いよいよ3年生のみなさんも卒業研究に着手することになります.大学における学修活動において,卒業研究は最も重要な活動です.これまでみなさんが履修されてきた講義や演習は正解が決まっており、そこにどのようにたどり着くかを学ぶものでした。しかし、卒業研究は「問いそのものを自力で設定し,自力で回答する」活動です.卒業研究をうまく進めるためには、これまで皆さんが採ってきた授業や演習に対するアプローチとはまったく異なるアプローチが必要となります.多くの人がそのことに戸惑いを感じることでしょう。しかし、その戸惑いを解消しようとするところに、大きな学びがあります.
卒業研究を開始するにあたって,みなさんに知っておいて欲しいことがあります.この文書はそれらを伝えるために作成しました.必ず一度目を通しておいてください.また,文書の末尾にアンケートを用意しました.各人の卒業研究のテーマおよび来年度の活動のあり方を検討するために活用しますので,必ずアンケートにご回答ください.
すでに述べたように,卒業研究は大学の学修活動におけるハイライトであり,教育的にも最も重要な活動です.研究室に入るまでの2年半,みなさんは約100単位に相当する講義や演習を履修してきたと思います.大抵の授業は(少なくとも教員は知っている)正解がある問題を扱っており,それらを解くための知識や技術を教授することを目的としていました。しかし,卒業研究は授業とは大きく異なります.卒業研究は研究活動です.研究は授業とは異なり,答えはありません.答えは教員すら知りません.それどころか問いすらも設定されていません。極言すれば、研究の本質は「問いを探す活動」という点にあります.そして,設定した問いに対して自分なりの主張(回答)をうち出すことが,研究の目的となります.このことは,研究経験ゼロの学部生が取り組む卒業研究であっても変わりません.
卒業研究にある程度真剣に取り組めば,いろいろなチカラが身につきます.例えば、研究テーマあるいはその周辺の専門知識です.設定したテーマを通じて実践的に学ぶことになるので,これまでの受け身の授業よりも活きた知識やスキルを学ぶことができるでしょう.しかし,卒業研究で身につけられる(身につけるべき)最重要のチカラは,[問いを設定し解決策を考えるチカラ(コンセプチュアル・