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中野区の平和の森公園第2工区、白フェンスの御承認願というのは他にあるの? (本稿初版: 2019年6月11日。最終更新日: 2019年7月1日)

中野区の平和の森公園第2工区、白フェンスの御承認願というのは他にあるの?

本稿の構成:

前半

  • 怪しい「御承認願」の掲出
  • 御承認願ってありふれた書類なの?

この2節で、白フェンスの御承認願について比較的容易にわかるようなことを述べます。

後半

  • 不透明な見積もりと優良誤認
    • EPS業界の過去の闇カルテル
    • エコロベースブロック(溝付き)とソイレンブロックDF

この節で、中野区から情報公開された設計図書等も参照し、納入されすでに埋設されてしまった発泡スチロールの真の燃焼性や中野区の見積もり手続き上の疑惑等にせまります。

なお、本稿で得られた知見に基づき、消費者庁には積水化成品工業を不当表示(優良誤認)で通報済みです。

怪しい「御承認願」の掲出

2019年4月28日(日)〜5月6日(月祝)。10連休中でも工事をしている隣の新体育館とは異なり、第2工区の工事は全休でした。

しかし、第2工区を囲む白フェンスに、発泡スチロールのメーカー(積水化成品工業)から中野区長宛ての「御承認願」が掲示され、目を引きました(下の写真は6月11日に知人撮影。御承認願を拡大)。

御承認願

  • 工事現場にそぐわない御承認願というタイトルのこの文書の日付は3月25日になっている。しかし、発泡スチロールが草地広場に大量に搬入され野積みになったのはそれより前の3月21日である。
  • 発泡スチロールの型式名は「ソイレンブロック DF-16」であると設計図面から推定し搬入された現物でも確認していたが、この文書によって公式にそれが裏付けられた。また、認定証が添付されていないことから、ソイレンブロック DF-16がEPSブロックとして認定を取っていないパチモン(偽物)であることも証明された。
  • 製品形態として寸法「厚さ500±2.5」(単位 mm)と記されている。草地広場を掘り返して埋設する発泡スチロールの厚さは場所によりさまざまだが、50cm の厚さの発泡スチロールに限っては設計図面に存在せず、したがって納入されないはずである。つまり、中野区が買っていない発泡スチロールの寸法が記されている。(付記2019-06-26: 築山の破壊が2019年6月5日に始まり、その前後にコンクリート滑り台の土台に埋設する発泡スチロールが大量に搬入された。設計図面「築山EPS」に書かれた発泡スチロールの厚みには50cmのものがあるが、この御承認願が掲出された時点ではそれは搬入されていない。)
  • この文書でメーカーは「燃焼試験を行なった」と主張している。しかし、一番下の材料特性「(1)難燃性」の表において測定値の欄が「3秒以内」「26以上」と記されている。これらの値はEPSブロックとして認定される業界基準をコピペしたにすぎず、もし本当に燃焼試験を行なったのならわざわざ測定値を隠蔽したことになる。つまり、実際には燃焼試験なんか行なってない、あるいは、都合の悪いデータを隠したということが分かる。(付記2019-06-26: このことは「不透明な見積もりと優良誤認」の節でもっと精密に論証する。)
  • この文書には中野区長が承認したことを証する日付/署名/捺印のための欄が無いが、承認済証のような文書を別に作成したのだろうか。もしそうだとしたら、なぜそれを同時に掲示しないのか。

御承認願ってありふれた書類なの?

「御承認願」という公文書は公共工事で業者に普通に提出させるような書類なのかどうか見当がつかなかったので、情報公開請求をしてみました。ネット上で検索すると御承認願というもの自体ならいくつかヒットしますが、中野区の大規模公共工事であるところの平和の森公園再整備工事に限ってはどうなんでしょうか。

請求する公文書の内容: 平和の森公園再整備工事で取得した全ての御承認願。

全ての御承認願というからには、平和の森公園再整備工事の全てでです。すでに供用開始している第1工区とか南側トイレとかの工事で中野区が取得したものも当然含みます。

2019年5月22日付で開示決定通知書が出ました。中野区公園緑地課の場合、決定通知書にはA4でもう1枚、非公式な紙が同封されていて、開示される公文書が全部で何枚になるのかが分かります。それが次の画像です。

IMG_5436

おい!1枚かよ。

つまり、平和の森のような大規模工事であっても、白フェンスに貼り出した「御承認願」1枚だけしか業者に出させる必要がなかったような、普通ありえないきわめて珍しい書類であったということです。

御承認願1

(上の画像は、公開された全ての御承認願。白フェンスに6/11現在貼ってあるものと同じ。全1枚)

不透明な見積もりと優良誤認

(この節は2019年6月26日に追加)

この節では、中野区に積水化成品が提出した御承認願(つまり、白フェンスに貼られている御承認願)の難燃性データがでっちあげであることを論証します。その際、草地広場全面に埋められてしまった発泡スチロールは難燃性が低いことが判明します。また、「ビルマテル」という会社がどうやらEPS業界の闇カルテルのハブ的な役割を果たしていることも推測します。

EPS業界の過去の闇カルテル

草地広場に埋設された発泡スチロールは、中野区から設計委託された日本設計が次の3社に見積もりをとっていました。ちなみに、3社に見積もりをとるのは中野区の公共工事のルールです。

会社名 1立方メートルあたりの価格
積水化成品東部 採用 22,800円
積水樹脂 23,940円
ビルマテル 23,500円

中野区の平和の森公園再整備、実施設計を作った日本設計は発泡スチロール(EPSブロック)の見積りを3社から取ってるけど、うち2社が積水関連企業。しかもダウ化工とかカネカとかの他のEPS大手からは見積り取ってない(リンク先、中野区開示の報告書3-cのp271-参照) https://t.co/lxXYdbyAjP

— 中野区非公式勝手にお知らせしています (@nakanocitizens) June 23, 2019

EPS工法を用いた公共工事では、自治体の工事予定を設計が始まる前から発泡スチロールメーカーたちが情報共有して、順番に受注することにより価格競争を避け、不当な高値を維持するという闇カルテルがかつて横行していました。その手口は、各社が順番に受注していることがばれにくいように、設計段階から1社だけが深く関与し設計会社と施工主を囲い込むことで「他社の製品では代替できない独自設計」と謳い、その社の製品に関してだけ見積もりを出させるというものでした(平成29年(行ケ)第3号審決取消請求事件判決(下のリンク)『事案の概要』を参照)。実際には発泡スチロールなのですから、どのメーカーの製品(あるいは、場合によっては軽量の人工割石とか)でも代替品で設計変更は簡単にでき、独自設計などというものは存在し得ないのです。公正取引委員会は、今回中野区で採用された積水化成品工業を含む発泡スチロールメーカー9社にこの闇カルテルの排除命令と課徴金納付命令を2012年9月24日に出しています。ついでに言っておくと、積水化成品工業はこの排除命令等を不服として公正取引委員会を訴え、高裁まで争い、2018年3月23日に敗訴しています(平成29年(行ケ)第3号審決取消請求事件)。積水化成品工業はこの業界でいちばん往生際の悪い奴だったということですね。

平和の森公園再整備工事の積水化成品の発泡スチロールは、まさに「他社の製品では代替できない独自設計」(?)である排水設備としての機能の為に導入されたことになっています。とくに区議会建設委員会では区職員と小林ぜんいち区議(公明)が、ひたすらに排水設備だと強弁していました

もちろん、草地広場に埋設された発泡スチロールが排水設備などでないことは、本稿執筆時点(草地広場への発泡スチロール埋設がほぼ完了した時点)では工事の過程の写真などから火を見るより明らかです。

また、中野区が開示した5,000ページの文書に含まれる報告書4.pdf p.116(打合せ記録簿 第10回土木分科会 2017年6月14日)によると、"EPSのタイプは、水抜き必要か検討中" とあり、発泡スチロールの溝を「これは排水設備だ」とのちに言い張る割には、少なくともこの打合せの時点で、溝は必須でなかったことが分かります(下の画像の赤線部)。

報告書4 (dragged)

エコロベースブロック(溝付き)とソイレンブロックDF

さて、平和の森公園の白フェンスに今も貼ってある(中野区が開示した)御承認願と同種の怪しい書類を、中野区が見積もりだけとって採用しなかったビルマテルがネットで公開しています。

エコロベースブロック16承認願

(ビルマテル エコロベースブロック16(溝付き)承認願.pdf

ビルマテルの "エコロベースブロック16(溝付き)” は下に画像をあげておきますが、草地広場に埋められた積水化成品の "ソイレンブロックDF16" のOEMであると推定されます。

エコロベースweb

(ビルマテルのカタログページより エコロベースブロック16(溝付き)

ソイレンブロックDF

(積水化成品工業のカタログページより ソイレンブロックDF

これら2つの発泡スチロールブロックが、積水化成品の製品とそのOEMである証拠は、外見が同じであるだけではなく、他にいくつもあります。

  • ビルマテルは合成樹脂メーカーではなくただの商社(あるいはコンサルティング会社)である。(付記: 本稿末尾に法人登記簿を載せてあるのでご参照ください)
  • 商品名末尾の "16" という数字は単位体積重量が 16kN/㎥ であることを表し、両社の製品シリーズ共通に 12, 16, 20 の商品だけがある
  • 2つの承認願に書かれた物性が(燃焼性を除き)同じ
  • ビルマテルの商品に "エコロベースブロック(縦排水溝付き)" があるが、これはカネカケンテックの "カネパールソイルブロック(EDB)" と同じである。下に2つ画像をあげておいたが、画像まで同じ(特に上の画像は下の画像の背景を透明に加工して作られている)。つまり、ビルマテルは他社の製品を自社ブランドで売っているに過ぎない

エコロベースブロック(縦排水溝付き)

(エコロベースブロック(縦排水溝付き))

カネパールソイルブロック(EDB)

(カネバールソイルブロック(EDB))

要するに、中野区のように複数社から見積もりを取ることがルールで定まっている公共工事の発注手続きでビルマテルはダミーの見積もり請求先として機能しているのです。今回は積水グループ2社に加えて3社目のダミーとして機能しました。

積水化成品が中野区に提出した御承認願とビルマテルがネットで公開している承認願は上にあげましたが、その2枚を見比べてみてください。同じ製品のオリジナルとOEMなのですが、燃焼性に関する記述だけが異なります。

  • 積水化成品 ソイレンブロックDF16
    • 試験方法 JISA9511 3秒以内
    • 試験方法 JISK7201 26以上
    • ↑ 出典: 上掲の、積水化成品工業が中野区に提出した御承認願より。ウェブ上のどこを探しても燃焼性に関する記述なし
    • JISA9511は自己消火性試験のJIS規格だがこの御承認願にはJISA9511とだけ書かれ「自己消火性」の文字はない
    • 同様に JISK7201 は酸素指数試験のJIS規格だがこの御承認願にはJISK7201とだけ書かれ「酸素指数」の文字はない
  • ビルマテル エコロベースブロック16(溝付き)
    • 3秒以内に炎が消えて残じんがなく、燃焼限界を超えて燃焼しないこと
    • 80℃以上で加熱変化の可能性がある。(85℃で表面の凸凹が発生。85℃〜90℃で寸法変化が大きくなる。)
    • ↑ 出典: 上掲の、ビルマテルのウェブサイトからダウンロードできる承認願より

さらに、ビルマテルは、積水化成品の高価な発泡スチロール製品のシリーズ "エスレンブロック" のほうもOEMで "エコロベースブロック(溝なし)" という名前で扱っており、こちらに関してもビルマテルを見積もりだけとる際のダミーに使うことが可能です。

積水は、ビルの屋上にちいさな築山を作るための安価な製品シリーズは "ソイレン" と、橋とか道とか作るための高価な製品シリーズは "エスレン" と呼び、容易には紛れないようにしています。一方、ビルマテルはOEMでの両者の名前を "(溝付き)" と "(溝なし)" の部分で区別するだけにしており、めちゃめちゃ紛らわしいです。

そして、上のように、オリジナルの "ソイレン" / "エスレン" とOEMの "溝付き" / "溝なし" の燃焼性データを並べてみると、中野区が積水化成品から御承認願として取得した "ソイレン" の燃焼性データと、ダミーであるビルマテルが公開している "溝付き" の燃焼性データの食い違いが目立ちます。どちらかが誤っているわけですが、"ソイレン" と "エスレン" を積水は別の製品シリーズとして厳然と区別していることから、"溝付き" と "溝なし" の難燃性データが同じというのはありえません。したがって、難燃性が低いため積水としてはできれば隠しておきたい、ソイレンブロックの本当の燃焼性データをビルマテルが暴露してしまっていると考えるのが合理的です。

すると、草地広場に埋められた発泡スチロールの燃焼性はビルマテルのデータによって、

  • 3秒以内に炎が消えて残じんがなく、燃焼限界を超えて燃焼しないこと
  • 80℃以上で加熱変化の可能性がある。(85℃で表面の凸凹が発生。85℃〜90℃で寸法変化が大きくなる。)

が(ビルマテルが嘘を書いていないのなら)正しいと判明します。酸素指数が26以上であるという重要な記述がないので、消防法上の分類では指定可燃物(注: 大量に保管する場合には、消防署への届出の義務があり、保管方法も定められている)ということになります。

つまり、中野区に積水化成品が提出した御承認願の難燃性データはでっちあげであることが、ビルマテルのおかげで確実になりました。たいへんです、広域避難場所である草地広場全面に埋められてしまったのは難燃性が低い発泡スチロールです!

そして、ビルマテルが積水のみならずカネカの製品も扱っていることから、ビルマテルを見積もりの際のダミーとして使う(おそらく、同業他社の抜け駆けを防ぐゲートキーパー的な役割をビルマテルがはたしている)、もう1つの闇カルテルの手口の一端が本稿で明らかになったのではないでしょうか。


参考資料:

  • (中野区の田中大輔前区長が平和の森公園再整備工事を施工業者と契約したのは 2017年10月)
  • ビルマテルの法人登記簿(2005年5月12日〜現在)
    • 造園土木資材の販売、企業の経営ノウハウの販売
    • 発泡スチロールのリサイクル事業(〜2018年3月26日)(ウェブページにはこの事業に関していまだに記載があるが登記簿上はなくなっている。奇しくもその3日前の2018年3月23日に、積水化成品は公正取引委員会を相手取って起こした闇カルテル排除命令等棄却訴訟に東京高裁で負けている。)
  • ビルマテルの法人登記簿(閉鎖登記簿) (〜1999年=白井商事株式会社、1999年〜2005年5月12日=ビルマテル)
    • 生コン、造園土木、コンサルティング
    • 発泡スチロールのリサイクル事業(1999年〜)

(本稿初版: 2019年6月11日。最終更新日: 2019年7月1日)


他の資料へのリンク

発泡スチロール関連

関連するまとめなど

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