- 先延ばし癖と怠け癖は違う
- 先延ばし癖の持ち主は、やるべきことを実行したいと思っている
- 慎重であること、辛抱強く振る舞うこと、ものごとに優先順位をつけて行動することは、延期ではあるけど、先延ばしではない
- 先延ばしは非合理な延期
- 先延ばしとは、「自分にとって好ましくない結果を招くと知りながら、自発的にものごとを延期すること」と定義できる
- 「先延ばし人間=完璧主義者」説にはデータの裏づけがない
- 几帳面で計画的・効率的に行動できる完璧主義者は、ものごとをぐずぐず遅らせたりはしない
- 先延ばし人間に際立って共通する特徴の一つは、衝動に負けやすいこと
- せっかちで、すべてをいますぐ手に入れたいと感じやすい
- 要するに、将来のためにいま我慢することが苦手
- 未処理の課題を抱えているときにどう反応するかも衝動性によって決まる
- 衝動性の弱い人は、不安に背中を押されて早めに課題に取り掛かる場合が多い
- 衝動性の強い人は、課題を先送りにしてしまう
- 先延ばしには三つの構成要素がある
- エディー型
- どうせ失敗すると決めつけるタイプ
- うまくいかなかった経験が多いと自分はなにをやってもうまくいかないと学習してしまう
- 学習性無力感
- バレリー型
- 課題が退屈でたまらないタイプ
- トム型
- 目の前の誘惑に勝てないタイプ
- 先延ばし方程式
- (期待 × 価値) / (衝動性 × 遅れ)
- 期待 = ご褒美を得られる確実性
- 価値 = ご褒美の
- 衝動性 = 忍耐心の弱さ
- 遅れ = 時間
- 課題の先延ばしにかけては、大学生の右に出る者はいない
- 平均して一日の三分の一を先延ばしで無駄にしている
- 七割が先延ばしにより学業に深刻な影響が生じていると答える一方、ほとんど問題にならない学生は 4% に満たなかった
- 先延ばしをしている学生は成績がとりわけ悪く、途中で脱落する確率が高い
- 学生たちは、不安が原因で勉強を先延ばしにするわけではない
- 本当の原因は、衝動性の強さ、勉強に対する嫌悪感、誘惑の多い環境、計画性のなさ
- 適切な計画を立てれば、遠くの締切を日々の小さな締切に細分化し、衝動性を味方につけられる
- 脳の辺縁系が前頭前野の長期計画を覆し、目の前のものごとを優先させるときに、先延ばしが起きる
- 子どもの前頭前野の正常な発達を助けるためには、泣き叫んだり、足をばたばたさせたりせずに辛抱するよう、粘り強く教え諭さなければならない
- 誘惑が近くにあると、先延ばしが非常に助長されやすい
- 誘惑の近さのほかに、先延ばしを助長する第二の要素は、誘惑の強さ
- 行動を後押し(強化)する刺激が不規則なタイミングで与えられると中毒性が極めて強い
- 行動心理学の分野では、「変動スケジュール」と呼ばれる
- 経済が成長するにつれて、過去数十年の間に、慢性的な先延ばし癖を持つ人が五倍に増えた
- 1970 年代に先延ばしが自分の主な特徴の一つだと考えていた人は、調査対象者の 4 〜 5% だった
- 現在、この割合は 20 〜 25% に達している
- 強力な誘惑が増えた結果
- 仕事をすることで得られる喜びの大きさが何十年もの間ほぼ変わってないのに対し、仕事から引き離す誘惑は強まる一方
- 市場の見えざる手が「辺縁系天国」をつくり出している
- 目の前の物質的なものが過大に強調され、長い目で見れば有意義な活動を先延ばしにしがち
- 自由市場のもとで必然的に表れる現象
- マーケティングの専門家は、辺縁系に訴えかける商品や売り方を工夫するだけでなく、前頭前野を黙らせるために細心の注意を払う
- 都合のいい癖や週間を消費者にもたせようと血道を上げる
- iPhone にダウンロードされたアプリの上位 25 点のうち、1 点を除くと、すべてがエンターテインメント系、ゲーム系、ソーシャル・ネットワーキング系に分類できた
- 唯一の例外は懐中電灯アプリ
- 自由市場では誘惑がますます強力になり、重要な目標を成し遂げることがいっそう難しくなる傾向がある
- 土壇場で生まれるアイデアは、早い段階から取りかかる場合より質も量も劣る
- 強いプレッシャーがかかる状況では、概して人間の創造性が低下する
- 高校生と大学生で先延ばしのある学生のうち、平均以上の成績を取っている人は四割だけ
- 先延ばしがキャリアに及ぼす悪影響は、教育に及ぼす悪影響よりさらに大きい
- 先延ばし癖の持ち主の 63% は、キャリアにおける成功の程度が平均以下だった
- 先延ばし人間のうちで自分が資産づくりに成功していると思う人はわずかに 29% にとどまった
- 延滞税が増えるし、複利が減る
- 短期的には「やったこと」を後悔するが、長い目で見れば「やらなかったこと」を後悔する
- 先延ばしによる損失はアメリカで年間 10 兆ドルを超す
- マイクロソフトの社員を対象にした調査によると、メールで業務を中断されたあと、集中力を取り戻すまでに平均して 15 分かかる
- 手強いけれど達成可能な目標を順々に設定し、一つずつ目標を突破していく
- 一つの勝利を重ねるたびに自信が深まり、前に進もうという意欲をさらにかき立てられる
- 興味のあることがらを選び、自分の現在の能力を少しでも高めるよう努力してみる
- その分野で成果を上げて自信が深まれば、ほかの分野でも難しい課題に取り組めるようになる
- 共感できる要素のある成功者の伝記は、とりわけ心を鼓舞する
- 成功を努力の結果と考え、努力すればいいことが起きると思うようになるためには積極的な後押しが必要
- 身近に接する人やお手本となる人物を通じて得られる
- 思春期以降は、同世代の仲間グループの影響がきわめて大きい
- すぐにあきらめる態度にせよ、粘り強く努力する態度にせよ、ものごとに対する姿勢には感染性がある
- プロスポーツ選手は、目標を達成するために「ビジュアル化」のテクニックを活用することが多い
- 理想的なプレーを頭の中で詳細に再現すると、脳のミラーニューロンという神経細胞が活性化されて、プレーを実際に成功させた場合と同じくらいそのプレーが脳に刻み込まれる
- ビジュアル化は、「脳内コントラスティング法」という手法の一環として実践すれば、先延ばしを克服する役にも立つ
- 脳内コントラスティング法の手順
- 実現したい状態を具体的に思い浮かべる
- 思い浮かべた理想の状態と、現在の自分を対比する
- 現実の自分との対比を行わずに明るい未来だけを思い浮かべると逆効果
- 自信過剰は、自信不足と同じくらい弊害がある
- 簡単に先延ばしを克服できると自分に言い聞かせるのではなく、先延ばし癖を和らげることをまず目標にしたほうがいい
- 早めに課題に着手するケースを増やすことを心がけたほうがうまくいく
- 重度の先延ばし人間は、一度でも意志がくじけると自己コントロールがすべて崩れると考えるようにしたほうがいい
- 重度のアルコール依存症などは一杯でも酒を飲むとダメ
- 先延ばしから抜け出すためには、まず自分が先延ばし人間だという不本意な事実を受け入れる必要がある
- 退屈感がエスカレートして仕事をサボるのを防ぐためには、「ゲーム感覚」で臨むテクニックを用いるとうまくいく場合が多い
- 課題を自分に関係があるものだと感じ、自分にとって重要な目標の追求に役立つと思えば、先延ばしに陥るリスクが小さくなる
- 裏を返せば、自分で決めたゴールに関係のない課題は、やる気をかき立てにくい
- 先延ばししている課題を自分の意志力を試すテストと位置づける
- すぐ課題に取りかかる決意を周囲の人に公言するといい
- モチベーションを高めるうえで有効なのは、「なにを避けたいか」ではなく、「なにを実現したいか」という形で長期の目標を決めること
- ポジティブな長期目標を立てている人は、比較的先延ばしをせず、大きな成果を上げるケースが多い
- 精神的なエネルギーの備蓄量に限界があることを意識すれば、戦略的にエネルギーを補充したり、割り振ったりできる
- 最もエネルギーがみなぎっている時間に取り組むのが得策
- それがどの時間帯かは、一人ひとりの生活のリズムによって違う
- 先延ばしに陥りやすいのは夜型人間
- 目が覚めて数時間後に脳が最も活性化するので難しい課題に取り組むといい
- その状態は四時間程度続く
- 朝 7 時に起きる人は、10 時から 2 時の間に作業能率が最も高まる可能性が高い
- 20 分ほど仮眠を取れば、絶好調の時間帯をいくらか長続きさせられる
- 昼寝ができなくても近所を少し散歩するだけでもだいぶ違う
- 規則正しく運動をすれば先延ばしを減らせることがわかっている
- 寝室をストレスで満たさない
- 課題の締切が迫っているときに別の生産的行動をすることは先延ばしではあるけど、まったくの時間の無駄ではない
- 仕事をやり遂げてご褒美を手にしたときの喜びの感情は、仕事に取り組んでいるときにもさかのぼって投影される
- その結果、仕事自体が楽しくなる
- 成功を収めると好循環を作り出せる
- ただし、努力すればご褒美が手に入るというパターンを何回も経験する必要がある
- 自分が情熱を燃やせる仕事を探す
- よくある診断ツールは、6 つの分野から関心分野を探す
- 年齢を重ねれば衝動性が弱まるし、あらゆる状況で衝動的に振る舞うわけではない
- 先延ばしを妨げるほかの選択肢を焼き払う
- 意志の力を発揮したければ、その前に基本的な欲求を満たしておく
- マズローによると欲求は五つの階層に分類され、原始的なレベルの欲求が満たされなければ、それより高いレベルの課題に関心が向かない
- 早い段階で会員になったり予約したりして自分の行動の選択肢を狭めることによって先延ばしを回避する方法がある
- シンボルを通して世界を見ると、刺激にストレートに反応する辺縁系の影響力を弱め、抽象的思考をおこなう前頭前野の影響力を強められるので、よりよい選択ができる
- 辺縁系が魅力を感じそうなものにケチをつけるのも有効な対策
- そのお菓子は腐ってるかもしれない
- 誘惑に負けた結果として、恐ろしい事態に陥る可能性を生々しく思い浮かべる方法も有効
- 締切ぎりぎりになって課題に取りかかればいいと思っていても、そのときに病気になる可能性もあるということを頭に入れておくべき
- ほぼ例外なく、仕事には想定以上に時間がかかる
- 誘惑によってかき立てられる欲求は、「いますぐ欲しい」というタイプのものである場合が多い
- 一時間くらい我慢できれば欲求はどこかへ消えてしまう
- 最も質の高い仕事をおこなえるのは、一つの課題に集中して取り組むとき
- 作業を中断するたびに、もとの作業を再開する決意を奮い起こさなくてはならず、集中力が高まるまでに時間がかかる
- 自分がどういう誘惑に弱いかを洗い出し、その誘惑を刺激するキュー(きっかけ)を排除しよう
- 誘惑に陥る原因となるキューを一掃したあとは、その結果生まれた真空を別のキューで埋めると効果的
- 目指すべきゴールを思い出させてくれるキューを用意する
- 一般的なキャッチフレーズより、自分の性格や状況にぴったり合ったキューを用意するといい
- やる気をかき立てられる格言や名言があれば、コンピュータでの作業が停滞したときに、自動的にその言葉がデスクトップ上に現れるように設定してもいい
- 支払いを先延ばししがちな人は、目につく場所に請求書を張っておくといい
- やるべき課題をリストアップして書き出すだけでも、かなりの効果がある
- コンピュータの端にそのリストを張ると、とくに有効で、ゴールに向けて集中力を高める
- いちばん有効なのは、仕事をする場所そのものをキューにすること
- 息抜きのためにネットサーフィンや SNS をするときはその場所を離れる
- 学生を対象におこなわれた実験では、勉強専用のスペースを用意したところ、学生の先延ばし癖が短期間で眼を見張るほど改善した
- 衝動買いを防ぐために複数の銀行口座を使い分ける戦略も即効性がある
- 結果を出すコツは、まず始めること
- 始めるためのコツは、複雑で巨大な課題を細かい課題に切り分けて、手に負えるようにし、最初の断片にとりかかること
- 達成しやすいゴールより手ごわいゴールを設定するほうがモチベーションを高めやすい
- ゴールラインに飛び込んだ直後に走るのをやめてしまう
- 超短期のミニゴールは、最初の壁を突き破るうえで非常に有効な場合がある
- 「10 分間ゴール」を設定してみる
- 習慣化した行動は継続しやすく、どんなに疲れていても実行できるという利点がある
- 習慣化している作業に関しては、先延ばし人間でもそうでない人と同等の成果を上げられる
- ほぼどのような行動でも、その行動を取るという意図を言葉にすれば、実際に行動する確率が二倍近くに高まる
- 本当に自律的な個人は、自分のすべての側面を受け入れて人生を送ろうとする
- 衝動的な部分を全面的に押し殺すのは、突き詰めて言えば、自己破壊的な行動
- 欲求は人生の原動力なので無視するべきではない
- 適切なバランスが重要