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<中間報告の該当箇所: 113ページ>
アプリストアの問題は大きく、セキュリティ、市場(の独占)、検閲の3点がそれぞれ独立しつつ関係しているのですべてを一緒に議論してしまうのは短絡的な議論となる恐れがある。
セキュリティについて。iOSにおいてセキュリティの根幹は強固なサンドボックス機構であり、サイドローディングの禁止と審査がセキュリティの向上に寄与しているというAppleの説明は誤解を招く意図があると考えられる。
またアプリのレビューはセキュリティの専門家が行っているわけではなく、レビューで検知できなかった不正な挙動をするアプリは過去に複数確認されている。
iOSにおいて現状のアプリストアの存在はセキュリティの担保には関係ない。その点でこの調査報告はおおむね妥当である。
ただし、サイドローディングに関しては現状においてもストアを介さない配布方法は制限がありながらも認められており、ほとんどのユースケースはそれで対応できると考えられる。利用者の選択肢を増やすという意味でサイドローディングが可能になることは望ましいが、それはあくまで利用者とプラットフォーム側の力関係によってなされるべきであり、行政機関が強制するようなことではない。
アプリストアをAppleとGoogleが独占しているという指摘について。そもそもアプリストアという形態で市場が成り立つには独占的かつ安定的な1つの大きなストアという状態が必要である。そもそもソフトウェアを販売するストアという仕組みで利益を得るという試みは昔から何度も繰り返されたが、スマートフォン以前に成功したものはなく、プラットフォームとデベロッパー双方に利益をもたらす市場を奇跡的に形成できたのはAppleとGoogleのみである。
ソフトウェアは配布において物理的な制約がほとんどなく配布方法による差異は通常は発生しない。複数のストアの選択肢があったとしても最も利用されているストアを通じて配布するということが合理的な行動となる。仮に圧倒的シェアのストアがなく小さな規模の利用者のストアが複数ある状態を考えると、デベロッパーはできる限りすべてのストアにアプリを置かざるを得ない。
利用者側も同じものを手に入れるために複数のストアを存続性などを検討して購入しなければならないことは解決しようとしている問題に対して許容できる不便とは言えない(自由の代償として妥当であるという視点はありえる)。それは本(電子書籍)や音楽の配信において複数のプレーヤーがストアを乱立させていた時代に利用者がどれだけ不便を被っていたかにも現れている。
現在のアプリストアの形態は、細かな問題はあれどソフトウェアの配布という点においては理想的な状態であり、このようなストアの成立は奇跡の産物である。これを単に独占的であることを問題とし、解決しようとしても同じ形態のストアが再び成立する可能性は低く、規模の小さなストアが乱立した後にすべてなくなるか、同様のストアが実現したとしても同じ問題を抱えた劣化したものになるだけである。
審査という検閲について。審査は先に述べたように、少なくともiOSにおいてはセキュリティには寄与しておらず、品質の向上に関係しているとも言い難い状態である。審査の基準が不透明という指摘も妥当であり、同様の機能と見た目のアプリでも審査結果が異なることがあり、反論の機会はないことはないが情報の非対称性や審査に通らなければ配布できないという弱い立場もあり、健全な議論が成り立っているとは言えない。
AppleもGoogleも表現において一定の規制を設けているが、米国とApple、Gooleの基準であり、グローバルに適用するには恣意的にすぎるきらいがある。また教育的美術的な観点から常識的に許容されるべきと考えられるアプリが規制されたことがある。SNSなど利用者がコンテンツを投稿するサービスや、映画・ゲームなど娯楽における表現までプラットフォーム側が一律に規制することは合理的ではない。
現在のストアの仕組みにおける最も大きな問題はこの点であり、それぞれの国や地域の法律や常識に照らし合わせて全く問題ないソフトウェアがプラットフォーマーの意志によって配布できない事態が起こっている。
自由な表現を守ることや文化を保護し繁栄させるという観点から、この問題について行政機関が働きかけを行なったり、プレーヤー側に支援を行うなどは価値がある。
まとめると、アプリストアは複数の問題が関係しているので、問題をさらに詳しく分解して考える必要がある。サイドローディングや独占に対する規制といった大ざっぱな対策はいくつかの問題を解決するかもしれないが副作用が大きく、別の問題を引き起こしたり市場自体を縮小させる恐れがある。そして現状のストアの仕組みはおそらくモバイル・エコシステムの発展に必要である。
その上で利用者に不利益をもたらす問題のほとんどは現状の法律や規制で対応できるので、行政機関としてそこを支援をするなどは有用と思われる。
また、ストアの審査が検閲的であるという一点については行政機関が是正を働きかけるという価値は大いにあると考える。
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