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バトロワに別軸の競争要素を加えたらどうなるの

Fall Guysで兆しが見え、F-ZERO99で開花した「レース系バトロワ」の系譜

これはポ鯖アドベントカレンダーの2日目の記事。初日の記事はヴァンサバに至るローグライクとハクスラの歴史。個人的にはサバイバルクラフト・クッキークリッカーのようなリソースを死ぬほど溜め込むゲームが好きで、それらのゲームの「ダレがち」という弱点を補うように実装されているランダム性のあるミニゲーム・プロシージャルなインスタンスダンジョンといったサブシステムに触れる機会も多く、ゲームジャンルの歴史を掘り下げた話はかなり興味深かった。

さて、ここからが本題。下記のような内容の話をする。前記事と同じくリプレイ性の塊のようなシステムの話ではあるが、こちらでは対人要素でリプレイ性を担保するバトロワの話になる。

  • バトロワ系ゲームのジャンル確立の経緯
  • 従来型のサバイバル系バトロワゲームのブレイクダウンと特徴・欠点
  • レース系バトロワの立ち上がりと発展

本稿は先述の通り身内の向けの記事なので、内容の正確性よりは個人の主観が強いことを前もってお伝えしておく。

バトルロイヤル系のゲームってなんやねん

複数プレイヤーで戦い最後の1人まで倒し合うゲームのことを「バトルロイヤルゲーム」と呼ぶ。 映画「バトル・ロワイアル」の影響を多分に受けており、バトロワ系と略されることが多い。 映画をそのまま元ネタにした、半同期ターン性CGIブラウザゲームの話はここではしない(が、実はそっちも面白い)。

サバイバル系バトロワの話

その元祖とシューター型のサバイバル系バトロワの話

元祖と言えるバトルロイヤルシューターの PUBG(2017/03)については、その開発者である Greene 氏自身が手がけたDayZ(ゾンビサバイバルゲーム)のPvPモードをMODでアレンジしたゲーム、さらに同氏によるARMA3(ミリタリーサンドボックスゲーム)のMODなどを起源としている。 そのような経緯から、バトルロイヤルシューター全般について、以下のような特徴がある。

  • 広大な1つのマップが用意され、プレイヤーは分散してスタートし、探索を開始する。マップを共有する性質上、スタート地点に配置されるリソースの偏り・ランダムネスや地形などの要因によって有利・不利が発生する。それらを勘案して位置取りや移動経路の選択をするのもゲームの醍醐味の一つであるが、あまりに格差が極端になると公平性の問題が発生する
  • ゲームからの除外を避ける。遭遇した他プレイヤーとの戦闘に勝利、または離脱に成功し、ゲームの続行、生き残りを目指す
  • ラウンドごとに行動可能エリアが縮小していく。一定時間ごとに安全なゾーンが縮小し、プレイヤーはダメージやゲームからの除外を避けるために移動を余儀なくされる
  • 縮小し続ける行動範囲および遭遇頻度の高まりを乗り越え、最後の生き残りを目指す

これらの同期的なマルチプレイ体験の前提として豊富なコンピュータ性能と余裕のあるネットワークを前提とするため、歴史としてはかなり浅いと言っていいだろう。 2024年現在、PUBG のリリースから7年経過しているものの、やはりバトルロイヤルシューターというジャンル自体はまだ始まったばかりだ。しかし PUBG 自体を含め Apex Legends や Fortnite などが根強い人気を誇っており、ゲームジャンルとしては定着したと言っても良いだろう。

非シューターのサバイバル系バトロワの話

しばらくは「セッションに参加する全員が同じ盤面を共有し、生き残りをかけて戦う」タイプのバトロワが隆盛を極めたが、その後に異なる切り口のバトロワ系ゲームが出てきた。 TETRIS 99(2019/02)や スーパーマリオブラザーズ 35(2020/10)などの「1人で行うアクションやアーケードパズルゲーム」をマルチプレイヤー化することで、多人数サバイバル対戦ゲームを実現したものだ。

  • 全プレイヤーが同時にゲームを開始し、それぞれのプレイフィールドがスタートする。プレイヤーは自分のペースでゲームをプレイし、自分の盤面を整えることに注力する
  • ゲームからの除外を避ける。自分の盤面で一定の条件を満たすことで他のプレイヤーに攻撃を仕掛けたり、また、自分の敗退を避けるため防御を強化したりする
  • 時間経過、またはラウンド進行などにより、ゲーム自体の難易度が上昇する。盤面のコントロールが困難になり、プレイヤー同士の攻撃の致命度も高まる
  • 上昇し続けるゲーム難易度やスピードを克服し、最後の生き残りを目指す

バトルロイヤルシューターとの最大の相違点は盤面が各プレイヤーで分かれていることである。これは、初動のリソース格差やマップの地形格差などの運要素や外乱を低減してはいるものの、別の考え方をすればプレイスキルの比重が重くなったとも言える。 しかし、プレイヤー間の攻防が相手盤面への間接的な干渉となるため、直接的な対人スキルの不足を自分の盤面処理能力である程度補完できる点においては幾分かカジュアルになっている。

サバイバル系バトロワに共通する性質と課題点の話

アーケードベース・シューターベースをを問わず、最後の生き残りを目指すタイプのバトロワ系ゲームは主要な構成要素として「除外 / Elimination」の概念を含んでいる。 これは、言い換えると「敗者・下位が先に決まるゲームシステム」と言い換えても良い。このシステムは「勝負に負けがちな初心者がゲームから早期に排除され、ゲーム自体の体験や技術的な経験機会を損なう」という強烈なデメリットを持つ。上手い人はゲームの参加時間が長くなり、ゲーム上の多彩な状況を経験する機会に恵まれるため、初心者と経験者の差は広がる傾向がある

もう一つの大きなデメリットが「生き残りに長けた上級者どうしの争いにいつまでも決着がつかない」というものがあり、これはさながら「技術ではなく根負けや操作ミスを待つゲーム」を招き、本質的な勝敗とは別の争いが発生してしまう。 TETRIS 99(スーパーマリオブラザーズ 35 も)についても、他プレイヤーの盤面を妨害しあうバトル要素こそあったが、終盤は熟練者同士のタイマンが10分以上続いたりなど、試合が間延びしてしまう傾向があった。

これらの対策として、ゲーム内の行動可能空間を制限したり、ゲーム内リソースやランダム要素を偏らせることで揺らぎを作り早期決着を目指すアプローチがよく行われるが、これもまた運要素を招き、根本的と言うよりは緩和策の一つにとどまるものだと思う。

ラウンドリセット制のバトロワの話

ミニゲームラウンド制バトロワと、勝利条件の多様化

次に出てきたのが Fall Guys(2020/08)に代表される「ミニゲームによるラウンド制」を採用したバトルロイヤルゲームだ。 それまでのサバイバル系バトロワとの大きな相違点として、行動可能エリア制限やゲーム自体の難易度上昇に代わり、相違なる一連のミニゲーム群でゲームを構成したことが挙げられる。

  • ラウンドごとに状態がリセットされることで、ゲーム進行に伴うリソースの偏りや格差の拡大を防ぎ、よりイーブンなゲームを実現した
  • ミニゲームのルールにバリエーションを出すことで、勝利につながるプレイヤースキルがアーケードベースのバトロワよりも多様化したこと
  • 各ミニゲームが独立しているため、特定のゲームモードやリソースが全体のバランスを大きく崩すことがほぼ無くなる。開発者はミニゲームごとにバランス調整を行うことができる
  • ミニゲームの勝利条件(順位や進出条件)を調整することで、初心者と上級者で同じミニゲームの体験を共有しつつ、段階的な進出難易度の上昇を実現できる

これらの特徴は、初心者プレイヤーの体験・モチベーション設計および、プレイングの多様性による飽きの問題や調整コストの低減など、プレイヤー・運営双方の課題を柔軟に解決している。 Fall Guysのファイナルラウンドは「ゴールの王冠に最初に触れれば優勝」「尻尾を奪って時間切れまで逃げ切れば優勝」など、しばしば他プレイヤーの排除・脱落に因らない勝利条件の提示が行われる。これは「上級者どうしの争いにいつまでも決着がつかない」問題への解決策を示しており、バトロワとしてのブレイクスルーであったと言っても良いだろう。

その到達点となるレース系バトロワの話

F-ZERO 99(2023/09)は Fall Guys のような連続ラウンド制を本筋としながら、そのラウンドの内容が全てレース形式である。 加えて、以下のような特徴もある。

  • 各ラウンド・各周回ごとに最低順位が引き上げられ、最低順位を下回ったらゲームから除外される。生存してゴールチェッカーを受ければ次ラウンド進出
  • ラウンドを連戦する形を取りながらも、最終的な優勝は各ラウンドの順位点の総計である。つまり、ファイナルラウンドだけ1位を取っていても優勝できるとは限らず、各ラウンドでコンスタントに上位を獲得する必要がある
  • 各レースで上位を目指すに際し、体力を削ったターボ加速や走行ラインでの攻めが必要になり、体力枯渇による一発退場のリスクと常に隣り合わせになる
  • 攻撃で他プレイヤーを退場させると体力の最大値が上がり、後のラウンドでの体力(=加速リソース)の優位を取れる。これは、ゲーム進行に伴うリソースの偏りや格差を許容する行為だが、一方でリスクを冒して得た優位を評価しているとも言える

プレイヤーの成長モチベーションは、以下のように段階分けされる。プレイヤー目線では小目標が自然に設定され、成功体験を積み重ねることができると言えるだろう。

  • まずは事故らないで走る(サーキット外への墜落や壁接触によるゲーム除外を防ぐ、一人アーケードゲームの側面)
  • 最低順位を下回らないように順位を上げていく(より発展的なスキルの成長)
  • より高順位を目指すために、中位帯での攻撃や防御を行う(ここで初めて対人・直接勝負のバトロワ要素が発生する)
  • より高いスキルで相手集団の前を走り、逃げ切る(高水準のスキル成長・対人プレッシャーの克服)

Fall Guysにおけるミニゲームの多様性を捨て去ることも、1つのゲームルール(バランス調整・モチベーション設計)に注力できる、プレイヤーにはっきりとした成長目標や指標を提示できるメリットがあるのかもしれない。

そして、筆者がバトロワの到達点としてレース系バトロワを推す理由として「上級者どうしの争いにいつまでも決着がつかない」問題が完全に解決されていることが挙げられる。当然のことだが、上級者ほど早くゴールするからだ。

おわりに

バトロワという仕組み自体は様々なジャンルのゲームシステムと融合できる可能性を持つ。この先、思ってもみなかったマッシュアップによって到達点があっさりと更新される可能性は高く、そしてそうなって欲しい。

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