人形直立し
星空と濡れて一夜の紅葉山
星空に一ト夜埋まりてキヤンプ濡れ
星空に始点終点安息日
星空に居る大富士や除夜の駅
星空に干しつるる衣や杣が夏
星空に星がうごいてあたたかし
星空に琴をあずけて花野ゆく
星空に総身のばし枯木立つ
星空に聳えわけても鳳凰台
星空に鐘鳴り森に降誕歌
星空のうつくしかりし湯さめかな
星空のかたむく下向お水取
星空のこぼす夜露を踏みながら
星空のさむき夜明よ地に寝て
星空のすぐ降りて来る焼野かな
星空のどこまで匂ふ稲架襖
星空のはてより木の葉ふりしきり夢にも人の立ちつくすかな
星空のひろがる明日の山焼かん
星空の下の人の世のこゝに泣く男
星空の下健康な寒さあり
星空の中から聞こえ青葉木菟
星空の中より散りて来し木の葉
星空の涼しければの瞳なりけり
星空へたちあがりたる橇の馭者
星空へひしめく闇の芋畑
星空へ口を大きく社会鍋
星空へ店より林檎あふれをり
星空へ消え入りがてに梅白し
星空へ田植三日の顔あらふ
星空へ総身のばし枯木立つ
星空へ蛙は闇をひろげたり
星空ゆく屋台提灯夢うつつ
星空をふりかぶり寝る蒲団かな
星空をまはす水車や春隣
星空を足音あゆむ十一月
星空を闇とは見せつ酉の市
春大風海の星空剥れずに
枯萩を焚き星空を曇らしぬ
歳明くる戸を星空へ繰りて老
氷塊を挽き終えて夏星空ヘ
渡り鳥は知つている星空の暗号
立ちあがればよろめく星空
美しき星空なりし村の盆
船の窓の星空の揺れそめし輝き
花の夜の星空河鹿啼きそめぬ
花火みゆ星空劃ぎる軒端かな
虫の夜の星空に浮く地球かな
蝉殻を割れば星空響き合う
降るやうな星空村は寒に入る
青炎の星空に澄む橇の鈴
風除の中へ星空下りてくる
*たらの芽や空をばうちに抱く御空
いまさらに富士大いなり初御空
うち晴れて顔施の御空風生忌
お手本のやうな御空や野分晴れ
つらら垂る竟の御空もこの碧さに
わが年の雲ひとつなき初御空
わが谺かへらぬ祖谷の初御空
ファックスにすぐくる返事初御空
レーダーに船影あらず初御空
一機影雲より生れし初御空
傷一つ翳一つなき初御空
八ヶ嶽露の御空を噛みにけり
冬凪ぎて勅語ひゞきし御空なる
冬御空老いて召されしもの多し
凍港の歛まる雲や初御空
初声や子の身空なるわが御空
初御空どこより何の鈴の音
初御空はや飛び習ふ伝書鳩
初御空八咫の鴉は東へ
初御空富岳まさしく三保にあり
初御空岬に長き馬の影
初御空念者いろなる玉椿
初御空晴雪に飛ばす駒もがな
初御空水辺に近きさざれ巌
初蝶の御空は神の領し給ふ
叡山は京都左京区初御空
国興す大き音あり初御空
垣の上の舟の舳や初御空
大内山立春の雨御空より
大山の全容近し初御空
大帝の馬車わたりくる初御空
大御空仰くや春の月の色
大御空卵の如きもの胸に
大御空敵機それしか冬凪ぎぬ
大那智の滝の上なる初御空
子の髪に昼月重ね初御空
弓弦の一箭鳴りし初御空
御空より発止と鵙や菊日和
懐手解かぬは御空広きゆえ
春暁や御薬師岳の御空より
曲玉の瑠漓ひびきあふ初御空
未知のもの現れさうな初御空
末枯や御空は雲の意図に満つ
渡り来る鶴の空あり初御空
燈臺の古き國旗や初御空
玉霰幽かに御空奏でけり
真白さのつくばねうけよ初御空
穂芒に声在りとせば御空より
竈火のどろどろ燃えて初御空
経蔵に影さす枝や初御空
総持寺の鳩来て羽摶つ初御空
美しき背山妹山初御空
群鳶の舞なめらかに初御空
鐘楼のあたりくらさや初御空
霊峰の明け放たれし初御空
風花の御空のあをさまさりけり
駅通りまつすぐに来よ初御空
鳶の輪のやがて大きく初御空
鳶笛の一管澄める初御空
鴨とぶやゆたにたゆたに初御空
えごの花川は深空につづきけり
五本杉五本囁く冬深空
井筒より深空へをみな声を出す
冬三日月ひたと機窓に深空航く
初深空今年占ふ鷹か鳶か
山々に深空賜はる秋祭
川筋の夏ゆく深空のぞきけり
晴天の何か優れる凍深空
水が享く夕深空や落葉して
深空より茂吉忌二月二十五日
短日の深空杉山檜山据ゑ
銀杏ふむ人ら深空をあふがなく
風花やみなてのひらに深空もつ
くりかえしくりかえし夕空ばかりの世
たつた一人になりきつて夕空
つばくらの夕空となり島の路地
つばくらや藍ただよわす夕空ヘ
つばめらと夕空ばかりグッド・バイバイ
ぼたんづる夕空に舞ひ避暑期去る
交みしまゝの虫夕空をながるる
僧一人わたりゆき長き橋夕空
冬の雁夕空束の間にかはる
凩の果の夕空血が滲む
初花と見し夕空のありにけり
半透明な夕空のいま春誕生
原爆忌の夕空「血池の上澄み」ぞ
原爆忌の夕空「血池の上澄み」ぞ
口喧嘩やめて水まく夕空に
夕空が赤味噌に似て燕去る
夕空が透き猫が鳴き涼しくなる
夕空にぐん~上る凧のあり
夕空にひとときの色蜻蛉湧く
夕空にまぎれなかりし返り花
夕空に咲けりともなく初桜
夕空に寂しく咲ける桜かな
夕空に弓打つ子等や黍の風
夕空に恋する猫の天守かな
夕空に新樹の色のそよぎあり
夕空に日はありながら合歓の花
夕空に晴れ間の見えし雨水かな
夕空に此頃燃やす菜種殻
夕空に片あかりせり初桜
夕空に磐梯の弧や渡り鳥
夕空に窓つつまれぬ胡瓜もみ
夕空に蚊の湧き上る軒葡萄
夕空に融けて焚火の焚き埃
夕空に足の音する秋の山
夕空に身を倒し刈る晩稲かな
夕空に鋤きこむ花を待たれしか
夕空に雪加よく見えよく聞こえ
夕空のいまが火の時朴の花
夕空のうつろひ枯れし街並木
夕空のからくれなゐに義士祭
夕空のごろごろ鳴れる真菰かな
夕空のさくらは重し赤子泣き
夕空のすこし傾く土佐みづき
夕空のたのしさ水にうつる雲
夕空のなごみわたれる案山子かな
夕空のなほかすかにもさへづれる
夕空のにはかに晴れて牡丹焚き
夕空のひとときの色蜻蛉湧く
夕空の一角かつと通草熟れ
夕空の喜捨まぶしくて歩道橋
夕空の少し傷みて桐の花
夕空の悲鳴のはじめ大公孫樹
夕空の星研ぎいづる氷湖かな
夕空の水より淡く梅若忌
夕空の濃い邂逅を待つばかり
夕空の碧まだ昏れずえごの花
夕空の秋雲映ゆる八重葎
夕空の紺よみがへる沙羅の花
夕空の紺より藍へ蕎麦の花
夕空の絶え入るばかり梅咲けり
夕空の美しかりし葛湯かな
夕空の雲に移りぬ花のいろ
夕空は眼につめたくて蓬籠
夕空は空瓶の色桐の花
夕空は雪降りつくし漂ふ紺
夕空は青とり戻し春隣
夕空へいま命ある木の芽かな
夕空へ拡がる風や郁子の花
夕空へ蜻蛉をぬりつぶしたる
夕空やこころの鵙の血まみれに
夕空やむざんに晴れて凍みわたる
夕空や五字抹消の蝉の稿
夕空や切先のぞく軒菖蒲
夕空や日のあたりゐる凧一つ
夕空や紅梅の色隠しつつ
夕空や芒念仏口に継ぐ
夕空や蚊が鳴出してうつくしき
夕空や蛙聞えてしろくなる
夕空や野の果て寒き街づくり
夕空や雪野に黒き楊柳
夕空ゆパパイヤの実を受けとむる
夕空を広めむと歩すセル着なる
夕空を引つぱつてゐる烏瓜
夕空を昇らむために春蚊生まれ