Skip to content

Instantly share code, notes, and snippets.

@mala
Last active May 19, 2020 04:42
Show Gist options
  • Star 2 You must be signed in to star a gist
  • Fork 0 You must be signed in to fork a gist
  • Save mala/2f51952531393003285494af10a5008a to your computer and use it in GitHub Desktop.
Save mala/2f51952531393003285494af10a5008a to your computer and use it in GitHub Desktop.
アクセシビリティとオープンデータについて

アクセシビリティとオープンデータについて

  • オープンデータや機械可読性こそがアクセシビリティやユーザビリティの向上につながるのだという話

概要

  • 実際の事例を元にして、アクセシビリティとオープンデータについて述べる。
  • 書きかけ、80%ぐらい。

前置き:「ことでん」へのツッコミとその後の対応

先週から書いているあれこれに関連して「ことでん」という鉄道会社に対してツッコミを入れた。対応がされたので、時系列での整理と、それに対する自分の見解を簡単に書く。

突然の社長への突撃に対してきちんと返信までくれて、対応は誠実だと思うし、真摯に受け止めてくれていると思う。だから、これ以上に多くを期待するのも、酷なんじゃないかと思うし、せっかく対応してくれたのに、あれこれ追加で文句をいって「なんだ結局ただのクレーマーか」と思われてしまう危険は出来れば避けたい。

しかし、やはりまだ断絶があると感じているのだし、自分が考えている問題意識については、きちんと記録に残しておきたい。

指摘した問題その1: Twitterのプロフィール名の問題

Twitterのプロフィール名の一部にスペースを挟んでいたことについて対応が取られた。「緊急事態宣言解除を受けて」ということになっている。

  • 5月15日 3:52 https://twitter.com/irucakoto/status/1261187617242128385
  • 「検索される"ことでん"や、運行情報など公共性の高い情報は従来通りのテキストでしたので具体的な問題は起きていませんが、とても参考・勉強になりました。」

経緯はここに書いてある

指摘した問題その2: 運行本数減便のお知らせのリンク先が404になっていた

「運行情報」についてのお知らせもTwitterで流してますよね、という事例として上げたTweet内のURLが、よく見たら korona_timetable (Kで始まる) を corona_timetable (Cで始まる) に途中でリネームしていて、デッドリンクになってしまっていることに気がついた。

5月15日 3:17 "リダイレクトすべきかと。「クールなURIは変わらない」という有名な文書があります" と伝えて

3:33 に「ご指摘ありがとうございます。おっしゃるとおり、URLの変更です。訂正のツイートを追加します。またお気づきの点があれば遠慮なくご指摘ください。」

3:35 に「URLはこちらに変更しております。お手数をおかけしております。」というreplyで補足がされている。

4月17日に公表して、少なくとも、4月20日までは古いURLで言及されているのが分かる。

Twitterだけではなく、例えば、「うどん県旅ネット」というサイトで掲載されていたお知らせ内でも、古いURLのまま掲載されていて、これもデッドリンクになってしまっている。

「ことでん」の対応は何が問題なのか?

  • 1つ目は「スペース開けている問題」に対して「問題はおきていませんが」という情報発信をしたこと
  • 2つ目は「デッドリンクの問題」に対して、非常に素早く対応をし「訂正のツイート」をしたこと

順を追って説明する。

「プロフィール名にスペースを入れていた問題」については、直ってよかったねーということでRTしている人も自分からの観測範囲で何人か見たけども、自分はRTしていない。「問題は起きていませんが」なんていうデマが含まれているので、デマを拡散するわけにはいかない。なんで「問題はおきていませんが」なんてこと言い切れるのだろうか。

まあ、これは分かっていたことではあるし、ある程度、こういう反応になることも想定していたのだけれど、

  • 人は間違いを認めたがらない
  • 「目に見えない問題」は軽視される傾向にある

「ことでん」の社長に対して、何が問題であったのかは漏れなく伝えてはいるつもりだ。

真似して広がってしまったこと、たかが「Twitterのプロフィール名」には、視覚障害者への配慮や、アクセシビリティは重要ではないという空気が醸成されてしまうこと、「本文中」で真似されているようなケースも有ること。ただ、これはあくまで自分が主張している問題意識なので、共感されなければ、それはそれで仕方ない部分もあるだろう。「アクセシビリティ」が重要な箇所で真似されているのであれば、それは真似したほうが悪いのであって、自分たちの責任ではないという言い逃れもできるだろう。「空気」「社会」といった漠然としたものに与えた影響を責め立てられたところで、そんなものの責任なんぞ誰も取りたくはないだろう。

もし仮に、視覚障害を持っている当事者がホームページは使いにくいので「ことでん」からのお知らせをTwitterで受信するためにフォローしていました、いちいち「こ、と、ち、や、ん」と読み上げられて鬱陶しいです、不便なので戻して下さい、なんていう問い合わせが来ていれば「問題が起きていた」と認識できるのかもしれないけれど、もし仮にそんな人がいたとしても、わざわざ問い合わせたり声を上げたりはしないだろう。(視覚障害者から認識されるのは「なんだかスクリーンリーダーの調子が悪いな」であって、名前にスペースが入っていることや、その理由を把握することも困難である)

結局「観測しようがない」ことをもって「問題は起きていません」と断言してしまう、その行為こそが、まさに「あなたたちの存在は重要ではない」という空気を醸成する行為であると、自分は主張しているわけなのだけれども。

2つ目の問題、感染症対策のための減便された「運行表」のお知らせが、404 Not Found になっている件について、指摘した後に、異常に早く「訂正のお知らせ」をもって対応が行われた。運行情報のマスター情報はあくまでホームページでの掲載であり、そちらは無駄なスペースなどは空けずに「アクセシビリティにも配慮」しているとのことである。

自信満々でこういうことを言っている手前で、交通情報へのリンクがデッドリンクになっている。まあひどい話だ。早くアクションを起こしたいのもわかる。5月15日 3時17分に「リンク先が間違っている」と指摘して、3時35分に「ことちゃん」のアカウントから「URLはこちらに変更しております」というツイート。異常なまでに迅速に対応が行われている。最初の指摘から、18分で訂正ツイートがされている。

ことでん社長からは、指摘後に少ししてから「訂正のツイートを追加します」というレスがあったので「それはいけない」と思って、(仕事中だというのに)比較的急いで(既に被リンクがあるという証拠を探し)返信を作って送ったのだが、社長が反応してから、わずか3分で「ことちゃん」が訂正ツイートをしている。(このことは後で把握したのだが)何でこっちだけこんなに動きが早いんだ。実は社長自ら運用でもしてんのか。

3時38分に、自分から「訂正よりも、古いURLから新しいURLにリダイレクトする処理を入れるのが良いです。Webの担当者そのように伝えれば分かると思います。既に古いURLで言及している人もそれなりにいます。」と伝えた。仕事中だったので、後で確認しようと思っていたら、入れ違いで既に訂正ツイートがされてしまっていた。遅かった。

  • https://twitter.com/bulkneets/status/1261184122740854786
  • 典型的なエンジニアあるあるのミスコミュニケーションが思い出されて辛い。「最初からそう伝えてくれればよかったのに」「最初から言ってるよ!!!」みたいな。

自分は最初から「リダイレクトすべき」と伝えていて「訂正のツイートをしたほうが良い」なんてことは、一言も言ってない。「URLが間違っています」とだけ伝えてしまうと、おかしな対応が取られないか心配だったからだ。そのために「クールなURIは変わらない」の参考リンクも記載している。リダイレクトの意味が伝わらなかったのかと不安だったので、更に詳細に説明したのだが、この記事の執筆時点でも404のままだ。

WebにおいてURLが恒久的に変更されたことを広報する標準的な方法は、Webサーバーからの応答で、301ステータスコードを返して新しいURLを返すことだ。

コロナの綴りを間違えたことに気付いてフォルダ名を変更するという意思決定の際には、既に発信された情報や被リンクについて思い至らなかったのだろうか?「URLはこちらに変更しております。お手数をおかけしております。」とのことだが「お手数をおかけして」しまうのは、古いURLから新しいURLへのリダイレクト処理をサボっているからだ。

ことURLの変更に関しては、人間の目に見えるようなお知らせなんか、むしろ出さないほうが正しいのだ。既にリンクを張ってくれた方々に対して、URLを変更する手間、負担をかけさせることになる。この「お知らせ」を受けて例えば「うどん県旅ネット」さんは、デッドリンクになっていることに気付いて、わざわざ過去記事中のURLを変更する作業が発生してしまうかもしれない。

アクセシビリティは、自分たちのウェブサイトやTwitterアカウントだけで完結するものではない。実際のところ、公共交通機関の「アクセシビリティ」は、地図アプリや乗換案内アプリに大きく依存しているだろう。実は既に多くの人に負担をかけていて、手動でURLを変更した外部サービスもあったかもしれない。運行情報は「ホームページ」に載せていると言っても、いちいちトップページから必要な情報を探すのは手間だろうし、外部サービスからの直リンクも含めて必要な人に情報を届けられている。綴りが多少おかしくても、そのURLで3日間も掲載したんだったら、それはもうそのままにしておく方が「アクセシビリティ」のためにはプラスなんじゃないか?綴り間違いがそんなに恥ずかしいなら、修正してリダイレクトをすればよい。古いURLをデッドリンクにしてしまうのは、あまりにも、Webの作法について無頓着すぎる。

「Webの作法」なんてことを言い出すと、人々が楽しく自由にやってきたところに突如現れる謎マナー講師のような存在に見えてしまっているのかもしれない。しかし、自分が主張しているような、いくつかのWebの作法は、今に始まったような話ではなく、ともかく十年も、場合によっては二十年以上も前から、言われ続けてきたことだ。情報発信をし続け、URLを維持してくれている先人たちには本当に感謝する。

「正しい習慣」は人間の目に見えない方法で行われるため記憶に残らず「URLが変更されました、ブックマークの変更をお願いします」なんていう「悪い方法」の方がむしろ人間の記憶には残ってしまう。

この対応の違い一つ取ってみても、相対的に「目に見えない問題」が軽視される傾向にあることがわかるだろう。404 Not Found の画面が表示されるのは「目に見える」から「問題が発生している」ことが分かりやすかったのだろう。そして、訂正という形で「目に見える」対応を取ってしまった。対応方法にしても「人間向けの説明」ばかり重視して「機械のための説明」が後回しにされているのだ。こじつけっぽいだろうか?

前置きの終わりと小まとめ

こうしてまとめてみると、発信した情報が、外部に与える影響について、無頓着、無責任である態度が見て取れないだろうか。

スペースを空ける風習が伝搬していったことについてもそうであるし、臨時のダイヤ変更のお知らせのURLが変更されているのに、3週間も放ったらかしにしていたこともそうだ。

ウェブで情報発信する上での、基礎的な知識があれば、こういった状況が起こる前に止められたかもしれない。

  • 単語の間に空白を入れるのは「距離を取ろう」を啓蒙する上であっても副作用があるのは良くない、と、実施する前に止められたかもしれない。
  • URLの綴りの間違いに気付いたとしても、慌てて変更するのではなく、古いURLからのリダイレクト処理を入れることを優先するはずだ。

与えた影響に対しての無責任な態度については、強い批判によって防衛機制が働いて「自分たちのやってきたことに問題はなかったはずだ」と信じ込みたい心理状態になったのかもしれない。

そうならないように、これもきちんと伝えようとはしている。

  • "まず自分はSNSアカウント運用姿勢を持って、ことでんのバリアフリーへの取り組み全体に問題があると主張していません" https://gist.github.com/mala/d63ad4899d1e89e6ea7d665d1d5b83da
  • "鉄道会社としてバリアフリーの重要性は説明するまでも無いと思います。SNSアカウントについてはそこまで重要ではない、マスコットのアカウントでありバリアフリーは重視していないということなのかもしれません。SNSアカウントの運用方針をもって、ことでんのサービス全体を非難するものではないです" https://twitter.com/bulkneets/status/1260579384370565123

実際に、予算や優先順序もあるだろうし、香川県ローカルの鉄道会社のインターネットへの取り組みに対して、過剰な期待を抱いてはいない。スロープ付けたり、事故防止にホームドア付けたり。人命に直結する実世界の取り組みのほうが、はるかに重要だろうと自分も考えている。バリアフリーへの取り組みもホームページ上で紹介されていたので読んだ。このページだけ文字が大きかったりする。

間違いを素直に認めるのは難しいことだ。だから「問題は起きてませんが」という表現について、心の底から本当にそう思っているのか、それとも防衛機制によって出てしまった言葉なのか判断がつかないので、表面上の言葉だけをとって批判するようなことはするつもりはない。

ただ「問題ありますよ〜」という指摘に対して「問題は起きていませんが」なんて公式からの情報発信で返してしまえる時点で、お客様対応や実際の利用者とのコミュニケーションにも問題を生じるケースは発生してしまうのではないかと心配になる。実世界で誰かが、何か出来なくて困っています、ここが不便です、といった声を上げても「いえ、弊社はバリアフリーに取り組んでいます、問題は起きていません」といった態度で返していたら大問題であろう(まあそんなわけはない)。社長の個人的な発言で「私にはその問題の深刻さがいまいち理解できませんが」というのであれば(議論をしているので)分かるけれど、公式が一方的に「問題は起きてませんが」と発信したことで、少なくとも自分はお客様扱いはされていないのだろうと感じた(実際お客様ではないし、寛大な心を持っているので気にはしていない)。

まあお客様のコミュニケーションではなく対等な議論や意見交換だったとしても、(大したフォロワー数ではないがリーチが多い)公式アカウントで「問題は起きてませんが」なんて発信してしまうのは「一方的な勝利宣言」のように見える。繰り返すが自分は寛大な心を持っているので気にはしていない。二度と関わりたくない、誰が香川になんぞ行くか、イルカもうどんも見たくもない、そんな気分になったりはしない。

話を戻す。

SNSで情報発信の敷居は非常に低くなった。これによって昔ながらのWeb制作に必要であった知識や、関連する様々な作法について、知らないままであっても、気軽に手軽に情報発信が出来るようになった。これは良いことでもあり、悪いことでもある。専門的な知識がなくとも情報発信が出来るようになったことは、基本的には手放しで称賛すべき良いことだと考える。一方で基礎的な情報リテラシーが欠落したまま、ネットでの情報発信に関わると、それはもう、何度でも何度でも、同じ問題が繰り返される。ほんとにこれで良かったのかと思うこともしばしばある。2020年にもなってチェーンメールみたいなのは発生するし、デマやフェイクニュースが拡散されるのは止まらないし、煽動される大衆、増幅される悪意、もし次の戦争が起きるとしたらインターネットがその原因の大きな割合を占めることになるだろう。戦争は嫌だ、戦争で死にたくない。

まとめるつもりが全然まとまっていないな。ともかく本題に(徐々に)入ろう。

SNS運用とアクセシビリティ

SNSアカウント、とくにTwitterに公共性を期待するべきなのかという論点がある。

「ことちゃん」のアカウントは、そもそも「運行情報はお知らせしないよ」というポリシーでSNSを運用しているとのことだ。

  • "はい、お知らせは発信しておりますが、公式には先に(かつ詳細に)、ホームページで発信しております。交通に関わる情報は特にホームページで発信し、キャラクターが追いかけるのみの関係であることは理解頂いていると思います。" https://twitter.com/yasmanabe/status/1261133422832963584

Twitterは、キャラクターがおもしろおかしくネタ投稿したり利用者とコミュニケーション取ったりするためのもので、公式な情報はホームページで真面目に詳細に発信しているので、アクセシビリティに支障など生じていないはずだと。

外野からも、次のような反応もあった。

  • 「twitterなる自由律掃き溜めに対してアクセシビリティを期待するとか、別の場所 (頭とか) に障害があるんじゃないかと思う。twitterを捨ててアクセシビリティが確保されたオフィシャルwebサイトを閲覧して、どうぞ。」 https://b.hatena.ne.jp/entry/4685721700952705378/comment/beginnerchang

twitterは掃き溜めで「オフィシャルwebサイト」はアクセシビリティが確保されているらしい。「Twitterに何を期待しているんだ」といった考えもわかる一方で「オフィシャルwebサイト」に何を期待しているんだ。こんなところにセマンティックウェブの信奉者が生き残っていたなんて嬉しい限りだ、といった皮肉の一つでも言いたくなる。

自由律とはいうが、TwitterはTwitteで、ユーザー名はここ、発言はここ、といった意味付けがされている(画像に注釈入れられないとか、そういう問題はもちろんある)。統一されたインターフェースで情報を取捨選択することが出来て、世にあふれるWebサイトよりも、遥かにアクセシビリティの向上に寄与しているだろうと思う。

ことでんの社長とやり取りしている際に、じゃあWebサイトに掲載している「ことでん」の時刻表や運行情報って、障害者から使いやすいのかよ?という、気分にはなったが、そのタイミングでは特に突っ込まなかった。実際にアクセスしてみて、スクリーンリーダーを使って試してみると、PDFもHTMLテーブルも地獄のように辛い。これは本当に何度も書かなければならないが、SNSアカウントの運用方針をもってバリアフリーへの取り組みが不十分だと主張しているわけではない。そして「ウェブサイトのアクセシビリティ」についても、手厳しいことを言うつもりはない。スクリーンリーダーを使い慣れていないので、視覚障害者にとっては何か特別なコツがあって、上手く読む方法もあるのかもしれない。

鉄道の運行情報に関して言うと、JR東日本、西日本、それぞれ運行情報を発信するTwitterアカウントが用意されていた。

人間向けのリアルタイムなお知らせなんてそれこそ、個々の鉄道会社のWebサイトでやられるよりも、Twitterでやってくれたほうがありがたいのではないか。

自分は対象の鉄道会社を利用したことがないので、その会社のアクセシビリティ、バリアフリーへの取り組みが、十分かどうかなど全く判断できる立場ではない。一般的には電車やバスの乗換えなんて、健常者にとっても難易度が高すぎるのに、障害者や外国人にとってはなおさらだろう。アクセシビリティが確保されていますなんて、よほど自信がなければ言えないことだ。

ここで誤解しないでほしいのは、自分が言いたいのは「ウェブサイトのアクセシビリティにもっと真剣に取り組んで欲しい」ということではない。むしろ全く逆で、ウェブアクセシビリティにそんな予算かけられるわけがないし、費用対効果が悪い。

というわけで、ここまできて、ようやく本題に入ることが出来る。

IT専門でない企業や組織がウェブのアクセシビリティ改善のために出来ること

以前の記事で自分は次のように書いた。

「アクセシビリティ」に対する自分のスタンスは、少しばかり、その界隈のセオリーから外れている可能性がある。データやプロトコルがオープンで、各々好きな方法で情報にアクセス可能であることこそが、自分の考える「アクセシビリティ」のための最重要事項だ。

アクセシビリティに関して自分が考えている問題点、自分の思想的な立ち位置や、少し具体的な提言を書いていこうと思う。

公共交通機関の運行情報のアクセシビリティ

ことでんのホームページで使われている技術からして、そこまでWebに予算が割かれていないのだろうというのは見て取れる。HTTPSは使われていないし、文字コードは Shift_JIS だし、jQueryのバージョンは1.6.2だ。metaタグの "GENERATOR" には "JustSystems Homepage Builder Version 21.0.5.0 for Windows" との記載がある。内製で作っているのかもしれないし、外部のWeb制作会社に発注して作っているのかもしれない。少なくともあまり新しい技術が使われてはいないというのは分かる。

デッドリンクの問題ではなく、改めて、感染症拡大防止のための減便タイムテーブルを見てみる。

純粋にHTMLのマークアップだけを、アクセシビリティに配慮されているかどうかの観点で見れば問題だらけなのは明確だ。

  • 休日運休の便、休日のみ運行の便を、テーブルのセルの背景色だけで表現している。
  • 色にしても、グレイスケールにするとほとんど同じ濃度になってしまう。

通常版の時刻表でも、休日運行との差異が、文字色やセルの背景色だけでしか識別できない状態になっている。

国土交通省の出しているバリアフリー整備ガイドラインには「情報提供のアクセシビリティ確保に向けたガイドライン」も存在している。

JR東日本の時刻表を見ると、色分けは行われているが特急かどうかはテキストでも識別がつくし、休日ダイヤは別のHTMLに分かれていた。

ウェブアクセシビリティの適合レベル、達成基準の中には、Webサイト制作者が頭の片隅に入れておけば、比較的簡単に「悪いパターンを最初から避けられる」ようなものと、実際にテストしてみたり、当事者の意見を聞かないと気付きにくいような要素がある。

そもそも時刻表において「色分け」での情報の表現が多用されてきたのは、健常者向けの視認性はもちろんあるだろうけれど、印刷物や駅構内の掲示物として、少ないスペースに情報を詰め込むためのデザイン手法なのではないか。Web向けの表現を必ずしも現実世界でのデザインと一致させる必要はない。実世界に似せたほうが分かりやすいようなケースも勿論あるだろうけれど、実世界の使いにくさもWeb上で再現するようなデザインを見て、なんだかなあと思うことは多い。

それ以外にも、減便情報の時刻表にあえて突っ込むとするなら、健常者にとっても特段わかりやすいわけではないだろうと思う。多分、終電が早くなるというのは利用者、労働者にとって重要な情報なのだけれど、テキストでそういった説明がない。普段から利用している人にとっては時刻表のHTMLテーブルを読まなくても「何が変わるのか」の情報が分かるようになっていた方が好ましいだろうと思う。

晒し上げみたいになってしまっているのだけども「ことでん」はアクセシビリティへの取り組みが不十分だから早急に改善せよなどと言いたいわけではない。多少、不便なところがあっても、情報が公開されてさえいれば、誰かが代わりに読み取って、必要な情報を抽出して、伝えられるようになる可能性は上がるのだから、情報が公開されているのは良いことだ。色々と文句を言って、情報が公開される妨げになってしまったら本末転倒だ。問題があろうとは思うけれど、ウェブアクセシビリティの様々な問題は、むしろ個人的には、今の世の中の状況を鑑みて相対的に優先順位が低いだろうとも考える。JRのような大きな会社であれば、大元のマスターデータから、機械的にこういったHTMLを大量に生成しているに決まっているけれど、ことでんは、もしかすると Homepage Builder で一つ一つ、駅ごとに時刻表のHTMLテーブルを作っているのかもしれない。Web制作会社にサイト構築を依頼していると、HTMLファイル1つあたり何万円、みたいな話もあると聞く。今のやり方で、時刻表のHTMLを一つ一つ直していくのは、現実的ではないだろう。

そもそも視覚障害者が時刻表のセルの一つ一つを読み上げて聞くのか、という論点もあるだろう。視覚障害者の鉄道オタクとか時刻表マニアとかを想定するなら、漏れなく情報が取得できたほうが良いのだろう。「市場原理に委ねるだけでは、多様性やバリアフリーの精神が守られないということが起こり得てしまう」とも、ことでんの社長向けに書いた文章の中で触れた。時刻表見てるだけで心が安らぐとか一日中時間を潰せるとか、そういう人に心当たりないがなくもない。需要があるかどうかで切り捨ててしまうのは危険な行為ではあるけれど、自分が言いたいのは、時刻表のHTMLをバリアフリーになるよう良い感じに表現することにコストをかけても、かけたコストに対して救われる人が少ないだろう、という現実的な話である。(この記事の前の方でも「人命に直結する実世界の取り組みのほうが、はるかに重要だろう」と書いた)

そんな些末なことより視覚障害者はこういうことに困ってるんだよ!みたいな風に怒られたりもするかもしれない。せっかくなので、全盲YouTuberがカップヌードルを作る動画が面白かったので紹介しておく(ポケモンやってる動画も面白い)。 https://www.youtube.com/watch?v=NKZODIG3F0E

頑張ったところで、あらゆるWebサイトは使いにくい

特定のペルソナを想定して、使いやすくしようとしたり障害を取り除こうとする考え方では、真に万人向けの使いやすさは得られないし、あらゆるペルソナを想定して必要な情報を詰め込みすぎると、それはそれで使いにくくなるだろう。大元が同じデータであっても、何を優先して知りたいのかは人によって違う。 (まあだから検索はいつの時代も重要だ)

これも古典のような文章だけれど "ユーザーは、大部分の時間を他のサイトで過ごしている。" というヤコブ・ニールセンの言葉がある。(自分は個人的に好きではないけれどWebのユーザビリティ研究の第一人者だ)

少し、引用すると、

大部分においてWebはLSDで幻覚を見ている蟻によって作られた蟻塚のようなものだ。多くのサイトが全体の中での収まりが悪く、期待される標準から外れているため使いにくいのだ。

ヤコブ・ニールセンはずっと、Webデザインで奇抜なことをするのは止めて、標準的な慣習に従うことが重要だと主張してきた。まったくもって正論で、自分がヤコブ・ニールセンのことを嫌いな理由だ。現代のWebデザインの世界に、なんとなく標準的なデザインや慣習というものは多少は存在するけれど未だにカオスである。そして自分は「それでいい」と思っている。どれだけ頑張ったところで、ウェブサイトが万人にとって使いやすくなることはない。

ユーザビリティやアクセシビリティのために「標準」が必要であるという立場があり、それに対して自分がかねてから主張しているのは、UIの多様性が大切だということだ。「標準」が重要なのは分かる。でも、その「標準」は本当に使いやすいのか?世の中はまだまだ不便すぎるので、好き勝手、実験して、実践して、あらゆる奇抜なことを試さないといけないと思っている。(公共性が求められるWebサイトが率先してそれをやれといっているわけではないことに注意)

UIの多様性のためにオープンデータが重要

思えば海外に行ったときに、鉄道会社のWebサイトを見て情報を得ようとしたかというと、全くそんなことはしていなかった。使うのはスマホの地図アプリである。「外国人」として、不慣れな土地、言語、現地での案内が読めなかったときに困ったことと言えば、すぐ思い出せるのは次のようなことだ。

  • 乗り換え案内の時刻がアバウトだったり、何分おきぐらいに来るのか分からなかった
  • 到着が予定より遅くなってしまって、終電に間に合ってるのか間に合ってないのか分からなくなった

行き先の駅名もろくに読めないし、現地の案内を見てもわからないので、鉄道やバスの会社のWebサイトを見たところで多分何も解決しないだろう。翻訳して頑張って読んだところで、必要な情報があるかどうかもわからない、時間の無駄になるかもしれない。

"データやプロトコルがオープンで、各々好きな方法で情報にアクセス可能であることこそが、自分の考える「アクセシビリティ」のための最重要事項だ" と書いた。自分の主張は、個々のWebサイトを使いやすくしようという努力よりも、この場合でいうと「Google Mapsで乗換案内の時刻や終電情報にアクセスできることの方が重要」であるということだ。

話をしつこく「ことでん」に戻すと、時刻表のオープンデータを公開していとのことである。

このたび、高松琴平電気鉄道㈱、及びことでんバス㈱では、GTFS形式の乗換案内情報データ「GTFSフィード」を作成いたしましたので、オープンデータとして公開いたします。 「GTFSフィード」は、ZIPファイルに格納された複数のテキストデータで構成されており、乗換案内情報(駅・停留所の地理的情報、ルート、時刻、運賃情報など)が格納されております。  オープンデータの公開に先立ちまして、2019年8月より、これらのデータを「グーグルマップ」へ提供しております。 沿線の皆様から国内外観光客の方まで、グーグルマップでの経路検索をご利用頂いております。(2019年10月現在)

これは素晴らしい取り組みだ。電車、バスの運行情報のオープンデータ化のためのGTFSというフォーマットがあり、多くの公共交通機関がデータ提供しているそうだ。

なるほど、オープンデータとして公開しているのであれば、多少、HTML自体のアクセシビリティが悪くても、それは外部サービスが補完できる関係にあるだろう、と思い、データをダウンロードしてみたのだけれど、Webサイトに掲載されていたGTFSのデータは「ことでん電車_2015年12月15日改正_2019.10.01運賃改定_2019.10.10金比羅例大祭臨時ダイヤ」となっていて、感染症対策のための減便は反映されていなかった。念の為、ファイルのタイムスタンプも時刻表データ自体も軽く見たが、減便情報はGTFSのデータに反映されていない。

「オープンデータ」として路線データ、時刻表データを公開したものの、ダイヤ改定の反映が遅れるということは、これに限らず良く起きているとのことである。

驚いたことに、この「オープンデータ」が更新されていないにも関わらず、Google Mapsでの乗換案内を試すと「減便については、GoogleMapsへ反映されております」との記載があり、実際に休日の減便情報などが反映されているのが確認できた。感染症拡大防止のための伴う臨時ダイヤについて、公開されているGTFSデータの改定という形で対応するのが適切なのか、それともGTFSリアルタイムのフィードとして提供するべきなのかは、よくわからない。GTFSリアルタイムフィードであれば頻繁にアクセスが必要になるので負荷軽減のために提供先を絞っているということも可能性として考えられるし、Googleに対して特別に別途データを提供してたりするのかもしれない。まあ少なくとも、仮にそういう特定の提供相手にだけ提供しているフィードがあったとしてもオープンにはなっていないということだ。もしかすると、GoogleがすごいテクノロジーでPDFやHomepage Builderで作られた時刻表を読み取って反映させているのかもしれない。誰かが手動で入力して反映させているのかもしれない。詳しい事情は自分からは分からない。(誰かが手動で入力してデータを補正している可能性が高いと思っている)

続き、時間足りないので、あとで書く

  • 公共交通機関の話によりすぎ、汎用的な話を書く。

  • 視覚障害者になりたくないなと思う。今の世の中だと、さぞかし困ることになるだろうなというのが分かるし、当事者は大変だろうと思う。

  • SNSアカウントの運用方法を持って、その企業のアクセシビリティに対する取り組みが悪いと主張しているわけではないが、何らかの相関はあってもおかしくはない。

  • シャープのマスク販売サイトは、実際に視覚障害者にとっては厳しかったようだ。立憲民主党も。

  • 少なくとも1週間以上は続くのだから、データがいつまで経っても更新されないのはよくない。

  • このPDFやHTMLを作成する過程で、時刻表の生データというのは存在しているはず

  • 不正確な情報が表示されているか、あるいは、誰かがデータを再入力して対応している。

  • 壊れたXMLの話、壊れたXMLの処理には詳しい。壊れたXMLに寛容であることの弊害。

  • CSVも正しくパースするのが難しすぎるフォーマットである。クオート、改行、謎仕様。

  • JSONはまずぶっ壊れない。

  • データ作法の話

  • 続く。

Sign up for free to join this conversation on GitHub. Already have an account? Sign in to comment