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@kaityo256
Created January 21, 2018 10:40
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Re:研究者として生きていくコツ

Re:研究者として生きていくコツ

これは以前書いた研究者として生きていくコツへの補足のようなものです。主にはてブ等でついたコメントへの返事です。

誰に向けて書いたか?

Twitter等で偶然見かけた、顔も名前も知らないポスドクさんたちの言動を見て、これから研究者を目指す学生さんに向けて書きました。そのポスドクさんたちは分野も違うので、私とは直接の知り合いではありません。何年も前のつぶやきに対する反応で、最近の投稿へのエアリプではありません。

研究者も人間です。長くポスドクをしていると、いつも任期に追われ、かつ自分の望むテーマとは必ずしも合致しないプロジェクトをわたり歩くことで、だんだん「自分は何屋さんなのか」がぼやけてくるなか、同期、後輩がポストを取っていくのを見て焦り、「もっとがんばらなきゃ」と自分を追い込んだり、社会や身近な人に呪詛を吐いたり、ということがありがちです。そんな人たちの言動を見て、将来ある若い人が負の影響を受けないといいな、と思って書いたものです。なので、現在ポスドクをやっている人に向けて書いたものではありません。

好きなこと、やりたいことをしないなら、研究者になる意味はないのでは?

正論です。一般的にはそれは正しいと思います。ですが、私は「好きなこと/やりたいこと」は、(自分で思うよりも)固まっていないものだし、またあまり早いうちから固めないほうが良い気がしています。

「研究者になろう」と思ったのは、修士論文、博士論文を書いていて楽しかったからではないかと思います。従って、「やりたいこと」「好きなこと」は、少なくとも研究者人生が始まった当初は博士論文の内容に沿ったものであることが多いでしょう。実際、博士論文のテーマの延長でそのまま研究を続ける人もいると思います。しかし、ポスドクとして雇われたプロジェクトのテーマと自分の専門は、大きなずれは無いにしても、必ずしもやりたいことと一致しないのが普通です。複数回プロジェクトを渡り歩き、ふと気がつくと博士論文でやっていた内容と今やっていることが大きく離れていた、ということも普通にあるでしょう。

この時、「自分が(研究者の卵だった時代に)やりたいと思っていたテーマができないのであれば研究者を続ける意味はない」と考えたり、そう言うのはあまり生産的ではない気がします。僕としては「好きなこと/やりたいこと」はもっと流動的であり、長い目で見つけていけば良いんじゃないかな、と思います。

いろんなことをやってみて、一見無関係に見えた複数のテーマに、実は自分なりに一本筋が通っていた、ということもよくあることです。また、少し離れた二つのテーマを研究したからこそ、これまで知られていなかった共通点を見つけたり、新たな視座が拓けた、ということもあるでしょう。それはそのまま自分の武器になるかもしれません。

「私の人生をこの研究テーマに捧げる」という強い意思も大事だと思いますが、若いうちは「これがやりたい」という方向をあまり強固に固めず、「自分が活躍できる」というベクトルに少しシフトするほうが、将来自分を追い詰めることにならずにいろいろ良いのではないかと思います。

ただ、「研究者を続けるべきかどうかをどう判定すればよいか」については難しい問題です。これには一般的に適用できる答えはないと思いますし、私も答えを持っておりません。

マーケティングっていうけど、それをどうすればよいかがわからないから意味が無いのでは?

おっしゃるとおりです。ただ「マーケティングしろ」というのは、「売れる商品を見つけろ」と言われているのと同じで、まったく意味を持ちません。「マーケティング」とは、要するに「自分が現在持っている、もしくは将来獲得できるスキルで、自分が活躍できる場所を探す」ということですが、これが実際どの分野なのかは人によって異なるため、そこに一般論はありません。

私がいいたかったのは、「可処分時間の一部をマーケティングに割きましょう」ということです。先の記事で書いたとおり、睡眠その他の時間を減らして「可処分時間を増やす」という努力の方向はあまり有益ではありません。すると、結局のところ限られた「可処分時間」というリソースをどのように配分するか、という問題になります。

1日は24時間です。毎日8時間寝て、三食のご飯に2時間を費やし、お風呂家事その他に2時間消費しても、まだ12時間あります。それを全部研究に突っ込むのも良いですが、例えば毎日30分、直接の専門ではないがいま流行っているっぽい分野の論文に目を通したり、ちょっと自分とは分野が違うなと思う公募文を読んでみたりする時間に割いてみる、というのは有用だと思います。

この時、ただ論文や公募を読むだけではなく、「自分はこの分野で活躍できるだろうか、活躍できるとしたらどういう形だろうか」と思って読むのが良いと思います。

成果にはつながらなくても、努力している姿勢を評価されてポストが取れたから、努力は大事

これは、おそらく冗談で書かれたものだと思いますし、実際この人がポストを取ったのは成果があったからだと思いますが、それを承知の上でマジレスすると、成果につながらない努力が評価される世界からはダッシュで逃げてください。

実際、直接成果につながらなくても「努力している姿」が評価される世界は多いです。よくブラック企業の例が出てきますが、これは別に日本特有の問題ではなく、海外でも同様です。成果そのものよりも「朝早くから夜遅くまでラボに残って作業する」ことを評価するPIは存在し、そういうPIが海外で問題になった例を何件か知っています。そういう世界で「睡眠時間やプライベートな時間を削って作業する姿」を売りにしてPIの信頼を勝ち得てポストを取る、という戦略もありえます。

ですが、そのような世界では、成果そのものよりも努力が評価されます。成果が出なかった場合に努力不足のせいにされます。「結果がでない?何時間寝てるの?7時間も寝てるの?俺が5時間しか寝てないのに?」的なセリフも出てくるでしょう。あなたはそれでポストが取れるかもしれません。しかし、その病的な世界の維持に加担するのは、その分野の将来にとってあまり良いことではないと思います。

睡眠をほとんど取らず、夜通し実験装置に張り付き、土日はもちろん正月休みも全く取らないで世界的な成果を出している研究室はあるにはあります。そのような世界で勝負したい人はしてかまいませんが、研究者が目指すのは科学的成果であって、睡眠時間の短さではありません。寝不足の頭で研究してもバグを入れたり実験に失敗したりするだけですし、なにより良いアイディアがでてきません。研究が進まない時、「すこし違う研究の方向性」や「新しい手法」などを提案してくれるPIや先輩のいる環境に行ってください。すぐに「結果がでないのは努力不足」とか言い出す研究室は危険ですので逃げてください。

こういう文章はパーマネント取ってから書いてください。

すみません、返す言葉もありません。でもまぁ、大学教授による「研究者になるためには」的な文章は既に多数存在しますし、わりと似たり寄ったりな内容だったりするので、私くらいの位置にいる人が何か書いた文章もニーズがあるかと思って書いてみました。

研究者として支払われている給与はシステムエンジニアとしての給与と比べてどうなの?

私がシステムエンジニアとして市場に出て転職した場合、おそらく給与は下がるのではないかと思います(転職活動したことないので詳しくは知りませんが・・・)。また、いま私がついているポストは、研究能力だけでなく、エンジニア/プログラマとしてのスキルが評価されて着任したと(個人的には)思っています。

まぁ要するにエンジニア、研究者、どちらとしても中途半端だけれど、二つのスキルを併せ持つことで活躍できる場所を見つけよう、という戦略で生きています。これはいわゆる「パイ型戦略」という、二流の技を二つ持つことで限られた分野で一流を目指す、という古典的な戦略ですね。これまでのところ、私はその戦略がそれなりに機能していると思っていますが、客観的に見てどうなのかはわかりませんし、将来どうなるかもわかりません。

結局なにが言いたかったの?

よく寝てください。健全な思考は十分な睡眠から。寝不足の頭で将来を考えてもただ暗い気持ちになるだけで何も解決しないし判断できません。研究者を目指すにしても、やめるにしても、まずは十分に寝てから判断してください。

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