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@yutakashino
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日本の少子化

五月雨的に書き足しながら日本の少子化について、柏野が理解していることを以下にまとめる。

結論

長くなりそうなので結論から先に述べると、1970年代から始まる日本の少子化問題は、少子化を防ぐために漠然と子供を持つように宣伝したり、経済的なインセンティブ政策を実施したりして、幸運にも少人数の子どもを持つ家庭が増えたとしても、解決しない。そうではなく、以下の前提条件

  • 日本人女性から生まれた子どもが日本人である、という日本人の定義を変えない
  • 日本の移民政策を変えない
  • 一夫一妻制の結婚を保持する

の下では、かなり多くの日本人家庭が 三人以上の子供を持たないと解決しない のである(正確に言うと人口置き換え水準が2.07より大きくないと人口が増えない)。このことをもっと踏み込んで言うと、子供がゼロである家庭が少子化に寄与しているのは当然として、子供がいたとしても一人だけだったり、二人だとしても二人とも男の子だったとしたら、その家庭は人口の再生産という観点からは少子化に寄与していることに変わりはないということも意味している。

当たり前だが、二人の親から二人の子どもが生まれるだけでは人口は増えない。死亡や障害により人口減や再生産ができないこともあるから、現状の人口水準を変化させないためだけでも、二人より多い子供が必要になる。この数を人口学では人口置き換え水準という。日本の人口置き換え水準は2.07である。つまり100人の女性から207人の子供がうまれてはじめて現在の人口水準が維持できるのだ。

また、日本人の法的定義は日本人女性から生まれた人間であることから、将来に渡って再生産が継続的に行われるためには、一人の女性が一人より多くの女の子を出産する必要がある。女の子を再生産する割合を純再生産率といい、純再生産率が高いことが世代交代を通じて人口を増やす一番の基礎となる。

だから、上記の前提条件の下では、かなり多くの日本人家庭が 三人以上の子供を持つ (人口置き換え水準を2.07より大きくする) ことが少子化問題を解決することであり、そのことを実現できないようなすべての施策は無駄なのである。例えば、今社会で喧伝されている、男女共同参画、女性のフルタイム就労の増加、保育園の待機児童の解消、行政サービスによる保育支援の充実などは、人口を増やすために直接的にほとんど寄与しないか、焼け石に水の効果しかないか、ひどい場合はより一層人口を減らす効果しかない。

そして、かなり多くの日本人家庭が **三人以上の子供を持つ (人口置き換え水準を2.07より大きくする)**ためには、初婚年齢を少なくとも二十代前半に大幅に前倒しし、非婚率を大幅に下げ、第一子、第二子の出産年齢を女性の妊孕力のある年齢になるようにしなければならないのだ。

生物としての制限

そもそもの問題として、人間には生物として少子化が起きやすいという性質があり、実はこのことが日本は高度に工業化が進んだ経済的に豊かな社会に生きていることと相まって、少子化問題を解決不能なまでに難しくしている。後者については章を変えて述べるとして、まず前者から説明する。

まず、五つ子が大ニュースになるように、人間の腹子数はだいたい1であり、一度に出産する数が他の哺乳類に比べてもとても低い。また、在胎日数が267日、生まれてからも離乳日齢720-2555日と、他の哺乳類に比べて妊娠から受胎可能になる月経再開までの期間が非常に長い。このように、腹子数の少なさ、在胎期間を始めとして出産・授乳を経て再び排卵が開始するまでの時間が長いことから、生涯にわたって産む子供の数がとても制限されている。つまり、そもそも人間は生物として子供を多く持てないのだ。

当然であるが、受胎するためには 適切なタイミングでの性交 が必要になる。卵子の受胎可能時間は排卵後24時間程度、精子の子宮内・卵管内生存期間は3日程度だから、排卵前後実質2日の内に性交が行われる必要がある。また、完全な妊孕力のある女性(18歳ー33歳プラスα)と健康で十分な量の精子を生産する男性が一月経周期あたり毎回コトをなしたとしても30%しか受胎しない。ましてや、受胎確率の低くなる35歳を超えた女性ではその確率は低くなる。このことは、同じ相手と頻繁に性交機会を持つできるように同じ屋根の下に共に暮らすという環境、つまり 婚姻 が圧倒的に効いてくる。婚姻率が低い非婚率の高い社会では当然のことながら、十分な量の精子の放出を伴ったタイミングのよい性交が持てないために子どもの数が少なくなる。

更に、女性が生物として子どもを産むための力 妊孕力 は女性の年齢に強く制限されているという事実がある。これは人類史上最高の出生力を持っていた宗教共同体ハテライトの女性に対する人口学研究から明らかになっている。ハテライトは宗教上の戒律で避妊や中絶を禁止され、多くの女性が十代半ばに結婚するという特殊な環境にある。つまり望みうる限りの自然状態で人間の出生力を示した例であり、人口学ではハテライトの出生力を人類の出生力の最高値として、この値からのズレを指標(ハテライト指標という)として集団の出生力を測定する。以下がハテライト女性の年齢別の1000人あたりの受胎数を示したものである(リンク先のFigure2)。

http://www.accessscience.com/search.aspx?rootID=793637

これをみると自然状態の最高の出生力をもってしても、 18-33歳プラスα というのが女性が完全に妊孕力があるといわれる年齢であり、この年齢を外れると受胎・妊娠・出産のいずれかのプロセスで再生産過程が損なわれることが多くなることが分かる。妊孕力に年齢制限があることについて、医学・生理学として完全に解明されているわけではないが、女性が出生時から予め決められている卵子数が減少することや卵子が老化することに関係あるとされている。この女性の妊孕力には時間的拘束条件が強いということからすぐにわかるのは、人口を増やすために三人の子どもを持つためには、18-33歳プラスαという年齢の時期に第一子、第二子、あるいは第三子の出産が収まるように「計画」しないといけないのである。しかしこれに反して、現在の日本は第一子平均出産年齢は28.5歳となっていて、出産に一番よい15年のうち、最初の10年を使うことができないという、子どもを三人以上持つという目的からは絶望的な状況である。以下の社人研の年齢別出生率をみると明らかだが、初産の山が高年齢にずれるということは社会全体の出生力が低下するということである。

http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2013.asp?fname=G4-4.jpg&title1=%87W%81D%8Fo%90%B6%81E%89%C6%91%B0%8Cv%89%E6&title2=%90%7D%82S%81%7C%82S+%8F%97%90%AB%82%CC%94N%97%EE%95%CA%8Fo%90%B6%97%A6%81F1950%81C1970%81C1990%81C2000%81C2011%94N

総じて見ると、出産というイベントに対する生物の絶対的な拘束条件に反して、今の日本は非婚化、晩婚化、晩産化により、出産機会を逸していることが問題なのである。

豊かな社会の呪い

T.B.D

参考文献

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