創薬 Advent Calendar (DRY side) 16 日目記事
10 月末から SAMPL7 というフラグメントスクリーニングの予測イベントが開催されている。合計3つのステージから成り、現在ステージ3が開始となったので簡単に紹介しておく。細則については 日本語翻訳 も用意しておいたので適宜参照されたい。
ステージ3の課題は、ステージ1で結合フラグメントを予測しステージ2でその結合様式を予測した PHIP2 ブロモドメインを標的として、今度は新たな大規模化合物ライブラリから新規結合化合物を見出すことである。ステージ1では 799 個のフラグメント化合物を含むライブラリから結合フラグメントを予測したわけだが(正解のフラグメントヒット数は 46/799 個だった)、ステージ3では 4000 万個以上の化合物を含む大規模ライブラリから結合する化合物を探し出すこととなる。事前にステージ1・2で見出された 46 個のフラグメントヒットよりも更に結合親和性が強いものを見出すことが期待されており、参加者はそのつもりでバーチャルスクリーニングを実施しよう。参加者に与えられている情報は、PHIP2 と各フラグメントヒットの複合体構造の 座標データ と、4000 万化合物以上を含むライブラリの SMILES 情報 となっている。それらを用いて各自 好きな手法で新規結合化合物を予測・提出し、最終的に SAMPL7 運営チームが結晶ソーキング法によるスクリーニングアッセイを実施し実際に結合が評価される。
4000 万化合物全体を扱ってもよいが、多過ぎて大変なので、フラグメントヒットとある程度 構造が近いものを抜き出したサブセットも用意されている。数百個に絞ったものから 100 万個程度までのものまで取り揃えられているので、処理し切れそうなものを選んでやってみるのもよいだろう。
既報 で見出されたフラグメントヒットの複合体構造もあったのでステージ1・2でも参考にはできたが、今回のソーキング実験用の結晶とは結晶形が異なるせいか結局あまり外挿性が無い印象だった。既報でアッセイされたライブラリにも含まれていたがヒットとはなっていなかった F309, F467 が今回のステージ1ではヒットとなっていたり、5ENC.PDB のリガンドと構造が近い F96 はステージ2での正解構造においては 5ENC.PDB のリガンドのポーズとは向きが大きく異なっていたりと、既知のデータと今回の結果との間に齟齬がある。
【図】全フラグメントヒットの複合体構造の重ね合わせ(平行法ステレオ図)
今回のステージ2の正解構造を重ね合わせてみると、結合フラグメントに依らずタンパク質側の構造は backbone, side chain 共にほとんど動いておらず、ソーキング実験の特徴かもしれないが、Apo 体からの構造変化はあまり起きないように見て取れる。SBVS する場合には、基本的にはタンパク質側は Apo 体からほとんど形は変わらないものと思って計算したほうがよいのかもしれない(個人の感想)。
現地時間 (US Pacific time) で 2020 年 1/13 (月) が〆切だ。これもまたタイトスケジュールで1ヶ月しかないが、楽しんでやってみよう!